『文豪ストレイドッグス』(ぶんごうストレイドッグス)は、朝霧カフカ(原作)、春河35(作画)による日本の漫画作品。『ヤングエース』(角川書店→KADOKAWA)より2013年1月号から連載中。公式略称は「文スト」。
太宰治、芥川龍之介、中島敦といった文豪がキャラクター化され、それぞれの文豪にちなむ作品や、ペンネームなどの名を冠した異能力を用いて戦うアクション漫画である。
主要な登場人物はほとんど全員が文豪と同じ名前と誕生日。各自の能力や人物設定も文豪自身のエピソードや作品にちなんだものが多い。
この作品が生まれたきっかけについて、原作者の朝霧は「文豪がイケメン化して能力バトルしたら絵になるんじゃないかと、編集と盛り上がったから」と述べている。また、舞台が横浜市になったことについては作画担当の春河が自分が横浜の出身であるからとのこと。
全国書店員が選んだおすすめコミック2014で第11位。2023年9月時点でシリーズ累計発行部数は1300万部を突破している。
2014年4月1日より、小説版の刊行が開始されている。『小説屋sari-sari』2015年10月号から2016年1月号まで、外伝小説『文豪ストレイドッグス 外伝 京極夏彦VS綾辻行人』が連載された。『ヤングエースUP』では、2015年12月22日からスピンオフ漫画『文豪ストレイドッグス わん!』がかないねこの作画で連載。
2017年2月19日に行われたイベントにて、同作の舞台化と完全新作の劇場アニメーション作成が発表された。舞台は2017年12月より公演、劇場アニメーションは2018年3月3日に上映。
2017年5月17日、公式サイトにて初のスマートフォンアプリの制作が発表され、ティザーサイトが公開され、2017年11月に配信された。
2019年12月26日発売の『月刊少年エース』2020年2月号から2022年1月26日発売の3月号まで、小説『文豪ストレイドッグス BEAST』のコミカライズが星河シワスの作画により連載された。2022年9月26日発売の同誌11月号より、小説『太宰、中也、十五歳』のコミカライズが同じく星河の作画により連載されている。
孤児院を追放され、ヨコハマを放浪する少年・中島敦は鶴見川で入水していた太宰治を助ける。それをきっかけに敦は太宰が所属する異能集団・武装探偵社が追う「人食い虎」の捜索を手伝うことになり、太宰と共に虎の出現を倉庫で待つことになる。そのとき、太宰は敦こそが虎の正体だと告げる。実は敦は無意識のうちに異能力、「月下獣」で虎に変身して徘徊しており、それゆえに孤児院を追い出されていたのだ。敦は自分の能力を制御出来ず、虎に変身して、太宰に襲いかかるが、太宰は相手の能力を無効化する異能力「人間失格」を発動して、敦を鎮静化させ、さらに敦が武装探偵社に入社出来るよう尽力する。
入社試験を経て武装探偵社に入社した敦だったが、なぜか海外の異能者団体から莫大な懸賞金が敦にかけられていた。ヨコハマの港を縄張りにするポートマフィアの構成員芥川龍之介はその懸賞金目当てに敦を執拗に狙うが、部下の泉鏡花の裏切りもあって、敦に逃げられてしまう。
今から4年前。ポートマフィア最下級構成員の織田作之助は、ポートマフィア幹部・太宰治、ポートマフィア情報員・坂口安吾とともに、バーで飲みながら、いつもの夜を過ごしていた。しかし、その日を最後に安吾が消息を絶つ。織田作は、ボス・森鴎外から直々に命令を受け、安吾捜索に乗り出す。同じ頃、海外の犯罪組織「ミミック」が入国し、その後ミミックの迎撃の命令が下される。織田作は、養っていた孤児たちを目の前で殺され、一人で敵陣へ乗り込む。しかし、それは、森の策略で、ポートマフィアが特務課と取引をし、異能開業許可証を手に入れるためだった。織田作はミミックの首領であるアンドレ・ジイドとの戦いの末、特異点を発生させるが相討ちになり、太宰に人を助ける側になれと言い残し死亡。ミミックとの抗争は幕を下ろした。
芥川が敦の身柄を確保することに失敗したことを知った組合(ギルド)団長、フランシス・スコット・キー・フィッツジェラルドは自らヨコハマに乗り込み、敦の身柄と願いをかなえる「本」を手に入れるため、横浜を完全に廃墟とする計画を実行に移す。ヨコハマを守るため、武装探偵社とポートマフィアは一時的に手を結び、敦と芥川がフィッツジェラルドに立ち向かう。圧倒的な戦闘能力を誇ったフィッツジェラルドだったが、2人の攻撃でバランスを失い、空中要塞白鯨から落下して行方不明となる。さらに鏡花の捨て身の攻撃で白鯨も横浜の市街地から離れた海に落下する。
今から8年前。森鴎外は、先代ボスを殺める。その時、遺言の証言者としてその場にいたのは、太宰治だった。それから1年。今から7年前。ヨコハマの擂鉢街で、先代ボスが現れたという情報を耳にしたポートマフィアボス・森鴎外は、15歳の少年・太宰治に調査を命じる。太宰は擂鉢街に出向き、調査を進めるが、そんな彼に「羊の王」・中原中也が襲いかかる。「アラハバキ」について話せと言う中也。しかし二人は、突如爆発に巻き込まれる。太宰がその中で見たのは、先代ボスの姿だった。太宰と中也は、先日同じ爆発に巻き込まれたというポートマフィアの森派・蘭堂の元へ向かう。しかし、自分が見たのは先代ではなく、アラハバキだったと証言する蘭堂。そこから二人は、黒幕は蘭堂であると推理する。蘭堂は自身の異能で先代を使役していた、異国からの諜報員・アルチュール・ランボーだった。そして、中也はアラハバキそのものであり、ランボーが中也を外の世界に出したことも判明。ランボーと先代、太宰と中也で戦いを繰り広げ、結果的に、太宰と中也がランボーを殺害し事件は幕を閉じた。そして、中也は圧倒的な戦闘能力とポートマフィアと事件を追っていたがために羊の仲間たちから不信感を抱かれ、ポートマフィアに入ることになる。
死の家の鼠頭目フョードル・ドストエフスキーは崩壊した組合の資産を強奪すると同時に、武装探偵社・ポートマフィアを共に殲滅させるための計画を実行に移し始めていた。彼の計画により、武装探偵社とポートマフィアは全面抗争に突入する。抗争は、夏目漱石によりもたらされた情報により死の家の鼠の異能者を逮捕し、さらにフィッツジェラルドの協力によりドストエフスキーを逮捕したことで終結した。
異能特務課に研究のため一頁だけ切り取られて保管されていた白紙の文学書の力により、武装探偵社は犯罪組織、天人五衰に仕立てあげられる。福沢・太宰は逮捕され、他の社員も軍警に追われる中で一時はばらばらになるが、乱歩の活躍と探偵社を信じた人間の協力によって再集結を果たし、真の天人五衰の計画を知ってそれを阻止する為に動き出す。異能刑務所ムルソーに収監された太宰は、同じく収監されていたドストエフスキーと頭脳戦を繰り広げる一方、天人五衰の一人であるシグマが運営する天空カジノに侵入した敦達は、軍警特殊部隊の猟犬からカジノを守ろうとするシグマを救い出すも、突如現れたホーソーンにシグマは撃ち落とされ、彼の確保に失敗した。
乱歩は猟犬隊長の福地桜痴に協力を仰ぐが、福地こそが天人五衰の首領であり、敦と、太宰の指示で同じ船に潜入していた芥川は、福地に戦いを挑む。福地を後一歩まで追い詰めたところで芥川が斬られ敦は何とか逃走するも、残る天人五衰のメンバーであるブラム・ストーカーの異能で、世界中に吸血種化した人類が送り込まれ、世界は混乱と疑心暗鬼に陥る。精神支配の異能兵器《大指令》によって吸血種化した軍隊を操ろうとする福地と、それを阻止すべく探偵社が空港で戦闘を繰り広げる中、たまたま居合わせた文はブラムから真相を聞き、彼を連れて逃走を図る。しかし、吸血種化した芥川に見つかり、敦達を誘き寄せる罠に使われてしまう。そんな中、福地は、福沢と交戦し、《大指令》を使用する。あと数秒で世界が滅ぶことを知った文は、命懸けでブラムに刺さる聖剣を抜き、福地に奪われていた権能を取り戻したブラムと乱歩が交渉して吸血種による世界侵攻は阻止される。福地の真の目的は、「平和」だと言い当てた福沢は福地に「わしを斬れ」と言われるが、燁子が福沢の代わりに福地を殺し、事件は終結した。
特記がない限り、声の項はアニメ版の声優、演の項は実写版の俳優を指す。
『ヤングエース』2013年9月号に、本作品の特別企画として小説家綾辻行人をキャラクター化したイラストが掲載された。能力は相手を偶然不運な死に陥れるというもので、能力名は綾辻の作品に因んだ「Another」。
単行本3巻発売時には京極夏彦がキャラクター化され、POPなどとなり全国の書店に提出されている。能力は相手に憑物を落とし、落ちた憑物に応じて精神を病ませるもので、能力名は京極の作品シリーズの『百鬼夜行シリーズ』の登場人物・中禅寺秋彦の職業に因んだ「憑物落とし」。キャラクター化された綾辻と対決する漫画も公開された。
コラボレーション企画第3弾として、ダン・ブラウンがキャラクター化された。能力は無意識に詠まれる三行韻詩の解読により、33分後の未来を予測可能となる「インフェルノ」。
乙女パズルゲーム『ラヴヘブン』と2014年にコラボレーションイベントの開催が発表され、2014年9月10日メンテナンス終了後 - 2014年10月22日 メンテナンス入り前の期間中に『文豪ストレイドッグス』のキャラクターが『ラヴヘブン』に登場する。コラボレーションイベントをクリアすると、イベント限定キャラクター「中島敦」「宮沢賢治」が入手でき、「太宰治」「国木田独歩」「江戸川乱歩」がコラボ限定召喚キャラクターとして登場する。
2016年4月には『ラヴヘブン』とテレビアニメ版『文豪ストレイドッグス』のコラボレーションイベントが開催。2016年6月27日から7月21日にかけては『ラヴヘブン』とテレビアニメ版『文豪ストレイドッグス』のコラボレーション第2弾が開催。
2016年10月に【18】(エイティーン)キミト ツナガル パズルと「文豪ストレイドッグス」とのコラボが決定した。
2017年1月に「夢色キャスト」とのコラボがニコニコ生放送にて発表された。
このほか10カ所以上の文学館で、関連した企画展が開催されている(神奈川近代文学館、与謝野晶子記念館、谷崎潤一郎記念館、さいたま文学館、高知県立文学館、新宿区立漱石山房記念館など)。
2016年3月より角川文庫とテレビアニメ版『文豪ストレイドッグス』のコラボレーションで、作中に登場するキャラクターが、そのモデルとなった文豪が書いた小説のカバーに登場し、2019年4月中旬までに16作がラインナップ。『文豪ストレイドッグス外伝 綾辻行人VS.京極夏彦』コミカライズを担当した泳与によるコラボカバーの江戸川乱歩作品2作も2019年2月・3月に登場。
2015年8月にアニメ化が発表され、TOKYO MXほかにて第1シーズンが2016年4月から6月まで、第2シーズンが同年10月から12月まで放送された。第2シーズンからは放送局にWOWOWプライムが追加され、それに先駆け9月には第12話までを一挙に放送。第14話以降は「アニメプレミア」枠で他局よりも約1週間先行放送された。また、第2シーズンの第13話から第16話までは小説『太宰治と黒の時代』を映像化した「黒の時代」編が放送された。第3シーズンは2018年7月21日に行われた劇場アニメの凱旋上映会内にて制作が発表され、2019年4月から6月まで放送された。劇場版の入場者特典である小説「太宰、中也、十五歳」を映像化した「十五歳」編からの放送となる。2021年11月開催のイベントでは第4シーズンの製作が発表され、2023年1月から3月まで放送された。第5シーズンは2023年3月に制作が発表され、同年7月から9月まで放送された。
関連メディアとして、後述の劇場版のほか、2017年8月に、原作単行本13巻限定版付属のOVAとして、第25話「独り歩む」が映像化された。
アニメ化の企画は、原作第1巻が発売された辺りから動き始めた。本作品のプロデューサーを務める倉兼千晶の隣の席の社員に、『ヤングエース』の担当者から「文豪ストレイドッグス」が持ち込まれたことから企画が始まった。当時男性向けライトノベルなどのアニメ化を担当していた倉兼が、『文豪ストレイドッグス』のような作品も担当してみたいと言い続けていたことで担当することとなった。制作会社については、「異能力バトルならボンズ!」ということからボンズに打診された。
『文豪ストレイラヂヲ』のタイトルで音泉より配信された。2016年2月14日にプレ放送、3月6日に第0.5回、4月7日から2017年1月12日まで隔週木曜日に配信。パーソナリティは上村祐翔(中島敦 役)が務める。
2021年7月に行われ、300人が投票に参加した「宮野真守が演じた人気キャラクターランキング」では、『夜神月「DEATH NOTE」』や『刹那・F・セイエイ「機動戦士ガンダム00」』らを凌ぎ、太宰治が1位を獲得した。
『文豪ストレイドッグス わん!』のテレビアニメ化作品が2021年1月から3月までTOKYO MXほかにて放送された。
テレビアニメ第2シーズン終了後の2017年2月19日に開催されたファンイベント「迷ヰ 犬達ノ宴 其ノ弐」にて、完全新作の劇場アニメの制作が発表され、2018年3月3日に『文豪ストレイドッグス DEAD APPLE』(ぶんごうストレイドッグス デッドアップル)のタイトルで公開された。全国74館で上映された映画は、4DX含め170館以上に拡大公開され、興行収入5億5000万円をあげた。
アニメのファンイベント「迷ヰ犬達ノ宴 其ノ弐」にて舞台化が発表された。通称「文ステ」。
『映画 文豪ストレイドッグス BEAST』(えいが ぶんごうストレイドッグス ビースト)のタイトルで、2022年1月7日に公開された。銀役の紺野彩夏、孤児院の院長役の南圭介以外のキャストは舞台版から続投する他、脚本は原作者の朝霧書き下ろしで「中島敦と芥川龍之介の所属組織が逆だったら」を描く“もしも”のストーリーとなる。
以下の出典は『KADOKAWAオフィシャルサイト』(KADOKAWA)内のページ。書誌情報の発売日の出典としている。
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