『エンジェル・ハート』(AngelHeart)は、北条司による日本の漫画。また、これを原作としたテレビアニメ・テレビドラマ。『週刊コミックバンチ』(新潮社)にて2001年創刊号から2010年36・37合併号まで連載されたのち、『エンジェル・ハート 2ndシーズン』 として『月刊コミックゼノン』(ノース・スターズ・ピクチャーズ)2010年創刊号(12月号)から2017年7月号まで連載された。1stシーズンの単行本はBUNCH COMICSより33巻まで発売されている。略称は『A.H.』。2015年7月時点でシリーズ累計発行部数は約2500万部を記録している。
作者の代表作『シティーハンター』(以下、『C.H.』)を、家族愛をテーマとしてリメイクし、同作のパラレルワールドを描いている。この家族愛というテーマは前作『F.COMPO』においても主題となっていたものであり、その他多数の作品において読み取れる作者の大きなテーマとなっている。『C.H.』は突然4週後の連載終了を通告されて終了しており、北条に描き切っていないという強い思いを与えた作品であり、これが本作の執筆されるきっかけとなった。
『C.H.』と同様、新宿を主な舞台とした現代劇であるため、時代設定は10年程の開きがある。このため、『C.H.』時にはなかった携帯電話が登場するなど、背景となる社会設定は大きく変わっている。また獠の身体にも老眼や腰痛という症状が出ているように、この時代設定の開きと同じだけ登場人物たちも年齢を重ねている。ただし、2000年代中期以降は時間経過の設定が曖昧になっている。作者は、『超こち亀』で秋本治の連載30周年を祝う時のコメントで、連載が長引きそうだから年齢を停止しようと考えているとコメントしており、2ndの単行本のインタビューでは、停止させたと発言している。
パラレルワールドを描いたリメイク作品であるため、登場人物などの設定には『C.H.』から引き継いだ部分と変更された部分とが混在している。引き継いでいる部分については、獠の性格のようにほぼそのまま継承されているものだけではなく、「姿形は変われど、ファルコンとミキ(美樹)が出会い、堅い絆で結ばれる」といった形を変えながら引き継がれている部分もある。
台湾から来た殺し屋の少女と、新宿のスイーパーとの家族愛の物語。
新宿に現れた史上最強の暗殺者は、美しすぎる人間兵器だった。彼女(香瑩)のコードネームは「グラス・ハート」。完璧を誇る仕事振りに組織からは高い評価を得ていたが、彼女の心は、暗殺という任務を重ねる度に軋み、蝕まれていった。悩んだ末彼女は自ら死を選ぶが、組織の力によって、再び現世に呼び戻された。事故死した冴羽獠の最愛のパートナー、槇村香の心臓を移植されて。
香の心臓を移植したことにより、「グラス・ハート」と呼ばれた彼女の心に変化が起き、感情が生まれた。そして暗殺から手を引き、組織と対立する意思を持つ。香の心臓を持つ事によって無意識の内に獠と接触し、スイーパーとして「シティーハンター」の世界に入っていく。
テレビアニメ版『C.H.』に登場するキャラクターについては、基本的に同じ声優が担当している。
195話に『レストアガレージ251車屋夢次郎』の主人公・里見夢次郎がモブキャラクターとして登場した。また、131話に『キャッツ♥アイ』に登場した「ねずみ」こと神谷真人が、銀行強盗犯としてニュースで取り上げられているシーンがある。その他、『C.H.』や本作の脇役となっているカラスが登場している。
2005年10月から2006年9月まで、よみうりテレビ、日本テレビ系の一部の局(系列局では1週間 - 2クールの遅れ放送)で放送。CS放送「キッズステーション」でも2クール遅れで放送された。
事実上の前作である『C.H.』の、『シティーハンター91』以来(シリーズ全体としては、1999年4月23日放送のテレビスペシャル第3弾『シティーハンターSP緊急生中継!? 凶悪犯冴羽獠の最期』)のアニメ化作品である。
当初は2005年4月に開始予定であったが、放送スケジュールの都合により半年間延期され、同年10月からの放送となった。制作会社は、『C.H.』を制作したサンライズからアニメ版『キャッツ・アイ』を制作したトムス・エンタテインメントに変更になったが、プロデューサーの諏訪道彦と声優陣は『C.H.』から引き続き担当している。また音楽担当の岩崎琢と音響監督の長崎行男は14年後に公開された『C.H.』の劇場版『劇場版シティーハンター 〈新宿プライベート・アイズ〉』でも続投している。
全50話のうち、第13話まではプロローグと位置付けられ、暗殺者グラス・ハートが香瑩になるまでが語られた。その後の内容は、原作の第18巻までの内容とほぼ合致する。香瑩役の声優は、応募3,000人からオーディションで選ばれた川崎真央が務めた。
原作では「パラレルワールド」と称している『C.H.』との関係は、アニメでは「アナザーストーリー」と称している(事前番組(#0)より)。
アニメでは原作のギャグの大半(特にハンマー、カラス、極楽トンボ)はカットされていたが、総作画監督が第39話以降に青野厚司へ交代してからはギャグシーンが多くなった。また、神谷明と内海賢二が共演した第42話では、2人がそれぞれ『北斗の拳』のケンシロウ役、ラオウ役であることから、双方がアドリブで互いの台詞「我が生涯に一片の悔い無し」「お前はもう死んでいる」を言い合うというお遊びも盛り込まれた。
アニメ版『C.H.』ではアニメオリジナルエピソードも多く制作されたが、本作ではアニメオリジナルエピソードは制作されず、若干の追加シーンを除けば第24話にそれまでの総集編的な話を入れただけである。
(出典)
第1話はオープニングテーマ、エンディングテーマ共にサウンドトラックの曲が使われた。
端役やゲストキャラクターのアフレコを声優の他にタレント、(当時の)アナウンサーがおこなったこともある。
NACK5で2005年4月3日より毎週日曜放送のラジオ番組『Heart of Angel』。
1回目より42回目までは『XYZ Ryo's Bar』として、43回目以降は『XYZ 香瑩's cafe』として放送された。
2010年10月2日に東京・吉祥寺シアターで、北条の作家生活30周年プロジェクトの一環として、映画(実写映像)とダンスによる1日限りのイベント「DANCE×THEATER エンジェルハート〜羽ばたける者たちへ〜」を開催。香瑩が(ダンスとしての)カポエイラに挑戦するエピソード(コミックス23・24巻収録)を題材に演出したコラボレーションイベントで、 映画・舞台ともに、杉本有美が香瑩役を演じた。また、『月刊コミックゼノン』3号(2010年12月25日発売)には、映画・舞台の模様などを収めたDVDが付録で添えられている。
2015年10月11日から12月6日まで日本テレビ系の日曜ドラマ枠で同枠の第3弾として放送された。脚本は高橋悠也、演出は狩山俊輔が担当。主人公の冴羽獠を上川隆也が演じた。
『シティーハンター』からの愛読者でもある上川は、獠を演じるに際し自らの容姿を獠へ近づけるため、仕事上の前作『花咲舞が黙ってない(第2シリーズ)』のクランクアップ以降の2015年7月初旬から肉体改造に励んだ結果、体脂肪率が10%を切ったという。獠の役作りに際してもシーンごとやカットごとに考えながら演じており、『花咲舞が黙ってない』が終わってから他の作品に取り組んでいる間も本作のことを考えていたという。肉体改造中のトレーニングや食事については、2015年10月15日放送の『ぐるぐるナインティナイン』にて紹介されたうえ、ドラマオリジナルキャラクターのカリート役の和泉崇司も上川と同様のトレーニングに励んでいる様子が紹介された。
上川は、クランクイン前に原作者の北条とバーで役作りについて熱く語り合ったり、アクションシーン前には楽屋で腕立て伏せなどの筋トレをしてから撮影に臨んでいるという。その意気込みについては、常に獠のことを考えながら生活しているだけに留まらず、彼のハードボイルドさを前面に出したい日本テレビの意向に反し、獠の台詞に「もっこり」を再現しようとプロデューサーに直談判した上、現場でもアドリブで「もっこり」を挟み込んでは編集で全部カットされ続けた結果、第4話でようやく採用されたほどである。また、緊張していた香瑩役の三吉彩花に自ら話しかけるなど、撮影現場の雰囲気作りも忘れていないという。三吉の方も撮影現場にお手製のカレーを持参して皆に振る舞う心遣いで上川を感心させたり、本番では使えないような上川のアドリブに軽くツッコミを入れるなど良好な関係を築いたという。
番組放送前は賛否が割れていたが、第1話放送後にはTwitterに原作ファンからも上川を絶賛するコメントが寄せられた。また、ブラザートムが演じるファルコンについても好印象のコメントが寄せられたほか、新人時代にアニメ版『シティーハンター』に端役の声で出演し、「シティーハンタースペシャル グッド・バイ・マイ・スイートハート」(1997年)で獠と対決する敵役のメインゲスト・武藤武明(通称プロフェッサー)を演じた山寺宏一が、本作には顔出しで出演していることにも感慨深く触れられている。この高評について、上川は冷静に分析して背筋を正したうえで、「皆さんにとっての『エンジェル・ハート』とのズレが大きくなっていかないことを僕らは目指したい」と真摯に語っている ほか、獠についても「絶対的なヒーローだけに重責を感じる」と気迫を覗かせている。北条も嬉しく思っているらしく、スタッフを通じて上川や三吉へお墨付きの言葉を送っている。テレビ解説者の木村隆志も、上川の内面を分析したうえで「誠実だから再現率が高い」「やりすぎないから見やすい」と評価している。また、三吉の演技力と身体能力の高さについての高評も挙がっている。
西内まりやが歌う主題歌の「Save me」については、賛否が分かれている。「エンジェル・ハートの世界観に合っている」などの高評のコメントが寄せられる 一方で、『シティーハンター』世代のアニメファンからは違和感を訴えるコメントが寄せられており、「(同作のエンディングテーマ「Get Wild」を手がけた)小室哲哉に作曲してもらいたかった」という声が出ている。ただし、主題歌自体は西内が5、6曲ほど作成して提出した中から原作者の北条に「世界観に合うから」と選ばれたものである。
フィーチャーフォン版のMobageでソーシャルゲーム『エンジェル・ハート』が配信。
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