バスタ新宿(バスタしんじゅく、Shinjuku Expressway Bus Terminal )は、東京都渋谷区千駄ヶ谷五丁目の新宿駅南口地区にある、鉄道駅や高速バスターミナル、タクシー乗降場などを集約した交通ターミナル。正式名称は新宿南口交通ターミナル(しんじゅくみなみぐちこうつうターミナル)。
バスタ新宿の開業により、新宿駅西口周辺の19か所に分散していた高速バス乗降場が集約された。開業時点で118社のバス事業者が乗り入れ、1日の発着便数は最大1625便、停車場数は15、行先は39都府県300都市に及び、高速バスターミナルとしては日本最大の規模となる。
2013年7月31日より開始された「新高速乗合バス」制度 施行後に開業した高速バスターミナルで、従来の高速乗合バス事業者(旧路線バス系)と、旧ツアーバス系事業者が一堂に会することになり「高速バス新時代」を象徴する施設となった。乗り入れ路線は高速バスのみで、貸切バスツアーは対象外となっている。
国土交通省関東地方整備局が事業主体として施行した「新宿駅南口地区基盤整備事業」の一環で整備された交通ターミナルで、国土交通省が東日本旅客鉄道(JR東日本)に委託して工事が進められた。2006年4月8日に起工。2016年春に完成し、同年4月4日に供用を開始した。
新宿駅のうち「新南口」と称されていた甲州街道(国道20号)南側部分に建設された人工地盤上に、駅施設や歩行者広場、タクシー乗降場、高速路線バス関連施設を立体的に配置している。建設の経緯から立体道路制度を活用しており、3・4階および進入路については国道20号の一部となっているため、自動車ターミナル法が定めるバスターミナルの対象外となっている。
交通機関の乗降機能だけでなく、観光案内所(後述)や土産物店 を含む小売店舗が常設されている。さらに前面で地方物産の販売イベントが開かれることがある。
新宿駅南口・新南口と新宿跨線橋(国道20号)は駅前広場を介さずに直結しているため、新宿跨線橋上でタクシーの客待ちや一般車の乗降が行われ、東西に走り抜ける一般車の通行の妨げになり、渋滞や接触事故が起きやすい状態になっていた。また新宿駅の東西を結ぶ数少ない道路であることから歩道幅員が十分でなく、歩行者であふれてすれ違うことが困難な状況になっていた。また、新宿跨線橋そのものも1925年(大正14年)に架設されてから80年以上が経過して老朽化が進み、首都直下型地震が発生した場合に道路として機能しなくなったり、跨線橋下を通過する列車に多大な影響を与えたりするといったことが懸念されていた。
さらに新宿駅周辺の高速バスは運行会社の違いなどから西口を中心にバス停留所が19か所に分散し、利用者にわかりづらいとされていた。特に一部の停留所は新宿駅から遠く離れた道路上にあるため、鉄道からバスに乗り換える場合に長い距離を歩かなくてはならない場合があり、これら複数の交通機関が連携することに課題があった。
これらを踏まえ国土交通省が主体となって、新宿跨線橋の拡幅を伴う改築、新宿三丁目駅とJR新宿駅間の地下歩道建設を含めた一連の事業である「新宿駅南口地区基盤整備事業」 を実施。その一環として新宿跨線橋の南側に「新宿交通結節点」を整備し、鉄道駅や高速バス・タクシー乗降場などを1つの建物に集約することとなった。施工手順としては、先に新宿跨線橋の拡幅改築に必要な作業スペースを確保するため、線路上に約1.47ヘクタールの人工地盤の建設を行い、この上にバスターミナルを含めた「新宿交通結節点」の整備が行われた。
この事業をモデルに、バスターミナル、鉄道駅、タクシー乗り場などを集約して官民が連携して整備するプロジェクト、「バスタプロジェクト」を国土交通省主導で展開している。
建設段階では主に「新宿交通結節点」や「新宿南口交通ターミナル」と呼称されていたが、2015年に国土交通省が当ターミナルの愛称を公募により選定することとなった。公募の結果、日本国外からを含む1733件の応募があり、新宿南口交通ターミナル名称選定委員会によって「サウスクロス」「サザンデポ」「バスタ」の3候補に絞られた上で、最終的に愛称が「バスタ新宿」に決定された。「バスタ」という言葉を含む愛称を応募したのは30 - 80代の11人だった。
選定理由として「バス・タクシーの乗降場を中心とした立地特性をとらえており、交通の複合ターミナルであることをイメージできる」ことや、「誰からも呼びやすく覚えやすい言葉であり、末永く多くの人々に親しまれ、愛されることが期待できる」ことなどが挙げられた。また、応募者の命名理由として以下のものが挙げられている。
なお、「バスタ」は既にバイエルクロップサイエンスの除草剤の商標として使われ、発音が近い英語の「バスター」(buster)に「退治する者」の意味があり、スペイン語やイタリア語の「バスタ」(basta)には「いいかげんにしろ」「うんざりだ」といった意味もあるが、国土交通省は「濁音が耳に残り覚えやすいため、『バスタ』にした」と話している。また、ターミナル内における英語・中国語・韓国語の案内表示では「バスタ新宿」に相当する愛称は設定されておらず、「新宿高速バスターミナル」を翻訳した表記(英語はShinjuku Expressway Bus Terminal)を使用している。
また名称は「新宿」であるが、行政上の所在地は渋谷区となる。これは付近の国道20号に沿って区境が引かれ、国道20号より南側は渋谷区に属するためである。なお、新宿駅も新南口や甲州街道口などバスタ新宿側にある改札は渋谷区に位置する(向かい側にある新宿駅の大部分を占める南口や西口、東口方面は新宿区である)。
JR東日本の線路から上の2 - 4階部分が交通ターミナルとなっている。当ターミナル上部の5 - 7階にはJR新宿ミライナタワーの文化施設部分が建てられているほか、2 - 4階では隣接する同タワーの商業施設部分と接続している。各階の施設は以下のとおり。
3階にはロータリーがあり、タクシー乗車場が3台分、降車場が2台分、タクシープールが30台分設けられている。これに伴い、国道20号上のタクシー乗車場は廃止された。また、新宿4丁目交差点から西新宿1丁目の間は終日駐停車禁止となり、タクシーの乗降ができなくなった。
国道20号上には、新宿4丁目方面からの車両に対しては道路の左側に、西新宿1丁目方面からの車両に対しては中央分離帯に、それぞれタクシープールの満空表示器が設置されており、バスタ新宿に進入する前にタクシープールの空き状況が分かる。また、タクシープールの先頭車両の位置にはモニターがあり、乗車場の状況が確認できる。
3階に新宿区のコミュニティバスである新宿WEバスの乗降場が設けられている。停留所名は新宿南口交通ターミナルとなっている。これに伴い、国道20号上にあった新宿駅南口停留所は廃止された。
東京都の施設「東京観光情報センター」は都庁第一本庁舎をはじめ都内に5か所あり、うち1つがバスタ新宿3階に設置されている。外国人向けの旅行案内を日本語、英語、中国語、韓国語の多言語で行う ほか、バスタ新宿内の施設では、宅配・手荷物預かり、旅行商品・イベントチケットの販売、外貨両替のサービスを提供している。これらのサービス提供事業者は東京都の募集によって選ばれ、前者は海外配送の実績や長時間のサービス提供ができることなどが評価されて佐川急便が、後者は訪日外国人向けのツアーや扱う外貨の種類の多さなどが評価されてジェイティービーがそれぞれ選ばれた。営業時間は6時30分 - 23時00分。
前述のように当ターミナルはJR新宿駅の改札口と高速バスの乗降場が立体的に配置されていることから、JR線に限ればエスカレーターやエレベーターによる上下方向の移動のみで鉄道と高速バスの乗り換えができる。
自動車は2階のJR新宿ミライナタワーの東側にある出入口から進入し、同タワーを囲むようにして車路を登って3階に到達する。4階に発着する高速バスの場合はさらにスロープを登っていく。高速バスの在線管理にはETCを活用しており、車載器に登録されたバス事業者などの情報から4階への進入が可能と判断された場合のみ、スロープの手前にあるゲートが開くようになっている。また、4階の管制室ではETCで捕捉された高速バスの位置情報が確認でき、それを基に適宜発着場所の変更などの指示を出している。
当ターミナルと国道20号の接続部分の交差点では新たに信号機が設置され、国道側にはターミナルへの進入用に右左折レーンが設けられた。またターミナル内の車路は、入口レーンは1車線、出口レーンは四谷方面へ出る右折レーンが1車線、初台方面へ出る左折レーンが2車線となっている。3階にはロータリーを走る自動車と4階から下ってきた高速バスが合流する箇所があるが、すべて前者の側にのみ一時停止義務が課せられている。
なお、計画段階では送迎用の一般車も受け入れる予定だったが、混乱を避けるため現状では進入禁止となっている。
鉄道各線からのアクセスは以下の通り。
前述のとおりバスタ新宿の3階の一部と4階は高速バスターミナルとなっている。当バスターミナルには新宿駅周辺に点在していた高速バスや空港リムジンバス事業者の停留所が集約された。そのため、乗り入れるバス事業者数118社、1日の発着便数最多1625便、高速バス用の停留所数15か所(いずれも開業当初) という日本最大規模の高速バスターミナルとなっている。当ターミナルとは、東京都を含めた39都府県が結ばれている。
ただし、新宿地区発着の高速バス路線が完全に集約されたわけではなく、一部の便は従前通り新宿駅西口に発着している。
交通ターミナルの愛称は「バスタ新宿」だが、バスターミナルとしての正式名称は「新宿高速バスターミナル(しんじゅくこうそくバスターミナル、Shinjuku Expressway Bus Terminal )」である。
ただし、時刻表や乗車券の券面表示などでは「バスタ新宿(新宿駅新南口)」 や「新宿南口(バスタ新宿)」 などのように、「バスタ新宿」の文言を用いて表記されることもある。
3階にはタクシー乗降場と共に高速バスおりば(降車場)が3面設けられており、新宿WEバス乗降場の隣に1面、タクシー待機スペースを挟んで南側に2面ある。
4階の高速バス・空港バスのりばには、ターミナル・フロア中央部を囲むよう四辺にAからDのエリア表示がある。各エリアにはそれぞれ3か所、合計12か所の乗降場所が設けられている。11台分のバス待機場 も設置されている。各エリアはバスの行き先や種類で集約され、概ね以下のようになっている。
AエリアとBエリアの間の角(南東角)にインフォメーションカウンターとコインロッカーが、ミライナタワーと直結するBエリアの背後(東側)に待合スペースと発券カウンター・自動券売機が設けられている。発券カウンター・自動券売機はハイウェイバスドットコム・高速バスネット・発車オ〜ライネットの各予約システムとリムジンバスに対応し、これ以外(ツアーバスからの転換事業者など、発車案内の空席表示がネット発売と表示されている便)の発券には対応しない。
当バスターミナルの公式ウェブサイト や、乗り入れバス事業者 の各々の公式ウェブサイト・予約サイトなどに掲載されている出発路線は以下のとおりである。なお、前述の通り以下に記載がある路線においても一部の便は当ターミナルに乗り入れない。新型コロナウイルス感染拡大の影響で2021年12月時点でも運休、減便となっている路線が多くあるので要注意。
国土交通省が発表した主な期間のバスタ新宿における高速バス利用者数と便数は以下の通りである。
当バスターミナルの開業に向けて、日本バス協会およびジェイアールバス関東、京王電鉄バスなど新宿駅周辺に乗り入れる主要バス会社11社の出資により、新宿高速バスターミナル株式会社(しんじゅくこうそくバスターミナル、Shinjuku Expressway Bus Terminal Co., Ltd. )が2014年(平成26年)12月2日に設立された。資本金2000万円のうち日本バス協会が50%、バス会社11社が残り50%を出資した。同社は発券窓口運営、旅客・交通誘導、乗入ダイヤ調整、利用料の設定、新規乗入の承認といった当バスターミナルの管理・運営を行う。
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