素数定理(そすうていり、英: Prime number theorem、独: Primzahlsatz)とは自然数の中に素数がどのくらいの「割合」で含まれているかを述べる定理である。整数論において素数が自然数の中にどのように分布しているのかという問題は基本的な関心事である。しかし、分布を数学的に証明することは極めて難しく、解明されていない部分が多い。この定理はその問題について重要な情報を与える。
その後パフヌティ・チェビシェフによる部分的な結果(1850年-1852年頃)や、ベルンハルト・リーマンによる新たな解析的方法が発表されたが、最終的には1896年にシャルル=ジャン・ド・ラ・ヴァレー・プーサンとジャック・アダマールがそれぞれ独立に証明した。当初与えられた証明はゼータ関数と複素関数論を用いる高度なものであったが、1949年にアトル・セルバーグとポール・エルデシュは初等的な証明を与えた。ノーバート・ウィーナーや池原止戈夫らによるタウバー型定理によって、素数定理と「ゼータ関数が Re s = 1 上に零点を持たないこと」との同値性がすでに確立されていたために、この初等的な証明は大きな驚きをもって迎えられた。
が成り立っている。これが全ての x で成り立つであろうと、ガウスやリーマンさえも予想していたが、これが正しくないことは1914年にジョン・エデンサー・リトルウッドが初めて示した。これが成り立たない最小の x をスキューズ数というが、具体的な値はほとんど分かっていない。なお、 と
の大小は、x が大きくなるにつれて無限に入れ替わる。
このことを詳しく述べるために、F = GF(q) を q 個の元を持つ有限体とし、ある固定された q に対し、Nn をモニックで既約な F 上の多項式で、次数が n となるものの数を表すとする。モニックな既約多項式とは、つまり、F の中に係数をもつ多項式と見て、小さな次数の積としては書くことができないような多項式とする。この設定では、モニックな既約多項式は、他の全てのモニックな多項式はモニックな既約多項式の積で書くことができるので、素数の役割を果たす。すると次のことを証明することができる。
x = qn を代入すると、この式の右辺は、
であり、類似がより明白になる。qn は次数 n のモニックな既約多項式であるので、このことは次のように言い換えることができる。次数 n のモニック多項式をランダムに選ぶと、既約である確率は、約 1/n である。
リーマン予想の類似、すなわち、
が成り立つことを証明することができる。
多項式についての命題の証明は、古典的な(数についての)命題の証明に比較して、非常に易しい。短い組み合わせ的な議論により証明することができる。まとめると、F の次数 n の拡大の全ての元は、n を割る次数 d のある既約多項式の根であり、2つの方法でこれらの根の数を数え上げることにより、
を成立させることができる。ここに和は n の因子 d の全てを渡る。よって、μ(k) をメビウス関数とすると、反転公式は、
である。(この公式をガウスは既に知っていた。)主要項は d = n であり、残余項の境界を示すことは難しくはない。多項式の「リーマン予想」の命題は、最大な n の n 未満の因子は n/2 よりも大きくはなり得ないという事実には依存しない。
脚注
注釈
出典
参考文献
Hadamard, Jacques (1896), “Sur la distribution des zéros de la fonction ζ(s) et ses conséquences arithmétiques.”, Bulletin de la Société Mathématique de France (Société Mathématique de France) 24: 199-220, https://web.archive.org/web/20120717195014/http://www.numdam.org/numdam-bin/fitem?id=BSMF_1896__24__199_1
Erdős, Paul (1949-07-01), “On a new method in elementary number theory which leads to an elementary proof of the prime number theorem,”, Proceedings of the National Academy of Sciences (U.S.A.: National Academy of Sciences) 35 (7): 374-384, doi:10.1073/pnas.35.7.374, https://www.renyi.hu/~p_erdos/1949-02.pdf
Selberg, Atle (1949-04), “An Elementary Proof of the Prime Number Theorem.”, Annals of Mathematics, Second Series (Mathematics Department, Princeton University) 50 (2): 305-313, http://www.jstor.org/stable/1969455
de la Vallée Poussin, Charles-Jean (1896), “Recherches analytiques sur la théorie des nombres premiers.”, Annales de la Société scientifique de Bruxelles (Imprimeur de l'Académie Royale de Belgique) 20 B; 21 B: 183-256, 281-352, 363-397; 351-368, http://sciences.amisbnf.org/fr/livre/recherches-analytiques-de-la-theorie-des-nombres-premiers - https://books.google.com/books?id=7e0GAAAAYAAJ