クルーズ客船における2019年コロナウイルス感染症の流行状況(クルーズきゃくせんにおける2019ねんコロナウイルスかんせんしょうのりゅうこうじょうきょう)では、クルーズ客船「ダイヤモンド・プリンセス」および「グランド・プリンセス」船内における新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の集団感染を中心に、その他のクルーズ客船や船舶の対応・状況などについても扱う。
2020年5月1日の時点で、乗船する計3,711人の乗客・乗務員のうち、712人が感染し13人が死亡する感染事故となった。
2020年7月14日、感染者全員が退院した。
イギリス船籍のクルーズ船・ダイヤモンド・プリンセスは、2020年1月20日に日本の横浜港を出発、鹿児島、香港、ベトナムのトゥアティエン=フエ省、台湾の基隆市、沖縄を周遊して、2月3日に横浜港に帰港した。
1月25日、乗船中の1月23日から咳などの症状を呈していた乗客(80歳男性)が、香港で下船した。この乗客は、下船後の1月30日に発熱、香港で2月1日に新型コロナウイルス陽性であることが確認された。
2月3日夜に横浜港の大黒埠頭沖に停泊した。当該客船は2月1日に那覇港で検疫を受けていた、しかし、船内で乗客の発熱が報告されていたことから、2月3日から2月4日にかけて船内で検疫官による健康診断が行われ、船内の有症状者と濃厚接触者からCOVID-19検査に必要な検体が採取された。
2月4日夜、運航会社のプリンセス・クルーズが乗客の下船を延期する旨を公表、加えて次回クルーズの運航中止を顧客に通知した。ダイヤモンド・プリンセスには、56カ国の乗客2,666人と1,045人の乗務員、計3,711人が船内に乗船していた。
2月5日、ダイヤモンド・プリンセス船内において10人の感染者が確認され、日本の感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(感染症法)に基づき、神奈川県内の医療機関に全員搬送された。また、同日午前7時から、クルーズ船に対して14日間の検疫が開始された。
これ以降、以下の通り2月11日を除く毎日、感染が確認されており、船内での感染者数は2月13日現在で218人となった。河野太郎防衛大臣の2月8日付ツイートによると、アメリカ政府から、船内に留まる方が感染拡大を防ぐための最善の方法であるという米衛生当局の判断に基づく申し出があり、日本はこの提案を受け入れたことが明らかとなっている。防衛省が自衛隊を派遣、長期化する船での生活に備えて、2月6日から乗客乗員へ向けた生活物資や医療などの支援活動を行っている。
2月10日、前日までに乗船者336人のうち感染者70人が確認されたことから、運航会社のプリンセス・クルーズがクルーズ費用の払い戻しを決定した。厚生労働省は乗客乗員全員に対して下船する際のウイルス検査の実施を検討している。
14日間の隔離期間終了間際の2月14日頃から、各国がチャーター機の手配を開始し、16日現在、米国、イスラエル、台湾、香港、カナダなどが申し入れを行っている。また、クルーズ船から下船する予定の乗客乗員らを19日未明から愛知県岡崎市の開院前の藤田医科大学岡崎医療センターに順次移送した。同センターには計128人が搬送された。
2月18日、神戸大学病院感染症内科の岩田健太郎教授は災害派遣医療チーム (DMAT) の一員としてダイヤモンド・プリンセスに乗船した。岩田は自身のYouTubeチャンネルで船内で安全な場所と安全でない場所を区別できておらず、感染対策がほとんどなされていないと訴え、その日のうちに船外に出されたと主張した。しかし、その翌朝「ご迷惑をおかけした方には心よりお詫び申し上げます」とツイートし、自ら動画を削除した。
2月19日までに船内3011人のウイルス検査が終了した。WHOの健康観察期間(14日間)を発熱等の症状がなく経過し、陰性と判定された乗客の下船が認められ、2月19日から21日にかけてこれに該当する乗客が下船した。下船後は専用バスで複数のターミナル駅まで移動し、それぞれ公共交通機関などで帰宅している。
乗客の下船について厚生労働省は、「14日間に症状がなく検査で陰性であれば下船しても問題ない」という見解を示しており、加えて同省は船内で最初に感染者が確認され検疫が実施された5日以降、船内での感染が広がっていないと判断した。加藤勝信厚生労働相は15日の記者会見で、「基本的にはそうした(感染防止措置をとる)前の段階で感染があり、発症したと我々は見ている」と述べ、検査で感染が確認された乗客はいずれも5日より前に感染したとの見解を示した。一方、防止策が不十分で検疫実施による5日の室内待機以降も感染が続いていた可能性がアメリカ疾病予防管理センター(CDC)や国立感染症研究所などにより指摘されている。厚生労働省は検査が陰性だった人は日常生活に戻っても問題がないと判断した一方で、アメリカやオーストラリアなどは自国に戻った乗客をさらに14日間隔離する措置を取った。
2月22日、船内で業務をしていた厚生労働省の職員のうち、発熱などの症状が無かった職員の多くは終わったあと、ウイルス検査を受けずに職場に復帰していたことが判明したが、同日一転して該当する職員41人の検査を実施した上で2週間の自宅勤務とする方針を明らかにした(翌日にはそれまで無症状で船内業務を継続していた職員1人の体調が悪くなり、感染が確認されている)。また、ウイルス検査で陰性であったため、下船した970人の乗客乗員のうち、23人は下船に必要な検査を行っていなかったことも分かった。
同日、検査で陰性だったため下船した栃木県在住の女性の感染を確認(下船者で初の感染確認)、さらに2月25日、同じく下船した徳島県在住の女性の感染が確認された(いずれも検査漏れのあった23人には含まれない)。下船者の中からは26日以降も感染者が出ており、26日時点で45人に発熱などの症状があり、29日までに計6人の感染が確認されている。
3月になると、7日までにさらに4人の下船者の感染が確認されている。うち秋田県在住の男性は船内で感染が発覚後、東京都内の医療機関に一度入院していたが、2回の検査で陰性となり胸部レントゲン検査でも異常がみられなかったことから退院し、自宅のある秋田県に戻って再度検査を受けたところ再びウイルスの陽性反応が出て同県初の感染者確認となった。
下記は、クルーズ船の寄港先と発熱で船内の常設診療所を受診した患者数である。
チャーター機などで帰国した各国の乗船者に対して、アメリカ、カナダ、オーストラリア、イギリスは、さらに14日間の隔離措置を行う予定である。韓国は、自国民以外の乗船者に関して、入国を拒否する方針を示した。
以下におけるチャーター機の派遣先はすべて羽田空港である。
ダイヤモンド・プリンセスの乗客の出身国のマスメディア等は、日本政府の対応について批判的報道を行った。
一方で米国CDCは「船内の人々の間で感染を防ぐには不十分だったかもしれない」と指摘し、「隔離のための日本政府の途方もない努力を称賛する」と評価した。また チェコのプラハ・ポストは「船は巡航途中で感染が蔓延していた」、「船籍国のイギリス、所有法人の国籍であるアメリカは何もしなかった」、「日本政府は乗客のウイルス検査と管理対策の実施に最善を尽くした」と評価した。
2020年2月11日にバミューダ船籍のクルーズ船・グランド・プリンセスがアメリカ合衆国のサンフランシスコを出発し、2月21日までにサンフランシスコ - メキシコ・エンセナーダ - サンフランシスコのクルーズに運航した。その後、当該船舶は再びサンフランシスコを出航し、サンフランシスコ - ハワイ間のクルーズに運航した。グランド・プリンセスには乗客乗員合わせて約3500人が乗船していた。21人の感染者が発覚した時点で、当該船舶はハワイからサンフランシスコへ回航中であったが、既に米国当局により寄港を拒否されたため、カリフォルニア州の沖合を巡航していた。なお、運航会社はダイヤモンド・プリンセスと同じプリンセス・クルーズである。
2月11日-21日のクルーズに乗船したカリフォルニア州プレイサー郡在住の1人と同州ソノマ郡在住の1人は3月初めに感染が確定され、うちプレイサー郡在住の71歳男性は3月4日に死亡した。ほかにエンセナーダで下船後、飛行機でハワイ州オアフ島に帰った1人、カナダオンタリオ州ミシサガ在住の60代夫婦など、多くの下船客の感染が確認された。なお、メキシコクルーズの乗客のうち、62人はハワイクルーズにも参加していた。
3月5日、乗船客の情報によると、一部の検査キットは午前11時頃、沿岸警備隊のヘリコプターによって船内に運ばれた。約100人に対する一次検査の結果、21人の乗客乗員に新型コロナウイルスの陽性反応が出た。
3月9日、カリフォルニア州北部のオークランド港に入港し、乗客約2,400人全員の下船が開始された。下船した乗客のうち治療が不要なアメリカ在住者は同国内各所の米軍基地に分散移送して14日間の隔離措置を実施、また外国人数百人についてはそれぞれの国に送還され、残る約1100人の乗員については船内に待機したまま別の港に向かい隔離措置を実施する見込みとなっている。
国連海洋法において船籍国が公海上の主権・保護等を担うと定められており、運航会社の判断等が尊重されることから、クルーズ船内での感染予防措置やウイルス検査等が複雑化したと日本経済新聞は報じた。
しかしながら、日本海事新聞の取材に応じた成蹊大学佐藤義明教授によると、旗国・英国の責任はほとんど想定できず、「物理的に船舶が所在し、医療チームや陸上での隔離といった対応が可能だった寄港国が最大の責任を負う」とコメントしている。
ダイヤモンド・プリンセス船内でのCOVID-19陽性確認後は、各国でクルーズ船の寄港への危機対策が強まった。台湾、日本、韓国、フィリピン、ベトナムなどの国は2020年2月6日以降、クルーズ船の寄港を順次禁止した。
運航各社も運航の見直しを行い、米国のプリンセス・クルーズが一部運航を中止、スイスのMSCクルーズや米国のロイヤル・カリビアン・インターナショナルが上海発着を取りやめるなどの対策を講じた。
香港のドリームクルージズが運航、1月下旬に下船した8名の感染が確認された。2月5日より香港に停泊し、乗員全員の検疫を終えた後、9日に乗客乗員全員を下船させた。
フィリピン・台湾・日本・韓国などは停泊を拒否したため、数日間、公海を航行した。2月13日にタイのレムチャバン港に停泊し、乗客を下船させる予定であると運航会社が発表したが、タイ当局も停泊を拒否した。そのため、受け入れを表明したカンボジアのシアヌークビル港に13日より停泊し、14日より乗客らが下船し始めた。15日、乗客の1人はマレーシアで感染が確認された。
3月8日、当該船舶に乗り、フォートローダーデールからプエルトリコに到着した68歳イタリア人女性は感染が確認され、同月21日に死亡した。
3月11日、カナダ人乗客1人はブラジルのレシフェで感染が確認されたため、当該船舶はレシフェに停泊していた。
3月11日、83歳のイギリス人乗客1人は感染が確認されたため、当該船舶はチリのカストロに停泊していた。
3月12日、マルティニークで下船した2人の感染が確認されたため、グレナダ、トリニダード・トバゴ、バルバドス、セントルシアに停泊を拒否された。3月26日、当該船舶はマイアミ沖に停泊し、米国沿岸警備隊によって感染者が運び出された後、全員は船内で待機。
3月中旬、グアドループで下船した6人の感染が確認された。3月26日、当該船舶はマイアミ沖に停泊し、米国沿岸警備隊によって感染者が運び出された後、全員は船内で待機。
3月15日、バハマに停泊中のクルーズ船「MSブレーマー(Braemar)」(運営会社フレッド・オルセン (Fred Olsen & Co) 社)で、5人の感染が確認された。
3月19日、オーストラリア・シドニーの港に到着。到着時、インフルエンザ様症状の乗客・乗員13人が検査を受け、結果が出る前に2700人が下船、上陸した。到着時点の検査で4人が陽性と判明、さらに下船した乗客にも感染しており通算162人が陽性と判明し、3月31日時点で計5人が死亡した。この事態を受けて、他の3隻のクルーズ船は西海岸のパースへの入港を許可されず、上陸客はパースから20km沖にある孤島ロットネスト島に収容し検疫、外国人客はパースから空路で帰国予定。
3月下旬、乗客のアルゼンチン人女性1人が検査で陽性反応を示したため、クレタ島で入院。3月24日、当該船舶はイタリアのチヴィタヴェッキアに到着し、726名の乗客と776名の乗組員が下船した後、感染者と接触した人たちは即座で隔離され、他の人は近所のフィウミチーノ空港に移送された後、各自の出身国に送還する予定であった。
3月27日、チリからフォートローダーデールへ航行する途中、約150人の乗客がインフルのような症状を呈した。パナマ運河の通行許可を待っている間に4人の乗客は死亡、2人は感染が確認された。28日、当該船舶はパナマ運河を通過し、さらに一部の乗客をMSロッテルダムに移したが、フォートローダーデールの市長は既に2隻の停泊を「歓迎しない」と表明した。
2020年4月、小型探検クルーズ船「グレッグ・モティマー」で乗客217人のうち128人の感染が確認された。同船は南米周遊クルーズに就航していた。
2020年4月〜5月、日本長崎県長崎市香焼町の三菱重工業長崎造船所香焼工場に停泊中のコスタ・アトランチカの乗組員623人のうち、149人の感染が確認された。
2021年4月29日、横浜港を出港し青森に向かっていたが、30日に乗客1人の感染を確認。濃厚接触者は同じ客室の家族1人であり、翌5月1日に横浜港に引き返した。
2020年1月18日、東京都のある個人タクシー組合支部の従業員や家族など80人が都内の屋形船で新年会を開催した。この屋形船には船の従業員も合わせると約100人が乗っていた。風雨のため屋形船の窓は全て閉め切られていた。70代の運転手が1月29日に発症、肺炎が判明し2月6日に入院、2月13日に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)と診断された。同日にはこの運転手の母親が死亡し、同ウイルスへの感染が判明した。この運転手の他に新年会へ参加した1名、ほか屋形船の従業員2名も同ウイルスへの感染が判明した。
感染が判明した従業員は先立つ1月15日に中国人約60名の団体客を同社の屋形船で対応していたという。同じ従業員が1月18日のタクシー組合の新年会においても対応していた。従業員からの伝聞では15日の団体客は湖北省からであったと言い、その団体の関係者に連絡を取ったが否定的回答がありその後の状況は把握できていない。
Owlapps.net - since 2012 - Les chouettes applications du hibou