『銀河英雄伝説』(ぎんがえいゆうでんせつ)は、1988年から2000年にかけてOVAを中心として展開されたアニメシリーズ。田中芳樹のSF小説(スペースオペラ)『銀河英雄伝説』を原作とする。
田中芳樹のSF小説『銀河英雄伝説』を原作として、劇場公開アニメ3作、OVA本伝110話、外伝52話が制作された。
『銀河英雄伝説』のアニメ化は、当初はテレビアニメ放映を目指して企画されたが実現に至らず、テレビアニメ化のためのパイロットフィルムの位置付けで『わが征くは星の大海』がOVA作品として作成され、プロモーション手段として劇場公開が行われた。その後、キティフィルムが手掛けた『うる星やつら』の50枚組LD-BOXの商業的な成功で、テレビアニメ化に行き詰まっていた本作をビデオ作品としてリリースすることが構想され、通信販売で視聴者に直接送付することによる中間コストの削減で、1話2,500円の価格設定で7,000本販売すれば元が取れると判断して、最初にOVA第1期シリーズが発売された。結果としてこの目論見は当たり、本伝110話、外伝52話、長編3話のOVAとして空前の長期シリーズとなった。
OVAの本伝は、まず「VHSビデオ1本に1話収録」の通信販売で1988年12月にリリースされ、その後に4話を1本にまとめた店頭販売用ビデオ(VHS/レーザーディスク)及びレンタルビデオがリリースされるという販売形態だった。レーザーディスクは、1枚ごとの単品販売の他、本編1期から4期、外伝1期から2期、長編3作をまとめた「劇場版セット」の計7セットがLD-BOXとしてリリースされた。1997年10月22日に再発売された本編第1期レーザーディスクセットは、初期版やそれまでの再発売版とはディスクジャケットが異なり、内容にも修正が加えられたリメイク版である。
「ウィークリー・アニメビデオ」と呼ばれた通販版VHSは、1988年12月21日に創刊号がリリースされて以降、外伝1期分まで(商品コード:VAM-001からVAM-134)、計134本が製作・販売された。徳間書店のサイトでは『黄金の翼』の通販版VHS(商品コード:TJM-8)もウィークリービデオと記述されていることから、それも含めれば135本となる。
DVDがソフトメディアの主流になった2001年以降は、全てのアニメがDVD-Video化されている。レーザーディスク版同様、1枚ごとの単品販売の他、110話+外伝を4期に分割した「銀河英雄伝説 DVD-BOX」としてリリースされた。2007年12月21日にはアニメ製作20周年記念として、全165話を特製アルミ合金ケースに収納した「アニメ製作20周年記念 銀河英雄伝説 LEGEND BOX」がリリースされた。なお、DVD化に際して35mmフィルムの原板を再テレシネして一部のデジタル化を行っており、DVD版はビデオテープ/レーザーディスクによってリリースされた初期版と比べてデジタルで作り直したシーンが随所に存在するほか、人名や艦名テロップの綴り(スペル)も多くが修正された「リマスター版」で、2006年8月から劇場版を含む全165話がWOWOWで放送された。DVD化に際しては、オリジナル版が製作当時の事情(相当無理のあるスケジュールや人材不足などで海外数か国での外部製作)で粗さが目立っている前半部分を中心に、相当数の人物・背景作画をリメイクしている。2009年にはDVD用マスターを使用した「銀河英雄伝説 Blu-ray BOX」がリリースされている。2014年にはBlu-ray BOXの廉価版となる「銀河英雄伝説 Blu-ray BOX STANDARD EDITION」が発売されている。
Amazon Prime Videoなどでオンライン配信されているものには人名、施設、宇宙船、要塞、星などに「設定上の言語と日本語」の紹介テロップが入らない。
製作の中心人物であるプロデューサーの田原正利は、徳間書店刊行のムックの編集方針と同時に、本ウィキペディアの記事に関しても批判したことがある。基本的に素人が好き勝手に書き込んでいる場であり素人の知ったかぶり・推測・創作・思い込み・誤解が多々見られるため「信憑性がないと思って」欲しい旨発言し、それらの定説化を憂いている。
アニメ冒頭に表示されるタイトルは、フラクトゥール(花文字、ドイツ文字)で「 」(Heldensagen vom Kosmosinsel)と表記されているが、他国語版『銀河英雄伝説』の記事ではドイツ語として文法的に不適切(inselは女性名詞なので、vomという形にはならない)と書かれている。ただし、作中で同盟や帝国の公用語が「英語やドイツ語だとは一言も言っていない」ため、前述の人名や艦名の綴りを含めて一概に間違いとも言い切れない。なお『黄金の翼』のみ、欧文タイトルはブラックレターで「Die Legende der Sternhelden」と他と異なる表記である。
なお『銀河英雄伝説』の小説刊行40周年を記念して、2022年12月30日から『わが征くは星の大海』、2023年1月13日から『新たなる戦いの序曲』の4Kリマスター版(5.1chサラウンド)が2週間限定で劇場公開されている。
膨大な登場人物のほとんどについて、声優が複数の役を兼ねていないため、基本は1人1役でキャスティングされている(しかし、モブキャラクターを除いて例外的に二役演じた声優も存在する)。そのため、アニメ版は「銀河声優伝説」との異名を取っていた。また、OVA第12話「帝国領進攻」では、池田秀一演じるケスラーと玉川砂記子演じる元恋人フィーアが登場するが、両声優は私生活において夫婦である。
ラインハルト・フォン・ローエングラム役の堀川りょうによれば、各声優のスケジュールの都合が付かないため、収録当日に集まれるキャストだけで収録可能な話から収録していたため、「ラインハルトの状況や心情が即座につかめず、戸惑いながら演じていた」「あの場にいたキャストやスタッフは、それぞれ僕と同じ戸惑いを感じながら、手探りで役に分け入っていた」と述懐している。
アニメ版に登場する軍事艦艇は、原作新書版で表紙と初期の挿絵を手がけたイラストレーター・加藤直之のデザインをベースにしており、端役の提督が座乗する旗艦に至るまで特徴的な外観が与えられるなど、作品の魅力を増すための工夫が随所で試されている。ただし加藤直之が全てのメカデザインをしているわけではない。
帝国軍の軍服は「黒地に銀の装飾」という基本は共通するが、媒体によってデザインの差異が大きい。このアニメ版では胸の装飾と肩の線によって、特に士官以上の階級が非常に分かりやすいものとなっている。原作では特に記述がないが新王朝成立に際し、配色は引き継ぎながらも新デザインへと変更された。この新デザインは、公式ファンクラブ「共和倶楽部」の会誌において募集された、一般ファンによるデザイン案が原案となっている(複数のデザイン案の中から、ファン投票で選ばれた)。
同盟軍の軍服はどの媒体でもあまり差異は見られないが、アニメ版では肩口の装飾や腕のワッペンなどが画き込まれている。またジャケットとスカーフで隠れた下に肌着、シャツ、ネクタイを着込んでいることが描かれた。
主なBGMにはクラシック、特にマーラーの交響曲など、19世紀後半から20世紀初頭にかけての後期ロマン派音楽を数多く使用している。これはアニメ版製作の中核企業だった徳間グループの音楽部門会社・徳間ジャパンが東ドイツのドイツ・シャルプラッテンレコードの音源を大量に持っていたことから実現したもので、音響監督の明田川進が73枚のCDからキャラクター性を持たせた上でなるべく帝国と同盟の区分けを意識して選曲された。劇場版第一弾『わが征くは星の大海』の第4次ティアマト会戦における「ボレロ」の使用については、脚本を手掛けた首藤剛志の仕事場に原作者の田中芳樹が訪れた際、ラヴェルの「ボレロ」をクライマックスで使うことを提案して了解を貰ったが、後にラヴェルの日本での著作権の保護期間が第二次世界大戦に伴う戦時加算によって延長され、ラヴェルの死後50年以上たっても遺族関係者が権利を保有していたため、他の使用曲とは異なり著作権フリーでは使えないことが判明した。しかし原作者了解の下、脚本・絵コンテなど戦闘シーンで「ボレロ」を使用する前提で書かれていたため、使用料を支払ってこのまま「ボレロ」を使うことをプロデューサーの田原は決断し、「どうせ『ボレロ』を使うなら」と『銀河英雄伝説』用に井上道義の指揮・新日本フィルハーモニー交響楽団の演奏で新収録した楽曲が使用された。
数少ないオリジナルスコアのうち、アニメ作品中で使用される自由惑星同盟国歌の音源は、イベントに参加した一般応募者が斉唱したものが使用されている。
主題歌は、エンディング曲を担当した小椋佳やオリジナルスコアを作曲した風戸慎介(川辺真)をはじめ、来生たかお、星勝、武沢豊、蛎崎弘、森英治など、キティ・フィルムの母体だったキティレコードに当時所属していたミュージシャンが参加した。
サントラ盤として、これらのクラシックの代表的な楽曲を収録したCDが徳間ジャパンから、第二期までの主題歌・挿入歌を集めた主題歌集がキティレコードよりリリースされた。1992年には詳細な解説書(楽曲解説、未収録音楽リスト、音楽シート、サントラCDリスト)が付いた30枚組CD「銀河英雄伝説 In Classic」が当時存在していた公式ファンクラブ「共和倶楽部」から通販限定でリリースされていた。
2007年にはスターチャイルドレコード(現・キング アミューズメント クリエイティブ)から「TV版・劇場版・OVA版のBGMをコンプリート」した期間限定盤「銀河英雄伝説CD-BOX」帝国SIDE(12枚組)・自由惑星同盟SIDE(10枚組)がリリースされた。
OVA第1期は、リリース終了後にテレビ東京において深夜と夕方に一度ずつ、テレビ愛知、ミヤギテレビ、山形テレビ、新潟放送、チューリップテレビ、くまもと県民テレビ、テレビ神奈川でも一度、テレビ大阪では深夜に二度放送された。20世紀末以降は、主にCS放送局や衛星放送局WOWOWで映画版も含む全話が放送されている。2009年にもファミリー劇場にて本伝110話が一挙放送された(人物や艦船を紹介するテロップが削除されている)。2010年4月からは外伝も放送された。OVAとして製作されたため、テレビアニメでは放送コードに抵触するので余り見られなくなった、残酷描写(虐殺シーンや戦闘での負傷描写など)がごくまれに表現されている。
WOWOWでは2006年7月2日より、映画第1弾とOVA全話をテレビ初となる“リマスター版”を使用して放送した。
U-NEXT、Amazon Prime Video、dアニメストア、FOD、GYAO!などの動画配信サービス(ビデオ・オン・デマンド)で、本伝及び外伝(長編含む)の配信が行われている。
第70話「蕩児たちの帰宅」では明滅が激しいシーンが2箇所あり、DVD第18巻の冒頭では鑑賞時の注意を喚起する文章が挿入されている。
※ 当OVA版で使用されたクラシック楽曲名の詳細については、外部リンク>“KING AMUSEMENT CREATIVE:銀河英雄伝説”のwebサイトを参照。
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