『ELEVEN』(イレヴン)は、日本の音楽ユニット・B'zの11作目のオリジナル・アルバムである。2000年12月6日にRooms RECORDSよりリリース。
概要
1999年リリースの前作『Brotherhood』から1年5か月ぶりとなるオリジナルアルバム。2000年にリリースされたシングル4曲(バージョン違いも含む)を含めた14曲を収録している。初回特典には、B'zの2001年度カレンダーが付属していた。
ジャケットデザインは、女性が馬に乗って競馬のレースで独走している様子のイラストになっており、オリジナル・アルバムとしては『The 7th Blues』以来メンバーが登場していないデザイン。このイラストのモデルとなったのは1994年のジャパンカップで、そのレースでマーベラスクラウンが優勝した瞬間の写真を加工して使用している。その他、歌詞カードにはB'zのメンバーが馬に乗っている写真などが使用されており、デザイナーの「独走しているB'zを表現したい」というアイデアによって、全体的に競走馬をテーマにした仕様となっている。
アルバムタイトル『ELEVEN』はコンセプトやテーマが全くなかったため、このアルバムが「11枚目のオリジナルアルバム」だったことから付けられた。
第15回日本ゴールドディスク大賞でロック・アルバム・オブ・ザ・イヤーを受賞した。
香港、台湾で発売された本作は、スリーブが日本盤とは異なったデザインになっている。
2013年には松本が「B'zのNo.1アルバムは?」との問いに本作を挙げている。
2018年に結成30周年記念として『DINOSAUR』までのオリジナル・アルバムと共にアナログレコード化された。
収録曲
楽曲解説
- I
- 曲名表記は (四角)の中に「I」の文字が入った記号。
- 打ち込みで作られた約24秒のインストゥルメンタルで、今まで発表されたB'zの楽曲の中で最も演奏時間が短い。歌詞カードに歌詞は記載されていないが、何度か「B'z ELEVEN」というコーラスが重ねられている。
- 稲葉が床から這い出てくるミュージック・ビデオも制作されている。
- 翌年に行われたアルバムツアー『B'z LIVE-GYM 2001 "ELEVEN"』では、佐世保公演からロングバージョンでオープニングSEに使用された。
- Seventh Heaven
- ジム・シャンパンとの共同作業で制作された曲。『ELEVEN』にはアルバムタイトル曲(表題曲)が存在しない中で、本アルバムの代表曲という位置付けになっている。
- アルバム制作過程の16曲目に制作された曲で、「juice」と同時期に制作された。元々はホーンのないファンキーな雰囲気の曲だった。
- ベースは「FIREBALL」以来、松本が演奏している。松本によると、メインとなるギターのリフが跳ねているビートだったという事で、ベース担当に雰囲気を伝えて演奏してもらうよりも、自分がベースを弾いたほうがノリが合うと思ったためとのこと。「FIREBALL」の時は借り物のベースを使用していたが、今回は後輩から譲ってもらったという松本の私物のベースで演奏している。
- 曲名は「第7天国」「最上天」という意味の他に「最高の気分」「至福のとき」という意味がある。稲葉によると、タイトルの「Seventh Heaven」は仮歌の段階ですでに存在していて、本歌詞の作成時に日本語で韻を踏むような歌詞にしていったとのこと。
- ショートバージョンのミュージックビデオが製作されており、当時放送されていた『笑う犬の冒険』のコント「テリーとドリー」の一部をパロディとして取り入れている。
- 2000年の『ミュージックステーションスペシャル スーパーライブ2000』で「今夜月の見える丘に」と共に披露された。
- ライブではアルバムツアー以降演奏されなかったが、2020年に行われた無観客配信ライブ『B'z SHOWCASE 2020 -5 ERAS 8820-』のDay3にて約19年ぶりに演奏された。
- 信じるくらいいいだろう
- イントロからサビ、間奏までリフで構成されている。
- アルバムツアーでは序盤の一部会場のみで演奏されていた。
- RING
- 30thシングル。本アルバムの先行シングル曲。
- 愛のprisoner
- パット・リーガンとの共同作業で制作された曲。本作の制作過程で最初に制作が開始されたが、最初の渡米でアイデアゼロの状態から曲創りが始まり、東京に戻ってオケ作成を行い、その後2度目の渡米でも制作が継続され、最終的に歌詞が付けられたのはレコーディング後半だった。
- アルバムツアーではオープニングを飾った。
- 煌めく人
- ラップを用いたミクスチャー・ロックを意識した楽曲。
- May
- 28thシングル。
- juice (PM mix)
- 29thシングルのアルバムバージョン。
- サブタイトルの「PM」はポキートマス(Poquito Mas)という安いメキシコ料理屋の名前であり、L.Aレコーディングでよく通っていたという。ちなみにポキートマスは、スペイン語で「もうちょっと!」「もっともっと!」という意味で、シングルバージョンよりもボーカルのレベルを少し上げたアレンジであることから付けられた。
- Raging River
- マイク・クリンクとの共同作業で制作された曲。
- ロックとストリングスを交えた7分32秒に及ぶバラードで、リメイク版を除くB'zのオリジナル楽曲では最も演奏時間が長い。
- ピアノによるイントロの後、初めは稲葉のボーカルと松本のアコースティック・ギターの伴奏のみで演奏されるが、中盤から他の楽器も参加して激しくなってくる。
- この曲のデモ音源が、マスト・アルバム『B'z The "Mixture"』にシークレット・トラックとして収録されている(現在は視聴不可)。その際はアコースティック・ギターを用いた全編英語詞によるバージョンだった。
- TOKYO DEVIL
- パット・リーガンとの共同作業で制作された曲。
- 打ち込み音から始まり、チャイニーズゴングで終わる楽曲。このチャイニーズゴングは、「身体が大きいと音も大きくなるのでは?」という判断からギター・テクニシャンの畠山“hakkai”勝紀が担当。
- 松本が演奏したギターのフレーズをシンセサイザーに取り込み、それを貼り付けるといったデジタル処理が施されている。
- 別バージョンとして、2002年発売の『日韓サッカーワールドカップ公式コンピレーション盤』、ミニ・アルバム『DEVIL』、ベスト・アルバム『B'z The Best "ULTRA Treasure"』に収録された全英詞バージョンの「DEVIL」がある。こちらは、外国人プロデューサーと制作したデモが基となっている。
- コブシヲニギレ
- 前曲や次曲との曲間がない。
- 間奏のブルースハープは稲葉が担当。
- 翌年に行われた『B'z SHOWCASE "コブシヲニギレ"』のサブタイトルにもなった。
- Thinking of you
- イントロがなく、前曲終了直後に稲葉の歌い出しから始まる。
- 同年に行われた『B'z LIVE-GYM Pleasure 2000 "juice"』の客出し曲に使用され、未発表の原曲が客出し曲に使われたのはこの曲が初めてである。
- アルバムツアーでは未演奏だったが、2020年に行われた無観客配信ライブ『B'z SHOWCASE 2020 -5 ERAS 8820-』のDay3でサビ前の一部が演奏され、2022年に行われたツアー『B'z LIVE-GYM 2022 -Highway X-』にてフルサイズで演奏された。
- 扉
- 本作の制作過程で19曲目に制作が開始された曲で、収録曲の中では最後に制作された曲(1曲目の I を除く)。当時のツアーサポートメンバーとのセッションにより制作された。
- セクションによってテンポが揺れており、エンディングではギターをパンニング処理で左右に振っている。
- アルバムツアーでは未演奏となり、現在もライブ未演奏。
- 今夜月の見える丘に (Alternative Guitar Solo ver.)
- 27thシングルのアルバムバージョン。
- バージョン表記の"Alternative"は「別の」や「代わりの」という意味の英単語で、それが示すとおりシングルバージョンとは異なるギターソロとなっている。テレビ番組出演時にこのバージョンで演奏し、これを松本が気に入ったことから本作に収録されることとなった。
- 2002年に発売されたバラード・ベスト・アルバム『The Ballads 〜Love & B'z〜』に収録されたものは、このバージョンやシングルバージョンとも違うギターソロになっている。
- ライブではこのバージョンが披露されることが多く、2000年の『B'z LIVE-GYM Pleasure 2000 "juice"』で初披露された。
参加ミュージシャン
- 松本孝弘:ギター、全曲作曲・編曲、ベース (#2)
- 稲葉浩志:ボーカル、全曲作詞・編曲、ブルースハープ (#11)
- 大島康祐:編曲 (#7)
- 池田大介:ストリングスアレンジ (#4)、ストリングス&コーラスアレンジ (#9)
- 明石昌夫:ベース (#3.6.10.11)
- バカボン鈴木:ベース (#7.9)
- 満園庄太郎:ベース (#13)
- 中村“キタロー”幸司:ベース (#4.12.14)
- Fingers:ベース (#5.8)
- ブライアン・ティッシー:ドラム (#2.5.8)
- 黒瀬蛙一:ドラム (#3.6.10.11.13)
- 山木秀夫:ドラム (#4.9.12.14)
- 小野塚晃(from DIMENSION):ピアノ(#4.7.9.14)
- 篠崎Strings:ストリングス(#4.9)
- TAMA MUSIC:コーラス (#9)
- 畠山“hakkai”勝紀:チャイニーズゴング (#10)
- 徳永暁人:クラビネット (#2)
- 佐々木史郎(オルケスタ・デ・ラ・ルス):トランペット (#2)
- 小林太(オルケスタ・デ・ラ・ルス):トランペット (#2)
- 河合わかば(オルケスタ・デ・ラ・ルス):トロンボーン (#2)
- 勝田かず樹(from DIMENSION):サックス (#2)
ライブ映像作品
シングル曲については各作品の項目を参照
Seventh Heaven
- B'z LIVE-GYM 2001 -ELEVEN-
- B'z SHOWCASE 2020 -5 ERAS 8820- Day1〜5
愛のprisoner
- B'z LIVE-GYM 2001 -ELEVEN-
煌めく人
- B'z LIVE-GYM 2001 -ELEVEN-
Raging River
- B'z LIVE-GYM 2001 -ELEVEN-
TOKYO DEVIL
- B'z LIVE-GYM 2001 -ELEVEN-
コブシヲニギレ
- B'z LIVE-GYM 2001 -ELEVEN-
Thinking of you
- B'z LIVE-GYM 2022 -Highway X-
脚注
注釈
出典
参考文献
- 『music freak magazine & Es Flash Back B'z XXV Memories I』エムアールエム、2013年。
関連項目
- B'z LIVE-GYM 2001 -ELEVEN-
外部リンク
- B'z DISCOGRAPHY 『ELEVEN』 ※楽曲の試聴が可能
- 特設ページ - ウェブアーカイブ(B'z Official Website)
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