![ウォッチメン (テレビドラマ) ウォッチメン (テレビドラマ)](/modules/owlapps_apps/img/nopic.jpg)
『ウォッチメン』(Watchmen)は、アラン・ムーアとデイヴ・ギボンズによるDCコミックスの同名のシリーズを原作としたアメリカ合衆国のテレビシリーズである。シリーズはデイモン・リンデロフがHBOの下で発案し、リンデロフは製作総指揮と脚本も兼任した。シリーズはレジーナ・キング、ドン・ジョンソン、ティム・ブレイク・ネルソン、ヤーヤ・アブドゥル=マティーン2世、アンドリュー・ハワード、ジェイコブ・ミング=トレント、トム・マイソン、サラ・ヴィッカーズ、ディラン・ションビング、ルイス・ゴセット・ジュニア、ジェレミー・アイアンズ、ジーン・スマートらが出演する。
リンデロフはシリーズを原作コミックの「リミックス」と例えており、リブートではなく『ウォッチメン』の連続性の中で新たな物語を作成し、新たなキャラクターを導入したいと考え、原作から34年後の架空世界が舞台となる。シリーズではロバート・レッドフォードがアメリカ合衆国の大統領となっている2019年のオクラホマ州タルサでの人種的緊張を取り巻く事件(タルサ人種虐殺)に焦点が当てられており、第7機兵隊と呼ばれる白人至上主義団体と彼らと戦う覆面の警察たちが描かれる。シスターナイトという別名で活動するアンジェラ・エイバー刑事(キング)は友人であり上司のジャッド・クロフォード(ジョンソン)の殺人事件を捜査し、ヴィジランティズムをめぐる状況に関する多くの謎に出くわす。新たなキャラクターに加えて、ドクター・マンハッタン、シルク・スペクター、オジマンディアスといった原作のキャラクターも登場する。
シリーズ初回は2019年10月20日に放送され、第1シーズンは全9話構成で同年12月15日に完結した。
『ウォッチメン』はコミックから34年後のアメリカを舞台としている。
かつてヒーローとみなされていた自警団たちがその暴力性故に非合法化されている1985年、オジマンディアスという名のヒーローとして知られたエイドリアン・ヴェイトはイカのようなエイリアンによるニューヨークへの偽装攻撃を実行して数百万人を殺害することで米ソの共通の敵を生み出し、核によるホロコーストの脅威を強制的に取り除いた。このヴェイトの行動は世界平和を実現する上で仕方のなかったことという事で片付けられ、ウォッチメンのメンバーは国民達からこの陰謀を隠蔽する事に同意したが、メンバーの中でただ一人、ウォルター・コバックス/ロールシャッハのみこの同意を受け入れなかった。ジョナサン・オスターマン/Dr・マンハッタンは新たに価値を見出した生命を生み出すべく地上から去り、またヴェイトの陰謀を暴露しようとしたロールシャッハは地球を去る前にマンハッタンによって気化されてしまうが、彼はオジマンディアスの基地を向かう以前に自分の日誌を編集社『ニュー・フロンティアズマン』に送る事で世間への告発という目標を達成したのであった。
物語は2019年のオクラホマ州タルサで幕を開ける。ニクソン大統領は任期を全うし勇退、その後、ロバート・レッドフォードが大統領に当選すると、社会は一気にリベラル派の波に飲み込まれ、タルサ人種虐殺の遺族に対する賠償金の支払いや、SNS、スマートフォンの使用が禁止など、白人至上主義者の憎悪を煽る事態となってしまった。 そんな社会に反旗を翻すべく白人至上主義団体である第7機兵隊(Seventh Kavalry)はロールシャッハのマスクを被り、少数民族や人種差別被害者を守る警察と対立し、アメリカの社会は更に分断されていくのであった。2016年のクリスマスイブに発生した「ホワイト・ナイト事件」では機兵隊により40人のタルサの警察官の家が攻撃を受けた。。辛くも生き延びたアンジェラ・エイバー刑事とジャッド・クロフォード署長はタルサ警察を再建するも、彼らは職務中はマスクをして正体を隠した自警団として機兵隊と戦うこととなる。そう、まるでかつてキーン条約で禁止されたヒーロー活動をする様に。
※括弧内は日本語吹替
『ウォッチメン』のテレビシリーズ化の噂は2015年10月頃に流れ、HBOが2009年の映画を監督したザック・スナイダーとの予備会談を行った。2015年11月にHBOはウォッチメンのテレビシリーズを企画中であることを認めた。
2017年6月までにスナイダーの製作への関与は無くなり、HBOは新たにデイモン・リンデロフとの交渉を始めた。リンデロフによると、彼はティーンエイジャーの頃にコミックを読んで依頼ずっと『ウォッチメン』の製作に興味を持っており、少なくともこれ以前に2度脚本執筆の話があったが、彼はスナイダーの映画の直後のオファーを拒否し、彼はそれを改良できないと感じていた。その間、彼は2014年から2017年にかけてHBOのシリーズ『LEFTOVERS/残された世界』を製作していた。『LEFTOVERS』は高い評価を受け、リンデロフが受けた『ウォッチメン』のシリーズ執筆の更に別のオファーに繋がった。
シリーズの脚本執筆は2017年9月19日に始まった。後日、HBOはパイロット版の製作と残りの脚本の執筆のグリーンライトを出した。2018年1月30日、ニコール・カッセルがパイロット版の監督に就任し、また彼女はリンデロフと共に製作総指揮も務めることが発表された。パイロット版は2018年6月中にジョージア州アトランタで撮影された。
2018年8月17日、HBOはフルシーズン分のグリーンライトを出し、2019年内に放送が始まることを発表した。パイロット版の撮影から残りのエピソードの間、新しい製作スタッフが加わり、カッセルは必要な継続性を与えるために第2話でも引き続いて監督を務めた。2019年9月3日、初回が2019年10月20日に放送されることが発表された。
2019年12月11日時点でHBOは第2シーズンへの更新を表明していないが、リンデロフはもしあったとしても、おそらく自分は続投せず、代わりに他のプロデューサーが他のストーリーをこの世界観で語ることになるだろうと述べた。リンデロフは番組は「私の物語ではない」、そして「これらの9つのエピソードはこの時点で『ウォッチメン』について話さなければならない全てのことだ」と感じていた。リンデロフは『ファーゴ』や『TRUE DETECTIVE』などが各シーズンでそれぞれ独立した物語であるのと同様に第1シーズンを完結する物語として製作した。第1シーズン最終回の放送後、リンデロフはシーズン中に自身が伝えた物語は、明確な始まり、中盤、終わりまで、『ウォッチメン』について提案できるすべてのものであると述べた。しかし彼は『ウォッチメン』は連続シリーズとして扱われるべきであり、復帰を否定しないものの、契約する前に同様に完璧な物語を作り上げる時間を望む方針でHBOと同意した。
番組ではコミックをアラン・ムーアと共に執筆したデイヴ・ギボンズがキャラクター創造者としてクレジットされた。ムーアはDCコミックスとの不和により、同社時代に執筆した『ウォッチメン』を含むあらゆる作品でのクレジットを拒否している。リンデロフはムーアに番組への賛成を求めたが、拒否された。一方でギボンズは番組への積極的な貢献者であり、リミテッドシリーズと同様のスタイルのイラストを提供した。
リンデロフはこのシリーズに対する自身のビジョンがコミックの「リミックス」になることであると述べた。番組はコミックの続編であるが、彼はリブートを製作せずにその世界の一部を感じられる彼自身による物語を望み、これが最初のエピソードから明白であることを明かした。彼はこのアイデアを2018年5月22日に投稿されたファンへの公開書簡で明かした。リンデロフは、アンジェラをすべての中心となる人物だと考えていたため、リミテッドシリーズのキャラクターを使用することでアンジェラの物語を補助し、彼女が焦点を維持できるようにしなければならなかった。
リンデロフにとっての最初の課題の1つは物語の焦点が何であるかを決定することであった。彼は原作コミック『ウォッチメン』は出版当時まだ進行中であった冷戦に対する市民の不安が反映されていると考えた。リンデロフは現代の同様の不安を探求し、歴史上及び現在の対立を提示できる人種間の緊張が『ウォッチメン』世界にとって上手く機能する同じタイプの大局をもたらすものであると判断した。彼はまた「2019年の政治的テキストの文脈で人種ついて論じないことはほとんど無責任」であると感じていた。人種問題を中心的なテーマとして確立したリンデロフはそれらの問題に対する適切な視点を提供するために意図的に多様な脚本家を集め、半数を黒人または女性とした。
リンデロフはタナハシ・コーツによる2014年の『ジ・アトランティック』の記事「The Case for Reparations」に触発されて1921年のタルサ人種暴動の要素をパイロット版に取り入れることを決めた。暴動への興味が強いリンデロフはそれに関する情報がほとんどないことを知り、より研究を進めた。プロットの多くの側面は、グラフィックノベルの遺産とこの事件に集中している。これは彼が『ウィッチメン』のテレビシリーズの脚本執筆を依頼された頃であり、虐殺と平行世界の現在へのその影響を感じ、世界終末時計が原作コミックシリーズであったのと同等の要素を与え、シリーズの中心的要素として人種対立が使用された。彼はまたこれがより多くの人々が1921年の事件について学ぶのを助けるだろうと信じ、グリーンウッド地区を破壊を目的とした空爆を含めて正確に描写されることを明かした。
番組内の番組である『アメリカ英雄物語』(American Hero Story)は元覆面ヒーローの1人であるフーデッド・ジャスティスのバックストーリーを伝えるために使われた。リンデロフはそれをライアン・マーフィーのシリーズ『アメリカン・ホラー・ストーリー』と『アメリカン・クライム・ストーリー』を彷彿とさせるように作っており、マーフィーを本人役で『アメリカ英雄物語』のプロデューサーとして出演させることすら考えていたと述べた。これは頓挫したものの、それでも彼は『アメリカ英雄物語』をマーフィー作品のように扱い、そのプロデューサーをマーフィーのように秘密的で隠遁的にした。『アメリカ英雄物語』はコミックのファンの多くから叩かれたザック・スナイダーによる2009年の実写映画版のパロディであると一部の批評家からは指摘されたが、リンデロフはその意図は無いと断言した。リンデロフは「私は映画作家として(スナイダーを)高く評価しているので、否定的なコメントとして使われることは不快に感じる。これら(『アメリカ英雄物語』のシーン)でやりたかったことは『これは私たちが作ることができたバージョン』であり、そして私たちは実際にはそのバージョンは作らなかったということだ。私たちはより現実的なルイの自然主義の話に基づいている。
2018年5月23日、レジーナ・キング、ドン・ジョンソン、ティム・ブレイク・ネルソン、ルイス・ゴセット・ジュニア、アデレイド・クレメンス、アンドリュー・ハワードがパイロット版にキャスティングされたことが発表された。2018年6月、ジェレミー・アイアンズ、トム・マイソン、フランシス・フィッシャー、ジェイコブ・ミング=トレント、ヤーヤ・アブドゥル=マティーン2世、サラ・ヴィッカーズがパイロット版にキャスティングされたことが報じられた。2018年8月7日、さらにディラン・ションビング、アデリン・スプーン、リリー・ローズ・スミスがパイロット版のキャストに加わったことが発表された。2018年11月、ジーン・スマートがメインキャストとして出演し、さらにジェームズ・ウォークがリカーリングとなることが報じられた。またアイアンズがエイドリアン・ヴェイト / オジマンディアス、ネルソンが新キャラクターのルッキンググラスを演じ、ヴィッカーズとマイソンもメインキャストに加わることが明らかとなった。2019年1月、ホン・チャウとダスティン・イングラムがリカーリングキャストとなることが発表された。
パイロット版や他のシーンでのキャストの演技は番組後半のエピソードの脚本に影響を与えた。アイアンズがパイロット版の撮影に臨んだ際、リンデロフたちは彼がコメディの方向性でヴェイトを演じていたことを発見した。彼らはこれでヴェイトの役割が「少し無茶で滑稽」であると認識し、後のエピソードを執筆する際にそれに拘った。
2019年7月の報道ではロバート・レッドフォードがフィクション化されたバージョンの本人役でシリーズに出演することが伝えられていたが、リンデロフは後に彼本人の出演を否定した。レッドフォードは劇中で大統領に就任したという設定である。
2018年9月20日、トレント・レズナーとアッティカス・ロスがシリーズの作曲家を務めることが発表された。シリーズの音楽を検討するに当たり、リンデロフはそれまでテレビ用に作曲した経験の無いレズナーとロスの起用を考えていた。そして偶然にもリンデロフがHBOが2人を提案した際、その数日前に『ウォッチメン』の大ファンだった2人が作曲家を務めるためにHBO側に接触していたことが報じられた。レズナーは自身とロスがリンデロフの前作のファンでもあるために自作を提供しようとしたと述べた。レズナーとロスはパイロット・エピソードの撮影前にすでにそれ用の曲を準備していたため、リンデロフはそれを上手く組み込むことが出来た。レズナーによると彼らの初期の曲は番組のために「攻撃的で、ある種の滑らかな音色」に作り上げていたが、第1シーズンを通して音色を変化させることでシリーズに適合した。
第1シーズンに併せてレズナーとロスは番組の3種の音楽アルバムをビニル版とストリーミング版で発売することを計画した。アルバム第1弾は2019年11月4日、続いて11月25日と12月16日に発売される。
パイロット版の主要撮影は2018年6月1日にジョージア州アトランタで始まった。1ヶ月の間にメイコン、ファイエットビル、ニューナン、パルメット、ブルックス、タッカーなどで撮影された。2018年10月、第1シーズンの残りのエピソードの撮影がジョージア州で始まった。同月中のロケ地にはパルメット、ブルックヘイブン、ピーチツリーシティ、ディケーター、チャンブリーのMARTA駅があった。2018年11月、ロケはパルメット、チャンブリー、マクドノー、ウェストレイクMARTA駅に移った。2018年12月、ユニオンシティ、ニューナン、ジョージア世界会議センターで撮影が行われた。
田舎の邸宅の場面の撮影は別作品として扱われ、原作コミックの中に登場したコミック作品『Tales of the Black Freighter』と似たものとなる。これらの場面の撮影は2018年9月にウェールズのペンリン城で行われた。トム・マイソンによると、これらは残りのエピソードの脚本がほぼ完成する前に終わった。リンデロフによるとこれらの場面は「そのアイデアはエイドリアン・ヴェイトの脱出物語の役割であり、イーストウッドの『アルカトラズからの脱出』よりもワイリー・コヨーテとロード・ランナーに似ており、美味しすぎて止められない」ものである。HBOは第3話までアイアンズのキャラクターをヴェイトではなく「Lord of a Country Manor」と発表していた。リンデロフは番組がコミックの続編とみなされるのを避け、またロールシャッハの正体というコミックのストーリーテリング上の謎に合わせるためにヴェイトの正体を秘密にする道を選んだ。
批評家の反応は概ね好調であり、レビュー・アグリゲーター・サイトのRotten Tomatoesでは86件のレビューで支持率が96%、平均点は8.37/10であり、「大胆で荒々しい『ウォッチメン』は必ずしも簡単に見ることができるわけではないが、文化的なコンテキストの新しい層と複雑なキャラクターを追加することで、その素材を巧みに構築して独自の印象的なアイデンティティを作り上げている」とまとめられた。Metacriticでは33件のレビューで加重平均値は85/100と示された。
『デイリー・ビースト』は不満意見の多くが原作コミックの扱いについてであり、特にロールシャッハがテレビシリーズの物語に与えた影響であると指摘した。ムーアはロールシャッハをスティーヴ・ディッコがオブジェクティビズムを促進するために使ったキャラクターであるクエスチョンやミスター・Aなどの極端な解釈として描いており、ムーアはその哲学に基づいてロールシャッハを右翼的なキャラクターとし、そしてロールシャッハが『ウォッチメン』のヒーローとみなされることを意図していなかった。一部のファンからはテレビシリーズではロールシャッハのヒーロー性が尊重されていないと指摘された。
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