2018年平昌オリンピック(2018ねんピョンチャンオリンピック、仏: XXIIIes Jeux olympiques d'hiver、英: XXIII Olympic Winter Games、韓: 제23회 동계 올림픽)は、2018年2月9日から2月25日までの17日間、大韓民国の江原道平昌郡を中心とする地域を会場として開催されたオリンピック冬季競技大会。一般的には平昌オリンピック(ピョンチャンオリンピック)と呼称され、平昌五輪と略される。テーマは"Passion. Connected."(韓: 하나된 열정、ひとつになった情熱)。平成時代に開催された最後の冬季オリンピックである。
2011年7月に南アフリカのダーバンで開かれた第123次IOC総会で、2018年冬季オリンピックの開催地が平昌に決定した。主催都市(Host City)は平昌郡で、オリンピックの名称には「平昌」の地名が冠されているが、競技会場は江陵市と旌善郡にも配置されている。規模の大きな都市がメイン会場であった過去数大会の冬季オリンピックとは異なる特徴を持つ大会でもあった。
都市ではない村での開催は、1994年リレハンメル大会以来24年ぶりとなり、韓国で冬季オリンピックの開催は初めてとなった。また、夏季大会も含めると1988年ソウル大会以来30年ぶり2回目となった。またアジアで開催される冬季オリンピックのは、1998年長野大会以来20年ぶりで3回目となった。
大会マスコットは白虎のスホラン。
エンブレムは2013年5月に発表された。ハングルの平昌(평창)のそれぞれの初声文字、「ㅍ(p)」および「ㅊ(ch)」をモチーフとしており、当時の大会組織委員長によると、「ㅍ」は東洋の「天・地・人」思想に着眼し、天と地の間で人々が一つになる広場という意味を込めた。「ㅊ」は雪片の形で、星の姿とも似ている。
平昌大会の予算は約90億ドル(約1兆円)である。ソチ大会(2014年)の510億ドルと比べ、既にインフラが整っており大幅に費用が圧縮されていると説明されるがバンクーバー大会(2010年)の18億8,000万ドルと比べると4倍強となっている。
2018年冬季オリンピックでは、以下の15の競技から102種目が実施される。このうち、スノーボードのビッグエア、カーリングの混合ダブルス、スピードスケートのマススタート、アルペンスキーの混合団体が今大会の新種目として採用された。また、競技日時はアメリカのNBCがフィギュアスケートでの生中継を希望しており、午前中の開催となった。以下、括弧内の数字は各競技でメダルが授与される種目の数を示す。
注:日付は全てKST (UTC+9)
競技会場は合計13会場で、山岳地区(アルペン・クラスター)の平昌郡・旌善郡と海岸地区(コースタル・クラスター)の江陵市の3ヶ所に分かれて開催された。2018年1月現在では、山岳地区を1つにまとめ、平昌マウンテンクラスターと江陵コースタルクラスターの2分類になっている。会場の場所は、「平昌」の元々の中心街である高速バスターミナル付近から30~40 km離れた珍富や江陵が主となる。
日本からの空路は仁川国際空港や金浦空港への定期便が運航されているが、選手団は襄陽国際空港へのチャーター機が手配される。
大会期間中はKTXで最寄り駅、高速バスで最寄のバスターミナルや駐車場に着いてから先は、観客シャトルバスでのみ競技場へ移動できる。
メイン会場となる平昌郡の大関嶺(テグァルリョン)面の人口は、6,141人(2016年)に過ぎない小さな村である。
以下は蓬坪(ポンピョン)面にある。人口5,841人(2016年)
旌善郡の北坪(プクピョン)面にある。人口2,678人(2015年)
江陵市での開催。屋内競技はすべてこの地域で開催される。人口215,807人(2014年)。(江陵バスターミナル、江陵駅)
メイン会場に近い、標高850mほどの大関嶺地区の気候についてはオリンピックが開催される2月の平均気温が-5.9℃と、札幌(-3.1℃)や白馬(-2.6℃)よりも低い。2月の平均最低気温は-10.9℃に達し、1974年1月24日には過去最低気温として-28.9℃を記録するなど、氷点下20℃前後の厳しい冷え込みになることも珍しくなく、高地である事を加味すると韓国では最寒の地とされる。このため、気温面では過去の冬季五輪開催都市の中では低い方に入り、冬季五輪開催には申し分ない条件となっている。さらに、この寒さに風が加わる場合が少なくなく体感温度はかなり低くなる。また、積雪も過去最深積雪として188.8cm(1989年2月26日)を記録するなど、一般的には十分な積雪量を誇っているが、冬型の気圧配置で降雪量が増える地域ではなく、むしろ寒冬は積雪ではなく低温をもたらすために、その場合は人工雪の使用が必須となる。人工雪の使用の場合でも平均気温零下5度前後とかなり低いためにパウダースノーに近い状態になりやすい利点がある。
一方、屋内での競技種目が実施される江陵は日本海沿岸に位置するため、比較的温暖な気候であるが、時に大雪を降らせることがあり、過去最深積雪は1990年2月1日に韓国の都市部・平野部で最多の138.1cmを記録している。
開・閉会式の総合監督はソン・スンファン、総合演出は梁正雄、音楽監督は梁邦彦。開会式は現地時間2月9日午後8時 (UTC+9) 開始予定。
2017年9月、北朝鮮の張雄IOC委員はIOCの公式メディアとのインタビューで、「政治とオリンピックは別物である」、「選手が出場資格を得れば、平昌五輪への参加は問題ない」という認識を示した。実際に、9月にはフィギュアスケートの平昌冬季五輪予選を兼ねたドイツの大会で、北朝鮮のリョム・テオク、キム・ジュシク組が全競技を通じて、平昌五輪の出場枠を獲得した。国際社会が北朝鮮への制裁を強化する中で、文在寅大統領は北朝鮮に平昌五輪へ参加するよう求めており、9月21日の国連総会における一般討論演説でも、北朝鮮の参加に向けて努力を続ける考えを示していた。一方、北朝鮮は平昌五輪への参加を表明しなかった。
2017年10月12日、韓国の康京和外相は国会において、与党共に民主党の議員に対する答弁で「北朝鮮が核・ミサイル開発をめぐって国際的な孤立を深める中で、平昌パラリンピックへの参加意向書を国際パラリンピック委員会に提出した」と語った。その上で北朝鮮の平昌五輪参加については、「フィギュアスケートのペアが出場権を得た。それ以外も多くの選手が参加できるようにIOCも積極的に協力しており、方法を模索している」、「北朝鮮から選手や応援団など多くの人が参加することを願っています」と述べ、平昌冬季五輪への参加も呼びかけたが、北朝鮮は態度を明らかにしていない。
2018年1月1日、北朝鮮の最高指導者である金正恩氏が「新年の辞」において平昌冬季五輪に北朝鮮代表団を派遣する用意があるとの声明をだした。これを受けて1月9日にも南北閣僚級会談が行われ、北朝鮮が平昌冬季五輪に参加することが正式に発表された。
2018年1月15日、北朝鮮の対外宣伝サイト「朝鮮の今日」は五輪を自分たちの統一政策の一環だと宣伝する動画を「YouTube」で公開した。動画には、韓半島旗と北朝鮮の国旗を振るシーンが何度も登場するが、太極旗(韓国の国旗)は一度も登場しないなどの内容から、一部からは「『平壌五輪』と誤解されかねない」と陰口をたたかれた。また20年にわたる招致活動にもかかわらず前夜祭が『金剛山文化行事』という形で北朝鮮開催になったことに地元の不満が爆発した。「国際オリンピック委員会(IOC)がまるで国連の役割をしているかのような錯覚に陥る」との声も上がり、AP通信は「金正恩朝鮮労働党委員長はまるでチャンピオンであるかのように五輪をもてあそんでいる」と報じた。
北朝鮮の競技参加については、南北閣僚級・次官級実務会談においてアイスホッケーの南北合同チーム結成が合意された。IOCのトーマス・バッハ会長が南北合同チームに非常に前向きであるとされ、韓国政府の決定にも影響があったとされる。この合意について、予選で同組の日本とスイスが人数増等の公平性の観点からこれに反対した。南北合同チームに合流する北朝鮮選手は現在4-6人で、チームの組織力を殺さないため攻守5人が構成する「ライン(組)」で一括して起用するとされる。
当事者の選手サイドでは、代表のセラ・マレー監督が「北朝鮮の選手を入れろという圧力がなかったらと思う」とコメントした。代表チームのメンバーからは不満が上がり、ゴールキーパーのシン・ソジョンが「14年間オリンピックの舞台を夢見てきました。大きな期待をかけてきただけにとても当惑し、失望しています。」、「選手たちは『(南北合同チーム問題を)変えることはできないのだから、みんな気持ちを引き締めて練習に集中しよう』と話していました。動揺せずに五輪の舞台で最後まで頑張る姿をお見せしたいです」などと語った。
開催地の韓国平昌よりも北朝鮮が目立つため、『平壌オリンピック』との批判が韓国国内から出ている。文在寅大統領の支持層からも批判が出たため、支持率の低下をもたらした。オリンピックを利用する北朝鮮の政治的動きと、文在寅政権が示す北朝鮮への譲歩に韓国のメディアからは、「まるで、北朝鮮が主導する『平壌オリンピック』だ」との声が上がっている。
前夜祭の『金剛山文化行事』は中止され、北朝鮮選手は五輪期間中にメダルも獲得できなかったが、一時的にせよ緊張緩和をもたらした北朝鮮は外交上の成果で「金メダル」級をおさめたと評された。
北朝鮮は核実験やミサイル発射事件を理由に国際連合安全保障理事会の決議で制裁を課されており、韓国もこの安保理の制裁決議に基づいて、日本などと同じく貨客船万景峰92の入国禁止などの対北朝鮮独自制裁を行っている。しかし五輪期間中は「例外」として、北朝鮮の文化交流事業団の「三池淵管弦楽団」の人員を載せた万景峰92の韓国入国を許可した。これを受けて韓国の保守派市民団体が金正恩の写真を燃やすなどして抗議した。また韓国政府は万景峰92に対する食事や油などの提供要請を受けているが、「制裁違反」との指摘を受けることを危惧してアメリカと緊密に協議するとしている。また北朝鮮の代表団に安保理制裁決議で外国渡航が禁止されている崔輝(チェ・フィ)朝鮮労働党中央委員会副委員長兼国家体育指導委員長が含まれていることから、これも五輪期間中の例外としてアメリカや国連と協議するという。
2017年12月5日、IOCは理事会を開き組織的なドーピングを行ってきたとされるロシアに対し、ロシア選手団の参加を認めないと決めた。以前のドーピング違反や薬物検査歴のないことが確認された同国選手は、個人資格での五輪参加が認められているが、ロシア国旗と国歌ではなくオリンピック旗とオリンピック賛歌を利用すること、ロシアの国章「双頭のワシ」の代わりに五輪マークを使うこと、また、ロシアと特定されるあらゆるシンボルの使用も禁止、ユニホームなどで「ロシア」の文字は「ロシアからの五輪選手」に変更して新たにIOCの承認を受けること、「ロシア」の文字だけを大きく表記することも禁じた。
今大会では大会序盤から複数の競技で中止や延期、及び、悪天候の中での競技の開催が相次いだ。大会2日目のスキージャンプ男子の個人ノーマルヒル決勝では、氷点下10℃を下回る極寒の中、秒速5メートル以上の強烈な風が吹き、体感気温では氷点下20℃近くの過酷な環境下での競技の開催になった(2018年2月12日付のスポーツ報知の記事曰く、記者が「寒さで書いた文字がミミズのように震えるほどの寒さであった」という。 。競技の開催時間も、開始時間が21時35分、これに加えて強風による度重なる中断により、終了時間は日付をまたいだ0時19分になっており(当初の終了予定時間よりも1時間程度遅かった。)、表彰式のときには観客がほとんどいなくなっていたという。このことについて、冬季オリンピックにジャンプ競技で8回目の出場になる葛西紀明が「(寒さは)もう信じられないぐらい。風の音がすっごいんですよ。気持ちが怯むぐらい。ブワーって。W杯でもほぼない条件。『こんなの中止でしょう』ってちょっと心の隅で文句いいながら寒さに耐えてましたよ。」と述べている。
大会第4日に開催されたスノーボードの女子スロープスタイルでは、前日に開催予定であった予選が強風により中止になったことで、決勝の一発勝負で決める状況になった(その上、決勝も本来は3回の試技ができることになっていたが、「雪煙が舞うほどの強風」の影響で競技開始が1時間以上も遅れた上に、試技も2回に縮小された。また、予選に向けての練習で転倒し大けがを負って棄権を余儀なくされた選手もいた)。決勝では、出場した25選手の全員が、2回の試技のいずれか1本以上で転倒してしまう過酷な状況になった。このことについて、出場した選手からは、「正直、この風でやるのはかなり無理があるというコンディションがあります。」(藤森由香)、「たくさん練習してきたんですけど、その練習が全く意味のないような気がして辛かったです。」(鬼塚雅)、「フェアな競技だったとは思わないわ。強行した主催者には少し失望しているの。私の考えでは、女子スノーボードにとって良いショーではなかったと思うわ。」(アンナ・ガッサー)などとして、不満や違和感を訴える選手が続出することとなってしまった。
アルペンスキー競技についても、大会第3日に予定されていた男子滑降や大会第4日に予定されていた女子大回転が、強風などを理由に相次いで開催日程の延期を余儀なくされた。
競技日程の延期や、悪天候下での競技の開催が相次いだ背景として開催地である平昌(及びその周辺地域)が、標高800メートル超の山岳地帯で周囲の山々には風力発電用の巨大な風車が回るような風の強い地域であることが挙げられている。また、ジャンプ台は「台自体がアルペンシア・リゾートを見渡す展望台を兼ねている」ため、小高い山の頂上にタワーを建てて、助走路を設けた構造であったことから、「こんなところに、よくつくったな」と懸念の声があったという。
これに加えて、アメリカやヨーロッパの巨額(といわれる)放映権料の影響が見え隠れする変則的な開催時間も悪天候下での競技の開催(の強行)に影響したといわれる。実際、スキーのジャンプ競技がヨーロッパの日中時間帯となる夜の開催となり、フィギュアスケート競技はアメリカ時間の夕方から夜にあたる午前の開催(一例として、男子フリーの競技開始時間は午前10時)になった。。そのため、日本のフィギュアスケートの選手は、競技開始時間が午前になる「朝型対策」として「体内時計を数時間ほど前倒し」しながら午前4時を目安に朝食をとる生活になったという。このようなことから今回の平昌オリンピックの運営などについて、「『アスリート・ファースト』なのか疑問を感じざるを得ない」「選手ファーストは無視されていた」「より選手を、観客を追い込むことになる」「4年間必死に重ねた努力の集大成が気まぐれな風に左右され過ぎる」「五輪の真の目的を忘れないでほしい。だが、今の五輪は札束を生み出し、運営者に富をもたらすために存在している」などという批判の声が少なからず起こる結果となった。
今大会は、チケットの空席が目立つ大会になってしまった。2月9日に開催された開会式からさっそく、「本来ならプレミアチケットになるはず。こんなにガラガラなのは見たことがない」と、ある海外メディアに指摘されたのをはじめ、フィギュアスケート(男子フリー、女子ショートプログラムなど)でも空席が目立ってしまう結果となった。完売になったのは、スピードスケートやショートトラック(いずれも、韓国国内で人気の高いスポーツといわれる)くらいであったという。
空席が目立つ結果となった理由として、「(韓国のカレンダーでは)旧正月の連休」(2月15日から2月18日の4日間が該当)になったこと、高額なチケット代金、オリンピック本番の各競技会場の入場ゲート付近で、Wi-Fiなどの接続環境が不安定である(あるいは、整備されていない。なお、販売チケットの一つとして「モバイルチケット」があるが、これは入場時にWi-Fiなどのネット接続環境が必要であるという)、などのことが挙げられている。また、「海外から来るファンにとって、最悪の観戦環境」であったという報道もあった。
平昌の大会収支は当初赤字が懸念されたため、施設のスリム化などの経費削減策や関係者用の席を一般販売に回すなどの収入増加策で改善を計った。大会での地元韓国選手の活躍もあり五輪の入場券が国内で86万6284枚(80.3%)、海外で21万2278枚(19.7%)、合計107万8562枚の販売実績を示した。これは平昌五輪組織委員会が目標としていた106万8630枚より約1万枚多い数字であり、販売収益は1573億ウォンにのぼった。その結果、平昌五輪組織委員会は2018年10月8日アルゼンチンのブエノスアイレスで開催された第133回国際オリンピック委員会(IOC)総会で少なくとも5500万ドル(619億ウォン)の黒字を達成したと報告した。
オリンピック開催直前の2018年2月3日、自国の民間警備会社のスタッフ宿舎でノロウイルスが原因とみられる食中毒が発生している。関係者約1200人に隔離処置がとられ、5日に業務代行の軍人が約900人投入された。。
その後、李熙範(イ・ヒボム)組織委員会会長がこの件について謝罪した。また、上記の措置をはじめ様々な対策を講じていることを説明した。
ボランティア運営スタッフに対する待遇の不満などで、開催1週間前の2月3日までに約2400人が辞めている。お湯が出ない宿泊施設や極寒の野外で1時間待たされるような移動バスの劣悪さなどの不備が挙げられている。また2月3日の開会式リハーサルでは、式典進行の業務スタッフ249名中109名が待遇不満を理由にボイコットしている。
ロイター通信が聖火点火リハーサルの写真を(主要部分は報道しない契約をしていたにもかかわらず)配信したとして、IOCはロイター通信の開会式の取材を認めないことを決定した。
オリンピック開催前後に6億回のサイバー攻撃があり、組織委員会内部のインターネットやWi-Fiのシステムがダウンするなどの影響が発生した。これらについて、調査が進められていたが、アメリカ合衆国司法省とイギリス政府は2020年10月にロシア連邦軍参謀本部情報総局によるものであると発表した。
国際バレーボール連盟と欧州バレーボール連盟は、「スノーバレーボールナイト」と銘打ったエキシビションマッチを行う事を決めた。スノーバレーボールは雪上のビーチバレーで、同エキシビションにはキム・ヨンギョンやウラジミール・グルビッチ、ジバなどバレーボールやビーチバレー選手が出場する。
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