併合(へいごう、英: Annexation)は、ある国家の領土の一部または全部を、合意により他国が譲り受けること。主権の完全移行を伴わない占領や保護国・保護領化、租借とは区別される。政治の分野でいう併合は、離散的な分割の逆と捉えるか、連続的な分離の逆と捉えるかで含む範囲が異なる。類義語としては、統合・合併・統一・合体などがある。
武力を背景とした一方的な現状変更の場合、第三国が併合を違法且つ無効として承認せず、地図上では併合前の国境が用いられることもある。1968年のイスラエルによる東エルサレム併合や、1990年のイラクによるクウェート併合、2014年のロシアによるクリミア併合などでその例が見られる。
「併合」は、強い側の拡張主義や、強制的 / 片務的な意味合いが強いため、合併、合邦、統合、統一などといった用語に置き換えられることがある。
併合の例(国際的に認められていないものも含む)
1949年以後
- 2022年9月にドネツィク州とルハーンシク州とザポリージャ州とヘルソン州がロシアに編入。詳細はロシアによるウクライナ4州の併合宣言を参照。
- 2014年3月にクリミア自治共和国とセヴァストポリがロシアに編入。詳細はロシアによるクリミアの併合を参照。
- 1990年10月3日にドイツ民主共和国が解体され、5つの州としてドイツ連邦共和国に編入。詳細はドイツ再統一を参照。
- 1990年8月にクウェートがイラクに併合され、カズィマ州と改称させられたが、米国を中心とする多国籍軍がイラクを撃退(湾岸戦争)し、再度独立を回復した。
- 1976年7月17日にインドネシアが東ティモールを併合して第27州とするが国連・ポルトガルが容認せず、また独立派のゲリラにより紛争になる。1999年には国連の協議の下で、インドネシアとポルトガルが併合に同意したが紛争が続く。2002年に独立。
- 1975年にスペイン領であった西サハラがモロッコに併合。国際的には承認されず、また反モロッコのポリサリオ戦線が併合に抵抗する。1991年から国連の平和維持活動が始まったが紛争は解消していない。
- 1961年にポルトガル領であったゴアがインドに併合。
- 1951年または1959年にチベットが中華人民共和国に併合。
- 第三次中東戦争でのイスラエルの占領区域のうちエルサレム東部が併合される。ヨルダン川西岸地区・ガザおよびゴラン高原のイスラエルによる法的位置付けは、占領地のままとされる。
戦間期から第二次大戦
- 1938年、オーストリアがドイツに併合。詳細はアンシュルスを参照。第二次世界大戦の後に分離。
- 1938年、ミュンヘン会談を受けチェコスロバキアのズデーテン地方がドイツに併合。後にドイツはチェコスロバキアを解体しベーメン・メーレン保護領およびスロバキア(被保護国)として勢力下に収める。詳細はチェコスロバキア併合を参照。
- 独ソ不可侵条約付属秘密協定に基づいたソビエト連邦の軍事圧力下において、1940年8月にエストニア・ラトビア・リトアニアにおいて親ソ左翼政権が樹立。ソビエト社会主義共和国としてソビエト連邦に加入。
- 1940年6月、ルーマニアのベッサラビアと北ブコビナがソビエト連邦に併合。ベッサラビアの大部分はモルダビア・ソビエト社会主義共和国(現・モルドバ)となり北ブコビナとベッサラビアの黒海沿岸部はウクライナ・ソビエト社会主義共和国に組み込まれた。
- 1936年5月、エチオピア帝国がイタリアに併合(〜1941年)。
第一次大戦以前
- 1910年8月、大韓帝国が日本に併合。詳細は韓国併合を参照。
- 1898年8月、ハワイ共和国がアメリカ合衆国に併合。詳細はハワイ併合を参照。
- 1879年3月、琉球王国が日本に併合。詳細は琉球処分を参照。
- 1845年、テキサス共和国がアメリカ合衆国に併合され、同時に26番目の州となる。詳細はテキサス併合を参照。
- 1799年、東蝦夷地(北海道太平洋岸および千島)が公儀御料(幕府直轄領、ただし仮上知)となる。詳細はアイヌの歴史を参照。
脚注
出典
関連項目
外部リンク
- 世界大百科事典 第2版『併合』 - コトバンク
- 『併合[国際法]』 - コトバンク
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