UDトラックス株式会社(ユーディートラックス)は、日本の自動車製造会社である。埼玉県上尾市に本社を置く。いすゞ自動車の完全子会社。トラックを専門としているほか、かつてはバスの製造も行っていた。
1935年に安達堅造によって日本デイゼル工業として設立された。鐘淵紡績(後のカネボウ)の傘下に入ると1942年に鐘淵デイゼル工業へ社名変更した。1946年に鐘淵紡績から分社化され民生産業に社名変更。1950年に民生産業の大型商用自動車製造部門が分社化され、民生デイゼル工業が発足。民生デイゼル工業は日産自動車の傘下に入り、1960年に日産ディーゼル工業へ社名変更。2007年に日産からボルボに売却され、2010年に日本ボルボを吸収合併するとUDトラックスに社名変更した。2020年にはボルボからいすゞ自動車が買収した。
なお、日産自動車の傘下にあったため、春光グループに属し、春光会の会員企業である。
主力商品は大型トラックで、トレーラーヘッドの国内市場占有率筆頭である。普通トラック国内シェアは日野自動車、いすゞ自動車、三菱ふそうトラック・バスについで第4位。いすゞグループ入り後もボルボ・ブランド製品の輸入・販売は継続し、日本におけるボルボ・トラックス、ボルボ・ペンタ、ボルボ建設機械の各事業も展開している。
国内事業として、大型トラックの開発・生産・輸出・販売、中型・小型トラックの販売、自動車用部品の製造・販売を行うとともに、かつて生産していたバスの整備・補修部品などの販売も継続している。海外事業として、新興国向けトラック(大型・中型・小型)の開発・生産・販売、自動車用部品の製造・販売、トラック・バスの整備・補修部品などの販売を行っている。
旧会社名の略称「日産ディーゼル」や通称の「ニッサンディーゼル」とともに、旧社名当時から「UD」(ユーディー/ユーデー)の名称でも広く親しまれている。
このUDとは、かつてGM式の単流掃気方式2サイクルディーゼルエンジン「Uniflow Scavenging Diesel Engine」を製造し、その頭文字をエンジンの商標としていたことに由来する。UDの商標は2サイクルエンジン製造終了後も継続して使用され、現在はUDを "Ultimate Dependability"(究極の信頼)の頭文字に由来するとしている。
旧社名時代には自動車業界内では主に「日デ」(ニチデ)と略されていた。1972年まで大型バスを、1976年まで大型トラックをそれぞれ製造していた日産自動車の車種と区分を明らかにするため、日本自動車工業会や自動車雑誌が主に用いていた。『鉄道ジャーナル』誌など一部では「日産ディ」の表記も見られる。
運輸事業の現場では、単に「日産」の通称も用いられていた。
1999年、ルノーは日産自動車との資本提携時に日産ディーゼルへ出資して株主名簿記載順位第2位となり、ルノー指揮下でリストラを進行した。
2003年3月、日産ディーゼル車架装のおよそ6割を担っていた富士重工業伊勢崎製作所がバス車体製造事業から撤退(同年にスバルカスタマイズ工房として独立、2011年より桐生工業伊勢崎工場)。それにともない、バスボディの調達先を西日本車体工業へ集約した。
2005年3月、経営再建が終了してルノー所有株式が放出され、再び日産自動車傘下となった。
2006年3月、筆頭株主の日産自動車が保有する同社株式の19パーセント中、13パーセントをスウェーデンのトラックメーカー、ABボルボへ売却。同社が筆頭株主となった。同年9月には、残る6パーセントもボルボへ売却され、日産自動車との資本関係は消滅した。当時の時点では「日産ディーゼル」の会社名は変更しないと発表された。
2007年2月20日、ボルボは日産ディーゼルの完全子会社化を目的として株式公開買付けを実施すると発表し、同社も賛同を決議した。同年7月23日、買付け成立にともない、東京証券取引所の上場を廃止した。
2009年11月、翌年1月1日付で日本ボルボを吸収合併し、日産ディーゼル子会社のクリエイトセンター、ならびに同じく子会社でシステムブレーンの流れをくむボルボ・インフォメーション・テクノロジー・ジャパン(ボルボITジャパン)も同日付で吸収合併することを発表した。
2010年1月19日付の各紙朝刊で、社名を「UDトラックス」へ変更すると報道された。同年1月26日に「UDトラックス」への2月1日付けでの社名変更が正式に発表され、ブランドも「UDトラックス」に統一された。
2014年、ボルボ・グループ・ジャパンと合併、同社を存続会社とし、商号は「UDトラックス」とした。
2019年12月18日、いすゞ自動車とボルボ・グループとの戦略的提携が発表され、UDトラックスはいすゞの傘下となることが発表された。いすゞはUDの株式をボルボから購入する予定。2020年10月30日、主要株主であるボルボ・グループといすゞ自動車間で戦略的提携が正式に締結され、2021年4月1日までにいすゞが2,430億円で同社を買収し、いすゞ傘下企業となった。
2022年5月には国内営業本部をいすゞ自動車本社内へ移転させた他、2023年3月期には両社の車種の相互販売を開始する予定である。
2023年4月には新型トラクターヘッドをUD・いすゞの両チャンネルに投入した他、2024年以降に予定されているUD・クオン単車系といすゞ・ギガ単車系のモデルチェンジに際しても、プラットフォームの共通化が図られる予定である。
バス事業に関しては、2007年より三菱ふそうトラック・バスとバス製造事業における業務提携を開始。2007年5月のスペースランナーAならびに三菱ふそう側でのエアロスター-Sの販売開始以後、同社との相互OEM供給が開始された。
2010年1月21日、西日本車体工業が同年8月31日をもって車体製造終了および会社解散を決定した(のち解散日は2010年10月31日に延期)。UDトラックスが西日本車体工業へのバス車体製造発注を打ち切った事が理由であった。これを受け、同年8月31日、三菱ふそうとバス事業に関する合弁会社設立に向け協議開始の覚書を締結。相互OEM供給を事実上終了し、UDトラックス販売の車両は全て三菱ふそうからのOEM車種とすることになった。
西日本車体工業解散3日前の2010年10月29日、三菱ふそうとの合弁会社設立協議打ち切りと、相互OEM供給終了が発表された。この結果、自前のバス車体製造施設を保有していないUDトラックスは、事実上バス事業から撤退することになり、2011年にはバスの生産と販売が休止された。
のちに中国製ボルボバスの輸入を模索するも、日本国内の道路運送車両法対応費用と売り上げ予測が釣り合わずに断念し、完全な撤退を決めたと2012年9月に報じられた。
現在バス車両のアフターサービスや部品供給は、西日本車体工業の事業を引き継いだ西鉄車体技術(旧社名・共栄車体工業)が行っている
2014年3月19日、ボルボグループは新興国市場向けの新規開発バスのブランドとして、「日本や東南アジアで強固なブランド力を有したUD」バスの名を「UD Buses」として用いると発表している。当初はインドで製造・販売し、バンガロールのバス工場を輸出ハブとするが、日本国内でのバス事業再開の計画はないとしている。
新旧2法人を分けて記述する。
出典
現存するもののみを記す。
2014年3月19日にバス事業に再参入し、インドをはじめとする成長市場で販売を行っている。
発売順に掲載する。
前述のとおり、日本国内においては2010年10月29日でバスの車種全ての販売が終了し、2011年に生産も終了している。
かつては販売会社としてUDトラックスジャパンなどが存在したが、現在は一部を除き同社で直営している。
2010年当時に存在した販売会社各社は、同社旧法人(日産ディーゼル工業)のUDトラックスへの変更に伴い、連結決算対象の3社(子会社1、持分法適用2)及び北海道販売は連動して社名を変更した。その後、岩手・栃木・群馬も変更した。前述のとおり、販売会社であるUDトラックスジャパンは、旧法人の新法人への合併の際にともに合併しており、現在は同社で直営している。
このうちUDトラックスジャパンは、2008年11月26日の設立に関する発表ののち、2009年1月1日に関東日産ディーゼルを存続会社として、同社の直系販売会社全てと中古車販売会社のクロスネットが統合され、日産ディーゼルトラックス株式会社として設立されたもので、埼玉県上尾市に本社を置いていた。
UDトラックスジャパンは、2010年2月15日よりUDの親会社であるABボルボの大型トラックの取り扱いを、大手企業向け限定で開始した。
UDトラックスは、経営効率化を図るため、2014年1月1日付でUDトラックスジャパンを吸収合併した。直系販売会社が1社に統合されたのは三菱ふそうトラック・バスに次いで2番目で、地場資本の6社については引き続き単体での営業を行っている。
2022年4月1日に国内販売体制を再編し、6つの地域支社と24の支社へと再編した。
2023年8月には、いすゞとの初の営業・アフターサービス協業拠点を京都府綾部市に開業させた。UDといすゞは、地域の実情に合わせて営業・アフターサービス協業拠点を順次開業させる予定である。営業協業拠点では、UD車の他にもギガ、フォワード、エルフなどのいすゞ車も取り扱う。
なお、日産ディーゼル工業時代には日産自動車の総合カタログ(総合リーフレット・総合パンフレット)上に掲載されていたり、日産ディーゼル販売店に日産車のカタログ(パンフレット)が置かれるなど、緩やかな販売協力関係にあった。日産自動車の総合カタログ上では「日産ディーゼル系販売会社」と表記されていた。
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