堺筋線(さかいすじせん)は、大阪府大阪市北区の天神橋筋六丁目駅から同市西成区の天下茶屋駅までを結ぶ大阪市高速電気軌道 (Osaka Metro) の路線。正式名称は高速電気軌道第6号線と称し、『鉄道要覧』では6号線(堺筋線)と記載されている。駅番号を表す際に用いられる路線記号は「K」。阪急電鉄千里線・京都本線と相互直通運転を行っている。
路線愛称の由来は堺筋の地下を走ることから。ラインカラーは相互直通運転を行っている阪急線に合わせた茶色(ビビッドブラウン)である(阪急マルーンではない)。
一直線に伸びる商店街では日本一の長さを持つ天神橋筋商店街の一筋西を併走する天神橋筋と、沿線に金融街や薬・繊維などの問屋街および電気街が広がる堺筋の地下を走る。四つ橋線・御堂筋線・谷町線とともに大阪市中心部の南北の交通を担っており、なかでも御堂筋線と堺筋線は大阪市都心部の船場・島之内を縦断する。また、相互直通している阪急千里線・京都本線と合わせて沿線の北摂(三島)地域や京都府内と大阪市都心部やミナミの繁華街を結ぶ役割も持つ。現在、関西大手私鉄の車両が大阪市都心部を縦断する唯一の南北路線でもある。Osaka Metroの地下鉄路線としては、最短の路線であり、初の架空電車線方式採用路線で、当路線の後に開業したリニア方式の長堀鶴見緑地線・今里筋線も架空電車線方式を採用している。
他の地下路線との交差部分は、北浜駅の京阪本線(京阪中之島線は別)や動物園前駅の御堂筋線を除き、堺筋線が上を通っている。堺筋線は、全ての駅が他の地下鉄路線および他の鉄道との乗り換え駅となっており(#駅一覧参照)、これもOsaka Metroの路線では唯一である。ただし、他の地下鉄路線の中で四つ橋線・今里筋線との乗り換え駅はない。
1993年に開業した動物園前駅 - 天下茶屋駅間においては、用地確保のため南海天王寺支線天下茶屋駅 - 今池町駅間の廃線跡を利用しているが、この区間では複線トンネルとしては空間が不足していたため、単線による上下2層式トンネルとなっている。
運賃計算には、東梅田駅 - 南森町駅 - 動物園前駅間のキロ数が、御堂筋線梅田駅 - 動物園前駅間と同じになるよう調整された営業キロに対応する区数を用いる。
天神橋筋六丁目駅 - 天下茶屋駅間の堺筋線内折り返し列車が運転されているほか、天神橋筋六丁目駅からは阪急千里線北千里駅または阪急京都本線高槻市駅(一部の普通と後述の堺筋準急は京都河原町駅)まで相互直通運転を行っている。全列車が天神橋筋六丁目駅 - 天下茶屋駅間を通しで運転しており、堺筋線の途中駅を始発駅・終着駅とする区間列車は設定されていない。
2022年12月17日のダイヤ改正時点での運転間隔は概ね以下の通り。
2007年3月17日に行われたダイヤ改正で、従来運行されていた堺筋急行と堺筋快速急行は、ともに阪急線内の停車駅が増えた堺筋準急に変更となり、同時に平日夕方の天下茶屋発の運転区間は河原町(現在の京都河原町)行きから茨木市行きに短縮された(天下茶屋行きは従来通り河原町発と高槻市発)。平日夕方の天下茶屋発堺筋準急の運転区間は、2010年3月14日の阪急京都線ダイヤ改正で茨木市駅までから高槻市駅までに延長され、2013年12月21日の阪急京都線ダイヤ改正で河原町駅までに延長された。
また、土曜・休日の天下茶屋駅 - 京都河原町駅間直通の堺筋準急は2011年5月14日からの土曜・休日ダイヤで設定された(堺筋線内折り返しと阪急京都本線準急を統合した形で設定)。この関係で土曜・休日ダイヤ昼間時の運転間隔が5分から6分40秒になり本数が削減され、この時間帯での堺筋線内折り返し列車がなくなっている。
なお、2006年の今里筋線開業に伴い更新された車内掲示用路線図では、高槻市駅 - 河原町駅間が直通運転区間より省かれていたが、2011年5月以降は土曜・休日に河原町駅発着が設定されたことから、一部の駅や車両には「準急停車駅」を付け足したうえで直通運転区間に再び含めている。
1970年の日本万国博覧会開催期間中は会場アクセスとなる千里線直通の臨時列車が運行されていた。「阪急千里線#臨時列車」を参照。
2009年と2011年から2018年までの春・秋の行楽シーズンには天下茶屋駅 - 阪急嵐山線嵐山駅間に臨時直通列車が運転されていた。「阪急嵐山線#臨時列車」を参照。
相互直通運転を行っているため、Osaka Metroと阪急電鉄の車両で運行されている。
Osaka Metroの車両の阪急線乗り入れ区間は、千里線全線と京都本線淡路駅 - 高槻市駅間であり、大阪梅田駅 - 淡路駅間と高槻市駅 - 京都河原町駅間へは原則として乗り入れない。ただし、過去には高槻市駅以遠にも乗り入れた実績があり、市営時代に60系が堺筋線開業30周年のイベント列車として桂駅まで乗り入れた例や、66系が導入時に阪急線地下線路試運転で河原町駅(現在の京都河原町駅)まで乗り入れた例、2009年に阪急との相互直通運転開始40周年のイベント列車および2011年の臨時列車で6両編成に減車して阪急嵐山線嵐山駅まで運転された例(「阪急嵐山線#臨時列車」参照)、2019年に相互直通運転開始50周年のイベント列車として66系リニューアル車両が桂駅まで運転された例がある。
一方、阪急車の堺筋線乗り入れ運用は3300系、5300系、7300系、8300系、1300系の8両編成が使用されている(7両編成は乗り入れない)。なお、9300系は車両規格上は乗り入れ可能であるが、堺筋線対応の機器が一部の編成にしか搭載されていないことや、特急運用が主体のセミクロスシート車であることから、現時点での乗り入れ運用はない。2300系(初代)・2800系は相互直通車両用の車両規格の制定前に製造されたため、前者は2015年、後者は2001年の運行終了まで乗り入れ実績はなかった。6300系は、相互直通車両用の車両規格の制定後の製造であるが、車体寸法が京都本線の諸施設が許す上限値一杯として設計されたため、車体構造上入線することができない。
堺筋線は阪急と相互乗り入れの都合上Osaka Metroの中で長堀鶴見緑地線、今里筋線と共に1車両片側3ドアである。それ以外のOsaka Metro各路線はいずれも1車両片側4ドアである。
2020年7月に、御堂筋線の10系の電機子チョッパ制御車がすべて廃車されたため、同年9月時点において、Osaka MetroでVVVF制御ではない車両(抵抗制御の阪急3300系、5300系、界磁チョッパ制御の阪急7300系の一部)が運用されている唯一の路線となっている。また、2016年に京成3500形が都営浅草線直通運用から撤退してからは日本の地下鉄路線で回生ブレーキのない抵抗制御車が乗り入れている最後の路線でもある。
阪急の車両も、堺筋線内はOsaka Metroの車内自動放送が使用される。堺筋直通特急で運用される場合はOsaka Metroの車両・阪急の車両共に、車内自動放送は行われない。
堺筋線の車両基地は自社線内になく、乗り入れ先の阪急京都本線正雀駅 - 相川駅間の吹田市南正雀に、東吹田検車場が設置されている。
Osaka Metroの前身の大阪市交通局では携帯電話のマナーを、優先座席付近では電源を切り、それ以外ではマナーモードに設定して通話を控えるよう呼び掛けていたが、この路線では他の路線と異なり阪急のルールに合わせていた。2007年10月まで、阪急電鉄では「全座席が優先座席」として座席譲りを呼び掛け、携帯電話の使用については一番前と一番後ろの車両を「携帯電話電源OFF車両」と称し、電源を切るように呼び掛けていた。この間も自局車両である66系のみ独自で優先座席の設置を継続したが、他の路線とは異なり「携帯電話電源OFF車両」以外では優先座席付近でも携帯電話の電源を切る必要がなかった。
しかし、阪急電鉄が同年10月29日から「全座席が優先座席」制度を廃止。他社線と同じく各車両に1か所ずつ優先座席を設置する形に戻した。それに合わせて、天下茶屋方先頭車の「携帯電話電源OFF車両」は廃止となったが、北千里・高槻市方先頭車(天下茶屋行きの場合は一番後ろの車両)は「携帯電話電源OFF車両」が継続され、該当車両以外では優先座席付近でも携帯電話の電源を切る必要がないということになっている。結果的に阪急車における取り扱いが自社の66系のそれに近いものとなった。
なお2014年6月25日に阪急が2014年7月15日に「携帯電話電源OFF車両」の設定を廃止することを発表した。また同日、大阪市交通局は同年7月1日から優先座席付近での携帯電話使用マナーを「混雑時には電源をお切りください」に変更することを発表した。
路線距離はOsaka Metroの8路線の中で一番短いが、1日平均利用者数は御堂筋線、谷町線に次いで3番目に多い約31万人である(大阪市営地下鉄時代の2013年度)。
西日本の地下鉄5事業者全23路線でもOsaka Metro御堂筋線、名古屋市営地下鉄東山線、Osaka Metro谷町線、名古屋市営地下鉄名城線に次いで5番目に利用者が多い。
動物園前駅 - 天下茶屋駅間の延伸工事は、1984年に部分廃止された南海天王寺支線の今池町駅 - 天下茶屋駅間の鉄道用地を利用したが、複線トンネルを掘るスペースがなく、2層構造となったことで686億円(キロ当たり404億円)と高額な建設費になった。それに伴う償却負担が大きいことが原因となり、開業以降経常損益は赤字が続いていた。しかし営業成績は徐々に好転し、赤字額は平成19年度で5億8500万円にまで縮小し、平成20年度で約1億8000万円の黒字となった。
新京阪鉄道および京阪電気鉄道は、1925年の新京阪線天神橋駅(天神橋筋六丁目) - 淡路駅間の開業後、新京阪線を天神橋駅からさらに梅田駅方面へ延長することを目指していたが実現しなかった(「京阪梅田線」を参照)。1943年に阪神急行電鉄と京阪電気鉄道が合併したことで新京阪線は京阪神急行電鉄(阪急)の路線となり、1949年に京阪電気鉄道が分離した際に新京阪線は阪急に残って京都本線と改称、1959年に天神橋駅 - 淡路駅間は千里山線(現在の千里線)の一部となった。
1958年3月28日に出された都市交通審議会答申第3号では、郊外私鉄の大阪市中心部乗り入れが認められた。この答申では阪急千里山線の国鉄城東線(現在の大阪環状線)天満駅までの延長のほか、事業主体を特定していないものの、交通需要の変化等に対応して慎重な考慮を加える必要のある「その他の路線」の一つとして、「国鉄天満駅附近より堺筋を経て動物園附近に至るもの」が掲げられていた。翌1959年、阪急は千里山線を国鉄天満駅まで延長する免許を取得したが、大阪市営地下鉄第6号線(堺筋線)の計画進捗に伴い1966年に失効した。
1962年、都市交通審議会の大阪部会から「大阪市高速鉄道第1号線の輸送限界に対処する方策について」という中間決定事項が出され、輸送需要の増大で、最混雑区間のピーク混雑度が300%に達するようになった1号線(御堂筋線)の混雑緩和策として、1号線に平行して3号線(四つ橋線)の梅田付近への延長と、天神橋 - 天下茶屋間の新線建設を緊急に行うよう提言され、大阪市でもこれらの路線を盛り込んだ計画が決定された。
1962年に大阪市営地下鉄第6号線が天神橋筋六丁目 - 天下茶屋間で計画された当初、南海電気鉄道と乗り入れるか、阪急と乗り入れるかが協議されたが、吹田市で万国博覧会が開催されることが決まったため、阪急と直通することになった。両社の軌間(阪急は 1435 mm、南海は 1067 mm。また当時は架線電圧も阪急は 1500 V、南海は1973年まで 600 V と異なっていた)が異なることから、阪急千里線を狭軌に改軌するか、三線軌条ないしは四線軌条を採用して、両者の電車を直通させる案も出たが、コスト面や車両規格の相違、工事期間中に対象区間を運休させる必要が生じることなどから採用されなかった。なお、南海とは南海新今宮駅に近い動物園前駅で徒歩連絡しているほか、1993年からは天下茶屋駅で連絡している(1996年から同駅に南海本線および南海高野線の一部の優等列車が、2003年からは全列車が停車)。
※上記のキロ数は実キロ
区間は構想・答申・計画が出された時点において未完のものを示す。
以下は、地下鉄堺筋線との相互直通運転区間である阪急千里線の天神橋筋六丁目駅 - 淡路駅 - 北千里駅間、ならびに阪急京都本線の淡路駅 - 京都河原町駅間を利用した輸送人員である。
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