斉藤 由貴(さいとう ゆき、1966年9月10日 - )は、日本の女優、歌手、作詞家、ナレーター。本名は小井 由貴(いさらい ゆき)。旧姓は斉藤。
神奈川県横浜市南区出身。東宝芸能所属。所属レコード会社はJVCケンウッド・ビクターエンタテインメント。
斉藤由貴は、1966年9月10日に横浜市神奈川区白楽の産院で生まれた。両親は共働きで、父は元々は家具職人であったが、結婚後に母方の家業である水島帯裁縫店の職人となった。父は礼儀作法や言葉遣いに厳しく、廊下の壁には家訓などの「家のルール」が張られていた。一方母は、娘を束縛しない方針であったようだと斉藤は語っている。自宅は店舗の2階にあり、両親の働く姿を見ながら育ったことが浮き沈みの激しい芸能界で仕事をしていく上での心構えに結びついたかもしれないと、ENCOUNT (2020, p. 3) において斉藤は述懐している。
子供の頃は神経質かつ引っ込み思案で学校に友達が少なかったが、家で鏡に映した自分と、時には物語の登場人物と見立てて話すと不思議にうまく喋れていたことが後の俳優業につながるとともに、そうした閉じこもりがちな生活を心配した家族が、後述する『週刊少年マガジン』のコンテストにスナップ写真を送って応募したのではないかと回想している。高校在学中は漫画研究会の部長を務めていた。
1984年、第1回東宝「シンデレラ」オーディションのファイナリスト。同年の『少年マガジン』(講談社)第3回ミスマガジンでグランプリに選ばれ芸能界入り。同年10月には、明星食品「青春という名のラーメン・胸騒ぎチャーシュー」のCMが話題を呼び、テレビ初登場。翌1985年2月、「時代だって、由貴に染まる。」というキャッチフレーズのもと、キャニオン・レコードより『卒業』で歌手デビュー。同曲はオリコンで最高6位を記録し、約35万枚のヒットとなった。同年神奈川県立清水ヶ丘高等学校を卒業している。
1985年4月放送開始のフジテレビ系『スケバン刑事』で連続ドラマ初主演。『スケバン刑事』が一世を風靡し、一躍トップアイドルへと上り詰める。また同年12月には初の主演映画『雪の断章 -情熱-』が公開され、各映画賞の新人賞を受賞した。
1986年4月からNHK連続テレビ小説『はね駒』のヒロインを演じて平均視聴率40%を記録するヒット作となり、人気と知名度を全国的に定着させ、「国民的女優」と称されるようになる。同年3月にリリースした『悲しみよこんにちは』が約30万枚の売上を記録。年末の『第37回NHK紅白歌合戦』へ初出場し、当時としては最年少の紅組キャプテンを務めた。同年に発売された、7枚目のシングル『青空のかけら』とオリジナル・アルバム『ガラスの鼓動』が、共にオリコン週間チャートでの第1位を獲得した。
1987年1月、ドラマ主演『あまえないでヨ!』(フジテレビ)に出演。スペシャル版が同年9月に放送された。同年8月黒柳徹子の自伝エッセイを映画化した『トットチャンネル』に主演。監督・脚本の大森一樹とは『恋する女たち』(1986年)および『「さよなら」の女たち』(1987年)でもタッグを組んでいる。この“三部作”で東宝青春映画のスターの地位を確立。斉藤は芸術選奨文部大臣新人賞、『恋する女たち』と『トットチャンネル』により第11回日本アカデミー賞優秀主演女優賞を受賞し、司会も務めた。同年6月には、東宝ミュージカル『レ・ミゼラブル』(帝国劇場)の初代コゼット役を演じ初舞台を踏んだ。また、斉藤がテレビで初司会を務めた番組『斉藤さんちのお客さま』(フジテレビ)が(1987年5月1日から同年9月まで)全16回放送された。
1988年、雑誌『月刊カドカワ』で連載『運命の女 ファムファタル』がスタートし(1988年5月号から1996年8月号まで)、女優活動のみならず、詩、小説、エッセイなどの著作も手掛けるようになった。同年7月公開の主演映画『優駿 ORACIÓN』はフジテレビ開局30周年記念作品として制作され、240万人超を動員する興行成績を残す大ヒット作となった。また第12回日本アカデミー賞では『「さよなら」の女たち』『優駿 ORACIÓN』で2年連続優秀主演女優賞を受賞した。
1989年1月、ドラマ主演『はいすくーる落書』(TBSテレビ)に出演。スペシャル版が同年12月放送され、翌1990年7月 - 9月にパート2が放送された。同年4月、主演ドラマ『湘南物語』の主題歌として井上陽水のカバー曲『夢の中へ』をリリースする。オリコン週間シングルチャート第2位、1989年度年間第14位となり、自身最大のヒット曲となった。その後も渡邊孝好監督『君は僕をスキになる』(1989年)、金子修介監督『香港パラダイス』(1990年)、森田芳光監督『おいしい結婚』(1991年)と、数々の映画作品に主演した。
1990年7月、オリジナル・アルバム『MOON』を発表、斉藤自身がプロデュースを初めて行い作詞全曲も担当した(訳詞含む)。楽曲中では斉藤自身のナレーションによる語りも収録されている。作詞家としてもミュージカル『ローマの休日』(1998年上演)に使用された楽曲の作詞を担当(1998年度芸術祭賞受賞)。初演から22年ぶりの再演(2020年上演)でも引き続き、斉藤が作詞を担当した他、東宝ミュージカル『シンデレラストーリー』 (2003、2022年上演 - 作詞担当)や、アーティストへの楽曲提供も行なっている。
1993年10月、主演ドラマ『同窓会』(日本テレビ)に出演。それまでの役柄とは正反対ともいえる役が話題となった。
1995年、三谷幸喜脚本による舞台『君となら〜Nobody Else But You 』(PARCO劇場)に主演。1997年にも再演され、2014年には 竹内結子主演で再々公演された。以後、多くのパルコ・プロデュース作品に出演する。
1998年、映画『雪の断章 -情熱-』から13年ぶりに相米慎二監督、映画『あ、春』に出演。作品は1999年度キネマ旬報ベストテンの第1位に選出されたほか、第49回ベルリン国際映画祭で国際映画批評家連盟賞を受賞した。
2001年、『空のかあさま』(芸術座)で第27回菊田一夫演劇賞を受賞。音楽番組『クリスマスの約束』(TBS)のナレーションを2001年から2016年まで担当したほか、ドキュメンタリー番組など数多くの番組でナレーターを務めている。
2006年5月、 宮藤官九郎脚本の主演ドラマ『吾輩は主婦である』(TBS)ではコメディエンヌ(喜劇女優)ぶりが高い評判を呼び、改めて注目される。『吾輩は主婦である』は、2006年度6月ギャラクシー賞月間賞を受賞。またザテレビジョンドラマアカデミー賞で斉藤は主演女優賞2位、作品賞3位を獲得した。
2008年3月8日、PARCO劇場にて単独では結婚以来13年ぶりのコンサートを開催、チケットは即日完売となり翌日に追加公演を行った。以後コンスタントに歌手活動を再開している。
2010年4月、黒木瞳、高橋克典、斉藤由貴、三上博史、主演ドラマ『同窓会〜ラブ・アゲイン症候群』に出演。2012年4月には韓国版ドラマ『ラブ・アゲイン』も放送された。
2011年2月には、デビュー25周年を機に制作されたニューアルバム『何もかも変わるとしても』をリリース(先行販売は2010年)。これに合わせPARCO劇場にて5日間連続(2月9日から13日まで)「斉藤由貴 25th Anniversary コンサート 〜何もかも変わるとしても〜」が開催され、各日それぞれに特別ゲストが出演した。
2014年、同時期に宮藤官九郎脚本の青春を描く学園コメディドラマ『ごめんね青春!』(TBS)に出演。三谷幸喜が初めて「オンナ」同士のバトルを描いた舞台『紫式部ダイアリー』(PARCO劇場)に長澤まさみと二人芝居で共演し、全公演のチケットが即日完売となった。
2015年2月21日に歌手デビュー30周年を迎え、3月11日には1985年のデビュー以来初の試みとなるジャズスタンダードを選曲したアルバム『ETERNITY』を発表。3月13日から15日までシアタークリエ(東京・日比谷)で「斉藤由貴30th Anniversary Concert」を開催した。本公演は前売り全席が早々に完売、カメラ席や関係者席を開放後も即完売、当日券も即売となった。
2016年1月、三谷幸喜脚本のNHK大河ドラマ『真田丸』に出演(大河ドラマの出演は1995年の『八代将軍吉宗 』以来2度目となる)。12月24日には「第42回ラジオ・チャリティー・ミュージックソン」を25年ぶり2度目のパーソナリティ一を務めた。
2017年1月、ドラマ『お母さん、娘をやめていいですか?』(NHK)では、第7回コンフィデンスアワード・ドラマ賞助演女優賞を獲得し、同年6月、第8回岩谷時子賞「岩谷時子 特別賞」を受賞した(岩谷訳詩の『レ・ミゼラブル』日本初演ではコゼット役を演じ、2012年の『シャンソンde越路吹雪/ラストダンス』では、岩谷時子役を熱演している)。同年7月にはドラマ『カンナさーん!』(TBS)で初のおばあちゃん役を演じた。
2018年2月、是枝裕和監督映画『三度目の殺人』(2017年)での演技が評価され、32年前の新人賞(『雪の断章 -情熱-』)以来のブルーリボン賞助演女優賞受賞となった。斉藤本人は、こんなに年月が経ってからまたもらえるのが夢のような思いがけないプレゼントだとスピーチした。また、第27回東京スポーツ映画大賞助演女優賞も受賞した。
2019年1月、フジ系連続ドラマ『スキャンダル専門弁護士 QUEEN』に出演。斉藤が同局の連続ドラマに出演するのは、1989年の主演作『LUCKY! 天使、都へ行く』以来30年ぶりとなる。同年には三谷幸喜の映画では初参加となる『記憶にございません!』(東宝)、恩田陸の短編小説の映画化『蜜蜂と遠雷』(東宝)、常盤司郎監督、長編映画デビュー作『最初の晩餐』(KADOKAWA)など話題作に相次い出演している。
2020年3月、映画『最初の晩餐』(2019年 常盤司郎監督)で第34回高崎映画祭の最優秀助演女優賞を受賞した。作品は4部門受賞の最多受賞を達成。同年8月、歌手デビュー35周年を記念した「斉藤由貴 the live 2020」がBillboard Live YOKOHAMAにて、11月(12日-14日)には斉藤由貴35th anniversary concert「THANKS GIVING」が東京建物 Brillia HALLにて開催され、公演、最終日の模様は生配信された。
2021年1月、第32回『日本ジュエリーベストドレッサー賞』50代部門を受賞した。2月21日デビュー記念日には、『卒業』から11作連続でシングルの編曲を手掛けた武部聡志プロデュースによるデビュー35周年記念セルフカバーアルバム『水響曲』がリリースされ、3月と4月には「斉藤由貴〜Billboard Live Tour "水響曲" featuring 武部聡志〜」が開催された。チケットがすべて即完売となったことを受けて、追加公演も急遽行われた。
2022年9月、東宝ミュージカル『シンデレラストーリー』が初演(2003年)から17年ぶりに再演された。引き続き斉藤が作詞を担当した楽曲が使用される。なお、主演には斉藤の長女である水嶋凜(加藤梨里香とダブルキャスト)が務めた。また、水嶋は舞台初日である9月6日に斉藤のアルバム『チャイム』収録曲「予感」をカバーして歌手デビューを果たした。
2023年、デビュー記念日である2月21日には、12枚目のオリジナル・アルバム『何もかも変わるとしても』(2011年にデビュー25 周年を記念して制作された)を再リリース。10月4日には全曲作詞を斉藤が担当した通算10枚目のオリジナル・アルバム『LOVE』が、アナログ版にて初リリースされる等、改めて評価されている。また年末には、毎年恒例のX’mas liveをBillboard Live他で行っている。
若手時代はセーラー服とポニーテールの似合う清楚な少女として支持を集めた。ミスマガジン・グランプリらしく、フォトジェニック性の高いビジュアルの清純派と評され、少年誌でのグラビア露出をはじめとするメディアミックス戦略によりブレイクした。特に中高生のティーンエイジャー層に非常に人気があり、カセットテープブランドの『AXIA』のイメージキャラクターに起用され、若者層の支持を集めた。
中学時代は、三島由紀夫やレーモン・ラディゲ、ジャン・コクトー、萩原朔太郎などを愛読しており、映画監督ではルキノ・ヴィスコンティやベルナルド・ベルトルッチなどの耽美主義的な作品を好んだ。デビュー当時は「知的アイドル」と称され、斉藤の音楽プロデューサー的な立場であった編曲家の武部聡志は、薬師丸ひろ子と共に、斉藤を「文学系アイドル」と評した。自身による作詞やア・カペラの作品を出すなど、他のアイドルとは一線を画す独自のアイドル像を築いた。作詞家の松本隆は、彼女は文学少女であり、たまたまアイドルになったが小説家や詩人としての才能も物凄いと斉藤を評した。
デビュー当時から自らのマンガ・イラスト好きを披露するなど、アイドルとして異質の感性はサブカル世代の共感を呼んだ。中学時代は『アニメージュ』などの雑誌を購読しており、『機動戦士ガンダム』などのサンライズ系アニメを夢中になって見ており、特にシャア・アズナブルの大ファンであったという。そうしたアニメのキャラクターをきっかけに、クラシック音楽やルネサンス美術について学んだこともあったと語っている。
音楽面ではアコースティックで詞の情景が浮かぶような映像的な作品が多く、弦のアレンジやシンセサイザーの音作りには武部の好んだプログレッシブ・ロックのニュアンスが盛り込まれている。斉藤の歌声は凛とした中に透明感があり、単なる"女優さんの歌"にとどまらない魅力があった。ポニーキャニオンでの担当ディレクターであった長岡和弘は、歌手デビュー前のレッスンで『待つわ』『悪女』『時をかける少女』『夏の扉』の4曲を、主人公の気持で歌ってと言って斉藤に歌わせたところ、『夏の扉』になると"歌えません"と言い出したといい、「『待つわ』の女の子にも『悪女』にも気持としてはなれても『夏の扉』をイメージできない。そうするとあっ、この手の歌は彼女は駄目なんだなってわかるわけです」と語り、斉藤の内面や個性を尊重するディレクションを行った。
i☆Risの芹澤優は姪(実姉の娘)にあたる。母方の祖父は日本聾唖協会横浜部会の創立に奔走した水島吉男で、妻が経営する帯の仕立てを手伝い、夫婦共に聴覚障害者の職人として上皇后美智子の婚礼に用いられる帯の仕立てを受注した。母方の叔母はNHKの手話キャスターも務める手話通訳者の田中清。
趣味・特技は作詞、イラスト、読書、詩を書くことなど。血液型はB型。
3児の母である。長女は「水嶋凜」の芸名で2021年に女優デビューした。
『別冊宝島』の調査によると、1980年代の年間ベスト50位以内ランクイン曲数4曲と当時の女性アイドル中8位であった。
アイドル時代に仲の良かった芸能人は、映画『恋する女たち』で共演した同い年である高井麻巳子であった。一緒にニューヨーク旅行などもしており、その際の珍道中を、斉藤の対談番組で高井の夫の秋元康が楽しそうに暴露したことがある。高井本人も『斉藤さんちのお客さま』や、斉藤の著書『由貴的世界感情旅行』(角川書店)のあとがきに寄稿している。また斉藤の著書『私の好きなあの人のコト』(新潮社)に、高井の結婚にまつわるエピソードを含めた様々な話題が書かれている。
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