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野菜


野菜


野菜(やさい、英: vegetable)は、食用の草本植物の総称。水分が多い草本性で食用となる植物を指す。主に葉や根、茎(地下茎を含む)、花・つぼみ・果実を副食として食べるものをいう。

定義

野菜は一般には食用の草本植物をいう。ただし、野菜の明確な定義づけは難しい問題とされている。たとえばイネとトウモロコシは、日本においてはイネは野菜ではなく穀物であり、トウモロコシは野菜であると同時に穀物である。

園芸学上において野菜とは「副食物として利用する草本類の総称」をいう。例えばイチゴ、スイカ、メロンは園芸分野では野菜として扱われ、農林水産省「野菜生産出荷統計」でもイチゴ、スイカ、メロンは「果実的野菜」(果菜)として野菜に分類されている。青果市場ではこれらは果物(果実部)として扱われ、厚生労働省の「国民栄養調査」や日本食品標準成分表でも「果実類」で扱われている。また、日本食品標準成分表において「野菜類」とは別に「いも類」として扱われているもの(食品群としては「いも及びでん粉類」に分類)は一般には野菜として扱われている。また、ゼンマイやツクシといった山菜については野菜に含めて扱われることもあり、木本性の植物であるタラの芽やサンショウの葉も野菜の仲間として扱われることがある。さらに、日本食品標準成分表において種実類に分類されるヒシなども野菜として取り扱われる場合がある。

日本では慣用的に蔬菜(そさい)と同義語となっている。ただし、「蔬菜」は明治時代に入ってから栽培作物を指して用いられるようになった語で、本来は栽培されたものではない野菜や山菜などと厳密な区別があった。しかし、その後、山菜等も栽培されるようになった結果としてこれらの厳密な区別が困難になったといわれ、「野菜」と「蔬菜」は学問的にも全く同義語として扱われるようになっている。そして、「蔬菜」の「蔬」の字が常用漢字外であることもあって一般には「野菜」の語が用いられている。なお、野菜は青物(あおもの)とも呼ばれる。京浜急行には「青物横丁駅」がある。

代表的な野菜

分類

需要部位による分類

野菜は食用とする部位(需要部位)の違いから、一般に根を食用部位とする根菜類、地下あるいは地上の茎を食用部位とする茎菜類、葉や葉柄を食用部位とする葉菜類、花序や花弁を食用部位とする花菜類、未熟果や熟果を食用部位とする果菜類に分けられる。

  • 根菜類(根もの野菜)
    • ダイコン、カブ、ラディッシュ、ニンジン、ゴボウ、レンコン、ジャガイモ、サトイモ、サツマイモ、ヤマイモ、百合根、クワイ、ビーツ、ヤーコン、ニンニク、ショウガなど。
  • 茎菜類(茎もの野菜)
    • タマネギ、アスパラガス、ウドなど。
  • 葉菜類(葉もの野菜)
    • キャベツ、コマツナ、ミズナ、ハクサイ、チンゲンサイ、タアサイ、レタス、シュンギク、チコリ、トレビス、エンダイブ、ホウレンソウ、ハクサイ、ニラ、ネギ、ワケギ、ミツバ、モロヘイヤ、パセリ、ミツバ、シソ、クウシンサイ、ツルムラサキなど。
  • 果菜類(実もの野菜、成り物野菜ともいう)
    • トマト、ナス、カボチャ、ニガウリ、トウガン、シロウリ、ピーマン、パプリカ、シシトウガラシ、キュウリ、ズッキーニ、オクラ、スイカ、イチゴ、トウモロコシなど。
  • 花菜類
    • ミョウガ、カリフラワー、ブロッコリー、食用菊、アーティチョークなど。

なお、日本ではこのほかの分類法として総務省「日本標準商品分類」では根菜類、葉茎菜類、果菜類の3つに分類され、農林水産省「野菜生産出荷統計」では根菜類、葉茎菜類、果菜類、果実的野菜、香辛野菜の5つに分類されている。

科による分類

植物学的に属する科に注目すると、その野菜の特徴がみえてくる。同じ科どうしの野菜であれば、見た目や味、栄養価が似ているほか、栽培する上での基本的な育ち方が似通っている。

  • アブラナ科
    • キャベツ、コマツナ、ハクサイ、タアサイ、チンゲンサイ、ブロッコリー、カリフラワー、ダイコン、カブ、ミズナ、菜花など。
  • セリ科
    • ニンジン、セロリ、パセリ、ミツバ、アシタバ、フローレンスフェンネルなど。
  • ウリ科
    • キュウリ、カボチャ、スイカ、ニガウリ、ズッキーニ、トウガン、シロウリなど。
  • ヒガンバナ科ネギ亜科
    • タマネギ、ネギ、ワケギ、ニラ、ニンニク、ラッキョウ、リーキなど。
  • ナス科
    • ナス、トマト、ピーマン、パプリカ、トウガラシ、シシトウガラシ、ジャガイモなど。
  • マメ科
    • インゲン、エンドウ、枝豆(ダイズ)、ラッカセイなど。
  • アオイ科
    • オクラ、モロヘイヤなど。
  • キク科
    • レタス、シュンギク、ゴボウ、食用菊、アーティチョーク、チコリ、トレビス、エンダイブ、金時草、ヤーコンなど。
  • ショウガ科
    • ショウガ、ミョウガなど。
  • ヒルガオ科
    • サツマイモ、クウシンサイなど。
  • シソ科
    • シソ(大葉)、エゴマなど。
  • イネ科
    • トウモロコシ、タケノコなど。
  • キジカクシ科
    • アスパラガス
  • サトイモ科
    • サトイモ、ハスイモなど。
  • ヒユ科
    • ホウレンソウ、オカヒジキ、ビート、スイスチャードなど
  • ゴマ科
    • ゴマ

品種

同じ野菜名であっても、種類によってはさまざまな品種が作られているものもあり、個々に品種名がつけられている。品種名には、産地の名前が由来となっているもの、地域で特別に名付けたもの、品種改良を行った人物や種苗会社が名付けたものなどさまざまである。品種名がそのまま商品名(商標名)となったり、同じ品種でも産地によって異なる商標名になることもあり、地域の特産品になるとブランド名として独自の名前をつけることもある。

野菜にはF1品種(雑種第一代)とよばれるものがある。F1品種は、異なる品種を人工的に交配して、病気に強い・形が揃いやすい・栽培期間が短いなどの長所となる特性を持たせたもので、流通している野菜の多くはF1品種だといわれている。F1品種の特性は一代限りのため、種を取って翌年栽培しても一代目と同じ特性の野菜には育たない。そのため、F1品種は種苗会社が種を作り、栽培農家が毎年その種を購入する必要がある。

固定種在来種とよばれる野菜は、長い年月をかけて優良な個体から種を取り、特性を固定していくことでできた品種である。遺伝的にも安定しており、地方によっては多くの固定種が作り継がれていった。現在、地方の伝統野菜とよばれている品種は、こうした受け継がれて栽培されたことによって、その地域の在来種となったものである。

緑黄色野菜と淡色野菜

野菜は栄養面で見ると、可食部分のカロテン含有量の違いによって緑黄色野菜と淡色野菜に分けられる。日本の厚生労働省では「原則として可食部100g当たりカロテン含量が600μg以上の野菜」を緑黄色野菜と定義している。緑黄色野菜は色が濃い野菜が多く、ホウレンソウ、ニンジン、カボチャなどがその代表例である。トマトやピーマンなどは、この基準に入らないが、食べる回数や量が多いことから緑黄色野菜とみなされている。また、緑黄色野菜以外の野菜は、淡色野菜である。

西洋野菜と中国野菜

日本において明治時代以降に欧米から導入されたブロッコリーなどを西洋野菜(洋菜)という。また、日本において中国から1970年代以降に導入され普及したチンゲンサイやパクチョイなどを中国野菜という。

高原野菜

夏でも涼しい標高1,000メートル前後の高原で栽培される野菜類を高原野菜(こうげんやさい)または高冷地野菜(こうれいちやさい)という。明治以降、長野県の軽井沢において避暑に訪れる外国人客向けとして栽培が始まった。その後各地に広まり、ハクサイやキャベツ、レタスなど、40を超える種類の野菜が高原野菜として栽培されている。

食材

野菜には旬があるが、近年では品種改良・作型の改良(ハウス栽培など)・輸入野菜の増加によって、旬以外の時期でも市場に年間を通して供給されるようになった。またこれらの影響か、近年の野菜の味は昔よりも薄くなったと感じている人もいる。需要形態が変化してきており、カット野菜(切断されて部分的に販売される野菜)や冷凍野菜も利用されるようになっている。ただし、カット野菜は切断面が大きい分、野菜の呼吸量も大きくなるため、品質の落ちるスピードも速くなってしまうという難点がある。

古来食材としては、野菜類はどの文化圏においても副菜としての性格が強く、主食はコメやコムギといった炭水化物を摂取するための穀物であり、またタンパク質に富む肉や魚がごちそうとして扱われるのに比べ、野菜類がメインとなることは少なかった。野菜類がメインとなる場合も、うま味を供給する肉や魚、油や調味料と組み合わせて使用されることが常である。また野菜類の作物としての比重も高くなく、古代にはこうした野菜類は栽培するのではなく、食べられる野草を採集してくることも多かった。これは野菜類にエネルギー源やタンパク質に富むものが少なく、栄養源としてはそこまで必要性が高くなかったことによる。やがて生活が豊かになるにつれて食生活に彩りを添えるために各種栽培野菜の開発が各地で進められていくが、野草採集も食糧供給源としては存続し、現代においても山菜として食卓をにぎわせている。

宗教・文化的理由もしくは主義として肉食を避ける人は、一般に菜食主義者と呼ばれるが、これは「野菜のみを食べる人」という意味ではない。菜食主義者の食事においてもメインとなるものはエネルギー源となる炭水化物を多く含む穀物やイモ類、およびタンパク質に富む豆類であり、野菜は副菜としての位置づけにあることには変わりがない。

なお、主食となる穀物は野菜に含めないことが多いが、それを主食としない文化圏では野菜として扱われることがある。たとえば、穀物であるトウモロコシは日本などでは野菜に含まれ、欧米でも米が野菜に含まれることがある。

調理法

野菜は、洗う、切るといった下ごしらえを調理の直前に行うのが基本である。根付き野菜は、水につけて洗うことによって根元付近に付着した泥が落ちやすくなる。灰汁が強い野菜の場合は、下処理として水や酢水、焼きミョウバン水などにつけて灰汁抜きをする。キュウリやオクラ、ニガウリのように、塩をまぶして揉むことで食感が良くなる野菜もある。野菜を切るときは食べやすく味や食感を考えて、輪切り、角切り(さいの目切り)、千切り、千六本、小口切り、拍子切り、短冊切り、半月切り、いちょう切り、かつらむき、みじん切り、くし形切り、細切り、斜め切り、乱切り、ささがきなど、料理に合わせたさまざまな切り方がある。

サラダなどで生で食べる野菜は、加熱で失われやすいビタミンなどを効率よく摂ることができる。生野菜のみずみずしさ、香り、爽やかな歯ごたえは加熱野菜では得られない魅力がある。一方、野菜を加熱調理にも特有のおいしさがあり、加熱によって失われる栄養素もあるが、かさが減ることで食べる量でカバーできるので、結果的に加熱した方が多くの栄養を摂ることができる。

焼く場合は直火・オーブン・フライパンで焼くなど方法があり、野菜表面の水分が抜けて素材の旨味も凝縮されて、かさも減るため生野菜よりも多く摂ることができる。蒸すと野菜が元来持つ旨味や栄養分を損なわずに加熱できる。油炒めは、脂溶性ビタミンのビタミンAやビタミンDの吸収率を上げる調理法で、短時間で炒めるとビタミンCの損失量も少なくなる。煮る場合は、煮汁まで食べたほうが栄養を無駄なく摂取できる。油で揚げると野菜の水分が適度に抜けて甘味が出る。クセの強い野菜は油で揚げると食べやすくなるため、山菜や苦味のある野菜に向いている調理法である。茹でるときは、葉野菜はたっぷりの湯を沸騰させて短時間で茹で上げるようにする。根菜は水から入れてじっくりと加熱し、デンプン質が多い芋類は、加熱に時間をかけることによって糖質がふえて甘くなる。電子レンジは、固めの野菜でも短時間で加熱調理できる方法で、野菜全体をラップに包んで水分が抜けて乾燥するのを防ぐ。電子レンジで加熱すると、ガスレンジで加熱するよりも短時間で火が通り、ビタミンの損失が少なく済むというメリットがある。

野菜に含まれるビタミン・ミネラル類の中でも、調理で最も失われやすい栄養素はビタミンCである。ビタミンCは水溶性ビタミンであり、水にさらす時間が長いほど減少してしまう。例えばニンジンを千切りにして水に5分さらすと、ビタミンCが30%ほど減少する。また、ゆで時間が長くなるほどビタミンCの損失量が多くなる。野菜を煮るときは、野菜を大きめに切ったほうがビタミンCは失われにくくなる。体内で必要に応じてビタミンAに変化するカロテンは、脂溶性ビタミンであっるため、油で調理することでより吸収されやすくなる。緑色が濃い緑黄色野菜を色鮮やかに仕上げるには、加熱時間を短くして、酢などは食べる直前に加えるなどの配慮が必要になる。野菜のえぐみ、渋み、苦味などのアクは、灰分、有機酸、タンニン、アルカノイドなどである。野菜によってアクに違いがあり単純ではないが、大半は水溶性のため、茹でたり、水にさらすことによって減らすことができる。ホウレンソウのようにアクが強いものは、下茹でや電子レンジ加熱後に水にさらしてアク抜きしてから使われる。

漬物は調味料で味をつけるとともに、野菜から水気を引き出し、保存性を増すことができる調理法である。低塩分で手軽につくれる浅漬け、野菜に塩を振って重石して保存性を高める塩漬け、精米の副産物のぬかを微生物で発酵させて野菜を漬け込んだぬか漬け、酢・水・砂糖を煮溶かした甘酢に漬け込んだ甘酢漬け、ハーブやスパイスで香り付けした酢に漬け込んだピクルスなどがある。

野菜料理

野菜料理 とは、野菜を主体とした料理である。調理法は温野菜、生野菜にわけられ、肉料理魚料理などに対置して使われる。野菜も他の食材と同じく、基本的には火を通すなど何らかの加工をして食用とするものであった。このため、おひたしや和え物、炒め物(野菜炒め)、煮物、蒸し物、揚げ物(天ぷらなど)など様々な調理法が開発された。こうした加熱法のほか、野菜の調理において非常に重要だったものは漬物としての利用である。多くの野菜、特に葉物野菜は日持ちがしないが、塩などで漬け込み漬物とすれば非常に長持ちするため、保存食として価値が高く、世界各国において様々な野菜の漬物が考案された。こうした加工利用に比べ、野菜の生での食用が一般化したのはかなり遅い時代のことだった。とりわけ日本においては、肥料に下肥を用いていたこともあり、加熱等の加工処理が必須だったために野菜の生食は非常に遅れ、一般家庭において野菜の生食であるサラダが一般化したのは1970年代中期を待たねばならなかった。

栄養価および機能性成分の効果

食物に含まれる栄養素の中でも重要なタンパク質、脂質、炭水化物、ビタミン、ミネラルは五大栄養素とよばれ、中でも野菜はビタミンとミネラルを手軽に摂取しやすい食材である。品種改良が進んだ現代の野菜も、本来の生育時期は決まっており、その野菜の特性と栽培地の環境の中で自然に収穫を迎えたものが旬となる。本来の旬の時期に収穫した野菜は、もっとも味がよくなり、栄養価も高くなる。例えば、冬場に旬の時期を迎えるホウレンソウは、夏に収穫したものではビタミンC量が3分の1程度しかない。

野菜の多くは無機塩類やビタミン類、食物繊維のほかに、抗酸化物質を含むファイトケミカル(フィトケミカル)が豊富で、免疫力を上げて体内を浄化する働きがあり、癌予防を含めた各種健康維持に役立っている。ファイトケミカルとは、植物に含まれる色素や香り、灰汁などに含まれる植物自体が有害な物から防御するための物質で、ポリフェノール類、フラボノール、カテキンなどが相当する。

食物繊維

ヒトの消化管は自力ではデンプンやグリコーゲン以外の多くの多糖類を消化できないが、大腸内の腸内細菌が嫌気発酵することによって、一部が酪酸やプロピオン酸のような短鎖脂肪酸に変換されてエネルギー源として吸収される。野菜に含まれる食物繊維の大半がセルロースであり、人間のセルロース利用能力は意外に高く、粉末にしたセルロースであれば腸内細菌を介してほぼ100%分解利用されるとも言われている。デンプンは約4kcal/g のエネルギーを産生するが、食物繊維は腸内細菌による醗酵分解によってエネルギーを産生し、その値は一定でないが、有効エネルギーは0~2kcal/gであると考えられている。また、食物繊維の望ましい摂取量は、成人男性で19g/日以上、成人女性で17g/日以上である。食物繊維は、大腸内で腸内細菌によりヒトが吸収できる分解物に転換されることから、食後長時間を経てから体内にエネルギーとして吸収される特徴を持ち、エネルギー吸収の平準化に寄与している。

ファイトケミカル

野菜に含まれるファイトケミカル(フィトケミカル)には、ポリフェノール類とカロテノイド類がある。

ポリフェノール類は化学構造上の分類で、フェノール基に水酸基(OH)が2つ以上たくさんついている物質のことをいう。植物の色素やアクとよばれている苦味成分のほとんどはポリフェノールである。光合成によって生成されるといわれ、光の当たる部分には特にたくさん含有されている。含有している野菜としては、赤タマネギ、紅芋、ダイズなどがよく知られる。ポリフェノールの主たる機能は抗酸化作用であり、がん予防や血中コレステロールの酸化を防いで動脈硬化を予防する働きがあるとされる。ポリフェノール類の生理作用は個々の物質によって異なるさまざまな作用があり、その効用は数時間内といわれる。

  • アントシアニン - 紫キャベツ、紫芋、赤ジソ、インゲンマメなどに含まれる野菜の赤紫色や青紫色の色素成分で、抗酸化作用や目の働きによいといわれる。
  • イソフラボン - ダイズなどに含まれる。女性ホルモンに似た働きをし、骨粗鬆症予防、更年期障害によいといわれる。
  • セサミン - ゴマなどに含まれる。血中コレステロールを下げる働きがあるとされる。
  • ショウガオール - ショウガに含まれる辛味成分で、抗菌作用、食欲増進作用がある。
  • カテキン - 殺菌作用がある。
  • ルテイン - 毛細血管を強化する。

カロテノイド類は、主として植物に含まれている赤色から黄色の色素成分で、カロテン類とキサントフィル類に分けられる。基本的に植物だけが作り出せる成分である。カロテン類には、αカロテン、βカロテン、γカロテン、リコペン(リコピン)などがあり、人間の体内でレチノールという物質に変換されてビタミンAとして作用する。レチノールに変換されないカロテン類は、抗酸化作用を発揮する。また、キサントフィル類にはアントシアニン、ルテイン、アスタキサンチン、クリプトキサンチン、カプサイシンなどがあり、これらはビタミンAとして働かないが、抗酸化作用を発揮して、がん予防や老化防止に役立つと考えられている。

  • リコペン - トマト、スイカ、金時人参などに含まれる赤色色素成分でカロテンの1種。抗酸化作用がある。
  • カプサイシン - 赤トウガラシ、赤ピーマンなどに含まれ、抗酸化作用がある。
  • ルテイン - ホウレンソウ、コマツナ、ケールなどの緑黄色野菜に含まれる黄色の色素成分。抗酸化作用が高く、眼病予防にも良いといわれる。
  • クリプトキサンチン - 赤ピーマンに含まれるオレンジ色の色素成分。柑橘類、カキ、パパイヤ、アンズなどの果物にも含まれる。

イオウ化合物は、アメリカ国立癌研究所 (NCI) が中心となって研究したデザイナーズフーズの上位に、ニンニクやキャベツ、タマネギがランクされたことから注目されるようになった生理機能成分で、特有の臭いを発する。

  • 硫化アリル - ネギ、タマネギ、ニラ、ラッキョウなどに共通して含まれる刺激臭のある成分で、ビタミンB1の吸収を助け、炭水化物の代謝を活発にする働きがある。また、血液の粘度を下げる働きがあるといわれ、血栓を予防するともいわれている。
    • アリシン - 硫化アリルの一種でニンニクやネギ臭の素になる成分。生ニンニクにはアイリンという無臭成分が含まれているが、空気に触れるとアリシンに変化する。ビタミンB1の吸収を助け、血栓予防、貧血予防、血中コレステロール値の上昇の抑制のほか、強力な抗酸化作用が知られている。
  • イソチオシアネート - キャベツ、ブロッコリーなどアブラナ科野菜に特異的に含まれる臭い成分。遺伝子が傷ついた細胞増殖の抑制、発がん性物質の活性化の抑制、抗菌作用のほか、女性ホルモンと似たような働きをすると言われている。

がん予防の可能性

野菜は、果物とともに癌予防の可能性が大きいものとされている。

野菜などで変異原性物質Trp-P-1(3-amino-1,4-di-methyl-5H-pyrido[4,3-b]indole)に対して抗変異原性を示すものは次のようなものがある。

  • 抗変異原性++++:ダイコン(葉)、キクナ、アスパラガス、ピーマン、キュウリ
  • 抗変異原性+++:ニラ、ハクサイ、ゴボウ
  • 抗変異原性++:ネギ、ホウレンソウ、パセリ、レタス、ズイキ、ニンジン、ショウガ、サツマイモ、ラディッシュ、ナス、キャベツ、ブロッコリー、シイタケ
  • 抗変異原性+:チンゲンサイ、コマツナ、セロリ、レンコン、カブ、ダイコン(根)、オクラ、ウリ

野菜などで変異原性物質NIHP(2-ヒドロキシ-3-(1-N-ニトロソインドリル)-プロピオン酸)に対して抗変異原性を示すものは次のようなものがある。

  • 抗変異原性++++:トマト、タマネギ
  • 抗変異原性+++:ナス、キャベツ、ブロッコリー、ニンジン、ダイコン(根)、エノキ、シメジ
  • 抗変異原性++:アスパラガス、シイタケ
  • 抗変異原性+:コマツナ、トウガラシ

キャベツ、ブロッコリー、ゴボウ、ナス、ショウガ等に強い抗変異原性があることが知られている。加えて、エストラゴン、オレガノ、ギョウジャニンニク、シロザ、タイム、ツクシ、フキノトウ、モミジガサ、レモンバームの野菜類9種にもTrp-P-1に対して強い抗変異原性があり、キク科、シソ科、アブラナ科、セリ科の植物に抗変異原性があるものが多い。

2007年11月1日、世界がん研究基金とアメリカがん研究協会によって7000以上の研究を根拠に「食べもの、栄養、運動とがん予防」が報告されている。(詳細は「食生活指針」を参照のこと)

成人病予防

野菜は果物とともにアルカリ性食品に分類されている。(詳細は、酸性食品とアルカリ性食品を参照)

腎臓に障害がなくカリウムを摂取しても問題がなければ、カリウムを豊富に含む野菜や果物の摂取を増やすことにより血圧の降圧が期待できる。

21世紀における国民健康づくり運動(健康日本21)では、望ましい野菜の摂取量は成人1人1日あたり350g以上とされている。日本人の平均ではこの目標に対して8割程度の摂取量にとどまっており、若年層においては7割~6割程度にとどまっている状況にある。平成24年の調査では20歳以上の日本人の平均野菜摂取量は、286.5g/人日であった。所得と生活習慣等に関する状況の調査においては、所得が高いほど野菜摂取量が多く、所得が低いほど野菜摂取量が低い傾向が見られた。

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生産

2010年度における野菜の最大生産国は中華人民共和国であり、一国で世界の半分以上の生産量があった。2位はインドで、以下アメリカ合衆国、トルコ、イラン、エジプトの順となっている。中国は世界で最も野菜畑の面積が広いが、野菜の反収が最も高い国はスペインと大韓民国である。

野菜は一般的に貯蔵性が高くないため、農家が自給的に生産して余剰分を市場に供給することが多く、商業的に生産される場合は消費地の近くで生産されることが多かった。しかし都市の急速な拡大によって都市近郊の野菜生産地が都市化していったことや、輸送手段・貯蔵手段の発達によって遠隔地でも野菜栽培が採算に乗るようになったことから、野菜生産は都市から離れた地域でも行われるようになった。また、葉や実を利用し貯蔵性が低い関係上供給はその植物の収穫期に限定され、旬が短く時期によって左右されたものが野菜生産であった。その後、温室やビニールハウスなどの技術革新によって野菜は一年中供給されるようになった。

近年では、巨大なハウスを造りコンピュータ制御でその中の環境をコントロールし高い生産性・採算性で野菜を生産するオランダのような国が出現している。オランダはトマトを、本場であるイタリア向けも含めてヨーロッパ各地に大量に輸出するほどになっている。

また最近では、野菜を植物工場で生産する事例も、まだ生産量は少ないものの徐々に増えてきている。閉じた空間、害虫や雑菌の影響が少ない空間において、LED照明やコンピュータで制御された空調や養液補給などによって、気候・天候の影響をほぼ受けずに安定的に野菜を生産する方式である。雑菌や害虫が少ないため無農薬栽培が可能で、栄養価や規格の統一も容易であるなど利点も多いが、生産コストが高く採算を取るのが難しいなど課題も多く残っている。

歴史

現代において世界で栽培される野菜の多くは、中国、インドから東南アジア、中央アジア、近東、地中海岸、アフリカ(サヘル地帯及びエチオピア高原)、中央アメリカ、南米のアンデス山脈の8地域を起源としている。これらの地域は農耕文明の発祥地と重なっている。また、もともとの生息域が広く、栽培化地域が複数にまたがっている野菜も多い。中国においてはハクサイ、ネギ、ゴボウが、インドから東南アジアにおいてはキュウリやナス、サトイモ、中央アジアではダイコン、ニンジン、タマネギ、ホウレンソウ、ソラマメなどが栽培化されている。近東地域ではレタスやニンジンやタマネギが栽培化されている。地中海岸は野菜の一大起源地であり、キャベツやエンドウマメ、アスパラガスやセロリが栽培化されている。アフリカのサヘルからエチオピア高原にかけては、ササゲやオクラなどが栽培化された。中央アメリカにおいてはインゲンマメやサツマイモ、カボチャが栽培化された。南アメリカ・アンデスにおいては、トマトとジャガイモ、それにトウガラシやピーマン、カボチャの栽培化が行われた。こうした中心地のほか、世界各地で野草採集から発展した独自の野菜が栽培されており、各地独特の食文化の重要な要素となっている。

日本における歴史

日本においては、フキやウド、ミツバなどのように日本原産の野菜も存在するが、ほとんどの野菜は日本列島の外で栽培化されたものが持ち込まれたものである。

その移入の歴史は古く、すでに縄文時代の遺跡である福井県の鳥浜貝塚においては、ゴボウ、カブ、アブラナ、リョクトウ、エゴマ、シソなどの種子が出土し、栽培されていたと考えられている。この発見は弥生時代の稲作伝来以前からすでに農耕が開始されていたこと、および縄文時代にすでにはるかな遠隔地で栽培化されていた野菜(カブやアブラナは地中海沿岸、エゴマやシソやリョクトウはインド原産)が伝来しており、大陸をはじめとする広範囲な移動がすでに行われていたことを示した。

このほか、1世紀ごろまでにはゴマ、サトイモ、ニンニク、ラッキョウ、ヤマイモ、トウガンなどがすでに伝来しており、古墳時代にはナス、キュウリ、ササゲ、ネギが伝来した。

古事記や日本書紀にはカブやニラの、万葉集では水葱(なぎ、現代のミズアオイやコナギ)やジュンサイ、ヒシ、セリ、瓜(マクワウリ)などの記述が存在する。このほか、現代ではあまり野菜としては使用されない水葱や羊蹄(しのね、現代のギシギシ)なども使用されていた。

その後も日本に伝来した野菜があり、レタスも8世紀には「萵苣」(わきょ/ちしゃ)という名前で日本に伝来している(玉状のものは明治になってからの伝来)。

江戸時代に入り、平和が続き経済が成長すると野菜の需要も高まり、特に一大消費地である江戸の周辺では大量の野菜が栽培され都市へ運び込まれるようになった。小松菜や練馬大根などのように、地名をつけブランド化する野菜が現れ始めたのもこのころのことである。

こうした傾向は江戸に限ったことではなく、京野菜や加賀野菜をはじめ、各地で特色ある野菜が開発され定着したのも江戸時代のことであった。明治時代に入ると文明開化の潮流とともにタマネギやトマト、キャベツをはじめとする西洋野菜が多く流入し、日本の野菜はより多様なものとなった。

スーパーマーケットでは外観を重視し、変形が見られるものは「規格外」として取り扱わず、「訳あり」などとして格安で売られるか、採算が取れないと農家が判断し廃棄されることもあった。消費者の意識が過度に美観を重視する姿勢から変化していることもあり、外観を規格に合わせるための栽培法を止める試みもある。

野菜の安全性

野菜は人間が長年かけて改良し続けて、長い間食べ続けられてきた植物なので、それなりに安全性は確保できていると考えてもよい。しかし、野菜の安全性に関してまだ結論が出ていないこともたくさんあり、新しく作り出された野菜の品種や遺伝子組み換え作物などは、必ずしも安全性が確かめられているわけではなく、未知のリスクの可能性も指摘されている。なるべく健康的な食生活を送るためにも、なるべく多くの種類の野菜を適量摂ることが、今最も安全な野菜の食べ方といわれている。

野菜を生産するうえで、人間以外の昆虫などの動物から受ける被害を抑止する目的で農薬が使用されるが、農薬の残存化学物質は人間にとっても癌などのリスクがあるので好ましいものではない。農薬を使用しなければ、地球上の人類を養うだけの農作物の生産量は確保できないと言われており、農薬を正しく用いる農法がふつう一般に行われている(これを慣行栽培という)。先進国のように農薬の製造や使用が適正に規制されている国では、癌を含む疾病のリスクについて、農薬を正しく使用している限りは害はないと考えてもよいといわれている。しかし、農薬が適正に使用されていない状況でつくられた野菜については、人体に害はないという前提条件が崩れてしまう。しばしば「野菜には残留農薬の危険があるから、よく洗ってから食べる」という意見も見かけられ、ていねいな水洗いや加熱調理が野菜についている残留農薬を減らすことになるのは間違いではないが、先進諸国において野菜を洗うことによって農薬の害が低減するといった科学的根拠のある研究結果はほとんど発表されていない。

野菜の安全性で注目されるのようになったものに、原則として農薬や化学肥料を使わずに栽培された有機農産物(有機野菜)がある。有機野菜は栽培法による分類で、日本のJAS法では厳密な規定により認定を受けたものだけが有機野菜と表示することができるため、流通量が極めて少ないのが現状である。有機野菜は農薬が残留している可能性は低いが、残留農薬がゼロであることまでは保証していない。有機野菜の特徴は「安心して食べられる」という点において一般に高い評価を得ているが、科学的根拠のある研究結果はほとんどない。

有機野菜に変わって増えてきたものに、農林水産省(農水省)のガイドラインに示されている無農薬野菜減農薬野菜がある。農水省のガイドラインは、第三者による認定を必要とせず、違反しても罰則規定がないので、本当に無農薬かどうかまではわからないという問題が指摘されている。また農水省とは別に、各自治体や生産者団体が独自にガイドラインを設けて、無農薬・減農薬生産と表示をしているケースもある。農水省のガイドラインは平成16年4月に改定され、無農薬野菜と減農薬野菜という分類が特別栽培野菜という表記に統一されている。

世帯の野菜消費量が少なくなるなかで、外食産業を中心に利便性を考えてあらかじめ下処理された野菜であるカット野菜の生産量が増えてきている。カット野菜は手軽で便利というメリットがある反面、丸のままの野菜よりもカット工程などが増えるので、雑菌に触れやすく傷みやすい性質上、多くは次亜塩素酸ナトリウム溶液で殺菌してある。その後は水洗いしてあるので、食べる人の健康を害するほど残留していないが、とても傷みやすいことには変わりないので、消費期限を厳守して封を開けたら早めに使い切ることが肝要になる。

放射線照射野菜で知られるものに、発芽防止目的で使用されているジャガイモがある。放射線を当てた食品が放射能を持つことはなく、健康に害を与えるようなこともないとされている。ジャガイモの芽に含まれるアルカロイド (PGA) による食中毒リスク、輸入スパイスに付着する病原菌リスク、食品保存に使われる燻蒸の発がん性リスクを軽減するために用いられているのが放射線照射である。また放射線を当てることによって殺菌効果が高められるため、食品が腐りにくくなるという特徴もある。

遺伝子組み換え作物は遺伝子操作によってつくられた野菜であるが、それを食べた人の遺伝子に影響を与えるようなことはない。遺伝子がつくる物質はタンパク質であるため、そのタンパク質が人の健康に害を及ぼすかどうかが、遺伝子組み換え作物の安全性の評価となる。遺伝子組み換え作物のタンパク質が人の健康を害するという研究結果はほとんどなく、スターリンクというトウモロコシのタンパク質がアレルギーを起こす可能性があるという研究があるため、スターリンクについては食品として許可されていないのが現状である。遺伝子組み換え作物については、大企業の利益になっても一般市民の利益は何もないという指摘もあるため、遺伝子組み換え作物の必要性について意見が分かれるところであるが、その安全性について現段階では害は認められていないことから安全であるといわれている。

脚注

注釈

注釈

参考文献

  • 猪股慶子監修 成美堂出版編集部編『かしこく選ぶ・おいしく食べる 野菜まるごと事典』成美堂出版、2012年7月10日。ISBN 978-4-415-30997-2。 
  • 金子美登『有機・無農薬でできる野菜づくり大事典』成美堂出版、2012年4月1日。ISBN 978-4-415-30998-9。 
  • 講談社編『からだにやさしい旬の食材 野菜の本』講談社、2013年5月13日。ISBN 978-4-06-218342-0。 

関連項目

  • 野菜の一覧
  • 農産物
  • 果物
  • 野菜料理
  • 遺伝子組み換え作物
  • 生産・流通
    • 有機農家
    • 農業協同組合 - 農産物直売所
    • 中央卸売市場
    • 八百屋
    • 有機農業 - 有機農産物 - 残留農薬
    • 野菜生産出荷安定法 ‐ 生産量が多い指定野菜などを安定して供給するための法律。
  • 野菜に関連するトピック
    • 家庭菜園
    • ベジタブル&フルーツマイスター
    • ど根性野菜
    • 野菜嫌い
    • 農林水産省
    • (独)農畜産業振興機構
    • 8月31日 - 野菜の日
  • 品種改良前の野菜もしくは陸上の未栽培の植物食品
    • 救荒植物
    • がん予防研究

外部リンク

  • 野菜に関する紹介(独立行政法人農畜産業振興機構)
  • 野菜の情報(独立行政法人農畜産業振興機構)
  • 果実及び野菜 - (オレゴン州大学・ライナス・ポーリング研究所)
  • 『野菜』 - コトバンク
  • 野菜のページ - 農林水産省
  • 品種登録データ検索 - 農林水産省
  • 野菜もぐもぐ

Text submitted to CC-BY-SA license. Source: 野菜 by Wikipedia (Historical)