松本市(まつもとし)は、長野県の中信地方に位置する市。中核市、国際会議観光都市に指定されている。
国宝松本城を中心とする旧城下町。城下町は松本城の外堀に沿って善光寺街道が通っており、千国街道や野麦街道が分岐する交通の要衝となっている。1871年(明治4年)の廃藩置県後、1876年(明治9年)まで長野県とは別に筑摩県が置かれ、その県庁所在地になっていた。長野県との合併後も拠点機能の一部は松本市に置かれ、日本銀行の支店や旧制高等学校が設置された。
キャッチフレーズは「文化香るアルプスの城下町」、「三ガク都(楽都、岳都、学都の三つのガク都。音楽、山岳、学問を標榜する)」などがある。市のマスコットはアルプちゃん。
日本で最も古い小学校のひとつ開智学校の開校、改正高等学校令に基づく全国9番目の官立旧制高等学校でもある松本高等学校の招致など、教育に熱心な面があった。国立大学法人が1県1学の県に於いて本部が県庁所在地以外に置かれているのは、信州大学の他は弘前大学(青森県弘前市)・広島大学(広島県東広島市)・琉球大学(沖縄県中頭郡西原町)のみである。
また小澤征爾ら一流の音楽家が一斉に集う夏のセイジ・オザワ 松本フェスティバルの開催、全国に(一部海外にも)広がるスズキ・メソードや花いっぱい運動の発祥、映画やテレビドラマなどのロケ支援を市が行うなど、文化を尊重する気風は今も健在である。食品ロス削減の取組み「残さず食べよう!30・10(さんまる いちまる)運動」の発祥の地で、「第1回食品ロス削減全国大会」が2017年10月開催された。
第二次世界大戦による戦災を免れたことから、旧開智学校(国宝)などの歴史的建造物が多く残る。松本市においては2008年4月から「市都市景観条例」が改正され、松本城周辺の建築物の高さ規制が厳しくなることからマンション建設を前倒しする動きが見られた。これに対し周辺住民の反対意識は強く、既に完成した縄手通りのマンション建設には建設反対運動が起こった。
近代的な駅中心部から市の外側に進むにつれ、昔ながらの田園、果樹園の風景に変わっていく。東側の里山辺を越えると、ワイナリーや温泉街などの観光地が広がり、美ヶ原高原へと続く。
現在の市名である松本の由来は諸説あるが、通説では武田氏の侵攻により落ち延びたかつての信濃守護職・小笠原長時の三男小笠原貞慶が1582年に旧領を回復した際に「待つ事久しくして本懐を遂ぐ」と述懐し改名したとされる(小笠原氏は長らく信濃府中奪還という本懐を抱いており、それが叶ったことから、待つ本懐を→松本懐→松本 と略され松本となった)。他に、小笠原宗家(府中)が分家(松尾)とのお家騒動に勝利したことを記念したとする説があるが、内訌は約50年前に片付いており、この説は時代的に合わない。「松本」という氏姓は松本市の「松本」地名よりも遥か昔から存在するが相関はなく、松本市に松本氏が多いということはない。市役所などによって「広報まつもと」のようにひらがなで表記されることもある。
また松本市周辺や松本地域は松本平、筑摩(つかま/ちくま)(筑摩野(つかまの/ちくまの)とも)などと呼ばれる。旧県名の筑摩県は、前身の松本町が筑摩郡(1879年以降は東筑摩郡)に属していたことに由来する。
平安時代以降、信濃国の国府が置かれたと推測されている。中心市街地は古くは深瀬郷(深志郷)、捧庄(ささげのしょう)または庄内、信濃府中または信府などと呼ばれていた。捧庄、庄内の由来は国衙比定地とされる市東部にあった八条院領の荘園で、現在市内にある本庄、庄内という地名はこの名残であると考えられる。「信府」は国府が置かれたことに由来する「信濃府中」の略称である。 現在、最も知られているのが深志で、太古の松本盆地が湿地帯であったことを示すとされる「深瀬郷」が転訛したものであり、現在でも社名、校名などに使われている。女鳥羽川を挟んで北側が北深志地区、南側が南深志地区となる。
日本海側水系の地域であるが、大都市への志向は総じて太平洋側の名古屋や東京の両都市への傾斜が大きく、中京圏、首都圏との繋がりが見られる。鉄道でも、中央本線を通じて、両地域からの特急列車が乗り入れている。
一方で、しなの鉄道線(旧信越本線)沿線や、日本海側との繋がりはさほど強くない。特に、県庁所在地の長野は日本海側とのつながりが深く、風土も同じ県内にある松本よりも日本海側に近い部分が多いため、後述の通りで事あるたびに対立して来た。
松本市は、長野県の中央からやや西の所にあり、県庁所在地の長野市から南西へ75km、名古屋市から北東に190km、東京特別区から西北へ240kmに位置している。2005年の合併後の市域は、西の飛騨山脈(北アルプス、西山、3000m級)から、東の筑摩山地(美ヶ原、東山、2000m級)までと広大であり、長野県内では最も広い(全国の市では20位)。松本市街地(松本駅周辺など)は、2つの山脈(山地)の間にある松本盆地の中央部、複合扇状地上に位置する(標高約600m)。市域は5000万年前は海底にあった。
河川では、上高地方面から流れ出す梓川が市の西部を流れ、奈良井川が市を二分するように横断している。また、市街地には清流である女鳥羽川が横断している。女鳥羽川はもとは現在の大門沢川のルートを流れていたと考えられるが、江戸時代はじめに人工的に流路が変えられ今の姿になった。山では、合併に伴い日本百名山の山が多数松本市に編入され、岳都(学都、楽都とならび松本市のキーワードとなっている)の側面が強くなった。松本市には標高第3位の穂高岳や第5位の槍ヶ岳があるが、市街地からは手前の常念山脈に隠れて見えないため、市民には常念岳や美ヶ原のほうが親しまれている。中部山岳国立公園、八ヶ岳中信高原国定公園が市内にあり、前者には特別天然記念物のライチョウが生息する。また、景勝地の上高地も市内にある。
市内には多数の扇状地が形成されている。また、松本市はフォッサマグナの上にあり、松本盆地東縁に沿う糸魚川静岡構造線が旧市街地の西側を通っている。市内南部の牛伏寺断層も糸魚川静岡構造線を構成する断層の1つとされ、30年以内のマグニチュード6.5以上の地震発生確率が25.21%と全国で最も高い活断層として地震関連のテレビ番組などでもよく紹介されている。2011年6月30日午前8時16分ごろ、長野県中部を中心とする強い地震が発生し、同市で震度5強を、山形村で震度4を観測した。また、国宝松本城に小さなひびが入るなどの被害が出た。
森林面積は74,000haで、市域全体の約81%を占める。
代表的な山には標高を掲載した。
美鈴湖
ケッペンの気候区分では、平野部の温暖湿潤気候 (Cfa)と山岳部の亜寒帯湿潤気候 (Df)に分かれる。平野部では降水量が少なく日照時間が長い。上高地や乗鞍高原、美ヶ原などの山岳地帯は平野部に比較して若干降水量が多く、その分日照時間は短くなる。上高地などの安曇地区は松本盆地とは異なる日本海側気候で、冬季の降雪量が多いこともあり豪雪地帯に指定されている。
松本市中心部では、気温は年較差、日較差とも大きく、降水量は少ないという典型的な中央高地式気候の様相を呈することから、かつて存在した松本測候所は、同気候の代表として直達日射観測も行っていた。また多くの学校教材で、松本は中央高地式気候の都市例として取り上げられている。
市全体が長野県中部(単に中部と呼ばれる)に入り、その下位区分においては旧松本市・四賀・梓川地区は松本地域に、安曇・奈川地区は乗鞍・上高地地域に属する。
好天の日が多いものの寒さは厳しく、市街地でも放射冷却現象の影響で零下10度以下まで冷え込むことがあるなど、冬日は多い。ただし、日中の気温が5度程度まで上がる日が多いため、真冬日はそれほど多くない。冬型の気圧配置時は、風上に位置する飛騨山脈が雪雲を遮るため豪雪地帯の安曇地区を除い降雪はほとんど見られず、積雪したとしても数センチ程度である。ただし、日本の南岸を低気圧が通過する際には一定量の降雪ならびに積雪を見ることもあり、これを「上雪(かみゆき)」と称する。当地での積雪の大半はこの南岸低気圧に由来し、上雪の際には日本海の影響を受け比較的雪が多い長野県北部地方と、降雪量が逆転することがある。
輻射熱の影響を受けることもあり、日中は気温が高くなるものの夜間は下がるため、熱帯夜を観測することは稀である。海洋の影響を受けにくいこともあって残暑も短く、秋の訪れは早い。寒候期同様に暖候期も好天の日が多く、結果として日照時間は日本国内の観測点でもトップクラスに位置するほどに長くなる。
松本盆地は山に囲まれており、日中でも風速7 - 8m/s程度の風が吹くことがある。このうち西側に位置する飛騨山脈から吹いてくる風をアルプス颪(おろし)と呼ぶ。いっぽうで台風に関しては、地形的な特性から風勢が抑えられることが多く、風による被害を受けることは多くない。ただし降水については被害を受けることもあり、中でも1959年の台風7号は大きな被害をもたらした。市中心部を流れる女鳥羽川、薄川は有史以来たびたび氾濫し、市中心部を幾度も浸水させている。
松本市で観測した極値は、最高気温が38.5℃ (1942年8月2日)、最低気温が-24.8℃ (1900年1月27日)、最大の1日の降水量が155.9mm (1911年8月4日)、最深積雪が78cm (1946年3月3日)。 猛暑日日数最多年は1994年の22日、熱帯夜日数最多年は2022年の3日。なお、松本市内で猛暑日なしの年は2016年が最後である。
市の中心市街地活性化基本計画において松本駅を中心とした商業地約190haが中心市街地として捉えられている。
代表的なエリアは、松本パルコ、花時計公園を核に若者向けの店や飲食店の立ち並ぶ中央一丁目(伊勢町など)、大型店を中心に同じく若者向けのスポットの集まる深志一丁目(松本駅前)、縄手通りがあり銀行支店などのオフィスが集まる大手三丁目(大名町など)、再開発により近代的な商店街の立ち並ぶ中央二丁目(本町など)、松本城や市役所のある丸の内などが該当する。
住居表示などで公称からは廃止された旧町名や小字が、現在も便宜的に使用されているが、小字名の一部や不動産地番は今でも不動産登記や本籍などにおいては正式な住所である。
四賀・梓川・安曇・奈川・波田地区以外で大字がつかない町丁は全て住居表示地区。
2020年国勢調査での昼夜間人口比率は105.8%で、周辺自治体から流入超過となっているが、年々減少傾向にある。
松本市の都市圏はさまざまな定義があるが、主だったものとしては松本都市雇用圏(都市雇用圏)、松本市都市圏(国土交通省)、松本地域(松本地域振興局)などがある。圏内には上高地や安曇野など 全国的に有名な観光地があり、果樹栽培などの農業のほか精密機器などの工業も非常に発達している。
新松本市は、市域が広いため14市町村が隣接している。
長野市と松本市は古くから仲が悪いと言われ、戦後は長野県を分割する議論も存在した。しかし、現在では人口減少が進む中で両都市の連携強化の動きも見られる。2008年に「長野・松本政経懇談会」が発足し、両市の市長と商工会議所会頭長野が話し合う場も設けられた。
このような地域間の対立はサッカーにおいても反映され、松本市を本拠地とする松本山雅FCと長野市を本拠地とするAC長野パルセイロの対戦は信州ダービーとして大きな盛り上がりを見せる。
元長野県知事の田中康夫(後述の通り松本市育ち)は「長野県」ではなく「信州」と呼称していたが、理由は長野県より信州の方がイメージがよいためとしている。
現市役所庁舎の老朽化により、2025年度の供用開始を目標として、本庁舎 (昭和34年)と東庁舎 (昭和44年)の建て替えを発表している。
松本市は松本広域連合の構成員のひとつであり、救急・消防業務、地域開発などの業務を周辺市町村と共同で行っている。現時点では歴代広域連合長をいずれも当時の松本市長が務めている。
松本市、塩尻市、山形村、朝日村で構成する松塩地区広域施設組合では松本市島内にあるゴミ処理場や併設された温水プール・ラーラ松本を、また松本市山形村朝日村中学校組合では、朝日村内にある鉢盛中学校を、それぞれ共同で運営している。
第6回持続可能な地域社会をつくる日本の環境首都コンテストに参加。
松本広域消防局 - 丸の内消防署、芳川消防署、渚消防署、本郷消防署(松本地区)、梓川消防署(梓川・安曇・奈川地区)、明科消防署(四賀地区)、山形消防署(波田地区)
丸の内と芳川の2消防署時代は其々、北署・南署と称した(改築前の芳川消防署の備品には、南署と書かれた物も残る)。
長野県の人口10万人当たりの医師数を2次医療圏別(県の地方事務所の管轄に同じ)に見ると松本が298.6、長野が162.2、上田小県が141.9、佐久204.2などとなっている。長野県内では松本以外いずれも全国平均の206.3を下回っており、松本医療圏が充実していることがうかがわれる。 ただし医師数が多いのは松本地区と梓川地区に集中しており、安曇地区、四賀地区、奈川地区ではそれぞれわずか1 - 2人しかいない。
太字は三次救急指定医療機関
集配郵便局
無集配郵便局
簡易郵便局
その他テニスコート10箇所、運動広場17箇所、市民プール2箇所などが充実している。
就業人口割合は第一次産業:第二次産業:第三次産業= 5.2% : 23.4% : 71.4% となっている。(2020年国勢調査)
農業産出額 154億2000万円 (農林水産省「平成17年生産農業所得統計」)
中央銀行
郵便貯金銀行
政策金融機関
都市銀行
地方銀行
第二地方銀行
信用金庫
信用協同組合
労働金庫
信連
証券
県立高校の通学区は第4通学区
2023年(令和5年)4月1日より松本市内のバス(高速バス・特急バスを除く)は公設民営の「ぐるっとまつもと」となっている。これまで運行されていたアルピコ交通(通称・松本電鉄バス)の路線が松本市に移管されたほか、松本市営バス(奈川地区と四賀地区のみの運行)や2008年10月から松本市西部や山形村で運行されていた松本市西部地域コミュニティバスも対象となっている。ただし実際はアルピコ交通グループに運行委託を行う。
路線一覧は以下のとおり。
波田駅を軸に波田地区を隅々まで巡る。
ごく一部の区間のみであるが、塩尻市地域振興バス(倉村バス停と荒井バス停)や朝日村営バス(広丘原新田 - 原新田、広丘原新田 - 今井公園西 - 古池)も松本市内に乗り入れる路線がある。
※403号線は松本市内においては全区間19号線と重複しているため、単独区間はない
主に松本駅前にあるものを挙げる
(五十音順、wikipediaに項目のある人物)
(五十音順)
松本市を舞台とした作品
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