Aller au contenu principal

リンゴ


リンゴ


リンゴ(林檎、学名: Malus domestica, Malus pumila)とは、バラ科リンゴ属の落葉高木、またはその果実のこと。植物学上ではセイヨウリンゴと呼ぶ。春、白または薄紅の花が咲く。人との関わりは古く、紀元前から栽培されていたと見られ、16世紀以降に欧米での生産が盛んになり、日本においても平安時代には書物に記述がみられる。現在世界中で生産される品種は数千以上といわれ、栄養価の高い果実は生食されるほか、加工してリンゴ酒、ジャム、ジュース、菓子の材料などに利用されている。西洋美術、特に絵画ではモチーフとして昔からよく扱われる。

名称

セイヨウリンゴの標準植物学名は Malus domestica といい、そのシノニムとして Malus pumila var. domesticaMalus pumila ともよばれている。栽培種には Malus domestica Borkh. という学名がある。主に、栽培種が複数の野生種の雑種であるという立場から使われる。

和名に「リンゴ」と名がつく別種として、ワリンゴが Malus asiatica 、広義のエゾノコリンゴが Malus baccata 、シベリアリンゴは Malus baccata var. baccata 、エゾノコリンゴは、Malus baccata var. mandshurica 、タイワンリンゴは Malus doumeri という。

日本語においては漢字で主に「林檎」と書くが、この語は本来、同属別種の野生種ワリンゴの漢名である。また、「檎」(音読みはキンまたはゴ)を「ゴ」と読むのは慣用音で、本来の読みは「ごん」(呉音)「きん」(漢音)であった。古く中国から日本に伝わったワリンゴ(和林檎)が、日本でリンゴと呼ばれるようになった。しかし現在、日本で広く栽培されているリンゴのほとんどはセイヨウリンゴである。古名は、リウゴウとよばれた。

植物学上の特徴

原産地はアジア西部といわれ、北部コーカサス地方が有力視されている。リンゴは7500以上の品種が栽培されており、亜寒帯、亜熱帯および温帯で栽培可能である。暑さに弱いため、熱帯での栽培は難しい。

リンゴの木は落葉高木で、日本の栽培種を放任栽培すると高さは8メートル (m)にもなる。栽培されているものは低く作られる。樹皮は灰色でほぼ滑らかであるが、老木は不規則に剥がれる。一年枝は暗紅紫色で毛が密生し、二年枝は短枝もよくできる。小枝は白い皮目が目立つ。

花期は晩春頃(4 - 5月)で、白い5弁花が開花する。品種によりまちまちであるが、8 - 11月にかけて果実が実り、収穫される。

リンゴの果実は直径約3 - 15 センチメートル (cm) 、重さ約35 - 1000グラム (g) 。外皮の色は赤や黄緑または黄色をしている。熟するとヘプタコサンを含んだ蝋状の分泌物に覆われる。果肉は淡黄色から白色の品種が多い。外皮近くなど果肉が赤からピンク色になる赤肉系の品種もある。以前、こうした赤肉系の品種は渋みが強く生食に向かなかったが、2010年代になると日本では生食でも美味な赤肉系が品種改良により相次ぎ生み出された。弘前大学(青森県)の「紅の夢」「HFF60」「HFF33」、農研機構の「ローズパール」、信州大学の「レッドセンセーション」、青森県五所川原市の「栄紅」(えいこう)や「レッド キュー」などである。

リンゴの蜜は比重が大きいため、水の中に入れると沈む。果実の他の部分は比重が小さいため水に浮かぶ。

冬芽は卵形や円錐形で白い綿毛に覆われていて、枝先に頂芽がつき、枝に側芽が互生する。葉痕はV字形で、維管束痕が3個つく。

歴史

欧米

スイス地方の先住民族といわれている湖棲民族の遺跡からはリンゴの化石が発見されており、推定4,000年前にはリンゴが栽培されていたと考えられている。ヨーロッパに広まったリンゴは、16世紀から17世紀頃にかけてヨーロッパ中部以北各地で栽培が盛んとなり、19世紀中頃にはイギリスが大産地となった。

アメリカ合衆国には17世紀前半、ヨーロッパからの移住民によってもたらされ、新種の開発や枝変わりの発見など大きな発展を遂げた。以後、世界各地で栽培されている品種のほとんどはアメリカに由来するものとなっている。

中国

中国の新疆と黄河の西の地域は中国最古のリンゴ生産地で、中国東北部は小玉リンゴの生産地となっていた。

中国の書物『本草綱目』に「林檎一名來禽、言味甘熟則来禽也。」(林檎(りんきん)の果は味が甘く能く多くの禽(鳥の意)をその林に来らしむ。故、来禽(らいきん)の別名がある)との記述がある。

19世紀半ばになると中国にも西洋リンゴが導入され、商業的に生産されるリンゴのほとんどが西洋リンゴとなっている。

2000年頃には「富士」を中心に大量生産され、現在世界最大のリンゴ産地となっている。

日本

日本にはアメリカから文久年間(1861 - 1864年)ごろに到来したという説と、明治初年に北海道函館に入ったドイツ人のR・ゲルトナー(ガルトネル)がもたらしたという説がある。ワリンゴが日本へ最初に持ち込まれたのは中国からと考えられており、現在栽培されている西洋リンゴの品種は、そのほとんどが明治初期にアメリカから持ち込まれたものがルーツとなっている。すると、日本でも西洋リンゴの方が一般的になり、それまでの種は「和リンゴ」などと呼ばれて区別された。

ワリンゴ

平安時代中頃の書物『和名類聚抄』には「利宇古宇(りうこう/りうごう)」としてリンゴが記述されており、これが訛って「りんご」になったと考えられている。地域によっては「リンキ」という古名も伝わる。

戦国時代に、近江国(現在の滋賀県)の戦国大名であった浅井長政は領内の木之本の寺から届けられたリンゴに対する礼状を同寺に届けており、この書面は現存している。他にも、安土桃山時代の出羽国(現在の山形県)の大名であった最上義光の家臣の北楯利長が、主君の義光に鮭とリンゴを贈ったことが、義光から北楯への文書(礼状)から判明している。

江戸時代の浮世絵師・葛飾北斎の絵にリンゴの花が描かれるなど、実よりはどちらかといえば花が珍重されていたこともあったが、およそ食用として各地域に伝承されていた。また、仏前の供え物として多用された。天明7年6月7日 (1787年7月21日)に発生した御所千度参りと呼ばれる事件の際、京都市中に溢れ返った3万から7万人ともされる人数に対し、後桜町上皇からは3万個のリンゴが下賜配布された記録がある。当時、権力の中枢とはいえず、裕福でもなかった皇室が即座に3万個ものリンゴを放出した記録により、基本的に食用ではなく仏事用であるとしても、大規模な栽培・集荷・流通が行われていたことが分かる。

後に和リンゴの栽培・流通は極少数となったが、例えば長野県上水内郡飯綱町では、わずかな農家が栽培してその姿を伝えている。この和リンゴの実は、大きさ直径3 - 4 cm、重さは30 gぐらい。熟すると赤くなり、収穫適期はお盆前である。

2003年より「彦根りんごを復活する会」が、全国に残存する和リンゴや野生種を調査し、数十種類の木(数百本)を育て、収穫した果実はお盆に各地の寺社に奉納している。同じ滋賀県で前述の浅井長政ゆかりの木之本などでも復活・保存の動きがある。

セイヨウリンゴ

初めて西洋リンゴが栽培された例としては、文久2年(1862年)、越前福井藩主で幕府政事総裁職であった松平春嶽がアメリカ産のリンゴの苗木を入手し、それが江戸郊外巣鴨の福井藩下屋敷にて栽培されていたと残る記録が有名である。またそれより先、安政元年(1854年)に、アメリカからもたらされた「アッフル」が加賀藩下屋敷(板橋宿)にて栽培され、翌年に実をつけたために食用とされたことが、当時の加賀藩士の記録に残っている。藩主(前田斉泰)から「小さな餅に塗って食べるように」と言われて近習らはそのようにしていることから、ジャムにして食したものと思われる。

これらの栽培は、当然ながら藩主直接の手によるものではなく、栽培の能力を持った家臣や屋敷近隣の農家や植木屋が関わっていた。板橋と巣鴨は近隣であり、双方での栽培に関わった人物間の何らかの交流や情報交換があったとも推測される。また福井藩下屋敷では接ぎ木により100本以上の樹が生えていたとされ、当時既にリンゴの株分け・接ぎ木のノウハウがあったとも推測される。また、この福井藩下屋敷の株を、藩と直接関係のない人物が藩邸出入りの植木屋を通して入手した話が伝わることなどから、これら2箇所の藩邸だけにとどまらず、もっと広く栽培されていた可能性がある。この両藩邸のリンゴの株の導入経路はどちらも「アメリカから」と伝わるが、正確な入手経路や品種などは明確になっていない。

明治4年(1871年)に明治政府の命を受けた北海道開拓使の次官黒田清隆と民部省の細川潤次郎は、アメリカから国光など75品種の苗木を持ち帰り渡島国亀田郡七重村(現・北海道七飯町)の七重官園に植栽した。それが広がり出したのは明治7年(1874年)、内務省による配布が始まってからになる。現在の日本国内の主なリンゴ産地のほとんどは、七重官園にその起源を求めることができる。これらの生産がようやく軌道に乗ったのは明治20年代とされ、各産地でのその間の栽培定着の苦労を推測することができる。

接ぎ木の技術によって品種改良が進み、甘味や酸味、歯ごたえなどさまざまな品種が作られるようになった。

生産

リンゴ栽培に適した気候は、冷涼な地域であること、年間降水量が少なめであること、昼夜の気温差が大きいことなどを満たしていることが条件となる。冷涼な環境はリンゴの貯蔵にも適している。

栽培法

リンゴに限らず商品価値の高い果実を収穫するためには、開花直前から開花時期に優位な花を残す「花摘み」、結実後30日程度を目安に実を間引く「摘果」作業が必要である。リンゴには果実に袋をかける有袋栽培とかけない無袋栽培がある。無袋の方が日光が多く当たり糖度も上がるが、ふじ等の一部の品種は果実の色を鮮やかにし商品価値を上げるため有袋栽培を行う。また、有袋栽培には貯蔵性が向上する効果もあり、さび防止のためには遮光度の弱い袋を使用し、着色向上のためには遮光度の強い新聞紙や二重袋などを使用する。名称の頭に「サン」が付くリンゴは無袋で栽培されたことを示し、見栄えは悪いが甘く美味しいリンゴが収穫される。着色には太陽光が大きな役割を果たすため、果実の日当たりをよくするため摘葉および玉まわし(着色具合を均一にするため、樹上の果実を回転させること)、太陽光を反射させるためのシートの敷設などが行われる。これらの作業は農家にとって大きな負担となるため、着色促進剤が使われることもあるが、着色系と呼ぶ色付きの優れた選抜亜種への更新も行われる。省作業になる「葉とらずリンゴ」は摘葉を行わない。樹形は矮性が主流となっている。近年は花粉を媒介する昆虫の減少から人手による人工授粉も広く行われている。または摘花の省力化目的でギ酸カルシウム剤を散布する場合もある。

上記の栽培法で美観のために行う作業は400時間に達することもあるが、人手不足に加え消費者の意識が過度な外観重視から変化していることもあり、このような作業を止める試みもある。

樹形と台木

日本にリンゴ栽培が伝えられたころと同様の伝統的な樹形で栽培する場合、台木は、マルバカイドウ・エゾノコリンゴ (Malus baccata)・ズミ(ミツバカイドウ)が用いられる。

矮性栽培法は、1975年頃より普及が始まった樹高を低くし矮性栽培を行う方法で、リンゴわい性台木と呼ばれる特性を有した台木を使用する。矮性栽培により生産者の肉体的負担の軽減や農薬散布の機械化に大きく貢献した。

多く利用されている矮性台木品種はイギリスのイーストモーリング試験場で収集・開発されたM系台木のM.9、M.26であるが、国内で開発された矮性台木品種では果樹試験場盛岡支場(現・農研機構果樹茶業研究部門盛岡研究拠点)で開発されたJM7をはじめとするJM系台木がある。JM1、JM7、JM8は矮性、JM5は極矮性、JM2は半矮性であり、生産者の求める矮性度合いに応じて選択か可能となっている。JM系台木はM系台木と異なり挿し木発根性が有るため取り木を行う必要がなく、耐水性に優れることから国内の栽培方法に適しており、果実糖度も高くなる特徴がある。

さらに、より高密度での栽培を行い、早期多収、均質生産、作業効率向上をめざした高密植栽培法が世界的に広まりつつある。

また、カラムナータイプと呼ばれる枝が横に広がらず、円筒形の樹形となる品種も存在する。

品種

世界中では約1万5000以上の品種が存在するとみられており、日本には約2000種類あるといわれている。日本の農林水産省に登録されている品種は177種で、うち品種登録が維持されているものは85種。多くの有名な品種は誕生年が古く、品種登録されていない。前述のとおり多くの品種があるものの、国内リンゴ品種は主に7つの起源品種(国光、デリシャス、ゴールデンデリシャス、紅玉、ウースターペアメイン、印度およびコックスオレンジピピン)に由来している。品種の特徴の記述に、早生、中生、晩生といった収穫時期による分類が使われることがある。例えば青森県ではそれぞれ、8月20日頃までを極早生、9月20日頃までを早生、10月20日頃までを中生、それ以降を晩生としている。

「ふじ」

「ふじ」は1962年に青森県藤崎町で誕生し、日本で最も一般的に栽培され、世界において最も生産高の高い品種である。日本国外にも盛んに輸出され、名前も日本語の発音と同じ「Fuji」の名で親しまれている。中国・韓国・北アメリカ・オーストラリアなどでの栽培も多く、世界的にも最も生産量の多い品種であることが2001年に米国人学者達による調査によって確認された。無袋で日光を十分に浴びさせて栽培したものは「サンふじ」の名で出荷される(「サンふじ」はJA全農長野の登録商標)。早い時期に市場に出回る早生(わせ)ふじは同じ糖度の果実であっても甘みや酸味にばらつきがある。見た目は赤く色づいていても「ふじ」らしい食味がないことがある。ふじを品種改良をしたものは、小玉のふじ「姫ふじ(ひめふじ)」のほか「千秋」「こうこう」「シナノスイート」「北斗」「こうたろう」「ハックナイン」など多数である。

クラブリンゴ類

クラブリンゴ類(クラブ・アップル:Crab apple)とは果実の小さいリンゴ属植物の総称。日本では小玉リンゴ姫リンゴといった総称で知られる。

特徴として一般的なリンゴに比べて果実が小さく、直径は 2, 3 cmから大きくても約5 cm程度、重さはわずか数グラムのものから大きくても約150 gほどにしかならない。果実の食味は一般的な林檎に比べて劣っていることから、縁日で売られるりんご飴や果実酒など主に加工用として用いられている。樹勢が小振りなため、街路樹や庭木や鉢植えでの観賞用としても用いられる。加工用として用いられる代表的な品種には「アルプス乙女」「姫小町」「あおもり乙女(ミニふじ)」「彦根りんご」「ワリンゴ」「ドルゴクラブ」などがある。観賞用として用いられる代表的な品種には「エゾノコリンゴ」「ズミ」などがあり、「ヒメリンゴ」の別名を持つ「イヌリンゴ」も観賞用に用いられている。

また「フラワーリング・クラブ・アップル」(Flowering crab apple) という種類は、花の観賞用として品種改良されたクラブリンゴ類である。リンゴ属であるためリンゴに似た 1, 2 cmくらいの赤い小さな実をつけることもあるが、結実しないことも多く、食用には不向き。代表的な品種として「ハナカイドウ」「長崎りんご(ミカイドウ)」「ウケザキカイドウ」「ノカイドウ」などのカイドウ類が知られており、これらは別名「ハナリンゴ」とも称されている。

主要品種と特徴

  • 茜(あかね)- 皮は、赤色。大きさは、比較的小振りで酸味が強い。
  • 北上(きたがみ・きたかみ)- 皮は、赤色。大きさは、比較的小振り。命名の由来は、同名の地名より。
  • 金星(きんせい)- 青森県弘前市で育成された「デリシャス」系統の品種。袋がけ栽培では、果皮は黄色系クリーム色になる。大きさは、比較的大振り。さわやかな香りと酸味がある。命名の由来は、同名の惑星より。
  • 昂林(こうりん)- 皮は、赤色。大きさは、比較的小振り。「ふじ」の自然交配から生まれた品種。
  • スターキング デリシャス - 下が細くなる長楕円形の果実が特徴。果皮は黒味の強い赤色。大きさは、比較的小振りで酸味もあるが甘味が強い。完熟すると蜜入りのものもあるが、貯蔵性が低い。
  • 北斗(ほくと)- 「陸奥」と「ふじ」の交配種で、青森県で育成された品種。皮は、斑模様の赤色。大きさは、比較的大振りで甘味と酸味のバランスが良く甘い。袋がけせずに日光に当てたものは「サン北斗」の名で出荷される。
  • 黄王(きおう)- 「王林」と「千秋」の交配種。果皮が黄色く、その姿から「黄色い王様」→「黄王」と名付けられる。黄白色の果肉でやや硬め。香りが良く、果汁が多くて控えめな酸味が特徴で、甘みにも富んだ味わいとサクサクとした歯ごたえ。
  • シナノレッド -「つがる」に「ビスタベラ」を交配育成した品種。長円形の中玉で、甘みと酸味のバランスがよい。
  • 紅ロマン - 岩手県の江刺リンゴというブランドの新しい品種。程よい酸味があり、真っ赤なのが特徴。
  • 星の金貨(ほしのきんか、品種名:あおり15) -「ふじ」と「あおり3号」の交配種で、正式な品種名を「あおり15」という。「星の金貨」は登録商標で、2005年に青森県で名称登録された。黄色の薄い皮が特徴。「ふじ」より甘みがある。
  • トキ -「王林」に「紅月」を交配育成したとされ、2004年に品種登録された、遺伝子型解析から「王林」と「ふじ」の交配であれば矛盾なく説明できることが分かった品種。400グラム前後あり比較的大きく、やや円錐形で、果皮が黄色い。果汁が多く、甘みと酸味のバランスがよい。10月上旬から収穫できる。
  • さんさ - ニュージーランド国立科学産業研究所において1969年(昭和44年)に農研機構(旧農林省園芸試験場盛岡支場)から送られた「あかね」の花粉を「ガラ」と交配させ生まれた実生。翌年盛岡支場に送られた実生を育成し、「盛岡42号」の系統名で系統適応性検定を受け、1986年(昭和61年)年に農林水産省育成農作物新品種。
  • レッドゴールド - 早生種・10月中旬収穫。蜜が入り、甘味が強く、食味が良い。実は硬めで多汁、250 g前後の円形果。濃い紅色の品種。種子親「ゴールデンデリシャス」×花粉親「リチャードデリシャス」
  • 姫神(ひめかみ)- 種子親「ふじ」x花粉親「紅玉」甘味と酸味のバランスが良く生食にも料理用にもできる。色は濃い赤で蜜が入りやすい。農研機構(旧果樹試験場盛岡支場)が育成。名前の由来は名峰「姫神山」から。
  • ハックナイン - 中生種・10月中旬収穫。甘酸適和で食味良好だが比較的柔らかく多汁。大きさは350 - 400 g程で長円形。果皮は赤色の縞状に着色。種子親「ふじ」×花粉親「つがる」1986年に種苗登録。北海道産りんご品種の第一号。
  • ブレイバーン (Braeburn) - 甘みが強く歯ごたえも良く日持ちもする。甘味と酸味のバランスが良く甘い。皮は、赤色。大きさは、比較的小振り。グラニースミス (Granny Smith) × レディハミルトン (Lady Hamilton) の2種類のリンゴを交配したものと考えられている品種。
  • ピンクレディ (Pink Lady) - レディウィリアムズ('Lady Williams') × ゴールデンデリシャス ('Golden Delicious') の2種類のリンゴを交配した品種。
  • ロイヤルガラ (Royal Gala) - キッズオレンジレッド ('Kidd's Orange Red') × ゴールデンデリシャス ('Golden Delicious') の2種類のリンゴを交配した品種。
  • ジャズ (Jazz) - ブレイバーン ('Braeburn') × ガラ ('Gala') の2種類のリンゴを交配した品種。
  • レッドデリシャス (Red Delicious) - 赤林檎系の品種。日本では単に「デリシャス」と呼ばれることもある。
  • ゴールデンデリシャス (Golden Delicious) - 黄林檎系の品種。'Golden Reinette' × 'グライムスゴールデン' が偶然掛け合わさってできた品種だと考えられている。
  • グラニースミス (Granny Smith) - 青林檎系の品種。Malus domestica × M. sylvestrisが偶然掛け合わさってできた品種だと考えられている。アップルパイを作るのに向いている。
  • ジョナサン(Jonathan、和名:紅玉)- 偶発実生種。強い酸味と滑らかな舌触りを特徴とする中型種。
  • カメオ (Cameo) - レッドデリシャス ('Red Delicious') × ゴールデンデリシャス ('Golden Delicious') の2種類のリンゴを交配した品種。世界一 (Sekai Ichi) の姉妹品種。
  • ブレナムオレンジ Blenheim Orange
  • ジェイムスグリーブアップル James Grieve apple
  • ノビーラセット Knobby Russet
  • シナノリップ - 長野県果樹試験場が開発し、2018年2月に品種登録された品種。「千秋」と「シナノレッド」の交配種。出荷時期が8月中下旬と早く、強い甘みと酸味、果汁の多さが特徴で、高温でも色づきが良く、赤くなる。
  • ブラムリー (Bramley) - イギリス産の品種。果皮は緑色で、甘味は少なく酸味が強い。「クッキングアップル」ともよばれる調理用リンゴで、アップルパイやジャムなどに使われる。
  • 大紅栄(だいこうえい) - 青森県弘前市で作られた品種。大きさは400 - 600グラムになる大玉。果皮が紅色になり、酸味が少なく果汁が多い。
  • シナノピッコロ - 長野県で作られた2006年(平成18年)登録の品種。大きさ縦5センチメートルほどの小玉のリンゴで、甘味と酸味のバランスが良い。
  • しおりの詩 - 青森県で育成された極早生種で、8月中旬に収穫される。果肉がやわらかく、食味はなめらかでさっぱりした酸味がある。
  • シナノドルチェ - 長野県特産の「ゴールデン・デリシャス」と「千秋」の交配種。甘酸っぱくて果汁が多い。

果実

産地

FAO(国際連合食糧農業機関)の統計によると、2013年の世界のりんご生産量は8,080万トンであった。2013年の生産量では中国がトップでアメリカ合衆国、トルコ、ポーランド、インドと続く。

中国

中国ではリンゴの生産が急増しており、世界の5割弱の生産量を占めるに至っている。

2016年時点では、全生産高の約70%が日本で品種改良されたふじである。

中国北部の黄土高原と渤海湾地域は日照時間や昼夜の温度差などの環境条件から、世界最大のリンゴ適地生産区となっている。中国では、生産規模・主要品種・気候条件などにより6つのリンゴ生産区に分けられている。特に主要なリンゴ生産区は渤海湾リンゴ生産区と中部リンゴ生産区である。

渤海湾リンゴ生産区
遼寧省南部・遼寧省西部・山東省東部を中心に、河北省・北京市・天津市などを含めた地域。
中部リンゴ生産区
北緯35度以南の江蘇省から陝西省にかけての地域。
陝西省は2008年ごろから山東省を越え、現在生産量1000万トンを超える中国最大のリンゴ生産省となっている。

中国では特に生食用果樹園と加工用果樹園の区分はなく、生食用として市場で売れなかった分を加工工場に送るのが一般的である。

日本

日本では、1962年(昭和37年)から1971年(昭和46年)の10年間に100万トンを超えたが、価格は低迷し、この時期から減少傾向となっている。

日本国内での主な産地は次の通り。青森・長野の上位2県が、全国生産量のおよそ75%を占め、ミカンとは対照的に冷涼な気候で育つ果樹の代表格である。

  • 北海道 - 収穫量国内8位。余市町は道内トップ。
    • 余市町、仁木町、壮瞥町、増毛郡増毛町、亀田郡七飯町、旭川市など
  • 青森県 - 生産量が最も多く、全国の60%近くを生産。そのうち弘前市で全国の約20%を生産しており、弘前市を含む県西部の津軽平野が一大産地となっており、「つがる」という品種もある。県南東部の南部地方にも大産地があり、「南部りんご」と呼ばれている。
    • 弘前市、青森市、平川市、黒石市、板柳町、南部町、五所川原市、鶴田町、大鰐町、藤崎町、三戸町、鰺ヶ沢町、五戸町、つがる市、田舎館村など
  • 岩手県 - 収穫量国内3-4位。盛岡市は本州りんご栽培の発祥地。江刺りんごは地域団体商標登録。
    • 盛岡市、奥州市、花巻市、紫波町、二戸市、一関市、矢巾町、滝沢市など。
  • 宮城県 - 亘理郡の2町が主産地。
    • 亘理町、山元町など
  • 秋田県 - 収穫量国内5-6位。横手、鹿角、湯沢が主産地となっている。
    • 横手市、鹿角市、湯沢市、由利本荘市、大館市など
  • 山形県 - 収穫量国内3-4位。東根、天童、朝日町が主産地。
    • 東根市、天童市、朝日町、山形市、大江町、中山町、南陽市、山辺町、米沢市、高畠町、村山市、白鷹町など
  • 福島県 - 収穫量国内5-6位。福島市のフルーツラインが主産地。
    • 福島市、須賀川市、会津若松市、伊達市、鏡石町、会津坂下町、石川町など
  • 茨城県 - 大子町で収穫されるりんごは「奥久慈りんご」と呼ばれる。
    • 大子町
  • 栃木県 - 矢板以外にも宇都宮、喜連川(さくら市)、鹿沼市などに産地がある。
    • 矢板市など
  • 群馬県 - 収穫量全国7位。北海道・東北地方を除くと長野県に次いで収穫量が多い。
    • 沼田市、みなかみ町、昭和村、渋川市、川場村など
  • 富山県 - 魚津市の「加積りんご」は地域団体商標登録。
    • 魚津市
  • 山梨県
    • 北杜市、山梨市、韮崎市
  • 長野県 - 収穫量国内2位。全国の約20%を生産。「信州りんご」の名で親しまれる。ほぼ県内全域で栽培されているが、特に以下の地域で栽培が盛ん。
    • 長野市、松本市、須坂市、中野市、安曇野市、山ノ内町、上田市、千曲市、飯綱町、松川町、小布施町、飯田市など
  • 岐阜県 - 飛騨地方で栽培される「飛騨りんご」が有名。高山市や飛騨市などに産地がある。
  • 広島県 - 例年統計をとっている産地では南限。庄原市高野と同市東城町小奴可(おぬか)に産地がある。
  • 山口県 - 山口市阿東町徳佐は経済生産地として南限。

上記の道県以外にも、新潟県佐渡市、石川県金沢市、鳥取県大山町などに小規模な産地がある。

りんごを自治体の花・木に指定していることも多い。

  • 北海道
    • 余市町、釧路町、七飯町
  • 青森県
    • 青森県、弘前市、黒石市、平川市
  • 長野県
    • 長野市、飯田市、飯綱町

貯蔵・保存

生産地

低温倉庫または低温加湿倉庫で保存する。長期保存の場合、低温低酸素高二酸化炭素雰囲気(CA貯蔵)で行われる。

消費者

水分の蒸発を抑えるため、できるだけ密閉し冷蔵庫の野菜室などに入れることが望ましい。

栄養価

果実は、ブドウ糖・果糖・蔗糖などの糖類と、リンゴ酸・クエン酸・酒石酸・コハク酸などの有機酸のほか、ペクチン、フラボノイド(クエルセチン)、ビタミンA・B1・C、プロリンなどのアミノ酸、その他芳香物質を含んでいる。食物繊維やビタミンC、カルシウム、鉄分、カリウムが豊富で、カリウムは高血圧予防によく、食物繊維のペクチンには整腸作用がある。有機酸や糖によるのどの渇き止め、清涼作用の効果と、タンニンがもたらす収斂作用により整腸・下痢止め作用がある。滋養や保健に役立つとされ、食欲増進、消化促進、下痢の予防などの滋養保健に果実を生食するのがよく、常食すれば動脈硬化に役立つといわれている。

「1日1個のリンゴは医者を遠ざける」(An apple a day keeps the doctor away.) という諺があるように、リンゴは栄養価が高い果実として食されてきた。リンゴに含まれるリンゴポリフェノールには脂肪の蓄積を抑制する効果があるともいわれる。生産者の間では広く知られているが、5月から6月に摘果した直径3 cm程度の未熟果の一部は、秋まで土の上で腐らず残っている。この成分はポリフェノールの一種が関係していることが研究の結果明らかになった。

リンゴの蜜

完熟したリンゴの断面中央の種子のまわりに現れる琥珀色の部分はソルビトールという物質で、俗にリンゴの「蜜」とよばれる。蜜の部分は甘くないが、蜜入りリンゴは完熟しているため、全体が甘く感じる。リンゴの品種によって蜜の入り方に違いが見られ、「サンふじ」や「スターキング」は蜜が入りやすく、「ゴールデンデリシャス」や「つがる」は蜜が入りにくい。

利用

日本では95%が生食され、フランスで約60%が加工用、アメリカでは約40%がシードル(リンゴ酒)、ジャム・ゼリー・ジュースに加工されている。

食用

リンゴの果実の表面には薄い皮があり、皮に付着する農薬等の問題や、食べやすさの点から、皮をむいて食べられることが多いが、皮ごと食されることもある。皮むきにはナイフや包丁のほか、回転式のアップルピーラーが用いられることもある。また、リンゴを放射状に切り分けるアップルカッターが用いられることもある。味は酸味と甘みが強い。日本におけるリンゴの収穫は品種によるが9月中旬から11月中旬である。各品種とも収穫期間は約1か月程度と短いが、リンゴは高湿度低酸素状態で冷蔵保存することにより長期の貯蔵(およそ9か月間)が可能である。このため、リンゴの出荷は9月 - 翌年7月ごろまで約10か月間行われほぼ一年中食べることができる。

皮をむいたリンゴの果実は空気に触れると変色する(褐変、かっぺん)。これはリンゴに含まれるポリフェノールが空気中の酸素と結合するために起こる現象である。これを防ぐために古くから知られているのが塩水に晒す方法である 。これは塩素イオンが、ポリフェノールを酸化する際に働く酵素を阻害する作用を持つことを利用したものである。フルーツサラダに加える場合は食塩水に代えて他の果物の缶詰内にある果汁を使用することもできる。最も効果的に変色を防ぐにはレモン汁に晒すとよい。レモン汁に含まれるビタミンCが酸素と結びつき、ポリフェノールと結合した酸素をも奪うため、変色したリンゴも元の状態へと戻すことができる。

生のまま食用にするほか、ジュース(リンゴジュース)やアップルパイ、ジャム、焼きリンゴ、リンゴ酒(シードル、カルヴァドスなど)などにする。リンゴのスライスやプレザーブは製菓・製パン材料ともなる。また、まるごと飴で覆ったリンゴ飴が、縁日の出店などで売られている。ドライフルーツにも加工される。また、サイダー(リンゴ酒、シードル)には、サイダー用の栽培品種があり、サイダーアップル (英: Cider apple) と呼ばれている(例:'Kingston Black', 'Stoke Red', and 'Dymock Red')。このほか、りんごを用いた果実酢としてりんご酢がある。

リンゴの「蜜」は、ソルビトールが多く含まれている。バラ科の植物は、光合成産物のデンプンを篩管を通じて転流するときに、デンプンの加水分解で生じたグルコースをソルビトールに変換する。スターキングデリシャスなど、リンゴの品種の一部では、果実内に転流してきたソルビトールを、グルコースやフルクトースといった糖に変換する代謝系が果実の成熟に伴って停止しても、果実内へのソルビトールの転流は継続する。そのため、果実内の維管束周辺にソルビトールが蓄積していわゆるリンゴの「蜜」と呼ばれる半透明部分を形成し、果実の成熟の指標となる。成熟の過程で蜜が生成されるもので、蜜(=ソルビトール)そのものが特に甘いわけではない。また、蜜が多くても、その実が甘いとは限らない。「ゴールデンデリシャス」「つがる」は蜜ができにくく、「ふじ」「スターキング」は蜜ができやすい。近年市場では蜜入りが好まれるが、長期保管したものは蜜が褐色に変化しやすい。

シラカバ花粉症を持つ人のうち一定割合の人がリンゴやモモなどバラ科の果物を食べた際に舌や咽喉(のど)にアレルギー症状を起こすことが知られている。

加工製品では、保存中に生じるカビが生産する毒素のパツリンに汚染されている可能性がある事から、2003年にりんご果汁について50 μg/kgの基準値を設定された。

薬用

果実は、リンゴ鉄エキス、リンゴ鉄チンキなど、補血剤の製薬原料としても用いられている。1835年、リンゴの木の樹皮からフロリジンが発見されている。同じく木の樹皮から抽出されるキニーネのように、フロリジンは当初解熱薬や抗炎症薬、抗マラリア薬として使用されていたが、後に腎臓の近位尿細管からのブドウ糖再吸収を阻害する作用を持つことが分かった。SGLT受容体の阻害作用による効果であるが、フロリジンはSGLT2選択性が低く医薬品とすることはできなかった。フロリジンの分子構造を改良してSGLT2選択性を高め、副作用を低減した薬剤が糖尿病治療薬のSGLT2阻害薬として2013年3月にFDAに認可された。日本では2014年から初のSGLT2阻害薬としてイプラグリフロジンの販売が始まり、2016年までに6種類の薬剤が流通している。なお、リンゴの果実には血糖を下げる効果はない。

『本草綱目』第30巻においては、果実は小児の閃癖(せんへき)に良いとされていた。

薬用する部位として、果実は林檎、葉は花紅葉(かこうよう)とも称する。民間療法では、胃酸過多、胃アトニー、慢性胃炎、慢性下痢症に、生リンゴ果実1個分をすりおろして食べたり、ジュースにしたり、そのまま食べる。子供は年齢に応じて量を加減する。乳幼児の下痢に、すりおろしたリンゴ果実の果汁を飲ませるとよく、下痢が止まったら母乳、ミルクに切り替えるとよいといわれている。アメリカ北東部のバージニア州周辺では、りんご酢に蜂蜜を加えたものが保健飲料として、昔から飲まれている。あせもには、乾燥させた葉50グラムほどを浴湯料にして布袋に入れて風呂に入れる。

実験

リンゴの果実はそれ自身が熟成するにつれてエチレンガスを多く発生する。そのためエチレンガスを必要とする実験によく使われる。

花の開花実験
まだつぼみの状態の花を2本それぞれ別のビニール袋に密閉し、片方にリンゴの果実を入れる。すると、リンゴを入れた方が先に開花する。
ツバキの落葉実験
葉のついたツバキの茎2本をリンゴの果実と一緒にしたものとそうでないものそれぞれ別の袋に密閉する。すると、リンゴと一緒にした方が先に落葉する。

熟成

キウイフルーツの熟成
キウイフルーツはそれ自身では追熟しないので、リンゴの果実と同じ場所に保管して熟成の促進が行われる(食品総合研究所での研究参照)。その他の追熟しにくい果物(バナナやオレンジなど)も同様である。

このようにリンゴの果実から発生するエチレンガスは植物の熟成を促進するので、促進させたくない場合はそれぞれ別々に密閉して保存する必要がある。ただし、下記のような生育の抑制効果もある。

生育の抑制

ジャガイモの発芽抑制
熟成したリンゴの果実とジャガイモを密閉状態に置くと、リンゴから発生するエチレンガスによりジャガイモの発芽が抑制される。
もやしの生育
熟成したリンゴの果実ともやしを密閉した状態で育てる。リンゴと一緒に育てると太いもやしができ、リンゴと一緒に育てない場合は細くて長いもやしとなる。

神話への登場

聖書
旧約聖書に登場するアダムとイヴが、蛇にそそのかされて食べた「善悪を知る果実」(禁断の果実)はリンゴだとされる。慌てて飲み込もうとしたアダムが善悪を知る果実をのどにつかえさせ、これがのどぼとけの始まりであるとの故事から、男性ののどぼとけは「アダムのリンゴ」ともいわれる。しかし、食べたのがリンゴというのは後の時代に創作された俗説で、旧約聖書の舞台となったメソポタミア地方には当時野生リンゴは分布せず、またその時代のリンゴは食用に適していなかった。また、これはむしろアンズを指すのではないか、という説が有力視されている。
ギリシャ神話
ギリシア神話には、「最も美しい女神に与えられる」といわれた黄金のリンゴを巡ってヘラ、アテナ、アフロディテの3女神が争い、遂にトロイア戦争に至るエピソードがある(パリスの審判)。また、ヘラクレスの12の冒険の中にもヘスペリデスの園から黄金のリンゴを取ってくる話がある。

リンゴに関する歴史的事件

ウィリアム・テル
ウィリアム・テルはヘルマン・ゲスラーの帽子に頭を下げなかったために逮捕され、息子の頭の上の林檎を矢で射るか、それとも死ぬかを選択することになり、一発で見事に林檎を射抜いた、という逸話がある。後にテルがスイス独立運動において英雄とされたことから、この「矢の刺さったリンゴ」というのはスイス人の好きなモチーフの一つであり、イラストなどになって様々な場面で登場する。児童福祉慈善切手に2回、普通切手にもテルの息子と共に登場していた他、1957年に発行され、1980年まで流通した第5次紙幣の最高額面1000フラン紙幣の裏面の地模様として矢の突き刺さったリンゴが描かれていた。また、電話や地下鉄の代用コインにも描かれたものがあった。
万有力学の法則とりんご
近代理論科学の先駆者であるアイザック・ニュートンは、木から落ちるリンゴを見て万有引力の法則のアイディアを得た、という逸話がある(詳細はアイザック・ニュートン#リンゴについての逸話を参照)。なお、この「ニュートンのリンゴ」は「フラワーオブケント」(Flower of Kent) という品種で、生食用ではなく料理用である。最初に「ニュートンのリンゴの木」と言われたものは既に枯れてしまったが、接木をして増やした2世代以降の木は世界各地で21世紀の現在も栽培されている。
1964年、イギリス国立物理学研究所の所長ゴードン・サザーランドから日本学士院長・柴田雄次にニュートンのリンゴの苗木が寄贈されたが、防疫検査により、この苗木はすでに高接病ウイルスに汚染されていることが発覚。一時は焼却処分が検討されたが、学術上貴重なものであること等から例外的に東京大学理学部附属小石川植物園に隔離され、ウイルス除去の研究対象となった。1980年、ようやくこの木からウイルスに汚染されていない接ぎ穂の切り出しに成功。これ以降、ニュートンのリンゴは日本国内各地に移植されている。
ミス・ビードル号とりんご
世界初の日米間太平洋無着陸横断飛行を達成したミス・ビードル号が、日本の淋代海岸(青森県三沢市)を飛び立つ際に地元住民から機内食用として手渡されたものの中に、20個のリンゴがあった。また同機の離着陸地は共に、リンゴの産地でもあり、その縁で三沢市と米国ワシントン州のウェナッチは姉妹都市となった。

リンゴを使った知財

アップル・レコード
英国のロックバンド ビートルズは1968年にレコード会社であるアップル・レコードを設立した。この会社のマークは、日本ではあまりポピュラーではない「グラニースミス・アップル」という品種がモデルである(形は丸ではなく若干横長の楕円形)。アップル・レコード名義のレコードジャケットには一部を除いて、目立つ位置にリンゴマークが描かれており、一目でアップル・レコードと判る。このリンゴマークはポール・マッカートニーが所有するベルギーの画家、ルネ・マグリットの青リンゴの絵がヒントになっている。ちなみにアップル・レコードの影響を受けて、食べ物を題材にしたマークのレコードレーベルが日本にもいくつか設立されている。
アップル(コンピュータメーカー)
コンピュータメーカーであるApple社 (Apple Inc.) は、リンゴを会社のロゴマークとしている(1997年頃までは6色、1999年以降はほとんど単色で用いられる)。「バイト」と呼ばれる右上の囓られた様な跡は、元々「Apple」の社名ロゴが重なっていた部分である。また同社の主力製品であるパソコン「マッキントッシュ(Macintosh、マック)」もリンゴの品種名「McIntosh」(日本名:旭)から採られている(オーディオメーカーの商標と区別する都合で綴りが変えられている)。
三菱・ミラージュ
三菱・ミラージュの初代モデルは、車体スタイルが青りんごのイメージでデザインされたといわれる。

リンゴにまつわる話

  • 青森県が「ふじ」に並ぶ新たな品種として24年間におよぶ歳月をかけて開発した「あおり21」は、2006年3月に登録申請をし、2008年3月に『官報』に載ったが、農林水産省へ登録手数料6,000円を2回にわたり国から期限内に納めるように電話を受けたのにもかかわらず、県の担当者が納めず、同2008年10月17日に登録は抹消され幻の品種となった。これにより登録品種の名称は登録年月日に遡って育成者権の消滅日ともなった。のち2010(平成22)年10月に春明21の名で商標登録を受けている。
  • リンゴの産地である青森県の弘前実業高校藤崎校舎は、「りんご科」という学科を設置している。

ことわざ

  • リンゴが赤くなると医者が青くなる - 英国ウェールズ由来の英語のことわざで、「一日一個のリンゴ、医者知らず」(英: An apple a day keeps the doctor away) である。「一日一個のリンゴは、医者を追っ払う」ともいう。「リンゴをよく食べると健康に良い」という生活の知恵からことわざが生まれた。まれにリンゴがトマトやミカンに変わる。リンゴは昔から栄養的効能がもっとも優れた果実であることが知られ、あるいは代表的な果実として古くから位置づけられてきたことを如実に表わしている。

符号位置

脚注

注釈

出典

参考文献

  • 猪股慶子監修 成美堂出版編集部編『かしこく選ぶ・おいしく食べる 野菜まるごと事典』成美堂出版、2012年7月10日、212 - 213頁。ISBN 978-4-415-30997-2。 
  • 貝津好孝『日本の薬草』小学館〈小学館のフィールド・ガイドシリーズ〉、1995年7月20日、78頁。ISBN 4-09-208016-6。 
  • 鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文『樹皮と冬芽:四季を通じて樹木を観察する 431種』誠文堂新光社〈ネイチャーウォチングガイドブック〉、2014年10月10日、165頁。ISBN 978-4-416-61438-9。 
  • 田中孝治『効きめと使い方がひと目でわかる 薬草健康法』講談社〈ベストライフ〉、1995年2月15日、164頁。ISBN 4-06-195372-9。 
  • 辻井達一『日本の樹木』中央公論社〈中公新書〉、1995年4月25日、196 - 198頁。ISBN 4-12-101238-0。 

関連項目

  • リンゴ油
  • シードル(アップル・ワイン)
  • カルヴァドス(りんごの蒸留酒)
  • ビッグ・アップル(ウォッカとリンゴジュースで作るカクテル)
  • マロン酸(マロンはクリではなく、ギリシア語でリンゴを意味する)
  • ジョニー・アップルシード - 本名は、ジョン・チャップマン。アメリカ合衆国の西部開拓時代に各地を訪問、聖書の教えを説きながらリンゴの種を植えて回った、実在の人物。
  • パツリン - リンゴに生じるカビが生産する毒素。
  • リンゴ病 - 伝染性紅斑の通称。
  • ウッド・アップル
  • リンゴの唄 - サトウハチロー作詞・万城目正作曲の日本の戦後のヒット曲第1号となった楽曲。
  • リンゴの芯抜き
  • ワリンゴ - 日本で古来より栽培されていた品種。
  • ソーダ・アップル - ナス科植物の一種で、南部アフリカ地域原産。リンゴに似た形状の果実を付ける。サポニンを多く含むため、現地では石鹸の代替品として用いられることがある。
  • 青森りんご勲章

外部リンク

  • りんごの技術情報のページ - 農林水産省 農産局果樹・茶グループ
  • りんご研究所 - 地方独立行政法人青森県産業技術センター
  • 青森県りんご協会 - 公益財団法人 青森県りんご協会
  • りんご大学 - 青森りんごTS導入協議会が運営する、りんごについて学べるウェブサイト
  • リンゴ害虫生態画像データベース - 農研機構
  • りんご情報局 - JA全農
  • 『リンゴ』 - コトバンク

Text submitted to CC-BY-SA license. Source: リンゴ by Wikipedia (Historical)



ghbass
 
The website encountered an unexpected error. Please try again later.