中津市(なかつし)は、大分県北西部にある市である。1929年(昭和4年)市制施行。
大分県内では大分市、別府市に次いで人口が3番目に多い自治体である。城下町であり、青の洞門、羅漢寺、福澤諭吉旧居、中津城などの文化財や歴史的建造物、市域南部には景勝地の耶馬渓がある。
中津市は旧豊前国にあたるため、福岡県の旧豊前国である北九州地区(北九州市、行橋市、豊前市、築上郡、京都郡など)との結び付きが強く、福岡県からの通勤・通学人口が非常に多い。特に旧上毛郡地域であった豊前市、上毛町、吉富町は、古くは旧下毛郡と合わせて三毛郡というひとつの郡であったため、中津市との関係が深く、経済・文化・生活面で中津市と一体である。そのため、山国川を挟んで隣接する福岡県吉富町・上毛町は、築上郡の中心都市である豊前市との合併を拒否して中津市との越境合併を視野に入れている。経済的に北九州都市圏の中にあり、同都市圏の5パーセント通勤圏であるが、小都市圏である中津都市圏(約217,000人)の中心都市としての役目も担っている。また南部の山国町は、中津市街地よりも日田市の方が距離的に近いため、後者との結びつきが強い。
2004年(平成16年)末にはダイハツ車体の本社・工場を移転したことで、自動車関連工場の集積が進んでいる。2015年(平成27年)3月1日、東九州自動車道の中津ICが開設された。
瀬戸内海式気候のために温暖で、年間降水量も九州では少ない地域である。市内北東部の野依新池では環境省のレッドデータブックで絶滅危惧I種に指定され、生息が壊滅状態となっているベッコウトンボの個体群が繁殖している。山国川上流の耶馬溪町に位置する耶馬溪ダムは、北九州地区および大分県北部の水がめとしての役割を担う。
国道10号南側には条里制による条里地割の跡が現存しており、古代から中津平野の開発が行われていたことがわかる。
日本神話に出てくる豊葦原中国(とよあしはらのなかつくに)はこの地であり、豊の国や中津という地名はその名残であるとする説があるが、一般に受け入れられていない。
城下町としての歴史は、1587年(天正15年)に黒田孝高が豊臣秀吉から豊前6郡(京都・築城・仲津・上毛・下毛・宇佐)の16万石と馬ヶ岳城(福岡県行橋市)が与えられた後に、拠点を山国川河口部に移し中津城を築城したところから始まる。市街地がほぼ完成したのは1600年代中頃とされる。城主は後に細川氏・小笠原氏を経て、1717年(享保2年)に奥平氏が入封し明治維新を迎えることになる。
廃藩置県により現在の市域は中津県となり、その後小倉県から福岡県となったが、1876年(明治9年)8月21日に福岡県のうち宇佐郡と下毛郡が大分県に編入され、中津支庁が設置されたことで大分県北の中心地として重要性を帯びるようになった。
近代工業の始まりは1879年(明治12年)から1880年(明治13年)にかけて工場が設置されたのが最初とされ、1890年代には繊維工業が集積するようになった。1929年(昭和4年)に大分県で3番目に市制を施行した。
1944年(昭和19年)には神戸製鋼所が進出し、第二次世界大戦後の重工業化のきっかけとなった。1970年(昭和45年)頃までは鉄鋼業と衛生陶器製造(TOTOおよび関連企業)が特に盛んであった。1970年代後半からは自動車関連工場の進出が中心となり、1984年(昭和59年)には豊の国テクノポリスの中心都市に指定された。
中津市にはから揚げを売る店舗が多く、惣菜店・肉屋以外にもから揚げ専門店がある。中津市はから揚げを扱う店舗を掲載した「からあげマップ」を作成しており、観光案内所でも同様の地図を配布している。
交通面では、小倉方面(中津街道=国道10号)、大分方面(日向街道=国道10号)、耶馬渓・日田方面(日田往還=国道212号)の分岐点である。また市内中心部から大分市まで車で1時間30分、北九州市まで車で1時間弱の距離にある。2015年3月には東九州自動車道、中津ICが開通した。また大分県道23号中津高田線はダイハツ車体の移転に伴い、片側2車線に拡幅されている。
2004年(平成16年)3月まで西鉄バス京築の中津支社が中津駅北側に所在し、行橋市(かつては北九州市小倉北区砂津や福岡市中央区天神まで)や上毛町(旧大平村)友枝方面に路線バスを走らせていたが、沿線自治体が補助金を打切ったために不採算路線として廃止された。
コミュニティバス
定期旅客航路は存在しないが、1971年(昭和46年)に宇部・中津フェリーが宇部港(山口県宇部市)を結ぶフェリー航路の運航を九州海運局に申請していた。500トンフェリー2隻を用い1日8往復、所要時間は1時間30分、航路距離は38キロメートル、積載能力は1便あたりトラック4台、乗用車10台、旅客300人の計画であった。
中津市(2005年の合併以前の地域)は大分県と福岡県の県境付近にあり、山口県とも周防灘をはさんで近接していることから、テレビ放送は3県の、FM放送は4県のものを受信できる。なお、ケーブルテレビ局では在福民放5局を区域外再放送していたが、旧市内は大分ケーブルテレコムとの合併により、KBCテレビとRKB毎日放送が除外された。旧下毛郡域は現行どおり全在福局を受信できる。
2005年9月17日には、大分県初のコミュニティ放送局「エフエムなかつ」が開局した。
中津市街地では、2008年3月25日にデジタル放送を開始した中津局のほか、福岡県(北九州局・行橋局・大河内局)、山口県(山口局)のデジタル放送の電波も届いており、視聴可能である。
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