スターバックス(英: Starbucks Corporation、NASDAQ: SBUX)は、アメリカ合衆国の喫茶店チェーン。1971年にアメリカ合衆国ワシントン州シアトルで開業した。
世界最大のチェーンのひとつであり、シアトル系コーヒーの元祖である 。2023年時点で、世界86市場に38,038店舗を展開しており、19,592店舗が直営店、18,446店舗がフランチャイズ店舗である。繁華街だけでなく駅やオフィスビルや大学の中にも出店しており、あらゆる客層に利用されている。
店舗では、ホットドリンクとコールドドリンク、コーヒー豆販売、インスタントコーヒー粉販売、エスプレッソ、カフェラテ、フルリーフティーとルーズリーフティー、ジュース、フラペチーノ、ペストリー、スナックを提供する。
通常、飲み物は紙製やプラスチック製の使い捨てコップで提供されるが、購入者の同意のうえ、陶器製のカップが利用されることもある。また、持参したタンブラーやカップ類を使用することも可能。持参したタンブラーやカップ類は、使用前後に洗浄もしてもらえる(割引と同様に、スターバックス販売製品以外でも洗浄してもらえる)。
日本では、Trenta(トレンタ)のサイズは注文できない。
なども積極的に取り入れられた。日本進出時にも提携したサザビー(SAZABY)によってほぼそのまま導入された。いずれも当時の日本の喫茶店とは一線を画した日本ではスターバックスの特徴として挙げられるものである。"Third place"(家庭でもなく職場でもない第3の空間)コンセプトのもと、米国の店舗では長時間の自習やパソコン利用を制限することはなく、Wi-Fi利用も時間制限・接続先制限なしで無料である。日本では客の長居やパソコン利用を制限する店舗が存在するなど、必ずしも米国と同様の店舗運営を行っているわけではない。
店内の家具は本社が家具メーカーに特注したものであり、市販はされていない。なお、二人用の丸テーブルの表面にはチェスボードのマス目が描かれており、チェスの駒を貸しだすサービスがある(日本では非実施)。ただし近年では無地のテーブルに置き換え、マットタイプの盤とシリコン製の駒の貸し出しに変えた店舗も多い。
米国の店舗にはAT&Tインターネットサービシス(SSID:attwifi)またはGoogle(SSID:Google Starbucks)の公衆無線LANアクセスポイントが設置されており、Wi-Fiが無料で利用できる。
ダイニングエリアのコンセントは、ノートブックパソコンの利用や携帯電話の充電用に開放されている。日本でも2009年12月よりエヌ・ティ・ティ・ブロードバンドプラットフォームと提携し大都市圏の店舗からアクセスポイントの設置を開始、2010年12月までに全国の店舗に設置を行う予定である。これによりNTT東日本のフレッツ・スポットとNTTドコモのMzone(現・docomo Wi-Fi)による公衆無線LANサービスが利用可能となる。また、2010年6月からはソフトバンクモバイル、ソフトバンクテレコムと共同でソフトバンクWi-Fiスポットの運用を開始、順次全国展開する予定。
2014年には店舗面積や内装、提供商品などが一般店舗と異なるコンセプトストアを中国に初めて設置した。
2021年11月18日にはアマゾン・ドットコムと共同でレジ無し技術(アマゾン・ドットコムが実店舗で導入しているジャスト・ウォーク・アウトの技術)を導入したコーヒーショップをニューヨークに開店した。
1971年にシアトルでジェラルド・ジェリー・ボールドウィン、ゴードン・バウカー、ゼブ・シーグル(ユダヤ系)、アルフレッド・ピート(オランダ系)によって開業された。当時は、コーヒー焙煎の会社にすぎなかった。
1982年、のちの会長兼CEOのハワード・シュルツが入社。シュルツは、コーヒー豆のみならず、エスプレッソを主体としたドリンク類の販売を社に提案した。1985年にスターバックスを退社したシュルツは翌年にイル・ジョルナーレ社を設立し、エスプレッソを主体としたテイクアウトメニューの店頭販売を開始。これがシアトルの学生やキャリアウーマンの間で大人気となり、瞬く間に流行した。シュルツは1987年にスターバックスの店舗と商標を購入。
イル・ジョルナーレ社をスターバックス・コーポレーションに改称し、スターバックスのブランドでコーヒー店チェーンを拡大した。同業他社もこれにならい、同様のスタイルのコーヒー店が急増した。
当時のアメリカではイタリア流のファッションや食事が流行しつつあり、イタリア式コーヒーのエスプレッソを主体とするこれらの「シアトル系コーヒー店」はブームに乗ってすぐに北米全土に広がり、シアトルスタイルというコーヒーやコーヒー店のスタイルとして定着した。
スターバックスには「世界を変える」という使命があるとジョン・ムーアは述べている。
店名の由来は、第一候補だったハーマン・メルヴィルの小説『白鯨』に登場する捕鯨船ピークォド号(Pequod)の名を退け、副長の人名であるスターバック一等航海士(Starbuck)とシアトル近くのレーニア山にあったスターボ(Starbo)採掘場から採られた。日本ではスタバとも略される。
企業ロゴには船乗りとの縁が深いセイレーン(ギリシャ神話における、上半身が人間の女性で、下半身が鳥の姿をしているとされている海の怪物)が用いられている。ロゴが変わるたびにセイレーンの姿が変化しており、1987年までは2本の尾がしっかりと描かれていたが、92年には少し枠に隠れ、2011年には外枠のSTARBUCKS COFFEEの文字がなくなった。なお、シアトルにある第1号店のPike Place店は、開店来の色調(茶色)とデザインを採用しており、ほかのチェーン店とは異なる。
2023年時点で、世界86市場に38,038店舗を展開する。
イギリスの経済誌『エコノミスト』は、各国の購買力を測るための指数として、ビッグマック指数に加え、スターバックスのトールサイズのラテ価格を比較したトール・ラテ指数を発表している。
オーストラリアでは、2000年からシドニーなどに出店していたが、2008年までに1億米ドル(約95億円)以上の負債を抱えるに至った。不採算店舗を閉店し対応していたが、2014年6月に残存店舗の地元企業への売却が決定し、事実上の撤退に追い込まれた。
香港やマカオを除く中国国内の多くの店舗は、漢字で「星巴克」と表記されている。中国におけるスターバックスは中秋節や端午節などの季節ごとに中国限定のオリジナル商品を発売しているのも特徴である。
中国には1999年に北京に1号店を出店した。
また、北京では紫禁城(故宮)内部に2000年より出店していたが、2007年7月4日に撤退した。2007年1月に中国中央電視台のキャスターが自身のブログで、故宮にあるスターバックスの撤退を要求する内容の論評を発表しており、中国国内で議論が起きていた。
2020年末時点で中国本土200都市に4800店舗以上が出店している。2021年現在、世界でスターバックスが最も多い都市は上海で店舗数は900店以上である(2位はソウルの500店舗以上、3位は北京で400店舗以上である)。ただし、中国では国内のコーヒーチェーンも急成長しており、2021年上半期の時点で、瑞幸珈琲(ラッキンコーヒー、Luckin coffee)の店舗数が5239店舗となり、スターバックスの5135店舗を上回った。
ロシア連邦では2007年に第1号店を開店して以降、130店舗を展開していた。2022年2月に発生したロシアによるウクライナ侵攻を受けて、同年3月にロシアでの事業展開を一時停止。その後、同年5月23日に同国から撤退することを発表した。
2022年8月18日、ロシア国内でのスターバックス事業を引き継いだ地元資本がモスクワ市内にコーヒーチェーン「スターズ・コーヒー」を開店した。
2011年まではユナイテッド航空の旧コンチネンタル航空運航便を除く全路線・全クラスで、ユナイテッドオリジナルブレンドのスターバックスコーヒーが提供されていた。コーヒーの紙コップに、スターバックスとユナイテッド航空のロゴが印刷されていたのが特徴であったが、現在は「Freshbrew Journeys Coffee」に変更された。
アメリカ軍の基地等にも、兵士への福利厚生目的でスターバックスが出店している例は多い。珍しいところでは海軍の空母カール・ヴィンソンや、強襲揚陸艦ボクサーの艦内などにも出店している。艦内店舗の場合店員は乗組員が務めるが、スターバックスの店舗で研修を受け正式なバリスタの認定を受けており、通常店舗と同様のメニューが提供されるという。
なお米軍基地の店舗には原則として「Military Family Store(MFS)」という名称が付けられている。MFSには、退役軍人やその家族を雇用することで彼らの生活を支え、また退役後も基地内で働くことでコミュニティへの関わりを保つという役割も与えられている。
1992年(平成4年)12月、新東京国際空港(現・成田国際空港)第2ターミナルの制限区域内に、米大手ホテルチェーン、マリオット・インターナショナルなどが出資したフードコート内の一店舗として開業した。なお、当時のスターバックス側は「当面は米国内の展開で精いっぱい」と説明しており、この出店についても「あくまでも例外。海外展開を始めるつもりはない」として、その後わずか9か月で撤退している。
1995年(平成7年)10月、株式会社サザビーがアメリカ、Starbucks Coffee International, Inc.との合弁にて、スターバックスコーヒージャパン株式会社設立。サザビー社長鈴木陸三の兄である角田雄二が代表取締役社長に就任。
1996年(平成8年)8月2日、東京都銀座に、北米地区以外では初めてとなる日本1号店を出店。
2006年(平成18年)7月31日、千代田区霞が関の経済産業省内に出店。中央省庁への初出店となった。
2010年(平成22年)5月12日、全国で初めて仙台クリスロード店が地域活動の場として開放された。
空港(一般区域・制限区域)、JR駅構内、高速道路サービスエリア、TSUTAYA店内、遊園地敷地内(富士急ハイランドとよみうりランド)などにも出店している。また、事業所内の店舗としては六本木ヒルズ森タワーにあるゴールドマン・サックスの日本法人にゴールドマン・サックスの社員専用の店舗が設置されている一方、トヨタ会館(愛知県)の「トヨタ自動車本社店」は一般利用可能となっている(トヨタ自動車本社店は2022年12月28日をもって閉店した)。
2013年3月、渋谷区千駄ヶ谷から品川区上大崎(新目黒東急ビル)に日本法人の本社を移転している。
同年5月11日、本社1階に目黒店を開業、日本国内における店舗数が1,000軒となった。一国で1,000店に達した例はアメリカ、カナダ以外では初。
同年12月18日、日本国内985店舗(当時)でもっとも標高の高い場所にある「横手山山頂店」(標高2,307メートル)を長野県志賀高原の横手山スキー場のリフト山頂駅舎の2階でオープンした。スキー場への出店も同社初となる。近くのヒュッテにてパンを販売しているため、提供するのは11種類の飲み物のみ。オープン時の契約では2014年5月までの期間限定店舗であり、営業本部は地域活性化に向け通年営業に切り替える方向で話を進めていたが、営業合意にいたらなかったため当初の予定通りの期日で閉店した。
2010年代に入り、47都道府県のうちこれまで店舗がなかった山陰地方へ展開。こ2013年3月に島根県松江市のJR松江駅構内にあるシャミネ松江店が山陰1号店として開店し、オープン当日の売り上げが日本国内店舗における最高額を記録した。これに続いて出雲大社店が開店した。
島根県への出店により鳥取県は唯一出店のない県となったが、鳥取県にも鳥取駅南口への出店が検討されていると報道された。2015年4月22日の正式発表を経て2015年5月23日にシャミネ鳥取店がオープンし、1996年の日本1号店開店以来およそ19年で全47都道府県に店舗が展開された。なお、日本でのライバルであるドトールコーヒーはこの時点では島根県への進出を果たしていなかったため、全国制覇はスターバックスの方が早かった。
年に100店舗程度を新規出店しており、2018年時点で約1,300店を展開する。大手チェーン企業であるが、京都市では日本家屋を改装する(京都二寧坂ヤサカ茶屋店)など、外観や内装は地域の事情に合わせている。日本に約30人の店舗デザイナーがおり、アメリカ本社の方針でもある「Local Relevant(地域への関わり)」を重視した戦略をとっている。
2014年9月23日(米国時間)、スターバックス・コーポレーションは、スターバックスコーヒージャパンを完全子会社化することを発表。日本における合弁相手であるサザビーリーグは、同社が保有するスターバックスジャパン株式の全部につき、公開買付けに応じることに合意した。
2014年10月31日、サザビーリーグ保有株をスターバックス・コーポレーション傘下のSolar Japan Holdings合同会社が取得し、スターバックスコーヒージャパンはスターバックス・コーポレーションの子会社となった。さらに、サザビーリーグ以外の株主および新株予約権者を対象とした2回目の公開買付けを行い、同年12月にはスターバックス・コーポレーションが間接的に93.62パーセントの株式を取得。二段階買収の手続きを経て、2015年3月26日をもってスターバックス・コーポレーションはスターバックスコーヒージャパンを完全子会社化した。
スターバックスがかつて使用していた「緑の二重円」のロゴタイプ(ロゴ)については、世界各国で類似の商標が登場しており、訴訟に発展しているものも少なくない。
日本ではドトールコーヒー系の「エクセルシオール カフェ」が、1999年の誕生当初にスターバックスによく似たロゴを使用していたため、2000年にスターバックス側が不正競争防止法に基づきロゴの使用差し止めを求める仮処分申請を申し立てた。同年8月に両社の間で和解が成立し、エクセルシオールカフェ側がロゴの外側の円の色を青に変更している。
韓国では地元コーヒーチェーン企業であるエルプレヤが2003年8月に商標登録した「スタープレヤ」のロゴに対して、スターバックス側が商標侵害だとして、特許裁判所に類似商標訴訟を起こした。裁判所は2006年10月11日、「侵害の事実は認められない」として訴えを退けた。スターバックス側は判決を不服とし大法院(最高裁判所)に上告したが、大法院は2007年1月にスターバックス側敗訴の確定判決を下した。
同様の裁判は上海でも行われている。スターバックスは同社の中国語名「星巴克」やロゴなどを真似たとして、上海でコーヒー店を展開していた地元業者を商標権の侵害で告訴した。スターバックスは2005年12月に下級審で勝訴したものの、地元業者はこれを不服とし上海市高級人民法院(最高裁判所)に上訴。高級人民法院は2006年12月に、商標権侵害を認め、スターバックス側の勝訴が確定した。
スターバックスでは2011年1月に、外側の帯および社名の文字表記を廃し、もともと内側にあった女性像を拡大した新たなロゴマークを発表。同年3月から順次導入を始めている。これは「今後スターバックスの名前でコーヒー以外の商品を提供していく可能性がある」ことがおもな理由だが、古くからのファンからは批判も出た。
発行国内のスターバックス全店で使えるプリペイドカード・ギフトカードである。他国の店舗での互換性はなく、それぞれ発行国店舗のみでの利用となる。
アメリカとカナダの店舗では、登録を行ったスターバックスカード利用者は、来店(購入)ごとにシロップ追加、ドリップコーヒーのおかわりが無料となる。2010年6月までは登録を行ったカード利用者に限り2時間までWiFi(AT&T Wi-Fi Access)利用が無料であった(2010年7月からはすべての客に時間制限なしで開放されている)。カードはスーパーマーケットなどでも販売(会員制倉庫型卸売店などでは額面の7割から9割の価格で販売)されている。また、「スターバックスカード・デュエットビザカード」と呼ばれる年会費無料のクレジットカードをスターバックスとの提携でチェースが発行しており、このカードの利用時には、加えて代金の10%が割引となる。
イギリスの店舗でも同様に、オンラインで登録を行ったカード利用者は店舗内の公衆無線LAN(BT openzone)が制限なしに利用でき、シロップなどのオプションは過剰でない限りすべて無料になるうえ、スターバックスカードでドリンクを購入するとドリンク単体の割引が受けられる。また、フィルターコーヒー(トールサイズ)が1ポンドになるなど(この場合のオプションも無料)、スターバックスカードのサービスは世界でも北米と並ぶトップレベルである。
日本では、現金またはクレジットカードによる1,000円以上の入金で発行でき、繰り返しチャージが可能である。ウェブ上に登録したスターバックスカードで支払いをするとリワード制度が導入され、50円につき1star、150star集めると700円分のリワードチケットを発行することができる。残高は店頭やスターバックスカードサポートセンター、ウェブサイトで確認でき、同時に利用期限が更新される(金額の増減を伴わなくとも3年の有効期限が延長される。2012年6月6日以降、有効期限は廃止され無期限となっている)。絵柄は年々変更され、期間限定タイプや懸賞で当たるタイプなどもある。こういった限定の絵柄はオークションでも高価で取引されている。また、贈呈用としてカードを納める封筒もある。カードのタイプはデニーズと同じタイプであるが、デニーズでは利用できない(逆も同様)。
日本を含めたほとんどが磁気カードだが、台湾のみICカードである。台湾では、同じ統一企業グループが経営するセブン-イレブンで発行されている「icash」と同じタイプだが、セブン-イレブンでは利用できない。逆に、セブン-イレブンで発行された「icash2.0」カードは同店舗で使用可能である。
スターバックス ジャパン公式モバイルアプリ内でスターバックスカードを発行、またはプラスチック製カードの取り込みが可能で、おサイフケータイ対応機種であればお店に設置されているリーダーにかざすことで代金の支払い、カードへのチャージが可能となっている。Apple Payには対応していないため、iPhone環境下で使用する際は画面にバーコードを表示することで同様に支払い、チャージが行える。
タンブラーと同様、地域限定のデザインカードも発行されている。
世界産業労働組合(IWW)に加盟するスターバックス労働組合がある。
カリフォルニア州のサンディエゴ郡裁判所は、バリスタに支払われたチップの一部がシフト・スーパーバイザー(交代勤務監督)にも渡っているのは違法だとして、スターバックスに対して約1億ドルを10万人のバリスタに返還するよう命じている。同様の訴訟はほかの州でも起こされている。
2009年7月、テキサス州エルパソで採用した身長の低い従業員が研修3日で解雇された。この従業員は業務で椅子か小型の脚立の使用を申し出たものの、会社側はこれを拒否して解雇した。2011年5月、米国連邦政府の雇用機会監視監督機関である雇用機会均等委員会(EEOC)は、障害をもつ従業員に対して相応の便宜を図ることを拒んだとして、テキサス州西部地区連邦地方裁判所に、同社における差別禁止ポリシーの確立と解雇された従業員に対する給与および懲罰的損害賠償金の支払いを求めて提訴した。2011年8月16日、スターバックスは7万5,000ドルを解雇した元従業員に支払うこと、および障害者雇用についての改善策を取ることに同意した。
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