プラント(P.L.A.N.T.)は、アニメ『機動戦士ガンダムSEED』及び『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』に登場する架空のスペースコロニー群であり国家。本項目ではプラントの武装組織であるザフトの解説も記述する。
プラントとザフトの設定製作は森田繁が担当した。森田は書籍のインタビューに際し、ザフトが軍隊、プラントがコロニーの呼称であることはまず決まっていたため、コーディネイターの統治機構や行政システムの設定を製作したと語っている。
また、神話で語られる楽園=ユートピアをイメージしてデザインがなされたとされている。デザインを担当したのはスタジオぬえの宮武一貴。
プラント(P.L.A.N.T.:Productive Location Ally on Nexus Technology プロダクティブ・ロケーション・アレイ・オン・ネクサス・テクノロジー)は、コーディネイターが中心となって作り上げた砂時計型をした新世代コロニーの総称。
太陽粒子・宇宙放射線遮断フィールド発生システムを外壁側に有する円錐状構造物の底面に位置する直径10キロ相当の面積が居住区であり、その約7割は水源(湖)で占められている。ゆえに充分な居住地帯を確保するにはサイズそのものを巨大化させる必要があり、その景観はL5宙域にあるにもかかわらず地球上から肉眼で視認できるほどのものとなった。支点となるセンターハブを軸に回転する事で擬似重力を生み出し、地球上とほとんど変わらない環境を確立。側面は多層超弾性偏光&自己修復ガラスで覆われている。気候は亜熱帯に設定。太陽光発電の変換効率が80パーセント強の世界ゆえに、中央のくびれ部分から伸びるシャフト先端の第1次ミラーで太陽光を受け、支点側の2次ミラーへ反射させて電力を蓄える事でエネルギーをまかなっている。行程60キロにもおよぶ両端への移動は内部中心にそびえ立つシャフトタワー内のエレベーターが用いられ、その中間が宇宙港などの施設地帯となっている。
その前身となるのはL5に建設された研究用コロニー「Zodiac」である。CE31年頃からジョージ・グレンや異星生物研究機関の手によってエヴィデンス01を始めとした研究を行っていた同施設は宇宙での一大研究施設として発展していき、CE38年には大型化・複雑化したため、ジョージ・グレンによって同年に天秤型コロニーが考案・発表された。そして大西洋連邦・ユーラシア連邦・東アジア共和国の三国がこれに出資し、理事国となった。この天秤型コロニーはCE44年には地球に対する大規模生産基地としての意味から「プラント」と命名。CE45年には既にその従事者はコーディネイターがほとんどを占め、「プラントに作れないものはない」と言われるほどの生産力となる。しかし、食料生産のみは厳重に禁じられており、100%が地球からの輸入品であった。同年には反コーディネイター組織によるテロが発生するが、非武装かつ自治権のないプラント市民には対抗手段がなく、不満が高まった。また、理事国からは多大なエネルギー供給ノルマが課せられており、これが切っ掛けとなり、CE50年にはパトリック・ザラ、シーゲル・クラインらが中心となり政治結社「黄道同盟」が組織され、プラントの自治権と貿易自由権を求める運動が行われていく事となる。
その後、地上での迫害から多くのコーディネイターが移住。CE63年にはプラント内でブルーコスモスによるテロが発生し、エネルギー生産部門が破壊される。理事国はこれに対しエネルギー輸出停止を認めなかったため、プラント内で深刻なエネルギー危機が発生。これを受けてプラント内技術者の一斉サボタージュが行われるが、理事国はモビルアーマーによる威嚇を敢行。プラント内で独立論が高まる。理事国からの独立を目指すグループは結束し、MSの軍事転用の研究を開始。CE65年にはその試作一号機のロールアウトに成功し、黄道同盟も活動を活発化させ「ZAFT」に名称変更。CE68年にはプラント内における評議会の多数派はザフトの議員が占めるようになり、自治獲得・貿易自主権獲得を表明する。その一方で南アメリカ合衆国・大洋州連合と極秘裏に取引が行われ、両国からの食料生産とプラントからの工業製品輸出が取り決められる。
しかし、これに対し理事国はプラントのシーゲル・クライン議長の解任と議会の解体、並びに自治権の完全放棄を要求。プラントが反発する姿勢を見せると、南アメリカ合衆国からの食糧輸送船を撃沈する。この事件を契機にザフトは軍事的組織に再編成。69年にはプラント独自での食料生産を行うべく、ユニウス市のコロニー4基を農業用プラントへ改造する。しかし、それを由としなかった理事国は軍事的な威嚇行動を行い、プラント側との軍事衝突が発生する。これに勝利したプラント側は完全な自治権獲得と対等貿易を要求する。しかし、理事国との交渉が紛糾。CE70年1月1日にはプラント側の要求の回答期限だったことから、理事国へ向かった評議会議員がブルーコスモスのテロに遭い死亡。しかし、理事国の関与が判明した事からプラントは地球に対する輸出を停止。その生産をほとんどプラントに頼っていた理事国は窮乏し、CE70年2月11日には地球連合によるプラントに対する宣戦布告、同年2月14日にはプラント・ユニウスセブンへの核攻撃が行われる。プラント議会はC.E.70年2月18日に黒衣の独立宣言と徹底抗戦を明言する。
その後、第二次ヤキン・ドゥーエ攻防戦が終わりユニウス条約の前身となったナイロビ講和会議が開催されると、政治的独立と引き換えに武力放棄を迫った連合国(地球連合軍)に対し、スカンジナビア王国のリンデマン外相が提案した条件(通称リンデマン・プラン)をプラント(ザフト)が了承した事で、残る唯一の障害だった「大西洋連邦との合意」を得て名実共に完全な自主権を獲得し「国家プラント」となる。それに伴い名称を Peoples Liberation Acting Nation of Technology ピープルズ・リベレーション・アクチング・ネイション・オブ・テクノロジー(科学技術に立脚した民族解放国家)へと改名しその景観を模してデザインした国旗も制定。C.E.73年代ではアーモリーワンなどを合わせた120基前後まで拡大したが、第二次大戦の終盤で大量破壊兵器のレクイエムによる砲火をうけ、ヤヌアリウス・ワンからフォーの4基と、ディセンベル・セブンとエイトの2基が壊滅した。
居住人口は一部例外を除いてプラント1基につき50万人。1基で1区とし、10基で1市を形成する。C.E.71年時点で全12市・計92基が存在していた。ただし、C.E.71年2月14日に起こった地球連合軍による核攻撃「血のバレンタイン事件」でユニウス市のプラントが1区(ユニウスセブン)崩壊している。また、C.E.73~74年の戦争を描いた「機動戦士ガンダムSEED DESTINY」第44話では地球連合軍の兵器「レクイエム」によってヤヌアリウス市が4基、ディセンベル市のプラントが1基崩壊している。
行政は各区で独自に行い、15歳以上であれば互選制によって選挙に参加。各区では15歳以上の人間のスキル・学業・仕事・実績が本人の意思に関係なくリストアップされ、有権者はそこから選択肢投票を行う。これによってもっとも投票数の多かった人物が選出される形となるが、健康問題や重要な業務に携わっている等の特別な理由がない限りは辞退する事が出来ない。基本的に有事などがない限りその任期は3年で、同じ人物が継投する事はない。
さらに各区から5人の議員が区長と同様の方法で選出され、各市間の折衝を行う「プラント60人議会」が存在。これと並行する形で行政支援AIによる中央官庁が存在する。「プラント60人議会」の5人のうち1人は主任として「プラント最高評議会」に参加する。
以下は各プラント概要。C.E.71年時点の各市代表も併記。
プラント最高評議会(P.L.A.N.T. Supreme Council)は、プラントの最高意思決定機関であり、アプリリウス市に政治拠点を持つ。
メンバーは「プラント60人議会」のうち選ばれた主任議員一人を市の代表とし、それぞれ12の各市から参加する。12の市長は同格な扱いを受けるが、議事進行を円滑に進める便宜的な措置としてそこから議長が選出される。事実上の国政の長と国家元首の役割を果たす最高評議会議長の任期は1年で、持ち回り制となる。
第二次大戦においてデュランダルが死亡した後の議長は不明であるが、『機動戦士ガンダムSEED DESTINY スペシャルエディション4 自由の代償』ラストにおいてはC.E.74年にルイーズ・ライトナーがオーブ連合首長国代表のカガリ・ユラ・アスハと講和を結ぶシーンが描かれている。
ザフト(Z.A.F.T:Zodiac Alliance of Freedom Treaty=自由条約黄道同盟)は、プラントで一党独裁の政権与党の立場にある政治結社であるが、事実上の国軍として機能する武装組織でもある。
ザフトの前身は「黄道同盟」と呼ばれる、パトリック・ザラ、シーゲル・クラインをはじめとするプラントのL5コロニー建設従事者が有志となって、自分たちの諸権利獲得を目的に結成した政治結社である。党勢拡大に伴い、C.E.65年に「自由条約黄道同盟」と改称したが、CE68年にはプラント内に存在する警察組織を吸収し、モビルスーツを主力とする本格的軍備を所有する組織へと再編された。
ゆえにザフトは国家の正規軍ではなく「義勇軍」である。このため、ザフトに属する者も、最高評議会のメンバーも、平時にはそれぞれの本職に就いている。
『SEED』と『SEED DESTINY』では、ザフトには「下士官、士官(尉官、佐官、将官)」といった階級制は存在しない。肩書きは配属された兵科、職種及びその戦術単位の責任者名、管理職名で呼ばれる。一方ではFAITHと呼ばれるプラント国防委員会直属の特務隊が存在している。ザフトへの入隊は志願制になっており、士官アカデミーを経て着任している。「機動戦士ガンダムSEED DESTINY HDリマスター Blu-ray BOX1」初回限定版に、特典として封入された両澤千晶書き下ろしの新作ドラマCD「OMAKE quarters Vol.1」では、第二次大戦の停戦後にザフトも階級制を導入したため、イザーク・ジュールは少佐(後に中佐に昇格)となっている。『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』では、大西洋連邦、オーブ連合首長国と共同で国際組織世界平和監視機構コンパスを創設したことで、МSや戦艦などを提供し、幾人ものザフト兵が出向し、各地の紛争へと介入している。
ザフトでは士官学校の成績等級または兵科によって制服の色が決まっている。
尚、軍服はZAFT時代と黄道同盟時代とで個別の物を使用している。
MSをはじめとするザフトの兵器の多くは旧ソビエト連邦をモデルとした党行政機関の一部である設計局で開発されている。元は複数の局に分かれていたが、パトリック・ザラ政権時に統合され、以後は統合設計局として各兵器を開発する事となる。各局・統合設計局ともに所在地はプラントのマイウス市。
文字通り、国防に関する事務処理を行う部局。劇中ではオペレーション・スピットブレイク発動の際に言及されている。また、ザフトの組織図に記載されていない「直轄特殊部隊」という非公然部隊を独自に保有し、極秘裏に要人の誘拐、暗殺、後方攪乱といった非正規作戦をおこなっているともいわれる。これは真実だとする意見と、プラントの広告代理店が地球連合側を混乱させるために流した噂だとする意見が、人々の間でも分かれている。
ザフトの広報、プロパガンダ活動を担当する部局。わかりやすい「胡散臭い」組織として設定されたもので、劇中デスティニープランの解説、啓蒙のためのアニメを制作して放送したのもこの広報局である。
パトリック・ザラがクライン派議員の拘束に際して言及している部局。パトリックの死後、この部署がどうなったかは不明。
フェイス(FAITH:Fast Acting Integrate Tactical Headquarters=戦術統合即応本部)は、プラント国防委員会直属の指揮下に置かれる特務隊であり、国防委員会及び評議会議長に戦績・人格ともに優れていると認められた者が任命される。ザフトのトップエリートと言うべき存在であり、左の襟元に部隊の徽章を付けることで所属を示す。
「隊」といっても隊員同士が戦術単位として集団行動をとることは無く、個々において行動の自由を持ち、その権限は通常の部隊指揮官より上位で作戦の立案及び実行の命令権限までも有している。このため、1つの戦術部隊に複数のFAITHが着任していると意思統一に齟齬を来す懸念(=二重指揮問題)もあり、ハイネ・ヴェステンフルスもミネルバ1艦にFAITHが3人乗り組むことを「まずいんじゃない?」と述べている。
フェイスは、「信頼」「信念」の意味。
元々、コーディネイター社会においてはその迫害の歴史から優生思想が発生していたが、シーゲル・クラインはコーディネイターの出生率低下によってその未来に疑問符を感じ、将来的には交雑によってナチュラルへと回帰する路線を思案する。また、クライン派は宇宙に存在し得る未知の遺伝子を入手し、出生率の低下を抑える思索もしていた。
こうしたシーゲルを筆頭とした派閥はプラント最高評議会において、地球連合との早期講和とナチュラルとコーディネイターの融和を目標に穏健路線をとるようになった。しかし大戦末期になるとパトリック・ザラへの政権交代により、議会における政策はザラ派寄りのものとなっていく。これを受け、シーゲルはレジスタンス組織を結成。シーゲルが暗殺された後は和平を願うラクス・クラインが父の人脈を利用し、一つの勢力を構築。クライン派は軍艦エターナルを奪取して第3極の立場となり、地球連合とプラント間の紛争を武力により終息させようとする「ラクス・クラインの支持者」という意味あいが強くなる。
前大戦の終結後、これらクライン派は地球連合を含む各勢力からの非戦派とともに「ターミナル」や「ファクトリー」を結成し、その活動を継続した。アークエンジェルやエターナルへの補給や情報提供も行っている。また、プラント内においても旧クライン議長の支持派は残っているため、プラントの高官やザフト技術者もクライン派に参加。私的な活動者も含め機密情報や機体の横流し、機体開発までを行うことで彼らを支援している。
C.E.74年に二次大戦の停戦を迎えた後は、プラント側の代表であるルイーズ・ライトナーがオーブ連合首長国と講和。最高評議会の要請により、ラクス・クラインが帰還した。
クライン派とは対照的に、プラント最高評議会において、地球連合に対する急進派となる派閥。
その筆頭となるパトリック・ザラはコーディネイターに対しての迫害と尊敬を一身に受けてきた世代であり、それが高まるほど優越思想に傾倒していった。そのため、コーディネイターの出生率低下が問題視された際も、パトリックはその思想を捨てたシーゲルとは対照的に、あくまで科学技術の発展によるコーディネイター存続を望んでいた。
パトリック・ザラの議長就任後は「オペレーション・スピットブレイク」によって地球軍本部を壊滅に追い込み、地球圏の支配権を握る目算を立てていたものの、情報の漏洩によって同作戦に失敗。ただし、同時期に起こった「フリーダム強奪事件」によってラクス・クラインの犯行が明らかとなったため、これを機に司法局を動かし、クライン派議員の拘束を行う。
これによって議会はザラ派優位の方向へ傾くものの、ヤキン・ドゥーエ攻防戦の最終局面によってパトリック・ザラが死亡した事と、幽閉されていたカナーバらクライン派議員が蜂起をしたために政権は転覆。その後の戦後処理もカナーバを議長として臨時政権によって執り行われる事となった。
CE73年においては穏健派のギルバート・デュランダルが政権を握ったため、軍部においてそれに意に反する旧ザラ派の支持者の一部は脱走兵となり、テロリストとして活動した。
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