天空橋駅(てんくうばしえき)は、東京都大田区羽田空港一丁目にある、京浜急行電鉄・東京モノレールの駅である。駅名は近くの海老取川に架かる同名の人道橋に由来している。
京急・東京モノレールともに、かつて周辺に前身となった駅が存在しており、東京国際空港(羽田空港)の沖合展開事業に伴う路線延伸に合わせ、それらを事実上移転する形で当駅が設置された。ただし手続き上はいずれも移転ではなく、前身の駅を廃止した上で当駅を新設開業した形となっている。
当駅および前身となった駅は長年、京急としては羽田空港の最寄り駅で空港ターミナルへのアクセス駅と設定されながら、それが有効に機能しなかった歴史を持つ。
当駅の前身である「羽田空港駅」は1956年に開設され(それまでの経緯は「京急空港線#歴史」を参照)、現在の天空橋駅より約200メートル京急蒲田駅方向、海老取川の対岸付近の大田区羽田五丁目(北緯35度32分57.5秒 東経139度45分7秒)に位置する地上駅であり、東京国際空港が沖合に移転する以前の旧空港ターミナルへのアクセス駅となっていた。だが実態は「地理に不案内な乗客が駅名を頼りに降り立って、川を隔てて遥か彼方の羽田空港を眺めて茫然とする」というものであり、加えて当時の空港線がほぼ終日京急蒲田 - 羽田空港間折り返しの普通列車のみというダイヤで、空港アクセスには全くといっていいほど役に立たなかった。一時は羽田空港駅から旧空港ターミナルへの連絡バスが設定・運行されていた時期もあったが、それも利用者が付かずに短期間で廃止され、以降は徒歩またはタクシーでのアクセスに頼ることとなる。その後1980年代に入り、羽田空港の沖合移転計画が具体化した頃から、狭小な駅前広場に入れるマイクロバス(空港関係者の通勤・帰宅の多い朝晩は中型バス)により再開され、昼間は1時間に1本の割合で運行された。
羽田空港の沖合移転に伴う空港アクセス路線確保の一環として、1991年1月16日に穴守稲荷 - 羽田空港間の営業をいったん休止の上、1993年4月1日に再度空港島に乗り入れ現在の位置に「羽田駅」を新設、同時に旧・羽田空港駅を正式に廃止した。また、旧・羽田空港駅周辺住民の利便を図って海老取川に架けられた人道橋は、地元からの公募で「天空橋」と名付けられ、同日に開通した。なお、旧・羽田空港駅の跡地は駐車場とされた。
それ以前に比べると、空港アクセスの手段としての利便性が増した。しかし、もともとが東京モノレールへの乗換えによる空港アクセスを前提とした、新ターミナルビル「ビッグバード」直下乗り入れまでの暫定アクセス駅という扱いであり、旧空港ターミナルへは循環バス、「ビッグバード」開業後は東京モノレールにそれぞれ乗り換えることを余儀なくされた。1998年に羽田空港駅(現・羽田空港第1・第2ターミナル駅)が開業すると同駅に空港アクセス駅としての役割を譲り現行の「天空橋駅」に改称した。
なお、当駅が設置される前の仮称駅名は「羽田空港口駅」であった。
前身の駅は、1964年の東京モノレール開業時に終着駅として設置された羽田駅であり、現在の当駅の北東、沖合移転前の羽田空港旅客ターミナルの地下にあった(北緯35度32分56秒 東経139度45分37秒)。羽田整備場駅(現:整備場駅)から旧・羽田駅間は単線だった。旧・羽田駅の跡地は現在の羽田空港B滑走路南端付近にあたり、痕跡は残っていない。
京急・東京モノレールともに独立した駅舎を持っているが、京急線改札階と東京モノレール浜松町方面ホームを結ぶ乗り換え専用改札口が存在する。
また、HICity口では両線の改札が並ぶように配置され、それぞれの羽田空港方面ホームに接続しているほか、同通路上に京急→東京モノレールの乗り換え専用改札も設置されている(東京モノレール→京急は一旦改札外に出る必要がある)。HICity口の開設前は乗り換え専用通路としてのみ供用されていたが、京急空港線の羽田空港延伸以降は午前7時から午前11時までの営業(京急→東京モノレールの一方通行)となっていた。HICity口への改良・転用後は乗り換え改札が京急のホーム階からモノレールのホーム階に移動し、初電から終電まで終日利用可能となった。なお、HICity口から京急蒲田・浜松町方面のホームへは直結していないため、いずれも羽田空港方面ホーム・コンコース階を経由して反対ホームに回る必要がある。
相対式ホーム2面2線を有する地下駅。
ホーム部分は空をイメージした青いタイル壁面とされている。羽田空港まで延伸される前までは1番線が降車ホーム、2番線が乗車ホームであり、その先に渡り線と2本の折り返し線を設置していた。2番線には発車標(初代反転フラップ式)も設置されていた。その後、羽田空港延伸後は渡り線の使用を中止し、折り返し線も本線として使われるようになったため、各ホームに列車接近案内装置が設置された。
京急線構内ではNTTドコモのdocomo Wi-Fi、NTT東日本のフレッツ・スポットの無線LANが使用可能。2012年8月現在、UQコミュニケーションズのWiMAXも使用可能。エスカレーターは各ホーム及び各出口に1台ずつ設置済。エレベーターについては各ホーム及びA1出口のみ設置済(A2出口にはなし)。B1階(改札コンコース)には多機能トイレ(身障者等用トイレ)設置済。京急線改札口にあった旧出札窓口は駅構内改良工事に伴い撤去された。
相対式ホーム2面2線を有する地下駅。
東京モノレールの駅舎は、飛行機のジェットエンジンをモチーフとした設計とされている。ホームと駅舎の間にはエレベーターが、駅舎から地上の間とB1階京急線連絡口にはスロープがある。
旧空港ターミナル直下にあった移転前の羽田駅は、島式ホーム1面2線を有する地下駅だった。
モノレール・エージェンシーが駅業務を受託する業務委託駅である。
近年の1日平均乗降人員は下表の通りである。
開業以降の1日平均乗車人員は下表の通りである。
当駅周辺は羽田空港の敷地に隣接しており、第二次世界大戦後のGHQによる立ち退き政策などの影響などにより海老取川以東に民家はない。駅北方には各社の整備場や処理施設が多く存在する。
付近にはかつて羽田空港の国内線ターミナル(1993年まで)および国際線ターミナル(1998年まで)が存在していたが、沖合展開事業に伴ってこれらの空港施設は廃止・撤去され、約53ヘクタールに及ぶ空き地が捻出された。大田区はこの区域を羽田空港跡地利用計画として整備することを定め、当駅周辺はその第1ゾーンとして、産業支援、文化・交流および多目的広場・緑地として利用することになっている。第1ゾーンにおける第1期事業として「HANEDA INNOVATION CITY」(羽田イノベーションシティ、通称:HICity)が2020年7月3日に先行オープンし、2023年11月16日にグランドオープンした。
かつては駅の東側に羽田東急ホテルや日本航空オペレイションセンターがあったが、羽田空港第2旅客ターミナルの開業による移転で閉館した。
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