世界名作劇場(せかいめいさくげきじょう)は、主に日本アニメーション(以下、日アニ)が制作して『カルピスこども名作劇場』や『ハウス食品・世界名作劇場』といった名称で放送されているテレビアニメシリーズである。
世界名作アニメ、世界名作アニメ劇場とも呼ばれる。
作数は解釈によって異なり、最広義には1969年の『ムーミン』を、日本アニメーションの公式では同社制作の1975年の『フランダースの犬』を第1作と数える。
これまで約26作(数え方によって異なる)が製作・放送され、日本を代表するテレビアニメシリーズの一つとされている。中でも『アルプスの少女ハイジ』『フランダースの犬』『あらいぐまラスカル』の3作は、放送終了後もCMキャラクターとしての使用や公認のスピンオフ・パロディ作品が製作されるなど、シリーズの中でも圧倒的な知名度を誇っている。音楽面でも渡辺岳夫などの著名な作曲家が多数参加しており、主題歌群も家族向けのアニメソングコンサートなどでしばしば歌われている。
すべての作品はフジテレビ系列で毎週日曜日の夜19時30分より本放送されていたため、かつてはフジテレビを代表するアニメ番組と認識されていた時期もある。また、フジテレビ系列局のない県を中心に、他系列局やクロスネット局で時差ネットされていた県も多い。
どの作品以後を『世界名作劇場』シリーズに含めるのかは、諸説ある。
『世界名作劇場』という名前がついたのは1979年放送の『赤毛のアン』からであり、それまでは『カルピスこども劇場』や『カルピスファミリー劇場』という名前がついていた。『赤毛のアン』以降は提供がカルピスの一社だけで無くなったためシリーズ名を何度か変更している。その後ハウス食品工業(現・ハウス食品グループ本社)が単独スポンサーとなって「ハウス食品世界名作劇場」と称した時期もあった。後にBSフジで新作を放送される際、冒頭にも「ハウス食品世界名作劇場」と冠された映像が付いている。なお本項では、日アニが公式にシリーズの総称としており一般的にも認知されている『世界名作劇場』を項目名とした。
オリジナル作品である『七つの海のティコ』を除けば、本放送時に原作者が既に故人であることが多く、放送期間中に原作者が存命だった作品では『南の虹のルーシー』、『アルプス物語 わたしのアンネット』、『大草原の小さな天使 ブッシュベイビー』、『こんにちは アン 〜Before Green Gables』の4作のみである。
基本的には世界中で古くから親しまれてきた小説・童話などを選び、ファミリー向けアニメとするための脚色を加えてアニメ化している。主な視聴者である子供たちからの共感が得やすいという理由から、原則として主人公が子供の原作が選ばれている。主人公の年齢が原作から改変されることもある。少女が主人公の作品が多いのも特徴で、原作と異って少女が主人公になるように改変されたり、原作に登場しない少女が主人公になっていたりするケースもある。題名には主人公の名前が使われることが多く、原題+主人公の名前という題名も多い。
ほとんどの作品で、小動物が主人公のペット・マスコットキャラクターとして登場している。このことに関してはマーチャンダイジングの項を参照のこと。
放送時期の初期である1970年代から人気番組で、日曜日宵の幼い子供のいる家庭の定番番組だった。
1997年3月に『家なき子レミ』の放送終了をもって『フランダースの犬』から続いた世界名作劇場の地上波シリーズは全23作、22年3か月の歴史に幕を閉じた。
2002年、日アニは『少女コゼット(邦題)』の制作を発表した。この報道後、世界名作劇場として10年ぶりの新作となる第24作『レ・ミゼラブル 少女コゼット』、第25作『ポルフィの長い旅』、第26作『こんにちは アン 〜Before Green Gables』の計3作が、2007年から2009年までにBSフジで放送された。
地上波では現時点で『こんにちは アン』のみ、各地方局でも放送開始された(詳しくは同アニメの放送局を参照)。新作が『家なき子レミ』以来、約12年ぶりに地上波での放送となった。
作品の時代設定としては、19世紀から現代まで幅広く、特に19世紀後半が比較的多い。
1819年の件から始まる『レ・ミゼラブル 少女コゼット』が最も古く、19世紀前半を舞台とした作品では他に『トム・ソーヤーの冒険』、『南の虹のルーシー』がある。
19世紀後半を舞台とするのは、『フランダースの犬』、『ペリーヌ物語』、『家族ロビンソン漂流記 ふしぎな島のフローネ』、『小公女セーラ』、『愛の若草物語』など。
20世紀前半は『あらいぐまラスカル』、『私のあしながおじさん』、『愛少女ポリアンナ物語』、『牧場の少女カトリ』など。
第二次世界大戦以降を舞台とする作品は『ポルフィの長い旅』、『大草原の小さな天使 ブッシュベイビー』、『七つの海のティコ』の3作品のみである。
まずは本放送を行うフジテレビとその系列局が始めた。名作劇場の人気が全盛だった時期には、系列局において初期 - 中期の作品の再放送が一社提供で行われた例も多い。
約10年間新作が作られなくなった時期からフジテレビ以外の民放系列局・NHKのBS2ほか様々なメディアで再放送されるようになった。
本シリーズの初DVDビデオ化作品は松竹映画版の「THE DOG OF FLANDERS(劇場版 フランダースの犬)」であり、1998年に東芝デジタルフロンティアコンテンツ事業部から発売、2007年以降バンダイビジュアルが再発売している。
テレビアニメの『フランダースの犬』から『家なき子レミ』については全作品全話をバンダイビジュアルが順送りでセルDVD(DVDビデオ)化し、1999年から2002年11月にかけてほぼ毎月のペースで発売された(各巻4-6話収録で3980円)。2001年頃発売タイトルからレーベルがBANDAIからEMOTIONへ変更された。2009年4月に初期作品を1890円の廉価版として再発売したり、一部作品で描き下ろしジャケットイラストによる廉価版DVD-BOXを新たに発売している。
『少女コゼット』以降の再開後3作品は、初回放送月から約6-8ヶ月遅れで同じくEMOTIONからリリースされたが、『こんにちは アン』のみ当初から1890円の価格で発売された。
日本アニメーション関係会社のJanime.comの配給により、2004年からインターネットテレビのGYAO!(旧:Yahoo!動画)で世界名作劇場全作品の全話が有料動画配信されている。その後、U-NEXTやdアニメストアなど月額制の各動画見放題サービスでも全26作品が公開された。また、一部サービスでは『山ねずみロッキーチャック』、『アルプスの少女ハイジ』などカルピスまんが劇場の作品も配信されている。2021年8月をもって『南の虹のルーシー』、『わたしのアンネット』、『牧場の少女カトリ』、『トラップ一家物語』、『ブッシュベイビー』、『名犬ラッシー』、『少女コゼット』、『ポルフィの長い旅』、『こんにちはアン』の9作品は各月額制サービスでの配信を終了し、2023年8月現在は上記9作品を除く17作品が配信されている。このため、現在上記9作品を見るにはDVDの購入またはオンラインレンタルが必要である。
YouTubeでは、公式チャンネル「日本アニメーションチャンネル」上で、各有料動画サービスの宣伝も兼ねて2009年12月より『こんにちはアン』を除く各作品の第1話が公開された。(上記9作品の有料サイトでの配信終了に伴い2023年12月現在は残る17作品のみ公開)。また、周年記念やミュージカル上映などに伴い期間限定で全話無料公開されることがある。このほか、2020年8月に開設され株式会社アナライズログが運営しているチャンネル「アニメログ」において、『赤毛のアン』、『小公女セーラ』、『愛の若草物語』、『名犬ラッシー』、『こんにちはアン』(第38話のみ公開)を除く21作品が全話無料公開された。それぞれ半年から2年程度の期間限定での配信となっており、2023年12月までに世界名作劇場の全ての作品の公開を終了した。
BSフジ開局記念の一環で2000年12月から2001年8月にかけ、23作品について45分の前後編2部構成の総集編とした「世界名作劇場 完結版」が、番組としてBSフジと日本アニメーションの制作により放送された。新たに収録したナレーション解説が追加されており、冒頭部の概要説明は藤田淑子、本編中は登場キャラクターを演じた声優もしくはその母をたずねて三千里での高乃麗など声質に近い声優が担当している。
本放送の後、順次バンダイビジュアルから描き下ろしのカラーイラストをジャケットに使用し「ばっちしV」としてVHSやDVDソフト化されている他、CS放送局のキッズステーション(番組名は改題)、アニマックス、カートゥーン ネットワーク(ポップコーンスペシャル内)でも再放送された。2006年末には『レ・ミゼラブル 少女コゼット』放送決定記念企画として、BIGLOBEで23作品が期間限定で動画配信された。
また、完全版の構成を基に、2001年から2003年にかけて23作品がぎょうせいの「絵本アニメ 世界名作劇場」というアニメ絵本で出版されており、DVDのジャケットイラストを表紙として使用している。
2011年にOVAとして先の23作と同じスタイルで日本アニメーション単独で制作され、同年7月22日に単巻のDVDソフトと、先の23作を合わせた「―完結編」DVD-BOXがバンダイビジュアルから発売されている。
テレビ放送については「ポルフィ」の完結版を除く2作品が、それぞれ2011年8月にCS放送局のアニマックスでテレビ初放送され、後に2013年ではカートゥーン ネットワークでも何度か再放送された(放送月については、各作品を参照)。
作品中には動物が登場することが多く、原作に存在しなくてもアニメオリジナルで登場させることも多い。これはぬいぐるみなどの商品化が目的の一つである。嚆矢は『母をたずねて三千里』のアメデオである。日本アニメーションの松土隆二は「うちもやっぱりマーチャン必要で、制作費の補填をしたい」と述べている。
松土によると『トム・ソーヤの冒険』ではミシシッピ川にいるワニを出そうとしたが没になったそうである。『私のあしながおじさん』と『トラップ一家物語』では会社から小動物を出すよう指示を受けたが、既に会社を辞めるつもりだった松土は拒否したそうである。
番組と連動して指定の電話番号に電話をかけると自動音声が流れ作品のキャラクターたちが織り成すテレビ未放送のチェインエピソードを聞くことができた。
世界名作劇場が始まった頃は虫プロの倒産、東映動画の累積赤字などアニメ業界の景気が悪かった。このため各社は制作費回収のため、作品を海外に輸出することを前提として制作していた。
名作劇場も同様に海外市場を睨んで制作され、一度も日本国外への輸出がされていない『名犬ラッシー』を除き、韓国・台湾・中国・フィリピンなどの東・東南アジアやヨーロッパ諸国・中東など世界各地で放送された。特にフィリピンとイタリアではほぼ全作品が放送されており、韓国では『家なき子レミ』『ポルフィの長い旅』を除く全作品が放送されている。また、台湾と香港では『レ・ミゼラブル 少女コゼット』まで放送(ただし、台湾では『大草原の小さな天使 ブッシュベイビー』を除く)、ドイツについても『小公子セディ』を除いて『ロミオの青い空』まで放送されている。
一方、アメリカ合衆国では『トム・ソーヤーの冒険』『ふしぎな島のフローネ』と『若草物語』の数話分しか紹介されておらず、イギリスでは『ピーターパンの冒険』しか放送されていない。
『ペリーヌ物語』はフランスの建物、街並み他の風景が明らかに現実とかけ離れていたため、フランスでは放送されなかった。また、『フランダースの犬』は舞台であるベルギーでは放送されなかった。
1995年に「世界名作劇場」のタイトルでキッズコンピュータ・ピコ用絵本ソフトがセガ・エンタープライゼス(現・セガトイズ)より発売。4作品を題材としており、1ページ目は『母をたずねて三千里』、2ページ目は『トム・ソーヤーの冒険』、3ページ目は『フランダースの犬』、4ページ目は『七つの海のティコ』、5ページ目は名作劇場を自分で作っていくという内容である。いずれも劇中にはそれぞれの主題歌がインストゥルメンタルで流れている。
2008年、銀座からパチンコ「CRフランダースの犬と世界名作劇場」が発売された。表題にもある「フランダースの犬」の他、「母をたずねて三千里」・「ふしぎな島のフローネ」が演出のベースとなっている。
ただし、子供向けの作品である本作群が、ギャンブルのイメージが強いパチンコとしてデビューしたことや、ネロが天に召されると大当たりという演出に対し、かなりの批判も見られた。
2016年11月には、日アニ本社(多摩市)近くのアリオ橋本に『世界名作劇場 Fan Fun Kitchen』がオープンした。赤毛のアン、母を訪ねて三千里、フランダースの犬、あらいぐまラスカルのキャラクターをあしらったスイーツや軽食を提供。2019年1月20日をもって閉店。
2017年12月18日よりNHN comico運営のコミック・ラノベアプリであるcomico・comico PLUSにて世界名作劇場学院のタイトルでコミカライズが配信開始、2018年7月2日に最終回の24話が配信された。作者は早乙女智美/sunbird。
以下は地上波フジテレビで、1975年1月から1997年3月まで放送された23作品を記述する。裏番組にクイズ面白ゼミナール(NHK)や、象印クイズ ヒントでピント(テレビ朝日)などがあったものの、視聴率は健闘していた。
『フランダースの犬』から『家なき子レミ』まで。系列は当シリーズ終了時(1997年3月)のもの。
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