リンゴ(林檎、学名: Malus domestica, Malus pumila)とは、バラ科リンゴ属の落葉高木、またはその果実のこと。植物学上ではセイヨウリンゴと呼ぶ。春、白または薄紅の花が咲く。人との関わりは古く、紀元前から栽培されていたと見られ、16世紀以降に欧米での生産が盛んになり、日本においても平安時代には書物に記述がみられる。現在世界中で生産される品種は数千以上といわれ、栄養価の高い果実は生食されるほか、加工してリンゴ酒、ジャム、ジュース、菓子の材料などに利用されている。西洋美術、特に絵画ではモチーフとして昔からよく扱われる。
セイヨウリンゴの標準植物学名は Malus domestica といい、そのシノニムとして Malus pumila var. domestica 、Malus pumila ともよばれている。栽培種には Malus domestica Borkh. という学名がある。主に、栽培種が複数の野生種の雑種であるという立場から使われる。
和名に「リンゴ」と名がつく別種として、ワリンゴが Malus asiatica 、広義のエゾノコリンゴが Malus baccata 、シベリアリンゴは Malus baccata var. baccata 、エゾノコリンゴは、Malus baccata var. mandshurica 、タイワンリンゴは Malus doumeri という。
日本語においては漢字で主に「林檎」と書くが、この語は本来、同属別種の野生種ワリンゴの漢名である。また、「檎」(音読みはキンまたはゴ)を「ゴ」と読むのは慣用音で、本来の読みは「ごん」(呉音)「きん」(漢音)であった。古く中国から日本に伝わったワリンゴ(和林檎)が、日本でリンゴと呼ばれるようになった。しかし現在、日本で広く栽培されているリンゴのほとんどはセイヨウリンゴである。古名は、リウゴウとよばれた。
原産地はアジア西部といわれ、北部コーカサス地方が有力視されている。リンゴは7500以上の品種が栽培されており、亜寒帯、亜熱帯および温帯で栽培可能である。暑さに弱いため、熱帯での栽培は難しい。
リンゴの木は落葉高木で、日本の栽培種を放任栽培すると高さは8メートル (m)にもなる。栽培されているものは低く作られる。樹皮は灰色でほぼ滑らかであるが、老木は不規則に剥がれる。一年枝は暗紅紫色で毛が密生し、二年枝は短枝もよくできる。小枝は白い皮目が目立つ。
花期は晩春頃(4 - 5月)で、白い5弁花が開花する。品種によりまちまちであるが、8 - 11月にかけて果実が実り、収穫される。
リンゴの果実は直径約3 - 15 センチメートル (cm) 、重さ約35 - 1000グラム (g) 。外皮の色は赤や黄緑または黄色をしている。熟するとヘプタコサンを含んだ蝋状の分泌物に覆われる。果肉は淡黄色から白色の品種が多い。外皮近くなど果肉が赤からピンク色になる赤肉系の品種もある。以前、こうした赤肉系の品種は渋みが強く生食に向かなかったが、2010年代になると日本では生食でも美味な赤肉系が品種改良により相次ぎ生み出された。弘前大学(青森県)の「紅の夢」「HFF60」「HFF33」、農研機構の「ローズパール」、信州大学の「レッドセンセーション」、青森県五所川原市の「栄紅」(えいこう)や「レッド キュー」などである。
リンゴの蜜は比重が大きいため、水の中に入れると沈む。果実の他の部分は比重が小さいため水に浮かぶ。
冬芽は卵形や円錐形で白い綿毛に覆われていて、枝先に頂芽がつき、枝に側芽が互生する。葉痕はV字形で、維管束痕が3個つく。
スイス地方の先住民族といわれている湖棲民族の遺跡からはリンゴの化石が発見されており、推定4,000年前にはリンゴが栽培されていたと考えられている。ヨーロッパに広まったリンゴは、16世紀から17世紀頃にかけてヨーロッパ中部以北各地で栽培が盛んとなり、19世紀中頃にはイギリスが大産地となった。
アメリカ合衆国には17世紀前半、ヨーロッパからの移住民によってもたらされ、新種の開発や枝変わりの発見など大きな発展を遂げた。以後、世界各地で栽培されている品種のほとんどはアメリカに由来するものとなっている。
中国の新疆と黄河の西の地域は中国最古のリンゴ生産地で、中国東北部は小玉リンゴの生産地となっていた。
中国の書物『本草綱目』に「林檎一名來禽、言味甘熟則来禽也。」(林檎(りんきん)の果は味が甘く能く多くの禽(鳥の意)をその林に来らしむ。故、来禽(らいきん)の別名がある)との記述がある。
19世紀半ばになると中国にも西洋リンゴが導入され、商業的に生産されるリンゴのほとんどが西洋リンゴとなっている。
2000年頃には「富士」を中心に大量生産され、現在世界最大のリンゴ産地となっている。
日本にはアメリカから文久年間(1861 - 1864年)ごろに到来したという説と、明治初年に北海道函館に入ったドイツ人のR・ゲルトナー(ガルトネル)がもたらしたという説がある。ワリンゴが日本へ最初に持ち込まれたのは中国からと考えられており、現在栽培されている西洋リンゴの品種は、そのほとんどが明治初期にアメリカから持ち込まれたものがルーツとなっている。すると、日本でも西洋リンゴの方が一般的になり、それまでの種は「和リンゴ」などと呼ばれて区別された。
平安時代中頃の書物『和名類聚抄』には「利宇古宇(りうこう/りうごう)」としてリンゴが記述されており、これが訛って「りんご」になったと考えられている。地域によっては「リンキ」という古名も伝わる。
戦国時代に、近江国(現在の滋賀県)の戦国大名であった浅井長政は領内の木之本の寺から届けられたリンゴに対する礼状を同寺に届けており、この書面は現存している。他にも、安土桃山時代の出羽国(現在の山形県)の大名であった最上義光の家臣の北楯利長が、主君の義光に鮭とリンゴを贈ったことが、義光から北楯への文書(礼状)から判明している。
江戸時代の浮世絵師・葛飾北斎の絵にリンゴの花が描かれるなど、実よりはどちらかといえば花が珍重されていたこともあったが、およそ食用として各地域に伝承されていた。また、仏前の供え物として多用された。天明7年6月7日 (1787年7月21日)に発生した御所千度参りと呼ばれる事件の際、京都市中に溢れ返った3万から7万人ともされる人数に対し、後桜町上皇からは3万個のリンゴが下賜配布された記録がある。当時、権力の中枢とはいえず、裕福でもなかった皇室が即座に3万個ものリンゴを放出した記録により、基本的に食用ではなく仏事用であるとしても、大規模な栽培・集荷・流通が行われていたことが分かる。
後に和リンゴの栽培・流通は極少数となったが、例えば長野県上水内郡飯綱町では、わずかな農家が栽培してその姿を伝えている。この和リンゴの実は、大きさ直径3 - 4 cm、重さは30 gぐらい。熟すると赤くなり、収穫適期はお盆前である。
2003年より「彦根りんごを復活する会」が、全国に残存する和リンゴや野生種を調査し、数十種類の木(数百本)を育て、収穫した果実はお盆に各地の寺社に奉納している。同じ滋賀県で前述の浅井長政ゆかりの木之本などでも復活・保存の動きがある。
初めて西洋リンゴが栽培された例としては、文久2年(1862年)、越前福井藩主で幕府政事総裁職であった松平春嶽がアメリカ産のリンゴの苗木を入手し、それが江戸郊外巣鴨の福井藩下屋敷にて栽培されていたと残る記録が有名である。またそれより先、安政元年(1854年)に、アメリカからもたらされた「アッフル」が加賀藩下屋敷(板橋宿)にて栽培され、翌年に実をつけたために食用とされたことが、当時の加賀藩士の記録に残っている。藩主(前田斉泰)から「小さな餅に塗って食べるように」と言われて近習らはそのようにしていることから、ジャムにして食したものと思われる。
これらの栽培は、当然ながら藩主直接の手によるものではなく、栽培の能力を持った家臣や屋敷近隣の農家や植木屋が関わっていた。板橋と巣鴨は近隣であり、双方での栽培に関わった人物間の何らかの交流や情報交換があったとも推測される。また福井藩下屋敷では接ぎ木により100本以上の樹が生えていたとされ、当時既にリンゴの株分け・接ぎ木のノウハウがあったとも推測される。また、この福井藩下屋敷の株を、藩と直接関係のない人物が藩邸出入りの植木屋を通して入手した話が伝わることなどから、これら2箇所の藩邸だけにとどまらず、もっと広く栽培されていた可能性がある。この両藩邸のリンゴの株の導入経路はどちらも「アメリカから」と伝わるが、正確な入手経路や品種などは明確になっていない。
明治4年(1871年)に明治政府の命を受けた北海道開拓使の次官黒田清隆と民部省の細川潤次郎は、アメリカから国光など75品種の苗木を持ち帰り渡島国亀田郡七重村(現・北海道七飯町)の七重官園に植栽した。それが広がり出したのは明治7年(1874年)、内務省による配布が始まってからになる。現在の日本国内の主なリンゴ産地のほとんどは、七重官園にその起源を求めることができる。これらの生産がようやく軌道に乗ったのは明治20年代とされ、各産地でのその間の栽培定着の苦労を推測することができる。
接ぎ木の技術によって品種改良が進み、甘味や酸味、歯ごたえなどさまざまな品種が作られるようになった。
リンゴ栽培に適した気候は、冷涼な地域であること、年間降水量が少なめであること、昼夜の気温差が大きいことなどを満たしていることが条件となる。冷涼な環境はリンゴの貯蔵にも適している。
リンゴに限らず商品価値の高い果実を収穫するためには、開花直前から開花時期に優位な花を残す「花摘み」、結実後30日程度を目安に実を間引く「摘果」作業が必要である。リンゴには果実に袋をかける有袋栽培とかけない無袋栽培がある。無袋の方が日光が多く当たり糖度も上がるが、ふじ等の一部の品種は果実の色を鮮やかにし商品価値を上げるため有袋栽培を行う。また、有袋栽培には貯蔵性が向上する効果もあり、さび防止のためには遮光度の弱い袋を使用し、着色向上のためには遮光度の強い新聞紙や二重袋などを使用する。名称の頭に「サン」が付くリンゴは無袋で栽培されたことを示し、見栄えは悪いが甘く美味しいリンゴが収穫される。着色には太陽光が大きな役割を果たすため、果実の日当たりをよくするため摘葉および玉まわし(着色具合を均一にするため、樹上の果実を回転させること)、太陽光を反射させるためのシートの敷設などが行われる。これらの作業は農家にとって大きな負担となるため、着色促進剤が使われることもあるが、着色系と呼ぶ色付きの優れた選抜亜種への更新も行われる。省作業になる「葉とらずリンゴ」は摘葉を行わない。樹形は矮性が主流となっている。近年は花粉を媒介する昆虫の減少から人手による人工授粉も広く行われている。または摘花の省力化目的でギ酸カルシウム剤を散布する場合もある。
上記の栽培法で美観のために行う作業は400時間に達することもあるが、人手不足に加え消費者の意識が過度な外観重視から変化していることもあり、このような作業を止める試みもある。
日本にリンゴ栽培が伝えられたころと同様の伝統的な樹形で栽培する場合、台木は、マルバカイドウ・エゾノコリンゴ (Malus baccata)・ズミ(ミツバカイドウ)が用いられる。
矮性栽培法は、1975年頃より普及が始まった樹高を低くし矮性栽培を行う方法で、リンゴわい性台木と呼ばれる特性を有した台木を使用する。矮性栽培により生産者の肉体的負担の軽減や農薬散布の機械化に大きく貢献した。
多く利用されている矮性台木品種はイギリスのイーストモーリング試験場で収集・開発されたM系台木のM.9、M.26であるが、国内で開発された矮性台木品種では果樹試験場盛岡支場(現・農研機構果樹茶業研究部門盛岡研究拠点)で開発されたJM7をはじめとするJM系台木がある。JM1、JM7、JM8は矮性、JM5は極矮性、JM2は半矮性であり、生産者の求める矮性度合いに応じて選択か可能となっている。JM系台木はM系台木と異なり挿し木発根性が有るため取り木を行う必要がなく、耐水性に優れることから国内の栽培方法に適しており、果実糖度も高くなる特徴がある。
さらに、より高密度での栽培を行い、早期多収、均質生産、作業効率向上をめざした高密植栽培法が世界的に広まりつつある。
また、カラムナータイプと呼ばれる枝が横に広がらず、円筒形の樹形となる品種も存在する。
世界中では約1万5000以上の品種が存在するとみられており、日本には約2000種類あるといわれている。日本の農林水産省に登録されている品種は177種で、うち品種登録が維持されているものは85種。多くの有名な品種は誕生年が古く、品種登録されていない。前述のとおり多くの品種があるものの、国内リンゴ品種は主に7つの起源品種(国光、デリシャス、ゴールデンデリシャス、紅玉、ウースターペアメイン、印度およびコックスオレンジピピン)に由来している。品種の特徴の記述に、早生、中生、晩生といった収穫時期による分類が使われることがある。例えば青森県ではそれぞれ、8月20日頃までを極早生、9月20日頃までを早生、10月20日頃までを中生、それ以降を晩生としている。
「ふじ」は1962年に青森県藤崎町で誕生し、日本で最も一般的に栽培され、世界において最も生産高の高い品種である。日本国外にも盛んに輸出され、名前も日本語の発音と同じ「Fuji」の名で親しまれている。中国・韓国・北アメリカ・オーストラリアなどでの栽培も多く、世界的にも最も生産量の多い品種であることが2001年に米国人学者達による調査によって確認された。無袋で日光を十分に浴びさせて栽培したものは「サンふじ」の名で出荷される(「サンふじ」はJA全農長野の登録商標)。早い時期に市場に出回る早生(わせ)ふじは同じ糖度の果実であっても甘みや酸味にばらつきがある。見た目は赤く色づいていても「ふじ」らしい食味がないことがある。ふじを品種改良をしたものは、小玉のふじ「姫ふじ(ひめふじ)」のほか「千秋」「こうこう」「シナノスイート」「北斗」「こうたろう」「ハックナイン」など多数である。
クラブリンゴ類(クラブ・アップル:Crab apple)とは果実の小さいリンゴ属植物の総称。日本では小玉リンゴや姫リンゴといった総称で知られる。
特徴として一般的なリンゴに比べて果実が小さく、直径は 2, 3 cmから大きくても約5 cm程度、重さはわずか数グラムのものから大きくても約150 gほどにしかならない。果実の食味は一般的な林檎に比べて劣っていることから、縁日で売られるりんご飴や果実酒など主に加工用として用いられている。樹勢が小振りなため、街路樹や庭木や鉢植えでの観賞用としても用いられる。加工用として用いられる代表的な品種には「アルプス乙女」「姫小町」「あおもり乙女(ミニふじ)」「彦根りんご」「ワリンゴ」「ドルゴクラブ」などがある。観賞用として用いられる代表的な品種には「エゾノコリンゴ」「ズミ」などがあり、「ヒメリンゴ」の別名を持つ「イヌリンゴ」も観賞用に用いられている。
また「フラワーリング・クラブ・アップル」(Flowering crab apple) という種類は、花の観賞用として品種改良されたクラブリンゴ類である。リンゴ属であるためリンゴに似た 1, 2 cmくらいの赤い小さな実をつけることもあるが、結実しないことも多く、食用には不向き。代表的な品種として「ハナカイドウ」「長崎りんご(ミカイドウ)」「ウケザキカイドウ」「ノカイドウ」などのカイドウ類が知られており、これらは別名「ハナリンゴ」とも称されている。
FAO(国際連合食糧農業機関)の統計によると、2013年の世界のりんご生産量は8,080万トンであった。2013年の生産量では中国がトップでアメリカ合衆国、トルコ、ポーランド、インドと続く。
中国ではリンゴの生産が急増しており、世界の5割弱の生産量を占めるに至っている。
2016年時点では、全生産高の約70%が日本で品種改良されたふじである。
中国北部の黄土高原と渤海湾地域は日照時間や昼夜の温度差などの環境条件から、世界最大のリンゴ適地生産区となっている。中国では、生産規模・主要品種・気候条件などにより6つのリンゴ生産区に分けられている。特に主要なリンゴ生産区は渤海湾リンゴ生産区と中部リンゴ生産区である。
中国では特に生食用果樹園と加工用果樹園の区分はなく、生食用として市場で売れなかった分を加工工場に送るのが一般的である。
日本では、1962年(昭和37年)から1971年(昭和46年)の10年間に100万トンを超えたが、価格は低迷し、この時期から減少傾向となっている。
日本国内での主な産地は次の通り。青森・長野の上位2県が、全国生産量のおよそ75%を占め、ミカンとは対照的に冷涼な気候で育つ果樹の代表格である。
上記の道県以外にも、新潟県佐渡市、石川県金沢市、鳥取県大山町などに小規模な産地がある。
りんごを自治体の花・木に指定していることも多い。
低温倉庫または低温加湿倉庫で保存する。長期保存の場合、低温低酸素高二酸化炭素雰囲気(CA貯蔵)で行われる。
水分の蒸発を抑えるため、できるだけ密閉し冷蔵庫の野菜室などに入れることが望ましい。
果実は、ブドウ糖・果糖・蔗糖などの糖類と、リンゴ酸・クエン酸・酒石酸・コハク酸などの有機酸のほか、ペクチン、フラボノイド(クエルセチン)、ビタミンA・B1・C、プロリンなどのアミノ酸、その他芳香物質を含んでいる。食物繊維やビタミンC、カルシウム、鉄分、カリウムが豊富で、カリウムは高血圧予防によく、食物繊維のペクチンには整腸作用がある。有機酸や糖によるのどの渇き止め、清涼作用の効果と、タンニンがもたらす収斂作用により整腸・下痢止め作用がある。滋養や保健に役立つとされ、食欲増進、消化促進、下痢の予防などの滋養保健に果実を生食するのがよく、常食すれば動脈硬化に役立つといわれている。
「1日1個のリンゴは医者を遠ざける」(An apple a day keeps the doctor away.) という諺があるように、リンゴは栄養価が高い果実として食されてきた。リンゴに含まれるリンゴポリフェノールには脂肪の蓄積を抑制する効果があるともいわれる。生産者の間では広く知られているが、5月から6月に摘果した直径3 cm程度の未熟果の一部は、秋まで土の上で腐らず残っている。この成分はポリフェノールの一種が関係していることが研究の結果明らかになった。
完熟したリンゴの断面中央の種子のまわりに現れる琥珀色の部分はソルビトールという物質で、俗にリンゴの「蜜」とよばれる。蜜の部分は甘くないが、蜜入りリンゴは完熟しているため、全体が甘く感じる。リンゴの品種によって蜜の入り方に違いが見られ、「サンふじ」や「スターキング」は蜜が入りやすく、「ゴールデンデリシャス」や「つがる」は蜜が入りにくい。
日本では95%が生食され、フランスで約60%が加工用、アメリカでは約40%がシードル(リンゴ酒)、ジャム・ゼリー・ジュースに加工されている。
リンゴの果実の表面には薄い皮があり、皮に付着する農薬等の問題や、食べやすさの点から、皮をむいて食べられることが多いが、皮ごと食されることもある。皮むきにはナイフや包丁のほか、回転式のアップルピーラーが用いられることもある。また、リンゴを放射状に切り分けるアップルカッターが用いられることもある。味は酸味と甘みが強い。日本におけるリンゴの収穫は品種によるが9月中旬から11月中旬である。各品種とも収穫期間は約1か月程度と短いが、リンゴは高湿度低酸素状態で冷蔵保存することにより長期の貯蔵(およそ9か月間)が可能である。このため、リンゴの出荷は9月 - 翌年7月ごろまで約10か月間行われほぼ一年中食べることができる。
皮をむいたリンゴの果実は空気に触れると変色する(褐変、かっぺん)。これはリンゴに含まれるポリフェノールが空気中の酸素と結合するために起こる現象である。これを防ぐために古くから知られているのが塩水に晒す方法である 。これは塩素イオンが、ポリフェノールを酸化する際に働く酵素を阻害する作用を持つことを利用したものである。フルーツサラダに加える場合は食塩水に代えて他の果物の缶詰内にある果汁を使用することもできる。最も効果的に変色を防ぐにはレモン汁に晒すとよい。レモン汁に含まれるビタミンCが酸素と結びつき、ポリフェノールと結合した酸素をも奪うため、変色したリンゴも元の状態へと戻すことができる。
生のまま食用にするほか、ジュース(リンゴジュース)やアップルパイ、ジャム、焼きリンゴ、リンゴ酒(シードル、カルヴァドスなど)などにする。リンゴのスライスやプレザーブは製菓・製パン材料ともなる。また、まるごと飴で覆ったリンゴ飴が、縁日の出店などで売られている。ドライフルーツにも加工される。また、サイダー(リンゴ酒、シードル)には、サイダー用の栽培品種があり、サイダーアップル (英: Cider apple) と呼ばれている(例:'Kingston Black', 'Stoke Red', and 'Dymock Red')。このほか、りんごを用いた果実酢としてりんご酢がある。
リンゴの「蜜」は、ソルビトールが多く含まれている。バラ科の植物は、光合成産物のデンプンを篩管を通じて転流するときに、デンプンの加水分解で生じたグルコースをソルビトールに変換する。スターキングデリシャスなど、リンゴの品種の一部では、果実内に転流してきたソルビトールを、グルコースやフルクトースといった糖に変換する代謝系が果実の成熟に伴って停止しても、果実内へのソルビトールの転流は継続する。そのため、果実内の維管束周辺にソルビトールが蓄積していわゆるリンゴの「蜜」と呼ばれる半透明部分を形成し、果実の成熟の指標となる。成熟の過程で蜜が生成されるもので、蜜(=ソルビトール)そのものが特に甘いわけではない。また、蜜が多くても、その実が甘いとは限らない。「ゴールデンデリシャス」「つがる」は蜜ができにくく、「ふじ」「スターキング」は蜜ができやすい。近年市場では蜜入りが好まれるが、長期保管したものは蜜が褐色に変化しやすい。
シラカバ花粉症を持つ人のうち一定割合の人がリンゴやモモなどバラ科の果物を食べた際に舌や咽喉(のど)にアレルギー症状を起こすことが知られている。
加工製品では、保存中に生じるカビが生産する毒素のパツリンに汚染されている可能性がある事から、2003年にりんご果汁について50 μg/kgの基準値を設定された。
果実は、リンゴ鉄エキス、リンゴ鉄チンキなど、補血剤の製薬原料としても用いられている。1835年、リンゴの木の樹皮からフロリジンが発見されている。同じく木の樹皮から抽出されるキニーネのように、フロリジンは当初解熱薬や抗炎症薬、抗マラリア薬として使用されていたが、後に腎臓の近位尿細管からのブドウ糖再吸収を阻害する作用を持つことが分かった。SGLT受容体の阻害作用による効果であるが、フロリジンはSGLT2選択性が低く医薬品とすることはできなかった。フロリジンの分子構造を改良してSGLT2選択性を高め、副作用を低減した薬剤が糖尿病治療薬のSGLT2阻害薬として2013年3月にFDAに認可された。日本では2014年から初のSGLT2阻害薬としてイプラグリフロジンの販売が始まり、2016年までに6種類の薬剤が流通している。なお、リンゴの果実には血糖を下げる効果はない。
『本草綱目』第30巻においては、果実は小児の閃癖(せんへき)に良いとされていた。
薬用する部位として、果実は林檎、葉は花紅葉(かこうよう)とも称する。民間療法では、胃酸過多、胃アトニー、慢性胃炎、慢性下痢症に、生リンゴ果実1個分をすりおろして食べたり、ジュースにしたり、そのまま食べる。子供は年齢に応じて量を加減する。乳幼児の下痢に、すりおろしたリンゴ果実の果汁を飲ませるとよく、下痢が止まったら母乳、ミルクに切り替えるとよいといわれている。アメリカ北東部のバージニア州周辺では、りんご酢に蜂蜜を加えたものが保健飲料として、昔から飲まれている。あせもには、乾燥させた葉50グラムほどを浴湯料にして布袋に入れて風呂に入れる。
リンゴの果実はそれ自身が熟成するにつれてエチレンガスを多く発生する。そのためエチレンガスを必要とする実験によく使われる。
このようにリンゴの果実から発生するエチレンガスは植物の熟成を促進するので、促進させたくない場合はそれぞれ別々に密閉して保存する必要がある。ただし、下記のような生育の抑制効果もある。
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