スターレット(STARLET)は、トヨタ自動車が製造・販売している乗用車である。
パブリカのスポーティーな上級派生車として登場した初代はファストバックボディの2ドアと4ドアであり、1978年(昭和53年)まではスポーティーグレードを廃止した2代目パブリカも併売されていた。2代目以降は3ドアと5ドアのハッチバックボディを持つ。2代目と3代目は商用車登録のバンも存在したが、ピックアップトラックは作られず、パブリカピックアップが1988年(昭和63年)まで継続生産されていた。
前輪駆動化した3代目から最終モデルとなる5代目までターボチャージャー付きエンジン搭載車も設定された。「スタタボ」の愛称で親しまれ、「韋駄天」「かっ跳び」などホットハッチとしての異名を持つ。
自社生産モデルの設計と組み立ては、トヨタ自動車のルーツでもある豊田自動織機も参加している。
自社生産モデルは1999年(平成11年)に販売が終了したが、21年後の2020年(令和2年)にトヨタ自動車とスズキの協業の一環として、スズキがインドで生産しているバレーノのOEM供給を受け、豊田通商を通じてアフリカ市場で「スターレット」の車名で販売されることが発表された。なお、同車はインド市場で「グランツァ」の名称でトヨタブランドで販売されている(当車種のグレードと同名)。
1973年(昭和48年)4月に2代目パブリカのスポーティーな上級シリーズとして、パブリカ・スターレットの名でデビュー(1,000cc:KP45 / 1,200cc:KP47)。初代セリカで好評であった「フルチョイスシステム」にならい、やや簡略化した「フリーチョイスシステム」を採用していた。
ボディスタイルは2ドアのファストバッククーペで、直線的なエクステリアデザインは曲面主体の当時の日本車にあっては新鮮なものだった 。
1973年10月、4ドアモデル(ファストバックセダン、1,000 cc:KP40 / 1,200 cc:KP42)が追加され、トヨタ・スターレットとしてパブリカシリーズから独立する。
搭載エンジンは、パブリカと共通の2K型1,000 ccと3K型1,200 ccの2種で、1,200 ccはシングルキャブ(68馬力)とツインキャブ(74馬力)の2種が用意されていた。
モータースポーツではサーキットレースをはじめ、ラリー、ジムカーナ、ダートトライアルなどに広く用いられた。中でも、富士スピードウェイのマイナーツーリングレースで日産・サニー(B110型)、ホンダ・シビック(SB1型)との熾烈なバトルが繰り広げられた。TRDからは各種の競技用部品も市販されたほか、一部の有力チームにはDOHCヘッドのスペシャルエンジン「137E」が供給された。
「パブリカ」の冠が外れスターレットの単独ネームに変更。通称は「1300スターレット」で、CMなどでも「トヨタ・スターレット1300」ではなく「トヨタ1300/スターレット」とされた。カモシカ風のエンブレムを冠した最後のモデルである。ボディは2ボックススタイル(ショートファーストバック)のハッチバックに転換、エンジンは先代モデルに用いられていた3K型の排気量をアップした4K-U型、72馬力へ変更された。
同時期のライバルは前輪駆動(FF)の車が多く、大衆車の前輪駆動(FF)化が進んでいた中で後輪駆動(FR)のままデビューした。駆動方式は変わらないがプラットフォームは新開発されている。同社のボトムクラスを担う車種でありながら同クラスで初めて全車にフロントディスクブレーキを標準装備したモデルである。他にも、衝撃吸収ステアリングやヘッドランプクリーナーといった装備も存在した。
リアアクスルは固定車軸ながら、先代のリーフリジッドから4リンク+コイルスプリングに変更されるが、後発のバンのみはリーフリジットを採用する。ロックトゥーロック3回転のラック&ピニオン式ステアリングギアボックスを採用(ちなみに同社としてはトヨタ・2000GT以来の採用となる)。
発売時のグレード構成は、木目調インテリアやヘッドランプクリーナーなどの高級装備を奢った「SE」(上級車種のカローラとスプリンターにも設定されていたグレード名。)、スポーツサスペンションなど走りを意識した装備の「S」、標準的な装備の量販グレード「XL」、ベースグレードの「DX」、廉価版の「スタンダード」となっており、スタンダード以外は3ドアと5ドアが選択できた。
前期型と後期型は同じP60系でも内外観の印象は大きく異なる。後期型で電子燃料噴射方式(EFI)仕様の「Si」が追加された。一方、日本で最初のシリーズ戦形式のワンメイクレースとなった「スターレット・カップ」を始めとする、競技用ベース車に廉価グレードも広く使用されたのは、ラック&ピニオン方式を用いたクイックレシオのステアリングギアボックスや、フロント・ディスクブレーキが全車共通装備であったことからである。
1980年代にはこのクラスはFFが主流となったことからか、FRである同車の中古車価格の値下がりが早く、またアフターマーケットパーツが豊富に存在したことから、1980年代から1990年代にかけて競技用として普及し、レースやラリーで盛んに使用され、走り屋にも人気があった。かつてはマイナーツーリング仕様のワンメイクレース「スターレット・グランドカップ」が存在した他、少数ながら初期の全日本ツーリングカー選手権に参戦した実績がある。
1981年(昭和56年)にTeam ACPによりパリ=ダカールラリーに参戦、時間外ながらも完走を果たしている。近年では、2005年(平成17年)のD1グランプリに、エンジンや駆動系を大改造した車両が投入された。後に最年少WRC王者となるカッレ・ロバンペラも、幼い頃からスターレットでドリフトしながらFR車の経験を積んだ。
当時のカタログに砂漠を片輪走行するシーンがあった。
ターセル / コルサの実績を踏まえ、2ドア・3ドアクーペモデルのレビン/トレノを除くE8#型系カローラ/スプリンター同様、駆動方式を横置き前輪駆動に転換。フロントサスペンションは一般的なマクファーソン・ストラットであるがロアアームの部分がFFレイアウトに合わせる形でこれまでのI字型ロアアームからE8#型カローラ/スプリンター用と同一のL字型ロアアームに刷新され、リアサスペンションは簡潔なトレーリングツイストビーム(アクスルビーム)として、可動箇所と部品点数を極力減らす構成とした。
ガソリンエンジンの排気量は1.3Lで、クロスフロー・バスタブ形燃焼室を採用した直列4気筒 SOHC 12バルブの2E型を搭載(3ドアRiと3ドア/5ドアSiには2E-ELU型が搭載された。また欧州仕様には1.0Lの1E型が存在する)。デラックスは受注生産でリーンバーンエンジンの低燃費スペシャル「パーシャルリーンシステム仕様」が設定されていた。3速フルオートマチックも時流に合わせ多くのグレードに設定されたがRi~Siリミテッド、乗用最廉価グレードのSTD、バンのCD-Lは当初は設定されなかった。4速マニュアルは2Eの新開発の「新V型キャブレター」車に設定。1987年(昭和62年)にパブリカ、スターレットを通して初となる、1.5L ディーゼルエンジンの1N型を追加、型式名はNP70となる。
前輪駆動となってからも、Ri(自然吸気)・ターボRというモータースポーツ向けグレードが用意されていた。元々のスポーツグレードであるSi・ターボSに比べると、無塗装バンパー、商用グレード並みの内装など、快適装備類が削られ、より競技車両への改造が容易になっていた。KP各型の後を継ぎ、サーキットレースをはじめ、ジムカーナやダートトライアルまで幅広い競技にエントリーした人気車種であった。
最量販グレードは充実装備のリーズナブルな実用グレードの「ソレイユ」であった。女性仕様にリセがあった。ターボモデルは5ドアもあったが、販売台数は少ない。現在は車両価格の低さ、軽さ、4E-F型系ハイメカツインカムエンジンへの換装の手軽さなどから、耐久レースなどのベース車として活用されている。
衝突安全ボディー「CIAS(サイアス)」を採用。1.3LエンジンはSOHC12バルブから、ハイメカツインカムII(DOHC16バルブ)となる(最高出力はキャブレター仕様(4E-F)が82PS、EFI(4E-FE)が100PS、GTのターボ仕様(4E-FTE)が135PS)。1.5Lディーゼルエンジン(1N)は55PSである。スターレット初の4輪ディスクブレーキをGTに搭載し、オプションのABSはクラス初の設定である。先代まで続いた4ナンバー登録の商用モデルは廃止された。上級グレードのガソリン車は車体側面に「16VALVE EFI」又は「16VALVE」の文字が添えられた。1989年販売型にのみ見られる特徴として、リヤコンビランプの上にトヨタのCIマークと TOYOTA のエンブレムが併設されている。
型式名は、前輪駆動モデルはEP82、四輪駆動モデルはEP85、ディーゼルエンジンモデルはNP80。このモデルから全てのガソリンエンジンがDOHC化(1N型ディーゼルエンジンのみSOHCを継続)され、1気筒あたり4バルブとなった。
初期のGTはシャーシに対して出力が上回っていたため、アクセルを踏み込むと強いトルクステアやホイールスピンを生じる事から、しばしば「じゃじゃ馬」的な車と評された。後のマイナーチェンジで足回りやブースト圧が見直され、トルクステアもやや落ち着いたものとなる。ターボエンジンモデルもさることながら、NAエンジンモデルも歴代最高の出力を誇ったことや価格の低さを買われてレースに多用されている。例えば、富士スピードウェイで行われている富士チャンピオンレースのN1400クラスや筑波サーキットで行われている筑波シリーズのTTC1400クラス(いずれも排気量1.4L以下の市販車をベースとしたN1レース)は、2023年現在、事実上このEP82型のワンメイクレースとなっている。
1989年販売型は、SiはEFI仕様100PSで5MT/4AT、S・キャンバストップ・X-Limitedが電子制御キャブレター仕様で5MT&3AT、ソレイユ系は電子制御キャブレター仕様で4MT/3ATという組み合わせだったが、中期型からは全グレードでガソリンエンジンがEFI化したのに伴い、SiはSに改称のうえ(iはinjectionのiのため)統合された。4WD車とディーゼル車は、ソレイユ系でも5MT/4ATが組み合わされる。
特別仕様車は、1992年改良型にGTリミテッド、ソレイユL "Memorial"、ソレイユL "Can"、1994年改良型にソレイユL "Jeans Package" 等があった。ソレイユ系の特別仕様車はいずれも、手動調整/可倒式カラードドアミラー、運転席ワンタッチ式パワーウィンドウ&電磁式パワードアロック、大型ドアトリム、ラジオレス+2スピーカー、X-Limitedと同意匠のフルホイールキャップ、リヤドアのアームレストが特別装備として用意されていた。Canは電動系の装備は付かないがエアコン、ストライプ、防眩インナーミラーが標準装備された。カタログモデルのソレイユL(3/5ドア)はセミキャップ付スチールホイールとストライプテープ式の車名・グレード名ロゴ、2本スポークのウレタン製ステアリング・ホイール、ヘッドレストなしリヤシートが特徴である。廉価グレードでありながら、中期型から運転席ワンタッチ式パワーウィンドウ&電磁式パワードアロックがメーカーオプション設定されていた。最廉価グレードのソレイユは、当時のカローラバン/スプリンターバンよりも小さく取り回しの良いビジネスカー(いわゆる営業車)を求める法人需要に応えるグレードとしてのポジショニングもあり、センターキャップ付スチールホイール+155-SR13タイヤ、AM電子チューナーラジオ+1スピーカー、手動開閉式ドアガラス、可倒式ドアミラー(他グレードのものとは意匠が異なる)などの必要最低限の装備に絞られ、フロントワイパーはOFF/LO/Hiと2段階の設定であった。マニュアルエアコンはディーラーオプション設定であった。リヤワイパー、リヤウィンドゥデフォッガー、4-ABS、運転席SRSエアバッグ、フォグランプ、パワーステアリング、デジタル時計、トノカバーなどの設定はなかった。
一部特別仕様車を除いて、GTはパワーウィンドウ&パワードアロック、エアコン、フルホイールキャップはすべてオプション設定。
4WDモデル改FRドリ車仕様が雑誌「ドリフト天国」によって制作された。モチーフは前述のKP61型でフェンダーミラーがついている。
CMは加藤紀子と蛭子能収が起用された。キャッチコピーは「わたしのケライ」。衝突安全ボディ、“GOA”となる。型式名は前輪駆動モデルはEP91、四輪駆動モデルはEP95、ディーゼルエンジンモデルはNP90。
スポーティーな外観を持つモデルは、それぞれ、4E-FE型エンジン(1.3L)を搭載した自然吸気モデルグランツァS (Glanza S) 、4E-FTE型エンジン(1.3L)を搭載したターボモデルグランツァV (Glanza V) という名称になり、3ドアのみラインナップされた。
このモデルよりエアバッグやABSを標準装備とし、当時のコンパクトカーとして安全への配慮も十分に行われた。特にシートベルトプリテンショナー/フォースリミッターは当時かなりのコストが掛かるため、高級セダン以外は装備が進んでいるとは言えなかったが、ターセル兄弟ともども1997年にクラス初として標準装備されただけでなく、先代まで最廉価グレードで省略されていたトリップメーターもこのモデルでようやく標準装備となった。
ターボモデルは本格的なスポーツ走行を目的とし、快適装備を省いたモータースポーツパッケージ (MSP) も用意された。EP91型のターボモデルは、駆動系の保護と過度のホイールスピンを防いで安全性に配慮し、1速発進時に過給圧を抑える機構が追加されている。任意でブースト圧を低く設定できる「ローモード・スイッチ」は先代から引き継がれている。
4E-FE型エンジンを搭載した自然吸気の通常モデルはルフレ(Reflet / Reflet f / Reflet x) という名称になり、3ドアと5ドアがラインナップされた。EP82型搭載のEFIエンジンと同型式だが、環境性能・運転性などを重視したチューンにより、最大出力が下がっている。
EP91系ターボモデルは、グランツーリスモシリーズや首都高バトル01といったレースゲームに登場している。
スズキが生産するスズキ・バレーノのOEMとして2020年9月からトヨタ自動車からアフリカでの営業業務の全面移管を受けた豊田通商がアフリカで発売。21年ぶりの復活となった。
ボディサイズが全長3995mm×全幅1745mm×全高1470mmの5ドアハッチバックボディで、乗車定員は5名である。
搭載されるエンジンは1.4Lガソリンで、最高出力92馬力、最大トルク130Nmを発揮。トランスミッションは4速ATと5速MTとなる。
型式(かたしき)表記はトヨタの通例どおりで、"KP##"、"EP##"などである。最初のアルファベットはエンジン型式、後のアルファベットの"P"は車種「スターレット」を意味する。"P"は初代モデルであるパブリカスターレット、および先代のパブリカから引き継いだもので、Pの型式は後継車種であるヤリス(2020年まではヴィッツ)にも引き継がれている。
トヨタ自動車は、スターレットとサスペンションやエンジン、トランスアクスルなどのパワートレインを共用し、型式が"L"でハッチバックが類似車であるターセル、コルサ、カローラIIが存在するが、スターレットは単独の型式"P"であり、姉妹車ではない。両系列ともに第2開発センターの車種であるが、開発チームも分かれている。なお、セラは3代目スターレットをベースにした車であり、足回りやシートが共通である。
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