人吉市(ひとよしし)は、熊本県の最南部にある市である。
九州山地に囲まれた人吉盆地に位置し、球磨川沿いの温泉と川下りで有名。人吉・球磨地方の中心地で、人吉藩相良氏の城下町として栄えた。
市内中心部に熊本県唯一の国宝である青井阿蘇神社があり、2015年4月24日には近隣の球磨郡の各町村と並んで「相良700年が生んだ保守と進取の文化 ~日本でもっとも豊かな隠れ里―人吉球磨~」が日本遺産に認定された。
熊本市から直線距離で真南に約70kmの場所に位置し、熊本県の最南端に当たる。北部と南部は九州山地の一角をなす山地である。市域南部は標高1,000m級の山地で宮崎県のえびの市と鹿児島県の伊佐市に接している。市の中心部は人吉盆地の西端で、球磨川が東から西に貫流する。市内では万江川・山田川・鹿目川・胸川など多数の支流が球磨川へ流れ込んでいる。
中心部は古くからの城下町の町並みが残っており、小京都と呼ばれる。
内陸の盆地のため寒暖の差が著しく、夏場は最高気温30℃以上に達する真夏日が70 - 80日間あるのに対し、冬場は最低気温が零下となる冬日が50日程度ある。年降水量は2,500 - 3,000mm。
盆地で大きな川があり支流も多いという地形上、冬季で晴れた日の朝には濃霧が発生する。その頻度は霧発生日数日本一を毎年争う程だが、この霧が高速道路の速度規制などを生むこともある。発生した霧も地形的にほとんど流出しないため、正午近くまで残ることも珍しくない。
年中多雨であり、夏の高湿度はもとより冬でも霧の影響もあり湿度があまり低くならない。
2016年1月25日には、観測史上最低となる-9.8度を記録した。戦時中の1943年から観測が続けられている移転がされてない場所での最低気温の記録更新は、都市化の影響の強い全国の気象官署の中では非常に珍しい事である。
鎌倉時代初期の1193年(建久4年)に相良氏が人吉の地頭に任ぜられ、その後は形を変えつつも明治時代の廃藩置県まで相良氏による統治が行われていた(詳しくは人吉藩を参照)。廃藩置県後は人吉県→八代県→白川県を経て熊本県の一都市となった。
明治以降も球磨郡役所が置かれるなど球磨地方の中心地としての地位を維持する。昭和初期には温泉の採掘が盛んになり、日本二十五勝のひとつとなった球磨川とともに宣伝されるようになった。1933年頃には球磨焼酎や球磨川下りとともに「泉都人吉」と称されるようになる。
1942年に市制を施行。1963年から3年連続で続いた水害は市街地の景観を一変させた。1970年代に開通した国道219号のバイパス道路(下林バイパス・人吉バイパス)沿いには新たな商業地域が形成された。
かつて「陸の孤島」といわれた人吉は、1960年代以降人口減が続いた。この対策として観光業・農林業の振興や企業誘致を掲げ、対策前は年70 - 80万人ほどであった観光客数も1990年には100万人を突破した。しかし九州自動車道の全通などにより拠点性を失い「通過都市」となりつつあることから、「物語都市ひとよし」構想の推進による地域活性化を図っている。
首長の代数(歴代)の数え方は何種類もあるが、ここでは (a)(b) を添える形で書き分けながら解説する。表示欄では「代(a)」「代(b)」という名で2種類を記載した。「代(a)」は、就任のあるたびにカウントする方式に基づく代数であり、「代(b)」は、同一人物による連続就任をカウントしない方式に基づく代数である。人吉市は「代(b)」の方式を採っているが(他の例:京都市歴代市長[1]、大垣市歴代市長[2])、「代(a)」の方式を採る自治体も多く(例:八王子市、弘前市歴代市長[3]、浜松市歴代市長[4])、(a) と (b) の違いを認識しないまま単純に比較すると誤解が生まれる。なお、返り咲きがあろうとも同一人物を1カウントとする方式もあるが、現状、人吉市は該当しない。
人吉市は、合併市制時に人吉町と藍田村・西瀬村・中原村の7大字を町名設置により75町に再編した。のちに1町を廃止し3町を新設しているため、現在は77町である。これらの町を小学校の校区ごとに列挙する。()内は合併前の町村名・大字名。
2004年(平成16年度)の市内総生産額は約 1,291億円で、人吉・球磨地方経済の中心地。 戦国の世から第二次世界大戦時まで歴史的にも栄えた地域で、熊本などの九州中部・北部と宮崎・鹿児島の南九州方面を繋ぐ交通の要衝・休憩地であった。 後述する通り、商業は人吉・球磨地方で最も栄えている。その他の主力産業は観光業・農業・酒造。
鎌倉時代には静岡から鍛冶職人が移り住んで職人町を形成した(鍛冶屋町)。しかし、2022年5月に最後の一軒だった正光刃物製作所が刃物製造を終えており(刃物研磨は継続)、鍛冶屋町での刃物製造は行われていない。
前述の通り、歴史的にも球磨郡の中心地であり、交通の要衝であった。現在でも球磨郡内で最大の人口を有し、また郡内の道路が集結する拠点であり、九州自動車道や一般道での域外への接続拠点でもある。特に高速道路での流通性の高さから、店舗や娯楽関係は域内で最も多く、郊外型電器店や24時間営業スーパーもある。これらの理由のため、球磨郡内の他町村から人吉まで買い出しや遊びにでることも多い。
高速道路の開通及び市内幹線道路の整備により交通の便は格段に向上したが、それまでの商店街的な店舗からジャスコ(現・イオン)などの郊外型大型店やコンビニエンスストアが店舗の中心になるようになり、市街中心部(人吉駅 - 九日町)の空洞化が目立っている。また観光業でも観光客に対する宿泊者の比率減少(観光客数自体はあまり変わっていない。)、ドライブイン型のレストラン・みやげ店の閉鎖という問題が出ているが、これといった解決法は見つかっていない。(関連:ストロー効果)
人吉市を拠点とするマスメディア。
休校中の学校を除く。
市の中心となる駅:人吉駅
市内の九州自動車道上に人吉IC停留所と人吉南バスストップが設置されている。人吉インターチェンジ停留所には下記の各路線の全便(快速便等も含む)が停車する。
人吉IC停留所は屋根付きでバリアフリー化されており、椅子や多目的トイレもある。市内への連絡は人吉駅や市街中心部との連絡バス「じゅぐりっと号」があるが、待ち時間や行き先からタクシーの利用も多い。また現在はくま川鉄道の不通区間のための代替バスが、IC近くのコンビニをバス停としており、これを利用して人吉駅や肥後西村駅に移動し、くま川鉄道を利用することもできる(日曜祝日運休)。
一方の人吉南バスストップは2017年9月までなんぷう号各停便が停車をしていたが、同路線のダイヤ改正により、停車するバスがなくなったことから現在は休止中である。
かつては人吉駅近くの人吉市街地内の人吉産交に高速バスも多数停車していたが、人吉経由の高速バスは人吉IC停留所発着へ徐々に切り替わり、2010年頃からは人吉産交が始発・終点となる高速ひとよし号が発着するのみとなっていた。高速ひとよし号が2020年7月31日に運行終了となったことにより、人吉産交・人吉市街地に停車する高速バスはなくなった。
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