『がらくた』(英語: GARAKUTA)は、桑田佳祐の5作目のオリジナル・アルバム。2017年8月23日にCD・レコード・ダウンロード配信で発売。発売元はタイシタレーベル / SPEEDSTAR RECORDS。キャッチコピーは「その男、どスケベにつき! ソロ30年目の衝動。」。
2019年12月20日にはストリーミング配信を開始した。
桑田が2017年にソロデビュー30周年を迎え、前作のオリジナル・アルバム『MUSICMAN』から、ちょうど6年6か月ぶりとなる作品。サザンオールスターズがデビュー39周年を迎えた2017年6月25日に情報が解禁された。
本作に収録されている「若い広場」が2017年7月21日に先行配信され、同年8月9日には同じく収録されている「オアシスと果樹園」がNTTドコモ音楽配信サービス「dヒッツ」で先行配信された。同年8月14日からはdヒッツだけでなく、他の配信サイトでも解禁された。
発売前2日前である8月21日に、GYAO!にて本作収録されている楽曲のミュージック・ビデオのフルバージョンが期間限定(2017年8月21日〜10月31日)で公開されることになった。また、過去の楽曲のミュージック・ビデオも順に期間限定で公開された。
本作は初回生産限定盤A(CD+Blu-ray+特製歌詞ブックレット)、初回生産限定盤B(CD+DVD+特製歌詞ブックレット)、初回生産限定盤C(CD+特製歌詞ブックレット)、通常盤(CD)、アナログ盤(重量盤2LP / オリジナル特典付、完全生産限定)の5種類で発売される。また、初回生産限定盤A・B・Cはブックケース入りデジパック仕様で、桑田書下ろしによるエッセイ集「がらくたノート」と撮り下ろしフォトが付属である。映像特典は、同年7月10日・11日の2日間にビルボードライブ東京で開催された桑田のプレミアム・ライブ「この夏、大人の夜遊びin日本で一番垢抜けた場所!! supported by ニッポンハム / Billboard Live 10th Anniversary」の11日に披露された8曲を収録している。
本作の予約・購入者を対象にした先着オリジナル特典が8月3日に発表され、リアルショップ対象店で予約・購入すると先着で、桑田の写真をポスター用にオリジナルでデザインされた「桑田佳祐『がらくた』オリジナルポスター」を手に入れることができ、Eコマース(オンラインショップ)対象店で予約・購入すると、本作のジャケットをあしらった「桑田佳祐『がらくた』A5クリアファイル」を貰うことができる。また、全国のCDショップでは本作発売を記念し、タイシタレーベル旧譜作品キャンペーンの開催をし、8月初旬より対象商品を全国CDショップにて購入すると先着で、桑田佳祐「30th Anniversary オリジナルステッカー」がプレゼントされる。
エッセイ集「がらくたノート」には、文庫本のような装丁で“波乗文庫”と記載されており、本作収録曲15曲にまつわる計15篇のエッセイが収められている。曲が完成するまでの過程、アルバム制作に携わった人たちへの気持ち、日常の中で感じているさまざまな思いや、生活の一部などがしたためられている。なお、自身のオフィシャルサイトにて、収録楽曲の「百万本の赤い薔薇」「オアシスと果樹園」の二篇と新作にまつわるインタビューを公開している。
今作ではほとんどの曲のレコーディングが少人数で行われた。また、桑田は普段は曲を先に制作する「曲先」で楽曲制作を行っているが、今回は曲によっては詞を先に制作したうえで曲を作る「詞先」も意欲的に行い、そのことにより「歌のテーマも自然と広がった」とも述べている。
本作収録の既発曲(シングル「Yin Yang」「ヨシ子さん」「君への手紙」に収録されている楽曲)では、アルバムバージョン(マスタリングしたもの)を収録している。また、15曲収録されている内9曲がタイアップの付いた楽曲となっている。
タイトルに関して桑田は、「ありとあらゆる要素が無作為に交錯する現代社会の見立てであり、そんな無意味に積み上げられた『がらくた』の中にこそ、ものごとの本質や素晴らしさが宿る」「大上段に振りかざすことなく、みんなに親しんでもらえる“小品”を目指した」と語っている。また、「ポール・マッカートニーの楽曲『ジャンク』の事が頭の片隅にあったのかもしれない」とも述べている。本作はロック、ジャズ、ドゥーワップ、サイケデリック・ミュージック、フィリーソウル、ラテン、レゲエ、ヒップホップ、歌謡曲など、あらゆるジャンルをブレンドした桑田にとっての意欲作となっている。
同年6月25日にYouTubeで公開されたスペシャルトレーラーでは桑田が「波乗亭米祐(なみのりていべいすけ)」という落語家に扮し、古典落語「火焔太鼓」を演じている。波乗亭米祐は桑田とは別人という設定になっており、桑田に対して「いい年してただのエロい意地汚いオッサンだねぇ」「桑田のアルバムはどうせがらくたみたいなもんだよ」といったセリフを言うシーンも存在している。なお、前日の24日放送分の自身のラジオ冠番組『桑田佳祐のやさしい夜遊び』(TOKYO FM)では、この動画の音源が先行公開されており、「波乗亭米祐が桑田に物申す」といった宣伝広告も作られていた。
発売後の2017年9月23日にWOWOWでスペシャル番組「桑田佳祐と『がらくた』 〜ソロ30年目の衝動〜」が放送され、本作の内容や楽曲の魅力を紹介し、2017年7月に行われたBillboard Live Tokyoでのプレミアムライブから2002年以来15年ぶりの出演の「ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2017」のステージ模様も放送される。
ジャケットデザインの提案をしたのは千原徹也であり、アートディレクターの山口健司が言うには「ロンドンで買った土産物のアヒルを使った、シリアスともコメディとも異なる引き算のアイデア」を桑田はひと目で気に入ったという。なお、千原によるとこのジャケット写真は元々提案用のサンプルであり本番用に撮り直す予定だったが、桑田が「これがいいんだから。これでいい」と述べたためそのまま採用された。また、千原はこれ以外にもいくつかデザイン案を提案しており、宇宙塵の写真なども出したが通らなかったという。
アルバムの発売と同時に本作をひっさげ、全国10箇所18公演となる全国アリーナ&5大ドームツアーの開催が発表された。
桑田は2017年の振り返りとして、本作に対し「ちっとも売れなかったアルバム」だと冗談半分で述べている。
ロッキング・オンの小池宏和は、「楽曲ごとに多種多様な音楽のルーツが顔を覗かせるアルバムを、ポップに纏め上げる工夫がなされている」点を評価。また、「時」というテーマに向き合いながら、桑田は蓄積された知識を巧みにコントロールし、世代の格差を超えてやろうとしており、「そんな稀代のポップアーティストとしての誇り高い責任感が、このアルバムを『がらくた』と名付けさせたのではないだろうか。」とも語った。音楽評論家の小倉エージは週刊朝日の連載で、「本作を耳にして改めて桑田のソング・ライター、ヴォーカリストとしての力量に感服させられた。」と語り、本作を「日本の歌謡史、ポップス史を俯瞰しながら、その継承者としての自覚を持って取り組んだ意欲作」と評価した。
Billboard JAPANでは、CDのセールスやマスコミの支持が非常に高い上に、ラジオを中心としたプロモーションが成功したことに関する宣伝戦略、作品の内容、桑田らしい自虐的なタイトルでもその中身のクオリティの高さと、これだけの実績を出せる自信があってこそと言えると評価された。Real Soundでは、ベテランアーティストのCD販売スパンは息が長いところを指摘しており、特に「初動(初週)売上=最高順位」のままチャートを下ってはなく、熱心に情報を追っていなくても「そういえばアルバム出たんだな」と気がついて買うような層が2週目以降の売り上げを支えていると評価した。
爆笑問題の太田光はこのアルバムを絶賛し、一曲一曲について丁寧に感想をまとめたメールを桑田に送っている。『桑田佳祐のやさしい夜遊び』2017年9月2日放送分では桑田が太田の了承を得たうえでそのメールの一部を読み上げている。
落語家の3代目桂春蝶はこのアルバムの内容を「最高」と評している。
2017年9月4日付のオリコン週間アルバムランキングで初週16.8万枚を売り上げて初登場1位を獲得し、ソロアーティストとして、2017年の暫定1位の売上を記録した。なお、ソロアルバムとして『TOP OF THE POPS』から4作連続・通算6作目の獲得となった。また「年齢4年代連続アルバム1位」も記録し、井上陽水、山下達郎、氷室京介に次いで4人目となった。同日付のオリコンデジタルアルバムランキングでも初週1.0万DLで1位を獲得した。ソロアーティストでCDランキングとデジタルランキング両方首位獲得するのは秦基博(『All Time Best ハタモトヒロ』)以来2人目である。
発売2週目となる2017年9月2日には出荷枚数が30万枚を突破した。発売4周目となる2017年9月25日付のオリコン週間アルバムランキングで、週間1.3万枚を売り上げて3週ぶりに首位に返り咲いた。自身の作品の「返り咲き1位」は、2001年発売のシングル「波乗りジョニー」が2001年7月16日付と7月30日付で返り咲き1位を達成して以来16年2か月ぶりとなり、また、男性ソロのオリジナル・アルバムでは稲葉浩志の作品『マグマ』の返り咲き首位以来である20年7か月振りとなり、今世紀初となった。発売4週目の時点で累計売上は24万枚を超え、出荷枚数も35万枚を記録した。
2017年9月4日付のBillboard Japan Hot Albumsでは168,681枚でCDチャート1位、ダウンロード1位、ルックアップ1位でチャートを構成する3指標すべてを制して総合1位を獲得している。発売3週目となる9月18日付の同チャートにて18,031枚でCDチャート3位、ダウンロード6位、ルックアップ1位で再び総合1位を獲得し、9月25日付でも11,951枚でCDチャート1位、ダウンロード7位、ルックアップ1位で2週連続で総合1位を獲得した。
オリコン週間アルバムランキングでは、1位(16.8万枚)→2位(3.8万枚)→3位(2.0万枚)→1位(1.3万枚)と4週連続TOP3をキープした。Billboard JAPAN Hot Albumsにおいても、ルックアップをはじめとした各指標で上位を獲得し、1位→2位→1位→1位→3位→3位と6週連続TOP3をキープし高順位を維持し続けていた。
また、本作と「若い広場」「オアシスと果樹園」の3つを合わせると、オリコンやBillboard JAPAN、レコチョク、iTunes Store、mora、USEN、COUNT DOWN TV(TBS系音楽番組)などの音楽チャートで1位を獲得し、20冠を達成した。
オリコンによる本作のチャート登場週数は40週である。
サウンドスキャンジャパンが発表したアナログアルバムの2017年度年間ランキングでは、RADWIMPSの『君の名は。』、スピッツの『ハチミツ』に次いで、本作は3位を記録した。
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