玄田 哲章(げんだ てっしょう、1948年5月20日 - )は、日本の声優、舞台俳優、ナレーター。岡山県出身。81プロデュース所属。既婚。デビュー当時は、本名の横居 光雄(よこい みつお)名義で活動していた。
1948年5月20日に岡山県で生誕。正則高等学校時代は軟式テニス部に所属し、ダブルスの前衛プレーヤーとしてテニスに励む。中学・高校時代は芝居と縁がなかったが、受験に際して芝居の道に進みたいという気持ちが強くなり、相談した高校教師の知人である東宝映画のプロデュースを行っていた人物からの紹介で、東宝芸能アカデミーに入学。卒業後、新劇の道に進もうと文学座と劇団雲のオーディションを受けたが、両方とも落選。悩んでいたところに、演劇雑誌『テアトロ』で見つけた野沢那智主宰の劇団薔薇座の募集を目にしに1970年に入団した。初舞台は『王女メディア』。当初は1年だけのつもりだったが、結局は17年間もの長期に渡って在籍した。
1972年、24歳のときに野沢から「そろそろお前もやらないか?」と薦められ、声優業を始める。ディレクターの斯波重治の紹介で、テレビアニメ『科学忍者隊ガッチャマン』のアフレコ現場を見学。同作で多数の端役を担当し、以降は声優としてさまざまな作品をこなすようになった。声優業を始めた当時を「当日に台本を渡され台本の見方も分からないままスタジオに入れられ、喋り出しても画面に合わなくて悔しい思いをした」と振り返っている。
2010年に第4回声優アワード功労賞を受賞した。
声種はバリトン。独特の太い低音の声質の持ち主である。声優、ナレーターとしては、アニメ、テレビ番組などで活躍している。
日本のアニメではコミカルな役からシリアスな役まで幅広く演じこなしている。
多数の洋画作品で吹き替えを担当しており、アーノルド・シュワルツェネッガーのような鍛え抜かれた体を持つ俳優の吹き替えを多く担当している。かつてはシルヴェスター・スタローンやスティーヴン・セガールの吹き替えも多く担当していたが、2000年代前半を境に棲み分けされるようになり、スタローンはささきいさおが、セガールは大塚明夫がそれぞれ担当するようになった。ただし、セガールの吹き替えは『ICHIGEKI 一撃』(2004年)で担当したほか、スタローンの吹き替えについては『バックトレース』(2019年)、『ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結』(2021年)のように、2019年以降はささきと分け合う形で担当しており、再び持ち役となりつつある傾向にある。スタローンの吹き替えに関しては1980 - 1990年代初頭までは、シュワルツェネッガーよりも当てている数は多く、テレビ放送版の吹き替えが製作・放映されていたころには、『ロックアップ』や『ジャッジ・ドレッド』のように、テレビ放送版とソフト版の両方でスタローンの吹替を玄田が担当した作品もある(2013年に発売された『ジャッジ・ドレッド』のブルーレイには日本語吹替音声は収録されていない)ほか、ホームビデオ作品である『アメリカンそっくりシアター ハリーの爆笑捜査線!』ではスタローンおよびランボーのパロディキャラを玄田が演じている。また、これらのほかにサミュエル・L・ジャクソン、ローレンス・フィッシュバーン、ダン・エイクロイド、ジョン・キャンディ、ジョン・グッドマン、ジェラール・ドパルデューの吹き替えを担当することも多い。
アーノルド・シュワルツェネッガーから「私の声を100年演じて欲しい」と名実ともに永久専属声優として公認されている。
カリフォルニア州が制作した日本向けの観光広報ビデオ『カリフォルニア州観光局 なんでもアリフォルニア カリフォルニア』に出演した州知事・シュワルツェネッガーの声を担当する際、正式に本人からフィックスとして公認された。
2015年に公開された映画『ターミネーター:新起動/ジェニシス』のジャパンプレミアにシュワルツェネッガーが出席し、その舞台上で玄田はシュワルツェネッガーとの対面を果たした。玄田は「30年間、あなたの作品をすべて吹き替えてきました。初めてお会いできてうれしい。今日は最高の1日です。グレート!」と述べた。その際、玄田はシュワルツェネッガーに対して、「どのようにしてその体を維持しているのか?」と尋ね、それに対してシュワルツェネッガーは「毎日トレーニングを欠かさないことだね。朝起きて1時間、夜寝る前に1時間。中毒みたいなものだよ」「あなたも、ぜひ体を絞ってみては?」と答えた。そして、シュワルツェネッガーから「世界中で私の吹替をどんな方が演じているのか、ずっと気になっていました。初めて日本の吹き替え声優の玄田さんとお会いできて光栄です。私の声を100年間演じてほしい!」と言われ、2人は握手を交わした。
玄田はシュワルツェネッガーが主演した多くの映画作品(※初期の担当声優である屋良有作が吹き替えた1970年の『アーノルド・シュワルツェネッガーのSF超人ヘラクレス』と1985年の『レッドソニア』は除く)でシュワルツェネッガーの声を吹き替えており、『ターミネーター4』の公開時にはインタビューを受けており、深い関わりを持つ。玄田本人は「長年担当していたため次にどう動くかが分かる」と語っている。また年齢でいえば玄田はシュワルツェネッガーの1つ違い(玄田が一歳下)で「同世代としてガンバろうっていう、勇気を与えてくれた存在。一言で言うなら、同志」と語っている。シュワルツェネッガー自身から「私の声を100年間演じてほしい」と言われたことについて、玄田は「最高の褒め言葉です。まさに身が引き締まる気持ち。私もできる限り、シュワに応えていきたい!」と述べた。なお、ジャパンプレミアでシュワルツェネッガーと対面した際、当初は玄田はナレーターとして呼ばれていたのみで対面する予定は全くなかったが、本番10分前にシュワルツェネッガー本人が玄田に「直接会いたい」と申し出たことで実現したと語っている。玄田に先行してシュワルツェネッガーの代表作の多くを吹き替えた屋良も、玄田が担当した作品を観た際には「シュワルツェネッガーは玄田さんだと思った」と語っており、シュワルツェネッガーのフィックスとして残った玄田に対しては敬意を表している。
シュワルツェネッガーの吹き替えを初めて担当したのは『コナン・ザ・グレート』であるが、その後に担当した『コマンドー』の方が反響が大きかったという。『コマンドー』は、TBSの『ザ・ロードショー』での1987年の初回放映時には屋良有作がシュワルツェネッガーの吹き替えを担当し、のちに『日曜洋画劇場』で放送された際には玄田が担当した。2013年に発売された『コマンドー 日本語吹替完全版』のブルーレイディスクには、この2つの吹き替え音源が収録されている。さらに、『吹替の帝王』レーベル第8弾として、『日曜洋画劇場』で平田勝茂が翻訳したものを基盤に日本語吹替版が新たに制作され、『製作30周年記念日本語吹替新録版』と題したブルーレイディスクが2015年に発売された。このディスクには、『ザ・ロードショー』での吹替(屋良)、『日曜洋画劇場』での吹替、新録版(共に玄田)の吹替の計3つが収録されている。『コマンドー』と同じく、20世紀フォックス配給による映画『プレデター』や、ワーナー・ブラザーズ配給作品の『イレイザー』、トライスター・ピクチャーズ配給作品の『トータル・リコール』のように新録版(玄田)と旧録版(屋良)の両方の吹替音源が収録された映画のブルーレイディスクも発売された。映画『トゥルーライズ』では、ソフト版(1994年)でシュワルツェネッガーの声を吹き替えたのは菅生隆之であるが、1996年にテレビ放送版が放映された際には玄田が吹き替えた。2012年に20世紀フォックスから発売されたこの映画のDVDには、菅生と玄田の両方による吹替音源が収録されている。映画『ラスト・アクション・ヒーロー』ではテレビ放送版2つとソフト版が存在し、玄田はソフト版とテレビ放送版の1つで吹替を担当、『バトルランナー』ではソフト版とテレビ放送版の2つおよびオンデマンド配信版が存在し、玄田はソフト版とオンデマンド配信版、テレビ放送版の1つで吹替を務めており、それぞれの作品における残り1つのテレビ放送版では大塚明夫がシュワルツェネッガーの声を吹き替えた。この2作品は全ての吹替え音声を収録したブルーレイが発売されている(ただし『ラスト・アクション・ヒーロー』は廃盤)。
「トランスフォーマーシリーズ」ではアニメ第一作の『戦え!超ロボット生命体トランスフォーマー』から2007年の実写版ともにコンボイ(オプティマスプライム)を演じている。実写版の吹き替え版ではアメリカ側がオーディションで配役を決めていったため玄田はオファーではなく直々に受けたと振り返っている。結果、ファンからの署名運動などの活動があったことで結果的に自分が選ばれたと振り返っている。
玄田本人は、いくら長くアニメ版で同役を演じてきても、この業界はシビアで残酷だから自分が選ばれないのではないかと不安に感じていた。また、ファンたちの後押しの声があったことが本当にうれしかったと語っている。玄田はオプティマスに関しては自分の生理とすごく合うので、演じていて違和感を感じないし、ストレスにならないと語っている。
実写版収録の際はまだCGが完成していないため、絵のない状態でアフレコを行った。またアテレコ収録後にはアメリカ側から「英語が話せるのならオリジナルで何らかの配役の声をやってもらいたいとオファーもされた」が、結果的に英語が話せなかったため断り、「もう少し若ければ英語を勉強したかもしれないが、ハリウッド進出のチャンスを諦めた」と語っている
公開イベントでオプティマスの声を務めた際には「まさか実写になるとは思いませんでした」と、玄田自身の感想をアドリブを聞かせて喋っている。
テレビアニメ『ケロロ軍曹』第194話のトイレ司令や、テレビアニメ『パンティ&ストッキングwithガーターベルト』第12話のオスティマスのように、たびたびコンボイのパロディキャラクターを演じている。
2003年にゲーム『ドリームミックスTV ワールドファイターズ』においては久々にコンボイ/初代総司令官コンボイを演じ、インタビューでは「こんな形で、コンボイの声に復活できて、大変うれしいです。懐かしい気持ちで、精一杯やりました。みなさん、ぜひ楽しんでゲームをプレイしてください。」と答えている。 2020年にNetflixで配信されたWebアニメトランスフォーマー:ウォー・フォー・サイバトロン・トリロジーでオプティマスプライムを演じている。
海外アニメ『バットマン』においては現在のところ全シリーズに出演し、とくにバットマン / ブルース・ウェイン役は、1992年放送のアニメイテッド版以降『ザ・バットマン』を除くすべての作品で担当している。
死去した雨森雅司や蟹江栄司、加藤正之、内海賢二、大平透、石塚運昇、増岡弘、藤原啓治、飯塚昭三から持ち役の一部を引き継いでいる。2017年に放映されたアニメ『笑ゥせぇるすまん』では、大平に代わって喪黒福造を演じた。大平は、生前から喪黒役の後任として玄田を指名しており、今回の起用が実現したのだという。
「スーパー戦隊シリーズ」では、バンダイが出す関連商品のCMナレーションを1986年以降担当している。所属事務所の公式プロフィールの主な出演作にも挙げられており、東映のサイト内でも「縁深い」と挙げられている。また、「スーパー戦隊シリーズ」本編にも、2005年の『魔法戦隊マジレンジャー』ではマジレンジャーの呪文音声及びナレーションとして、2012年の『特命戦隊ゴーバスターズ』ではゴリサキ・バナナ役としてレギュラー出演したほか、敵キャラクター役で数回ゲスト出演した経験もある。
妹がいる。フリーアナウンサーの二木あつ子は、玄田の縁戚(二木の母の妹の息子の嫁の兄 - 従兄弟の義兄にあたるとのこと)である。
特技は日本舞踊、モダンダンス。趣味は麻雀、格闘技観戦。
バレエの経験者であり、ピルエット(回転の動き)を得意とし、「ピルエットの玄田」の異名を持っていた。映画『紅い眼鏡』には、本人の振り付けによるマンボを1曲分丸々踊る姿も登場する。
塩屋翼によれば、「普段はおとなしい人で、自分からはあまりしゃべらない人で、兄(塩屋浩三)と似ているところがありますね」とのことである。
同期に銀河万丈と若本規夫がいる。
太字はメインキャラクター。
※はWebラジオ番組。
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