『ウルトラマンG』(ウルトラマングレート、英題:ULTRAMAN: towards the future )は、円谷プロダクションが、オーストラリアで製作した特撮作品と劇中に登場する巨大変身ヒーローの名称。全13話。日本ではオリジナルビデオとして展開された。
『アンドロメロス』を除けば、実写のウルトラシリーズは『ウルトラマン80』以来10年ぶりで、元号が平成に変わってから最初に製作された作品である。京本政樹が日本語版主演、命名、番組のPRなど深く関わっている。
ウルトラマングレートや怪獣の巨大感を表現するため、日本のウルトラマンと比較してグレートや怪獣の大きさがビルの高さより低くされているほか、戦い終わったグレートが飛び去る場面を真下から映すなど、過去のウルトラシリーズとは少し違った切り口の特撮場面が見られる。
ウルトラ兄弟の存在は主題歌の2番に示されているのみで本編では語られておらず、UMA(後述)がグレートを当初は仲間と認めずに攻撃するなど、本編では他のシリーズ作品との繋がりは描写されないが、第8話のナレーションで語られたように設定上ではグレートもM78星雲光の国の宇宙警備隊の隊員とされている。映画『大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE』では、宇宙警備隊の隊員としての姿が描かれている。
グレートの戦う相手は、第1話から第6話までがゴーデス細胞の生み出した怪獣、第7話以降は宇宙からの来訪者や環境破壊が原因で出現した怪獣となっており、後者では過去のウルトラシリーズのオマージュと窺える描写が増えている。ゴーデス細胞に操られているだけの怪獣や人間の破壊活動に怒って出現しただけで本来は無害の怪獣も存在するため、そのような場合は倒さずに終わることもあった。
日本側文芸スタッフには、『ウルトラマンティガ』以降に関わることになる人々が多数参加している。それゆえ、後年の平成ウルトラシリーズでよく見られる要素が本作品では試験的に盛り込まれている。なお、アーサー・グラント隊長の吹き替えには『ウルトラマン』のムラマツキャップ役の小林昭二、ナレーター(第6話まで)には『仮面ライダー』で本郷猛 / 仮面ライダー1号を演じた藤岡弘、と、過去の特撮ヒーローにゆかりのある俳優が起用されている。
ウルトラシリーズは『ウルトラマン80』終了後、映画作品の公開、旧作品の再放送や映像ソフト化、帯番組の放送、玩具や書籍などの発売、イベント「ウルトラマンフェスティバル」の開催など、精力的な展開によって安定した人気を獲得し、新作の待望論が高まっていた。1986年にTBSに向けた「新ウルトラマン」の企画準備が始まったものの、半年で企画はペンディング(保留)ということになった。
1989年初頭より『新ウルトラマン』の仮題で日本国内制作によるテレビシリーズが企画されていたが、企画書第2稿の作成時点でTBSの放送枠の獲得が難しかったことから一度は凍結され、アニメ作品『ウルトラマンUSA』に続く海外展開が同年春より始動した。過去にはタイとの合作『ウルトラ6兄弟VS怪獣軍団』が存在していたが、本作品では世界展開を見据えて英語圏での制作が目指され、オーストラリアでの制作となる。当時のVシネマブームを踏まえ、機動性のある新たなメディアとしてビデオオリジナルで展開することとなった。当初は、当時のOVAに多かった全6話で予定されていたが、海外での販売を考慮して7話追加の1クール構成となる。
初期のウルトラシリーズを支えたデザイナーの成田亨に新たなウルトラマンと怪獣のデザイン依頼を打診し、成田は直ちに「ウルトラマン神変」という新ウルトラマンのデザイン画を描き上げた。しかし、成田がデザイン料として著作権(商品化による収入)の30%を要求したために円谷プロと折り合いが付かず、成田の登板は実現しなかった。
プロデューサーの鈴木清の進言により、特撮監督は映画『タイムガーディアン』を手掛けたポール・ニコラが抜擢された。撮影は当初、ポールの住むシドニーで準備されていたが、本作品の制作を聞き付けた南オーストラリア州首相ジョン・バノンが同州での撮影を要望し、『ウルトラマンUSA』の座組を基に製作委員会が組まれ、サウス・オーストラリアン・フィルム・コーポレーションとの合作で海外制作される運びとなった。
ストーリーについては、ウルトラシリーズが世界に通用するものであるとの自負から特別に海外向けた展開とはせず、『ウルトラマン』同様にエンターテイメント性と哲学的な要素を併せ持つ作品とすることが目指された。また、インターナショナルで理解されるようにゴーデスをレギュラーの悪に置くことで善と悪の対立を際立たせ、地球が絶対善と絶対悪に挟まれてしまったという状況となった。また、正義側も従来の正義の味方とは距離を置いたものとして理解され、ウルトラマンは「監視者」であり、高度に完成された種族というものであった。
「グレート」の日本名は京本政樹の命名による。京本はシンプルなものとの注文からこの名称を思いつき、オーストラリアのグレートバリアリーフに絡めることも意図された。本作品はウルトラマンのマニアとしての京本が円谷プロと親交が深くなった時期に国内リリース準備が進んだため、日本語版では声の配役・SEなどプロデュース部分に京本の意見を取り入れた部分が多い。
本作品では当初は着ぐるみではなく、海外のSFX映画のクリーチャー操作でポピュラーなパペット(メカニックを内蔵した人形)で第1話の火星でのグレートとゴーデスの戦闘を描いたシーンが撮影されたが、結局パペット特有の動きではウルトラマンの力強さとスピード感を表現できずにNGとなった。ただし、ゴーデスはパペット使用のカットが何箇所か使用されており、他にも怪獣の都市破壊シーンに関してはパペットが多く使われ、ゲルカドンのようにパペットのみで表現されたものもある。逆にデガンジャのようにパペットが製作されたものの未使用のものもある。
特撮場面の多くは、オーストラリアの地の利を生かしたオープンセットが用いられ、自然光下での撮影によって巨大感を表現していた。ミニチュアワークの細かさやコダラー出現時の波の表現など、以後の作品では見られないような迫力ある場面が多かった。そんな中でも、円谷プロが旧来の作品で用いた「木や建物越しのアングル」はこの作品でも多用されている。これはSFXコンサルタントにあたった高野宏一の影響が大きい。現地スタッフは当初「手前に物があったらぼやけてしまうではないか」と高野の意図を理解しなかったが、完成した映像を観てようやく納得してくれたという。
宇宙飛行士のジャック・シンドーとスタンレー・ハガードは、火星探検中に宇宙生命体ゴーデスと遭遇する。その時、突如2人の前に銀色の巨人・ウルトラマングレートが現れ、ゴーデスと戦闘を始める。その戦闘中にジャックは負傷し、スタンレーのみが探査船に避難することに。油断したグレートが気を失ったその隙に、ゴーデスはスタンレーが乗っていた探査船を破壊してしまう。再び気を取り戻したグレートはゴーデスを倒し、ジャックと一体化する。
ジャックはグレートに救われ、地球に帰ってきた。しかし、火星で倒したはずのゴーデスの細胞に感染した生物が怪獣化し、地底からブローズとなって現れた。ジャックはグレートに変身し、これを倒した。
その後、ジャックはUMA南太平洋支部に入隊。ゴーデスの細胞に感染した怪獣たちと戦っていく。一方、スタンレーもゴーデスの使いとして蘇り、地球に帰還していた。
オーストラリア軍。UMAとは怪獣の対処や縄張り争いなどで色々と対立することが多い。
邪悪生命体ゴーデスを追って太陽系内に侵入して来たM78星雲・光の国の戦士。劇中ではグレートと呼ばれることはなく、単純にウルトラマンと呼ばれる。
火星での戦いで1度はゴーデスの本体(肉体)を火星で殲滅したものの、ゴーデス細胞として分離して地球に逃れたため、宇宙船を破壊されて地球に帰還する方法を失った宇宙飛行士ジャック・シンドーと同化して地球を訪れる。第1話でのブローズとの戦いでは、UMAから「(怪獣が)もう一匹現れた」と攻撃されるが、ブローズを倒したことで味方と認識されるようになる。
戦闘では苦戦することが多い。気を失ってその場に倒れこむことも多々あり、その間に犠牲者が出たこともあった。
活動限界は3分だが、その理由は地球の大気汚染のためという独自のものになっている。
ジャックを支配しているわけではなく、ジャックの肉体を共有しているだけでグレートとジャックがそれぞれ意識を持っており、精神世界での会話もできる。両者の目的が必ずしも一致しない時もあり、UMAの入隊に反対だったグレートの反対を押してジャックが入隊したり、ジャックが怪獣に同情して倒すのを望んでいない時もグレートが怪獣を倒すなど、ジャックの姿の時はジャックを、グレートの姿の時はグレートの意思を尊重している。また、グレートはジャックの危機を救い、ゴーデスIIとの戦いではジャックが彼を救ったこともあり、ジャックとグレートは強い信頼と絆で結ばれている。
コダラーとの初戦で完敗し、その際に受けたダメージによってエネルギーを使い果たしたため、変身が1回しかできなくなる。最後の変身でコダラーとシラリーと戦い、UMAがコダラーを倒した後でシラリーを倒す。正体がバレないようにジャックと分離し、核爆発の核エネルギーを吸収して危険な状態のシラリーの亡骸とともに、人類に再びやり直すチャンスを与えてM78星雲に帰還した。
火星でジャックがグレートと一体化した際に、グレートから与えられた変身ペンダント。グレートのカラータイマーを模しており、ジャックはこれを常に身に着けている。ペンダント内部にはグレートの生命エネルギーであるプラズマスパークが内包されている。
ジャックがデルタ・プラズマーを左掌に乗せると、グレートの意思がデルタ・スパークをスパークさせることで発光部が緑色に点滅し、プラズマスパークが解放される。同時にジャックが精神を統一することで、ジャックの身体がグレートに徐々に変わっていき変身が完了する。また、第12話では海の中に飛び込んで変身するという変身スタイルをとった。
また、変身機能だけでなく、両手で覆い目を閉じると超周波によるテレパシーも可能で、第9話でこの機能を使ってバイオスと直接話した。
第5話では、ジャックがアーサーに独房入りを命じられた際に護身用の武器と思われて取り上げられた後、ゴーデスに操られているスタンレーに奪われたが、ジーンの捨て身の活躍で取り戻した。
アメリカ本土に本部があり、シベリア・日本海・インド・南太平洋(オーストラリア)・南アフリカ・イギリスなど、世界各地に13の支部が置かれている。アーサー基金を擁する南太平洋支部が最大であるが、その維持のために寄付金集めのパーティーも行なわれる。
UMA憲章により、どこかのUMA支部が一部の国家や軍人に占拠された場合は自動的に発電システムが破壊されて基地の装備は使用不可能になる。復旧させるには全世界の12人の各UMA支部長の命令が必要である。
オーストラリア近海の孤島を改造した秘密基地で、世界最新の科学設備や耐震・耐火構造が導入されている。巨大モニターや超高性能コンピューターを備えるメインルーム、隊員たちの私室や医療室、独房などが置かれハマーの格納庫や滑走路、サルトップの地下駐車場も存在する。また、基地の外壁には敵からの直接攻撃に備えて防衛砲台も複数設置されている。第5話で基地の構築に10年の歳月がかかったとアーサーが言及しているが、第5話ではバランガス、第11話ではUF-0に乗り込んだノルバーグと彼の信奉者たちの襲撃を受け、後者は特に大きな被害を受けている。
基地内部には50名前後の隊員・職員が勤務している。特にアーサー隊長を含む6人の実働隊員の連携は特に優れており、ゴーデス覚醒が迫る危機に際し、ブリューワー将軍のUMA乗っ取りの際には命令暗号を持ち出して将軍に逆らい、チャールズに関しては従うフリをして敢えて出撃。ジャックとジーンを殺される危険から救いだした。
基地内では隊員たちは、UMAのロゴがプリントされたインナーのTシャツやタンクトップなど、アーサーは専用の制服でいることが多いが、出動時にはロゴワッペンが付いたワンピースタイプのフライトスーツを着用する。ARMYの物の流用ともいわれているこのフライトスーツは共通のものではなく、各隊員の趣味に応じて形状や配色が異なり、カラーも自分で選んだもので、左胸に名前が英字で書かれている。第5話でチャールズのフライトスーツは、スタンレーが逃走の際に奪い取って着用していた。
第7話以降、スーツ着用時には両肩に肩パッドが装着されるようになるが、アーサーは装着しない。他にも半袖のミリタリーシャツや、森林地帯での任務などで着用するノースリーブタイプのサバイバルスーツ、基地内での待機時に着用するインナーシャツも存在する。
1990年12月15日に日本語吹き替え版を2本立てで公開され、6話以降の話は後に発売されるビデオ版に先駆けての公開となった。
本作品は1990年10月にロンドンとミラノで海外公開版の試写が行われた。本編でビデオ合成処理されていた光線技が新たにオプチカル処理されているほか、グレートの巨大化場面などが日本で新規に作り直された。また、第1話のハマー墜落場面やグレートの技など、ビデオでは未使用の映像を使った部分もあり、ナレーションやゴーデスの精神世界での声なども変更されている。戦闘中の掛け声とカラータイマー音は初代ウルトラマン(中曽根雅夫)のものを海外版と同時に使用。
劇場公開時とビデオでの完全版(海外公開版)はオープニングなども異なる他、タイトルが『ウルトラマン』で“G”がつかない。コロムビアから当時発売された交響楽集のビデオにそのタイトルがNG映像と共に収録されている。
ビデオ(VHS、セル・レンタル共通)とLD(セルのみ)が全話リリースされた。字幕版と日本語吹き替え版がある。
これ以降、長らく映像ソフトが発売されることが無かったが、2017年1月27日に約25年振りのリリースとしてBlu-ray BOXが発売された。全13話と映画2本が収録され、ブルーレイ版では全話のタイトルが「ウルトラマンG」に統一され、「新ウルトラマンG~」の表記はなくなった。
日本語版主題歌を担当した京本政樹は、当時ポリドール・レコードと契約していたが、特別なはからいで日本コロムビアによる本作品の楽曲に参加することとなった。
オープニングの映像には後半に登場する怪獣も先行して登場している。また本編とは異なりグレートがコダラーを倒すような映像がある。
※ 括弧内は日本語吹替俳優。
いずれもコミカライズ作品。
平成最初のウルトラマンとして製作された本作品にはビデオ売れ行きも良かったことから続編企画が複数存在したが、いずれも実現に至らなかった。
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