ブリュッセル連続テロ事件(ブリュッセルれんぞくテロじけん、英: 2016 Brussels bombings)は、2016年3月22日に、イスラム過激派のテロ組織であるISILによって行われたテロ攻撃。ベルギーの首都ブリュッセルのブリュッセル国際空港及び地下鉄マールベーク駅において発生した連続爆破テロ事件である。ベルギー連続テロ事件とも。
計5人の襲撃犯が空港と地下鉄に爆弾を持ち込み、そのうち3人が自爆テロで死亡、残りの2人は爆弾を爆発させずに立ち去ったが、犯行から16日後に逮捕された。事件後、過激派組織ISILは「ISILに対する攻撃への代償として、十字軍同盟は暗黒の日々を迎えることを思い知らせる」と犯行声明を明らかにした。また、犯行声明では「戦闘員たちが爆弾ベルトで一連の爆破を実行した」とし、「ベルギーが(IS掃討の)有志連合に参加している」とも述べている。
これについて、2015年11月のパリ同時多発テロ事件において指名手配されていたベルギー出身の実行犯の1人が3月18日に強制捜査(en:2016 Brussels police raids)で逮捕されており、今回の爆発はイスラム過激派による報復テロではないかと見られている。
この攻撃で自爆テロ犯3人を含む35人が死亡、340人以上が負傷した。空港襲撃では16人が死亡、地下鉄襲撃でも同じく16人が死亡した。第二次世界大戦以来、ベルギー最悪のテロとなった。
犠牲者のうち17人はベルギー人(二重国籍の3人を含む)で、残りは外国人だった。外国人被害者は、米国、オランダ、スウェーデン、ドイツ、英国、ポーランド、中国、インド、ペルーなど様々な国の出身だった。年齢は20歳から79歳まで幅広い。
空港での犠牲者の中には、ベルギーの国連常任代表や駐米大使を務めた元外交官のアンドレ・アダム氏も含まれていた。
事件から6年後の2022年、事件発生時に空港にいた23歳のベルギー人女性が精神的苦痛を理由に安楽死を決意した。
今回の爆発を受け、ベルギー政府はベルギー国内全土におけるテロ警戒レベルを最高に引き上げた。
欧州連合本部に勤務する全職員らに外出を控えるよう指示した。
ブリュッセル地域を走る地下鉄や国鉄の主要駅は閉鎖され、バスや路面電車などすべての公共交通機関を停止させた。
ベルギーの南部にあるティアンジュ原子力発電所の作業員を避難させている。
ブリュッセルでのテロはヨーロッパにおける国境を越えた人の移動、寛容政策、言論の自由に対する大きな打撃となった。
パリ同時多発テロ事件で公衆が理解するようになったことだが、人の自由な行き来を可能にすることでテロリストも自由に移動できるようになった。 もちろん、警備のない街道でランダムにおこるテロを防ぐのは難しく、けれども今回のテロは空港や地下鉄といった(政府によって)コントロールされる空間で起こった。それらの区域は本来は旅行者にとって安全であるべき区域でもある。 パリの事件でもそうだったように、ブリュッセルのテロでも欧州に流入してきた移民に紛れてテロリストが入り込んでおり、それらがテロに関与した可能性が指摘された。移民や多文化共生といったものに寛容な姿勢はリスクを深刻化させる結果となった。
EUとトルコの間で交わされた協定では不法移民を「安全な第三国」トルコへ強制送還することになっている。 (その見返りにトルコ国民はシェンゲン域内をビザなしで移動できるようになる。)これに対しUNHCRやアムネスティ・インターナショナルなどがこの協定は国際法とEU法に違反するとして非難した。
フランスやスペインもこの協定に懐疑的だったが、今回のテロ攻撃によって移民をトルコに強制送還するという協定がより多くの公衆から支持されるようになった。
イギリスは2016年6月にEUからの離脱の是非を問う国民投票を行うことが決まっていた。今回のテロはイギリス有権者の心理に疑いという種を播くことになる。イギリスのデーヴィッド・キャメロン首相らEU残留派は、EUはイギリスをより安全にすると主張している。 だが、攻撃が起こる度にEUはイギリスをより安全にするという説は非現実的となり、今回のテロ攻撃はイギリス有権者にイギリスの国境の後ろに退却するよう促すこととなった。
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