『反貞女大学』(はんていじょだいがく)は、三島由紀夫の評論・随筆。『不道徳教育講座』と同系列に属する随筆で、様々な角度から「貞女」、「反貞女」とは何かを、機知、逆説、笑いにあふれた趣で綴りながら、おもに既婚女性向けに生活術的な女性論を展開している作品である。タイトルの『反貞女大学』は、儒教道徳的な『女大学』をもじってつけられた。『反貞女大学』と同様の趣向で男性論となるのが『第一の性』である。
1965年(昭和40年)、『産経新聞』2月7日号から12月19日号まで、「奥さま日曜日です」のコーナーに計45回連載された。単行本は翌年1966年(昭和41年)3月5日に新潮社より刊行された。文庫版はちくま文庫で刊行されている。
「第1講 姦通学」、「第2講 軽蔑学」、「第3講 空想学」、「第4講 平和学」、「第5講 嫉妬学」、「第6講 芸術学」、「第7講 食物学」、「第8講 地理学」、「第9講 社交学」、「第10講 経済学」、「第11講 同性学」、「第12講 整形学」、「第13講 尊敬学」、「第14講 技巧学」、「第15講 栄養学」、「第16講 狂女学」の全部で16項目に分かれ、既成の〈貞女〉観に縛られている女性に対して、生活を楽しむヒントを説いている。
『反貞女大学』は、〈反貞女〉とはどういうものであるかを、その条件などを考察して面白く説いたエッセイであるが、同時代評としては、〈貞女〉観に縛られていた「動脈硬化」的な女性たちの肩を揉みほぐすような意図として受け入れられ評価されている。
田中美代子は、三島が終始一貫し、「見えざる婦徳にしばられた貞女たちに対して、できる限りリラックスして夫の呪縛を放れ、精神的な自由を獲得し、活きいきと生活をたのしむよう」に教授していると解説している。なお、『反貞女大学』が執筆された同時期には、小島信夫の『抱擁家族』などが発表され、夫婦関係が文学的にも社会的にも話題とされていた背景があると広瀬正浩は解説している。
ちなみに三島は、産経新聞連載第32回目の「第11講 同性学{2}」に筆者によるコメントとして、〈連載の途中から突然あらはれるといふのは、気の利かないお化けみたいな出方で恐縮〉としながら、以下のように述べている。
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