駿豆線(すんずせん)は、静岡県三島市の三島駅から伊豆市の修善寺駅までとを結ぶ伊豆箱根鉄道の鉄道路線。社名をもじったいずっぱこの愛称で親しまれる。
路線名の駿豆とは駿河国と伊豆国を意味するが、これはかつて同線が駿河国に属する沼津市と伊豆国に属する三島市の間に軌道線(路面電車、1963年廃止)を運行していた駿豆電気鉄道の路線だったことに由来する。駿豆線自体もかつては現在の御殿場線下土狩駅である(旧)三島駅を国鉄線との接続駅にしていたため、駿河国域をわずかにかすめていたが、1934年に現在の三島駅が開業して以降は全線が伊豆国内を走っている。
特急列車が運行されているが線内では追い抜きは行われておらず、先発列車が修善寺駅または三島駅まで先着する。
東京方面から東日本旅客鉄道(JR東日本)・東海旅客鉄道(JR東海)東海道本線を経由して特急「踊り子」が平日2往復・土休日3往復乗り入れる。列車は5両編成(10 - 14号車)で、全車指定席であるが、駿豆線内相互発着の場合は、座席指定を受けることができず、座席未指定券で空席を利用することになる。修善寺駅にはマルス端末が設置されており、JR線内の各踊り子停車駅への指定席特急券・座席未指定券の購入が可能である。ただし、駿豆線内完結の座席未指定券はマルスでは発行されず、常備券により発行される。修善寺駅以外の特急停車駅では、修善寺駅に取り次ぎを行い、指定席特急券を購入できる。なお、この場合に旅客に発行される特急券はマルス券ではなく、伊豆箱根鉄道地紋の常備券に列車名・座席番号・誤取消防止符号を記入したものである。
2021年3月12日までは特急料金なしで自由席車両に乗車できたが、同年3月13日のダイヤ改正よりJR東日本の座席未指定制度が導入された事に伴い、駿豆線内にも特急料金が設定された。以前は通学定期券では乗車できなかったが、2021年3月13日からの駿豆線内特急料金制定に伴いこの制度は廃止され、通学定期券でも特急券を購入することで乗車できるようになった。制度導入前に修善寺駅以外の特急停車駅で発行されていた常備券はJR東海仕様のものである。
JR線に連絡する特急券を車内で購入する場合は、駅での発売額より高額な車内料金が設定されているが、駿豆線内完結の場合は車内料金の設定がないため、駅での発売額と同額の特急券が発行される。
普通列車は日中おおむね20分間隔での運転であるが、朝ラッシュ時は約8 - 12分間隔で運行されている。三島駅 - 修善寺駅間の直通運転が基本であるが、朝には出庫列車として大場発の列車が修善寺行き・三島行きそれぞれ1本ずつ設定されており、23時台の三島発下り最終列車(243列車)は大場行きとなっている。
2007年3月18日にJR東海に合わせて行われたダイヤ改正では、朝に運転される上り24列車の休日の始発駅が大場駅から修善寺駅へ、同じく朝に運転される大場発の下り213列車が休日運休から毎日運転に変更されたため、特急「踊り子」を除き休日に運休する列車がなくなった。また、この改正により、全線で7時30分から8時30分の間は約10分間隔の運転が実施された。改正前は、朝ラッシュ時に大場発の列車があったため、一部区間で10分間隔運転になっていなかった。
2009年2月14日のダイヤ改正では、同年4月1日から開始されたワンマン運転に備え、各駅の停車時間が見直され、全線の所要時間が従来の約32分から約35分に延長されたほか、運転間隔の見直しや車内放送内容の変更なども行われた。
以前は7000系(設定当初は3000系3001編成)を利用した一部座席指定席の快速が運行されていたが1998年3月末で廃止され、以後は設定されていない。但し、2019年のゴールデンウィークでは、「踊り子」102号の運転時刻で日曜日を除いた8日間で臨時列車「快速修善寺号」を修善寺 → 三島駅間にて運転し、一時的ながら快速列車が復活した。
また将来の東海道本線乗り入れ準備として7000系には「沼津」「熱海」「富士」等の行先方向幕が用意されていたが現在は社線内のみのものに交換されている。
駿豆線の輸送実績を下表に記す。最近では輸送量は減少している。表中、最高値を赤色で、最高値を記録した年度以降の最低値を青色で、最高値を記録した年度以前の最低値を緑色で表記している。
鉄道統計年報(国土交通省鉄道局監修)より抜粋
駿豆線の営業成績を下表に記す。表中、最高値を赤色で、最高値を記録した年度以降の最低値を青色で、最高値を記録した年度以前の最低値を緑色で表記している。
鉄道統計年報(国土交通省鉄道局監修)より抜粋
2021年現在当路線で使用されている車両の形式は以下の通りである。なお、当路線を走行する普通列車用の自社車両はすべて抵抗制御である。編成は普通列車が3両、特急列車が5両である。普通列車用は特別塗装車を除き、「ライオンズブルー」もしくは「レジェンドブルー」と呼ばれる西武グループのコーポレートカラーを身に纏う。
1000系(通称「赤電」)は最期まで残存していた編成が2005年に廃車されて形式消滅しているが、旧モハ1008の1両だけは大場工場内で倉庫として残存している。また、大雄山線5000系の検査出入場時や工事車両牽引などに使用される東芝製の小型電気機関車 ED32, ED33形が在籍している。
また、2008年11月5日と2009年5月11日の2回に分けて、西武鉄道から新101系3両2編成を譲り受けた。この編成は第1編成は2008年12月14日、第2編成は2009年5月12日に営業運転についており、伊豆箱根鉄道での形式名は1300系となった。またこれにともない1100系は2012年6月13日をもって営業運転を終了した。
JR・国鉄から乗り入れていた車両として、東京方面から直通する優等列車に185系、165系、157系、153系、80系などが使用されていた。
大場工場が伊豆箱根鉄道本社敷地内北側にあり、車両工場と車両基地を兼ねている。大場駅から出入庫を行う。
架線はほとんど片持ち式が使用されている。
踏切は計72箇所存在し、すべてが第1種踏切である。そのうち駅構内の踏切は6箇所ある。交通量の多い踏切には踏切支障報知装置も設置されており特殊発光信号機は踏切支障報知装置が設置されている大きな踏切では回転型が使用され、踏切支障報知装置が設置されている小さな踏切では点滅型が使用されている。一部の踏切には8角形の故障表示機も設置されている。踏切動作反応灯は一般的なデザインのものが使用されている。
警音器は、2014年まで伊豆仁田駅構内に電鈴式(金属ベル)が使用された踏切が存在していたが、現在は72箇所全てで電子音が使用されている。一部の踏切ではJR東海などと同じ電子音を使用している所もある。
変周式ATSが設置されており、近年速度照査の地上時素から車上時素への更新が進められている。「踊り子」で使用されるJR東日本の車両は、185系ではATS-SN●(ATS-ST相当)、E257系2500番台ではATS-Ps以外に車上時素式速度照査機能を持つATSを搭載していないが、駿豆線のATS更新後も継続して乗り入れを行っている。
当初は湯治客の便を図り、伊豆中部の大仁と東海道本線を結ぶ目的で建設された。初めの計画では沼津を起点とする予定であったが、東海道本線敷設時に駅が設けられず衰退が著しかった宿場街三島の者が土地寄贈を行うなど積極的に誘致を行い、現在の下土狩駅の所に新しく(初代)三島駅を設けた上で、ここを起点とすることになった。1898年に開業し、1924年には修禅寺・修善寺温泉のある修善寺町(今の伊豆市)まで延伸されている。
昭和に入り、1934年12月に丹那トンネルの開通に伴い東海道本線のルートが御殿場経由から現行の熱海経由に変更されることになった際、熱海経由の新線に(2代目)三島駅が設置されたため、起点を変更した(この時、御殿場経由の元の東海道本線のルートは御殿場線となった。これに先立ち、初代の三島駅は同年10月に下土狩駅に改称された)。これらの経緯については三島駅#歴史も参照のこと。
なお、戦後まもなくしてから国鉄80系電車を用いて国鉄からの直通運転が開始されたが、開始されてから約10年間は国鉄線の電圧が1500V、駿豆線の電圧が600Vと異なっていたため、80系は走行性能を落して駿豆線内を運行していた。
各駅の自動券売機で三島駅接続のJR線連絡乗車券が発売されている。窓口では、東はJR東日本の我孫子駅まで、西はJR西日本の大阪市内までの連絡乗車券を発売している。
また、伊豆長岡駅接続の伊豆箱根バス一部路線への連絡乗車券も発売している。
伊豆箱根鉄道はPASMO協議会に加盟しているが、駿豆線のPASMO導入は見送られている。三島駅にはJRとの連絡改札口があるが、Suica、TOICA、PASMOなどのICカード(他の全国相互利用交通系ICカード含む)には対応しない。ただし交通系ICカードを除くキャッシュレス決済(クレジットカード、電子マネー、QRコード決済)には三島駅と修善寺駅のみにおいて駿豆線内のみの切符販売に対応している。
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