勝ち越し(かちこし)とは、主にスポーツで勝ちの数が負けの数よりも多くなることである。 プロ野球では「貯金●つ」と呼ばれることが多い。
本場所において総取組数(現行制度では関取は15番、力士養成員は7番)の過半数(関取は8番、力士養成員は4番)で白星を挙げた状態が勝ち越しと定義される。
後述にもあるが、勝ち越しの定義上、不戦敗を除いて休場した日もその日は黒星と同様に扱われる、たとえば7勝1敗7休は番付編成上負け越しと同様に扱われる。幕内下位で早く(概ね3敗以内)勝ち越すと、アナウンサーからインタビューをされることがある。
勝ち数から負け数(休場は負けに換算される)を引いた数を勝ち越し点と言い、十両・前頭では勝ち越し点1点で番付が1枚昇格するのが原則。また、持ち給金(正式名称は「力士褒賞金」)が勝ち越し1点あたり50銭増加し、十両以上の力士が毎場所もらえる褒賞金は勝ち越し1点あたり2,000円昇給(現在の乗率は持ち給金*4000)する。このため勝ち越すことを「給金直し」、勝ち越しのかかった一番を「給金相撲」と呼ばれる。
三役(関脇・小結)及び前頭筆頭以外の力士は、勝ち越せば原則上の地位に上昇するが、優秀な成績を挙げた力士が多い場合、半枚の上昇(西方から東方への変動)にとどまったり、他の力士の成績次第では東西の移動(半枚降下)をすることはやむを得ない範囲とされている。
大関・関脇の地位では、それぞれ2、3場所続けて優秀な成績を挙げなければ横綱・大関に昇進することができないため、並の勝ち越しだけでは何場所、何十場所と同じ地位に留まることになる。また、小結・前頭筆頭も関脇・小結に負け越した力士がいなければ小結・前頭筆頭に据え置かれる。ただし、関脇・小結の力士より優秀な成績を挙げると通常は東西に1名ずつ、計2名の関脇・小結の人数を特別に増やし、昇進させる場合もある。以前は番付表の欄外に書き込んでいたことから、これを張出と言った。
幕下上位の場合、番付の昇降幅は勝ち越し点の2倍を目安とする。通常、1場所7番の取組で終了するところながら、取組編成の都合上、八番相撲を取ることがあるが、この場合、勝てば勝ち越し点に、負ければノーカウントとされるので「勝ち得負け得」と言われる。
関取8勝以上、幕下以下4勝以上の場合でも、休場を含む場合は、休場を負けと見なした上で番付が編成され、皆勤して同じ数の白星を挙げ残りが黒星だった勝ち越し力士と同等に評価されるが、この場合公式には〈勝ち越し何点〉という言い方はされない。
身分格差の激しい幕下と十両との入れ替えについては例外が多い。昇進させる際、十両への優先権を持つのは、1)東幕下筆頭で勝ち越し 2)幕下15枚目以内で7戦全勝 3)西幕下筆頭で勝ち越しの順とされ、十両の陥落力士数の都合では西幕下筆頭で勝ち越しても東方に半枚昇進するだけで幕下にとどまることもあった(不運な例として青葉山弘年と福岡(隠岐の海)歩のケースがある)。幕下付出の15枚目格については2006年5月場所後の番付編成で、学生相撲出身で幕下15枚目格付け出しだった下田が全勝ながら幕下に留め置かれることになったケースが発生し、以後は「幕下15枚目格付け出しは幕下15枚目以内ではない」との解釈となっているが、2023年1月場所で落合(伯桜鵬)哲也が15枚目格で7戦全勝し、翌3月場所の新十両を決めた。幕下付け出しで1場所で幕下を通過するのは史上初。なお2023年9月の制度改定により10枚目および15枚目格付出が廃止され1場所での十両昇進が不可能な60枚目格付出へと変更、11月場所に最後の15枚目格付出力士として初土俵を踏んだ阿武剋も全勝を果たせなかったため、幕下付出から1場所での十両昇進は落合が最初で最後となった。
幕下中位~序二段は番付枚数が多いため勝ち越しによる番付の上昇幅が大きく、1点の勝ち越しでも関取以上に大きな意味を持つ。また、5月場所の番付は3月場所で前相撲を取った新入門者が大量に序ノ口に上がるので全体的に下から押し上げられ、序ノ口で負け越した力士でも多くが序二段に昇格となる傾向がある。
なお、各段の定員は幕内は東西合わせて計42人、十両は28人、幕下は120人、三段目は180人で、序二段以下は定員が定められていない。
連続勝ち越し(幕内・十両8~15勝、幕下以下4~7勝)の記録が注目されるようになったのは、1971年9月に玉の海が玉錦の記録(26場所)を更新したときからである。その後この記録は北の湖により大幅に更新され、さらに武蔵丸が5場所上回り現在の記録(55場所)を保持している。なお白鵬は、連続勝ち越しで幕内は1位(51場所)だが、通算では武蔵丸に4場所届かなかった。
幕内中日勝ち越し記録とは、中日(8日目)に勝ち越しをストレートで決める記録のことである。ストレート給金とも言われている。
幕内連続中日勝ち越し記録とは、幕内中日勝ち越しの連続場所のことを指している。
幕内連続2桁(10~15勝)勝利の史上最多記録は、かつて北の湖が約32年間も保持していたが、白鵬が2013年5月場所で38場所となり、北の湖を抜いて歴代単独1位となった。尚10位以内にランクインしているのは、全員横綱に昇進した力士である(但し9位の旭富士・14場所は、当時関脇~大関の地位での記録であった)。
横綱は、常に最高レベルの相撲内容・成績を求められる。ゆえに、横綱の勝ち越しは12勝であると言われることが多い。とは言え横綱であっても、毎場所12勝以上の成績を残すことは並大抵のことではない。本項では12勝・13勝・14勝以上の各連続勝利場所数の達成者を列記しているが、いずれも最多記録保持者は白鵬である。
1場所の全取組に勝った場合は全勝と言う。昔から特別視された記録であり、優勝の概念が無かった江戸時代にも全勝に対する特別表彰は存在した。その後優勝の制度ができてからも全勝であるか否かの区別は現在まで継続し、持ち給金の増え方も幕内最高優勝1回につき30に対し全勝優勝は1回につき50となっている。優勝額の項も参照。十両で全勝優勝した力士については北の富士賞の項を参照。なお幕下以下では幕内や十両より圧倒的に枚数が多く、ほぼ毎場所全勝力士が現れる。
昭和以降達成した力士は8人であり、その内双葉山と大鵬、白鵬は2場所以上連続全勝を複数回達成している。
幕内で2桁勝利を挙げた後に連敗して終わった例を除く。
年6場所制・15日制以降で関取の地位で皆勤負け越し未経験は、双羽黒・武蔵丸・白鵬の3人である(現役および関取皆勤経験のない力士を除く)。
なお、1位は白鵬の関取105場所連続である。
年6場所制・15日制以降で幕内の地位で皆勤負け越し未経験は、双羽黒・武蔵丸・白鵬の3人である(現役および幕内皆勤経験のない力士を除く)。
なお、1位は白鵬の幕内103場所連続である。
野球でも「勝ち越し」の用語を使用することがある。ただし、大相撲のように全体の白星(勝)が黒星(敗)を上回ることが確定したことを示すものとは違い、現時点での勝数が敗数を上回っているという程度の意味で遣われる点で異なる。そのため、上述のように「貯金●つ」という言い方をすることも多い。なお、野球の世界では勝敗だけでなく、1つの試合状況において使用することもある。例えば、現在プレイ中の試合において獲得している自チームの得点が2点で相手チームが3点という状況で自チームが2点以上追加して4点以上となり、相手チームの得点を上回った時に「勝ち越し」ということがある。ただし、現況を伝える表現にすぎず、結果としてその試合での勝利が確定したことを示すものではない点では同様である。
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