石油備蓄(せきゆびちく)とは、オイルショックに代表される石油の急激な価格変動・戦争などによる石油供給量の減少に備えて、石油を備蓄すること。民間企業がリスク低減の一環として行うこともあるが、国の運命を左右しかねない貴重な物資という観点から、国家自身が戦略的に大規模な施設を建設して行うことが多い。
日本では民間備蓄と国家備蓄、産油国共同備蓄の3つの方式で石油備蓄が行われている。
民間備蓄とは、民間企業が石油流通の施設に在庫を多めに持つ方式で、原油と石油製品を石油タンクなどに備蓄し、随時入れ替えを行っている。
国家備蓄とは、国が備蓄基地を建設し原油の形で封印保管するもので、経済産業大臣の指示のあるときのみ出し入れを行う。
産油国共同備蓄とは、政府の支援の下、日本国内の民間原油タンクを産油国の国営石油会社に貸与し、平時は当該社が東アジア向けの中継・備蓄基地として利用してもらい、我が国への原油供給が不足する際は、当該原油タンクの在庫を国内向けに優先供給するものである。
2021年9月末の時点では、国家備蓄・民間備蓄・産油国共同備蓄を合わせ、製品換算量ベースで約7,425万キロリットル・約224日分を備蓄している 。 2017年3月末当時は、国家備蓄・民間備蓄・産油国共同備蓄を合わせて約8,104万キロリットル・約208日分を備蓄していた。 国の備蓄基地は独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構が管理している。
備蓄基地は重要性とは裏腹に、建設にあたってはNIMBY(忌避施設)として住民から反対運動を起こされるケースがほとんどである。この為、石油備蓄基地は工場地帯や僻地などで建設されることが多い。また、施設についても陸上のタンクばかりでなく、洋上に係留したタンカーによる備蓄や地下岩盤への備蓄など、多様な手段が取られる。
アメリカ合衆国エネルギー省は、石油の戦略備蓄を行うためにメキシコ湾岸に以下の基地を運営している。
アメリカ合衆国は計画量で約1億1156万キロリットルの石油備蓄を有し、公表値としては世界最大である。計画量の備蓄が達成されると、60日分の石油輸入量に相当する。この他に200万バレルの北東部家庭用ヒーティングオイル備蓄を保有する。
アメリカ合衆国は世界最大のエネルギー生産国でもあり、石油備蓄は価格安定の為に放出するだけで無く、時には備蓄も行う。2020年4月に原油価格が暴落し、トランプ大統領はWTI先物価格がマイナスになる事態を受けて、同年4月20日に石油備蓄を最大7500万バレル積み増す方針を明らかにした。
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