「Get Wild」(ゲット ワイルド)は、TM NETWORKの10枚目のシングル。1987年4月8日にEPIC・ソニーからリリースされた。
作詞は小室みつ子、作曲およびプロデュースは小室哲哉が担当している。読売テレビ制作の日本テレビ系テレビアニメ『シティーハンター』(1987年 - 1988年)のエンディングテーマとして使用されることを前提に、都会的で疾走感のある曲として制作された。
オリコンチャートでは同グループで初のベストテン入りを果たし、累計22万枚を売り上げ年間22位を獲得、同グループの代表曲となった。後に様々なアレンジやミックス違いがリリースされた他、様々なミュージシャンによってカバーされている。
読売テレビ所属のテレビ番組制作スタッフであった諏訪道彦は、バラエティ番組制作を経てアニメ番組の担当となり、『ロボタン』(1986年)や『ボスコアドベンチャー』(1986年 - 1987年)のプロデューサーを担当した。その後、諏訪はサンライズ所属の植田益朗と共に、テレビアニメ『シティーハンター』(1987年 - 1988年)の企画を立ち上げ、都会的なドラマを目指すためのオープニングおよびエンディング曲の制作を検討、3つのレーベルを候補としていた。
その内のひとつがEPIC・ソニーであり、当時窓口を担当していた西岡明芳が提案したミュージシャンが小比類巻かほるとTM NETWORKであった。諏訪は「Hold On Me」(1987年)がヒットしていた小比類巻について認知していたがTM NETWORKに関しては全く知らなかったという。しかし、当時交際していた諏訪の彼女からの助言もありTM NETWORK 3rdアルバム『GORILLA』(1986年)を聴いた諏訪は「疾走感ある都会的なサウンドは期待できそう」と判断し、1986年12月初旬にTM NETWORKにエンディング・テーマを依頼することになった。
依頼から10日後の12月25日、諏訪と植田は喫茶店にて合流。TM NETWORK担当ディレクターの山口三平が持参したデモテープをヘッドフォンステレオでイヤホンを片方ずつしながら試聴した。全編を聴いた諏訪は「都会的」「疾走感」という依頼は満たされていると感じていたが、イントロに関し疑義が生じた。イントロは既に完成版と同じものが出来上がっていたが、「イントロはドラマ部分と重なるからおとなしめに」と依頼したものの、おとなし過ぎるのではないかと思い、植田と話し合った結果、セリフや劇中のBGMが重なることも考えられたため、そのままの形で進めるよう山口に依頼することになった。
スケジュールが差し迫っていたため、シンセサイザー1台でリズムの素材を作り、概ねのアレンジ作業が終わるまで、2時間しか時間をかけなかった。本楽曲を一番先に聴いた人物は木根尚登で、「渋谷のR&Dでひと眠りして起きていたら、曲全体のイメージができていた」とのこと。
レコード会社が保管するマスターテープのキューシートによると、「Get Wild」のマスターテープのミックスは、当時芝浦にあった山下達郎のプライベート・スタジオである「スマイル・ガレージ」で行なわれたとされている。
スタジオ音源のギターはパール兄弟の窪田晴男が演奏。音楽誌『サウンド&レコーディング・マガジン』2017年6月号でのインタビューによれば、窪田は「当時のことを覚えていない」。当時、窪田はパール兄弟の活動の他、坂本龍一のアルバム『未来派野郎』(1986年)と『ネオ・ジオ』(1987年)参加など、スタジオ・ワークやライブで忙しく、リハーサルとレコーディングで月の仕事量が100時間を超えており、レコーディングで自分が弾いたものを後から他の人の演奏で差し替えたり、その逆もあったため、本人としてそれをどうこう言うこともなく、「自分が弾いたかどうか正直どうでもいい」と思っていたという。そのため「Get Wild」完成版についても当時は聴いたことがなかったが、『サウンド&レコーディング・マガジン』のスタッフから完成版を聴かせてもらったところ、「ずっと伸びている音でアームを使っているところとか、メタル心のある人だったらもっと違うアプローチをするでしょう」「このやり口は僕みたい」と語っており、自身の演奏である事を認めている。アンプは当時色々買い替えをしていたため定かではないと述べたが、ギターはP-PROJECTとARIA PRO IIの両方、オーバードライブのエフェクトはBOSS OD-2を使っていると窪田は楽曲の音から推測している。小室からは細かい指定がなく自由であったこと、「窪田さんには恩がある」と言われたと述べている。「窪田が多重録音したものをライブで松本孝弘がギター1本でどうこなせるかというところを見せて行って窪田より松本のギターが主になっていった」と小室は語っている。木根もレコーディングでオクターブのアンサンブルで弾いているが、手元が動かないフレーズのため、それをライブビデオ等で見られ、「ギターを弾いていない」や「エアギター」と言われることが多くなったという。
ベースはYAMAHA DX7用のROM KEYCLIQUE Top Fortyの"Elec.Bass"をDX7IIで読み込み、ユニゾンで鳴らしたものであり、小室がリアルタイム入力でNEC PC-98のCOME ON MUSICレコンポーザに打ち込んだもの。一部分だけ4分音符にクオンタイズをかけている。弦ベースを使わなかった理由は「ユーロビートの流れがあったから」と小室は答えている。accessの浅倉大介は「FM音源をユニゾンさせて、それをベースに使えると考えた小室の着眼点に驚いた」という。「シンセベースなので手で弾くのはかなり難しい。ヤマハDX7がなかったら生まれなかった音」と小室は語っている。
ドラマー、山木秀夫の提案により、スネアドラムを入れないアレンジがされている。そのアイデアを小室は「『踊らないとノレないユーロビートを作りたい』という思いと偶然にも見事にかみ合った」と振り返っている。使用したドラムはSIMMONS SDX。
ドラムを収録したスタジオは六本木のセディック・スタジオ(1999年閉鎖)。リズムマシンでなく、山木による演奏にした理由は、当時のシーケンサーやリズムマシンではクオンタイズで揃えたデータを前に突っ込ませることが難しく、前へ前へ突っ込む感じが欲しかったためである。
イントロの爆発音はエンジニアの伊東俊郎によると、SIMMONSの音をスマイルガレージのエコー・チェンバー内のスピーカーで鳴らしたものをアナログで録音して逆再生させたもの。
爆発音からのイントロやAメロのコードバッキングのシーケンスはSEQUENTIAL Prophet-T8とYAMAHA DX7IIを重ね、それに8分音符と付点8分音符のディレイをつけている 。
コーラスが多いTM NETWORKの曲の中で「Get Wild」のコーラスがサビしかない理由は、CDやアナログレコードよりテレビで聞く人が多いことへの配慮であり、モノラルでも聞こえるよう、あえて色々な音を入れず、ばらけないようにしたからという。木根はサビの英語部分のコーラスの下の部分を担当し、コーラスの歌入れは宇都宮のボーカル録音後に行われた。「Get Wild」では三声でコーラスを重ねるということがなかったので簡単だった、と木根は振り返っている。
エンジニアの伊東俊郎はミキサー卓にSSL SL4000Eを使い、レコーダーはSONY PCM-3324を、更にスレーブにSTUDER A80 MKIVを使った。伊東のミックスも小室のアレンジと同様、モノラルで聞くことを前提にして、三点定位を意識してミックスした。L/C/Rの中間の音は、左右にあったシーケンサーの音をリバーブやディレイで飛ばして作り、モノラルにすることで多少センターが持ち上がっても、印象はあまり変わらないようにした。
当初から『シティーハンター』ありきで作られており、イントロの静かなピアノ (実際の音色はハープ) から始まり爆発音までの部分は制作会社であるサンライズからの「ピカーンと光がする音」「曲のイントロから何秒間かはまだ本編が続いていて曲がそこからフェードインしてエンディングにつながる。切替りのタイミングで爆発音を出す」オーダーに応じたもの。そのメロディを奏でるハープのような音はSEQUENTIAL Prophet-T8で作った音にE-MU Emulator IIの「Harp 1」というライブラリーを混ぜたもの。「あのイントロがあるから、どんなアレンジをしても、みんなグッとくるのではないか」と木根は語っている。
音楽誌『サウンド&レコーディング・マガジン』2017年6月号でのインタビューによると、メロディはどう思いついたか覚えていないと小室は述べた他、転調が多い理由はバート・バカラックの影響があると述べている。一方サビは敢えて小室の過去の作品の要素を入り混ぜている。「『渡辺美里のあの曲を作った人だ』とわかってくれたらいいな」「原作は読んだけど、曲作りにはあまり関係ない。ひたすら『格好良いものを』とだけ考えていた」と開き直るかの様な姿勢で作ったという。
音楽誌『キーボードマガジン』1987年7月号掲載の本楽曲のバンドスコアへの小室のコメントは「それほど込み入ったことはしていない」「シーケンサーとシンセサイザー3台あれば再現可能」と述べ、「スネアが入っていないため、2拍・4拍でノルという感覚ではプレイしづらい。キックをよく聞いてリズムをとったほうがいい」とアドバイスしている。
小室は「30年経っても忠実に歌える宇都宮が凄い」と褒めている。エンジニアの伊東俊郎も「1回できたことは100回でもできるヴォーカリスト」と宇都宮を褒めている。宇都宮が初めて本楽曲を聴いた場所は「青山のEPICだったかもしれない」と証言している。宇都宮のキーで歌う小室みつ子の仮歌を聴いてレコーディングに臨んだ。宇都宮は「ライブで披露するときはなるべくCDに近いものを聞かせたいという思いを持っており、皆が聞いてきたものがそこで再現される喜びが一番大きいからメロディーや譜割を変えない。自分自身は歳をとっていくので、それを維持することが大変でもある」と言っている。
タイトルの「Get Wild」は小室みつ子の歌詞から決めたという。当初の歌詞は「Tough & Wild」だったが、「音楽的に"Wild"のほうがフックがある」という理由で逆になった。そして母音をしっかり聞かせた方がいいという理由で「Get」を入れたと小室は証言している。
小室は「『Get Wild』は色んなヴァージョンを合わせて累計でミリオンに達しているのではないか。カバーが多く、現在進行形の曲。クラブやフェスでもキラーチューンになりうる曲。自分でもよくわからない力を持っている曲。見えない力があって、引っ張られているというか、独り歩きしている曲である」と語っている。
香港にて1泊1日で撮影した。低予算の影響で、到着してから帰りの日本行きの飛行機に乗るまで、シャワーを浴びる時以外はカメラが回っていた。そのためホテルを予約しても眠らずに夜のシーンを撮影した。
日本人はメンバー3人とヘアメイクのみで、カメラマン・マネージャーは現地のレコード会社のスタッフを起用した。
1987年4月8日にEPIC・ソニーから7インチレコード形態でリリースされた。
カップリング曲「Fighting (君のファイティング)」は4thアルバム『Self Control』からのシングルカットであり、同アニメの挿入歌としても起用されているが、作品中では使用されなかった。
本楽曲発売の3ヶ月後、1987年7月1日にTM初のベスト・アルバム『Gift for Fanks』が発売。本楽曲は同ベストアルバムの先行シングルで1曲目に収録され、オリジナル・アルバム未収録となっている。
1989年9月21日、8センチCDシングルとして、C/W曲は「Fighting (君のファイティング)」のまま再リリースされた。
1999年8月21日、カップリング曲(「GET WILD '89」、「Be Together」)とジャケットを変更し、12cmCDシングルとして再リリース。
2017年、シングル・レコード発売から30周年を迎えたことを記念し、企画盤が立て続けにリリース。4月5日に、同曲だけを36曲収録した4枚組CDコンピレーション・アルバム『GET WILD SONG MAFIA』、4月12日には、完全限定盤として12インチ・アナログレコードがカップリング曲を「GET WILD '89」、「Get Wild (techno overdub mix)」「Get Wild(Original Single Back Track)」に変更し発売された。リミックスレコード盤も相次いで発売された。
2023年より4月8日を「Get Wildの日」とすることが一般社団法人日本記念日協会によって正式に認定されたのにあわせ、12インチ・アナログレコード収録内容でのREMASTER EPがデジタルリリースされた。
この本楽曲で、1987年5月8日放送『ミュージックステーション』に初出演を果たし、6月4日には『ザ・ベストテン』に出演した。
『シティーハンター』のエンディング・テーマとなったことから、グループ初となるオリコンチャートでシングルベスト10入りを果たした。以後7月中旬まで10位前後にランクインを続け、1987年ベスト100に26週ランクインするロング・セールスとなった。売上は22万枚、1987年度年間22位を獲得。
音楽雑誌「B・PASS」1987年7月号での宇都宮のインタビューによると「ブレイクした」実感はあまり無かったという。精々外に出ていると「あ、ウツだ」と言われ歩きづらくなった程度だった。木根は「GB DELUXE」1987年夏号のインタビューで、親戚から電話が入ったり「これだけサインして」と言われることがあり、皆がそういう目で見てくれて嬉しいと答えている。音楽雑誌「ボリューム・ワン」1987年12月号のインタビューで小室も宇都宮同様、「Get Wild」のヒット中はブレイクした実感は持てず「次のアルバムで確信を持てるのではないか」と答えている。
2014年1月度の日本レコード協会発表にてフル配信50万ダウンロードに認定された。1980年代初出の作品によるフル配信50万DL達成は本作、久保田利伸「Missing」、プリンセス プリンセス「M」、オフコース「言葉にできない」、米米CLUB「浪漫飛行」5例のみ。
2017年には企画アルバム『GET WILD SONG MAFIA』がリリースされギネス世界記録に認定。2013年にavexによりYouTubeで公開されたライブ動画は2020年末時点で2000万再生を超えている。
2020年9月6日に、テレビ朝日系列で放送された『国民13万人がガチ投票! アニメソング総選挙』で第8位にランクインした。
2023年、本シングルの発売日である4月8日を「Get Wildの日」とすることが日本記念日協会によって正式に認定された。楽曲名が記念日となるのは邦楽としては初めてとされる。
2011年5月、ゲームクリエイターの飯野賢治、シンセサイザー奏者TaccsNoName、シンガー浅岡雄也(ex.FIELD OF VIEW)、ギタリストHISASHI(GLAY)、ベーシストHiroshi Sekitaによるユニット「NORWAY」の第二弾カバーとして公開された。リズムトラックにTakamasa Aokiが参加している。
2017年秋の園遊会で、招待された小室との歓談中、眞子内親王が本楽曲を話題に挙げている。
2020年9月11日に、会社を退勤する際に本楽曲を聴き良い気分になる行為を指す「Get Wild退勤」が、Twitterのトレンドで第1位になったことが報じられた。同年9月18日、東京ヤクルトスワローズのマスコットキャラクターであるつば九郎が「Get Wild退勤」から派生した「Get Wild退場」で木根から「公認」をもらったことが報じられた。「Get Wild退勤」に関して小室はツイート主に対し「広めてくれてありがとう」と感謝の言葉を配信した。
2021年1月24日、かつて窪田晴男の付き人をしていたギタリスト・中澤星児が、音楽雑誌「サウンド&レコーディング・マガジン」で誰が弾いたか謎だったTM NETWORK『Get Wild』オリジナル・ヴァージョンのギタリストを探す企画を読み衝撃を受けたエピソードがロケットニュース24の「【実話】「Get Wild」のギタリストがアスファルトタイヤを切りつける音に敏感だった話」というコラムで紹介された。
2021年12月4日、バーチャルタレントのキズナアイの活動休止に関するYahoo!ニュースに誤ってTM NETWORK30周年時のキービジュアルが載せられたが、キズナアイ=TM NETWORK説を検証してみた(?)として12月21日にキズナアイ自身によるGet WildカバーがYouTubeに公開された。
2024年4月25日、NETFLIX版映画シティーハンター公開日、子供番組の人気キャラクターガチャピンによるカバー動画が公開された。
『シティーハンター』の続編『シティーハンター2』(1988年 - 1989年)第50話と『シティーハンター3』(1989年 - 1990年)最終話では挿入歌で使われ、テレビスペシャル『シティーハンター 緊急生中継!? 凶悪犯冴羽獠の最期』(1999年)、映画『劇場版シティーハンター 〈新宿プライベート・アイズ〉』(2019年)、映画『劇場版シティーハンター 天使の涙(エンジェルダスト)』(2023年)ではエンディングテーマに使われた。また、2019年公開の実写映画版『シティーハンター THE MOVIE 史上最香のミッション』においては、日本向け特報と日本語吹き替え版のエンディングに使われた。
この曲は非常に多くのアレンジ、リミックスが出ている。
同アニメの原作完全版『CITY HUNTER COMPLETE EDITION』Volume:Z(徳間書店)には、本楽曲のみ収録した8cmCDが特別付録として封入された。
2023年、劇場版シティーハンター天使の涙(エンジェルダスト)のミュージックトリビュートアルバムにMAISONdesによるマッシュアップ楽曲「A lonely night ~ひとりぼっちのGet Wild~ feat. アイニー, RED」が収録。
「Get Wild」(ゲット・ワイルド)は、2005年11月2日に発売された玉置成実9枚目のシングル。発売元はソニー・ミュージックレコーズ。
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