『かりあげクン』は、植田まさしによる日本の4コマ漫画作品。
2016年、第45回日本漫画家協会賞・大賞を受賞。2020年には連載開始40周年を迎えた。
1989年にはフジテレビ系列でテレビアニメ化された。
2023年1月期にBS松竹東急にてテレビドラマ化された。
いたずら好きのサラリーマン「かりあげクン」ことかりあげ正太が巻き起こす騒動を描く。開始当初から流行・時事ネタやブラックジョークを題材としてきたことで知られている。時事ネタ以外では鉄道と麻雀に関連する作品が多く、前者は通勤電車はもちろんのこと新幹線や夜行列車を舞台にしたネタが頻繁に登場したほか、連載開始当初はキセルやストライキに関するネタが多数登場していた。
1971年にデビューして以来漫画家として売れつつあった植田のもとに、双葉社から短期集中連載のオファーが寄せられたことが本作の連載のきっかけである。 元々、植田の漫画は登場人物たちが大騒ぎするような作風ではなかったため、編集者から主人公が目立たないという指摘が寄せられた。 これを受け植田は「一番目立たない感じで目立つ」というコンセプトの元、主人公を刈り上げ頭の人物にすることを思い立ち、本作の主人公・かりあげ正太となった。また、普段表情をあまり変えないかりあげが心情を吐露するとキャラクターが崩壊するため、かりあげと行動を共にする同僚がかりあげの気持ちを表現するキャラクターとして生み出された。
そして、本作は1980年より双葉社から発行された雑誌『漫画アクション』で『ほんにゃらゴッコ』という題名で連載が開始された。この時は題名に「かりあげクン」の表記はなく、かりあげが全く登場しない作品もあった。のちに本作は『ほんにゃらゴッコ かりあげクン』と改題された。
1999年からは、『まんがタウン』および『まんがタウンオリジナル』に移行し、『週刊大衆』でも連載された。『まんがタウン』では巻末に2色カラーで掲載されており、2009年2月号で連載1500回を迎えた。また、2010年には連載終了した『クレヨンしんちゃん』に代わって一時期だが『まんがタウン』の表紙中央を飾り、連載30周年記念企画として総集編『かりあげクンBLACK・PINK』も刊行された(単行本と同じカバー付きのA5版)。単行本は双葉社から発売されている。2023年12月、『まんがタウン』の休刊により、『漫画アクション』への移籍を発表、翌2024年4号から移籍連載を開始。
前述の通り、開始当初から当時の流行や時事ネタを題材としてきたが、植田は近年ではどぎつい風刺や時事ネタなどをあまり使わなくなってきたとインタビューの中で話しており、前者については社会の規制が強くなったためだと分析しており、「昔と比べ、当時は風刺のつもりで描いていても、現代だとそれが“攻撃”だとか“差別”だとかに捉えられてしまう。[中略]そんな現代、風刺ものを描く人は相当にやりづらいでしょうね」と話している。植田は後者について、単行本化するまでにネタが古くなり、読者が理解できなくなるためだと述べており、普遍的な面白さを目指しているとも話している。
本作は登場人物は連載当初から年を取らない方針で物語が進められており、作中風景や小道具なども時代の流れとともに変化している。衣輪晋一は時代の変化が物語に影響を及ぼした例として携帯電話やスマートフォンの登場を挙げており、通信技術の発達によって木村課長がかりあげと連絡が取れずやきもきするドラマ性が薄れてしまったと指摘している。
かりあげが勤める企業。企業形態は商社となっており(アニメ版初期は『ほんにゃら商事』となっていた。後述)、食用油や接着剤の輸入取引を行っている描写がある。なお、「足踏み式餅つき機」や「尻形ガスコンロ」(尻に火がつくのことわざに因んだもの)など独特な新製品を開発しているシーンもある。
現在の社長は木下藤吉。原作では2代目であるが、祖父の時代から続く3代目、もしくは初代から一代で築き上げたという設定もあり、詳細はあやふやとなっている。アニメ版では会社を一代で築き上げたという設定になっており、「ほんにゃら商店」という貧相な小屋からのスタートであった。かりあげに「なりきん」と評されている。
親会社が存在し、ライバル意識を燃やしている。しかし、社会人野球の対抗戦では試合はとうに諦めて弁当売りに社長自ら精を出していた。会社主催のゴルフ大会では優勝者にはトロフィーを授与するものの、2位にはトロフィーの蓋などかなり落差のある内容だった。
子会社もあり、1つは成長してほんにゃら産業と同じ規模の会社になったらしく、木村課長のようにヒゲを生やした社員や、かりあげみたいなふざけた社員がいるなどでかりあげはクローン会社と呼んでいる。これ以外にも全国にいくつか支社(大阪、富山、新潟、山形など)がある他、日本国外(ニューヨーク)に支社もある。大阪支社は遠近法で高層ビルに見えるという変わった建築構造をしている。
経営は常に右肩下がりのようだが、福利厚生は充実しており、毎年社員旅行や社内運動会が開かれている。また、野球部やボート部など社会人チームを多く設けている。テレビCMを放送したこともあるが、プロ野球中継の実況席に無断で自社の看板を掲げた(かりあげが職員に取り押さえられている描写がある)だけという、CMとは言い難いものだった。しかし後に一社提供番組のスポンサーとなっている。
自社ビルを保有しているが老朽化が激しく、一時期高層ビルに建て替える構想もあったようだが頓挫している。至る所で雨漏りがする、周囲に高層ビルが立ち並んで日が当たりにくい、入社希望の社員が集まらずかりあげをクビにして入社試験を受けさせるなど、惨めなエピソードには事欠かない。とはいえ、21世紀以降は設備の近代化が進み、ノートパソコンや分煙のための喫煙室、ロボット掃除機なども設けられるようになった。
社内には労働組合があり、毎年春闘が行われている。かりあげも労組に所属しているが、労使交渉の際には(自分だけ給料を上げてもらいたいため)社長側に付くこともありまじめに活動をしない。給料と思いきや支給される出前の品の交渉だったり、不景気で勝つ見込みがないと参加者が出ないなど大した成果は上げていない。
連載が長期に渡っているため、社会情勢の変化に伴い自然消滅した設定も多い(かりあげがパソコンが苦手である、木下社長に従軍経験があったり関東大震災を経験していたりする、木村課長が進駐軍にチョコをもらったことがあるなど)。
声の項はテレビアニメの声優。
他の植田まさし作品同様、コンビニコミックスで『特選かりあげクン』が発売されている。発行は双葉社。発売日はややばらつきがあるものの、発売月は奇数月と決まっている(以下はサブタイトル、上から古い順)。読者応募型のコーナーが収録されているのが特徴。
2007年5月7日の「ストレスたまらんほんにゃらライフ」を最後にアンコールを除いて「特選」の新刊は発売されていない。2011年からはリニューアル版が刊行されている。右の年月日は、アンコールとしての発売日。
2008年からは「特選〜」の続編とも言うべき『決定版 かりあげクンコレクション』が発売されている。「かりコレ」とも略される。内容は大差ないが、それでもただの名称変更ではなく「かりあげ柳多留」などのコーナーが全て変更されている。2011年には、派遣戦士山田のり子とのコラボレーション版も発売された。
2018年4月から『かりあげクンDX』が隔月で刊行中。表紙に「かりあげ川柳」が掲載されている。2020年9月28日にはからあげクンとコラボした『かりあげクンデラックス かりあげ流!働き方改革』がローソン限定で発売された。
1989年10月から1990年12月まで(フジテレビの場合)レギュラー版全59回(1話、3回構成で全177話)、1992年(同)にスペシャル版(レギュラー版から3話分と新作エピソードを放送)がそれぞれフジテレビ系列で放送された(いずれも制作・東映動画)。モノラル放送。初回放送時から長らく映像ソフト化されなかったが、2016年12月21日に全話収録のDVD-BOXが発売された(レギュラー版全59回を収録)。DVDには、特典として植田まさしの書き下ろしの漫画も収録されている。
第1回〜第17回まではかりあげの勤務先の名称が「ほんにゃら商事」だった。第18回からは原作と同じ「ほんにゃら産業」となるが、変更された理由は特に説明されていない。
上記2曲を収録したCDとカセットテープは、日本コロムビアより発売された。
スペシャル版については北海道文化放送、テレビ新広島、山口放送、テレビ高知は未ネット、他の局での放送の有無については不明。
2023年1月7日から3月25日まで、BS松竹東急の「土曜ドラマ」枠にて放送された。主演は戸塚純貴。1話3本立てで放送される。
テレビドラマ化を記念し、映像化される4コマ漫画を集めた原作漫画傑作選『かりあげクン TVドラマセレクション』が2022年12月27日に発売された。
『漫画アクション』12月28日増刊号として、2005年11月28日に発売。植田まさしによる特選集と、29人の漫画家による本作のトリビュート作品(うち江口寿史の作品のみ再掲)、作家の大沢在昌によるエッセイ、作品に関する情報コラムなどが掲載された。※漫画以外の情報は記載されていない。
連載30周年を記念して以下の3冊が発行された。
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