LED照明(エルイーディーしょうめい、英: LED lamp, LED light bulb)は、発光ダイオード (LED) を使用した照明器具のことである。
LEDを使用しているため、低消費電力で長寿命といった特徴を持つ。定格範囲内で使用する限り発光素子自身は比較的長寿命であり、熱による劣化が寿命の決定要因となる。
LEDは、1970年代から普及している発光素子だが、当初は赤色や黄緑色といった、比較的波長の長い光しか出すことができなかった。その後、1990年代に青色LEDや純緑色LEDが発明されたことにより、光の三原色が揃い、一般的な照明に求められる白色の発色が可能となったため、照明としての応用が始まり、照明器具の主力光源となっている。
LED照明は、蛍光灯や白熱電球といった従来型の照明器具と比較すると以下の特徴を備える。
LED素子の帯域はレーザーのような線スペクトルほどではないが、既存の光源に比べるとずっと狭く、単一のLEDで白色光を出すことはできない。
ただし、蛍光体により短波長の光を長波長の光に変換することができるので、LED自体は青色のみにして他の色は蛍光によって出すこともできる。いずれも青色LEDが必須であり、青色LEDの発明によって初めてLED照明は現実的となった。
青色LEDと黄色蛍光体を使ったものが最も普及している。いわゆる「疑似白色」である。このタイプのスペクトル分布は青の460nm近辺に鋭いピークがあり、蛍光体による500~600nmあたりを中心とした緩やかなピークをもつ(蛍光体のピーク位置やピークのなだらかさは蛍光体に依存する)。昼光色タイプだと青のピークが圧倒的に高く、黄色蛍光体のピークは低くなる。一方、電球色タイプは蛍光体のピークが青のピークよりも高い。
数は非常に少ないが、青色LED+赤・緑色蛍光体、もしくは近紫外(もしくは紫)LED+赤・緑・青色発光体を使ったものもある。このタイプはRGB3色による発光となるため演色性が高い反面、一番発光効率の悪い赤色蛍光体に合わせて他の蛍光体の量を決めるため、総体として擬似白色に比べて効率が悪い。
以上は、単体LEDチップを用いた例だが、赤・緑・青の単色LEDを組み合わせたマルチチップタイプのLEDも存在する。このタイプはコストが高く、かつ白色を実現するには複雑な駆動回路を必要とするため、蛍光体の改良が進むに連れて照明への応用例としてはほとんど見なくなった。
各種照明器具同士の比較を表で示す。
パナソニック電工によれば、白熱灯に比べて約87%、蛍光灯に比べて約30%消費電力が削減できるとされ、初期費用についても消費電力の削減によって2 - 3年で回収できるとしている。
高輝度LEDの外形形状は、シングルチップの砲弾型と表面実装型(SMD型)、マルチチップの表面実装型と多様な形態に大別できる。LEDは逆電圧に弱いため、逆接ダイオードを備えたり、静電気に対して保護素子を内蔵するものもある。
砲弾型では直径3mmや5mmのものが多い。配線の極性は砲弾型ではアノード側(プラス側)がリード線が長く、表面実装型ではカソード側(マイナス側)に印が入っていることが多いが例外もあるので注意が必要である。
表面実装型(SMD型)は多様な形状が存在する。2009年現在登場している「パワーLED」と呼ばれる新たな照明用LEDのパッケージは、放熱性や発光特性に考慮して各社で異なるため、それらの形状はまちまちである。パッケージの背面に放熱板(ヒートシンク)が密着して取り付けられるので、放熱には有利となる。
基本的に表面実装型では、配線が描かれた小型基板の上にリフレクタが取り付けられ、その中央に素子が置かれてダイ・ボンディングされ、素子と基板の間がワイヤ・ボンディングで接続される。蛍光体と樹脂がリフレクタで囲まれた上に注がれ素子を覆っている。小型基板は樹脂、金属、セラミックが使用される。
SMD(surface mount device)型は、一般にフェース・アップ実装とフリップチップ実装のものがある。これらの他に、チップの新たな構造として、張り合わせタイプがある。
張り合わせタイプではフリップチップの素子に似ているが形状が少し異なり、フリップした時に外部を向くサファイヤ層は除かれて反対に基部になる層として導電性基板が貼り付けられる。
フリップチップ実装によってセラミック製のパッケージに直接実装する方法も採られている。セラミック製のパッケージに直接実装すれば、サブマウントを省くことで工程の簡略化や信頼性の向上になる。このようなものはCOB(Chip on board)と呼ばれ、複数の素子を1つの大きなパッケージに直接実装したモジュールとすることで放熱性が高められる。
マルチチップLEDは1つのパッケージ内に複数個のLED発光素子を搭載した複合構造のLEDである。マルチチップの実装では、表面実装型とそのほかの多様な形態のパッケージがある。シングルチップでは素子(チップ)は高光出力で大きさも1mm角以上と大きめのラージサイズチップが使用されることが多いが、マルチチップでは0.6mm角程度のミドルサイズチップや0.35mm角程度のノーマルサイズチップが使用されることが多い。
マルチチップでは素子自身の発光色の組み合わせによって2通りの構成がある。
前者は演色性に問題が少なく、一般照明用途に向く。
後者は各色のスペクトルが狭く演色性に問題がある。一般照明用途に向かないがカラー液晶用のバックライトには適している。
マルチチップでは発熱源が分散できるが発熱が増えるのでシングルチップ以上に放熱が求められる。また、発熱部分が集中して温度が部分的に上昇し過ぎないように留意する必要がある。
蛍光体を使用する白色LEDでは、蛍光体はリフレクタによる作られるくぼみなどに充填される。沈降などで発光素子の近くにだけ蛍光体の分子が濃密に分布しないよう均質に分散している必要があり、充填量もどの製品でも等しく正確な量でなければならない。これらが守られないと、製品は色ムラによる不良となる。
シングルチップとマルチチップでは形態だけでなく特性や用途も異なってくる。
LEDは、極性のある直流によって発光し、適正電圧と耐圧がともに低いため、使用には専用の電源が必要となる。LEDはダイオードであるため、順方向電流と順電圧には相関があり、数ボルト程度の低い耐圧に応じた順電圧が少し上昇するだけで過大な順方向電流が流れて容易に損傷を受ける。これを回避するために、電流制限抵抗や定電流素子(定電流ダイオードや定電流ICなど)をLEDに直列に挿入して、電圧変動による影響を少なくする必要がある。
一般にLED照明では複数のLED素子を使用するため、それらの接続方式には以下の3種がある。
上記のLED素子の単体の故障時に、たとえ発光が維持できても、規定した電流・電圧からは外れるため、照度や寿命を考慮すれば、故障したLED素子を交換する方が良い。
また、LEDの順電圧の総和が、電源電圧に近くなる数だけ直列接続すれば、電源回路を省いて100Vの交流商用電源に、そのまま接続することは可能であるが、素子数の制約だけでなく、LED素子は極めて耐圧が低いため、ちょっとしたサージで簡単に損傷する可能性があり、商用電源周波数の影響をまともに受け、人によってはチカチカと点滅を繰り返した照明となるため、商品としての設計には向いていない。
LEDの駆動には電圧変動を少なくするために、定電圧回路による駆動が考慮される。また、順電圧には負の温度特性があり、温度が上がると順電圧が下がるので、温度特性による光量変化が避けたい場合には定電流回路で駆動することも考えられる。
他の照明器具では考慮する必要がないが、LEDは微弱な電流でもそれに相当する弱い光を放つため、消灯時には電源回路からの漏れ電流がLEDに加わらないようにする必要がある。数μA程の微弱な電流でも暗闇では点灯が判別できるので、電源回路の設計には注意が求められる。
それ自身が発熱する電源回路は、熱に弱いLED素子の放熱を阻害しないように離して設置する必要があるが、供給電圧が低い場合にあまり両者を離すと、給電用電線の抵抗で電圧降下を起こしエネルギー損失と共に予定した光度が得られない可能性があるので、注意が求められる。
以下はTa:25℃ If:20mA の時。
LED照明の使用中、電源回路からは電源コイルが発する磁力の影響により、ノイズが発生することが多い(回路によっては定電流ダイオード(CRD)を使用し、ノイズが発生しない構成を取るものもある)。そのため電源回路にはノイズが漏洩しないよう、フィルタ回路で適切な電磁両立性(EMC)対策を施すことが求められる。
2012年7月より、日本国内においてはLED関連器具(LEDランプおよびLED電灯器具)が、電気用品安全法(PSE)の規制対象となり、製品安全試験に加え不要輻射(EMI測定)が必須要求となった。規制前は、主に格安製品を中心に、適切なEMC対策が施されていない物も少なくなかった。
このような製品は、LED照明が点灯している間は常にノイズが発生するため、中にはテレビ・ラジオなど無線通信の受信に悪影響が出る場合もあり、街路灯の光源を全てLED電球に交換したところ、テレビへの混信が発生したため、不要輻射対策品への再交換を行った事例もある。
定格範囲内で使用する限り発光素子自身は比較的長寿命である。ただし、発光素子を取り囲む樹脂材料は強い光や発熱で劣化するため発光素子が正常でも比較的早期に透明度が失われて実用には適さなくなる。また発光部(LED)以外、例えば電源回路の受動部品(コンデンサ等)や電源供給用半導体、基板・配線等も主に温度・湿度の変化を受けて照明器具の寿命を決める要素となる。
照明器具全体での温度や湿度に対する耐久性が求められるが、その全体の寿命は発光部や電源回路だけでなく、スイッチや電線なども経年変化を受けるため、他の電気機器と同様に10年程度を目処に交換することが推奨される。
LED発光素子は光を除けばおおむね半導体の順方向電圧による電力消費とそれ以外の内部抵抗による電力消費によって発熱する。半導体部分の温度はジャンクション温度と呼ばれ、最も高温となる部位である。ジャンクション温度は以下の温度モデルで表現される。
LED発光素子のジャンクション温度の上昇が樹脂、蛍光体、はんだ、電極金属、半導体結晶などの劣化要素となるため、ジャンクション温度の抑制が寿命や不良低減に有効となる。ジャンクション温度の抑制には、上式が示す通り、消費電力、熱抵抗、環境温度のそれぞれを下げることが有効である。
照明器具では低温環境での使用も考慮されなければならない。低温環境では高温による劣化といった負の効果は避けられるが、水分の浸透による凍結膨張や結露、ショート、水分吸収による部材の化学変化などに配慮する必要がある。
劣化は高温度によって加速されるため、熱を効率よく逃がして過度な高温状態とならないようにすることが求められる。このため照明用LEDは十分広い面積の放熱板に取り付けられることが推奨され、これが不可能な場合には強制空冷にするか駆動電流を減らして照度を小さくする、さもなくば寿命の短縮を甘受することになる。照明器具として利用する場合に、従来の白熱灯や蛍光灯、HIDランプと同等に施工業者が扱って放熱対策を万全に行わない時には、寿命が極端に短くなる恐れがある。
従来の赤色LEDでは発光によってもそれほど劣化しなかったエポキシ樹脂も、青や紫外線での発光では光子のエネルギーが大きいために、局部的に黄変することが知られている。照明用途では光劣化を起こしにくいシリコーン樹脂の採用が求められる。
外部の機器や電源ラインから侵入してくる「静電気」「過電圧」「電磁波」から、保護し故障や誤動作を引き起こさない性能が求められる。また、LED 照明自身が電源線や空間に外部に放出する電磁波(不要輻射)によって、周辺で使用される電気製品が誤動作したり、ラジオやテレビの受信障害を生じない性能も求められる。
照明として使用されるLEDには人間の目にとって都合の良い白色光が使われる。白色LEDの発光原理はいくつかあるが、発光効率や波長に対する強度が異なるので、LED照明の使用目的に合わせて適する種類を選択する。
発光特性で考慮すべきなのは人間が照明として使用する場合、LEDの発光効率を単に物理的な光のエネルギーとして計測するだけでは不十分であり、人間の比視感度まで考慮する必要がある点である。
ヒトの眼は、明るい環境では波長555nmの緑色が最も敏感に明るさを感知し、それより長いか短い波長では感度が徐々に低くなり、赤外線や紫外線では全く見えなくなる。このため照明の発色を設計する際には、ヒトが肉眼で見た場合に自然に感じるようヒトの眼の感度も考慮する必要がある。このことは比較的発光効率の良い長波長の赤色領域では問題とはならないが、発光効率があまり良くない短波長の青色領域でそれだけ多くの電力を消費することになる。
照明器具の性能は電力消費や寿命などの他に、発色する光そのものの性能も求められる。照明器具の色の性能は「色度図」、「相対色温度」、「演色性」によって表現される。
これらの性能のうち、色度図と相対色温度は、照明として使用される用途に応じた特性が求められる。演色性は0 - 100の間で大きな数値の方が良い。
色度図上での外周上の各点は単色光(Monochrome)に近く「飽和している」(Saturation)もしくは「色純度が良い」(Color purity)と呼ばれ、「ドミナントカラー」(Dominant color)とも呼ばれる。外縁部の線上に並ぶ色がそれぞれの主波長であり色純度(色飽和度)が100%になる。色純度(色飽和度)はa/a+bで表現され、LEDの発光はスペクトルに幅が生まれるため、その分だけ内側にずれる。LEDに限らず広いスペクトル幅を持つ光は色純度が低下して中心に近くなる。
黒体放射に伴う発光現象での発色を表すのに色温度(Color Temperature)が用いられるが、白色LEDは黒体放射による発光ではないため、その近似として相対色温度(Correlated Color Temperature, CCT)を用いる。
照明の演色性は、白昼の太陽光を最大の100とする指数で表す。色空間座標上での白、黄緑、緑、赤紫など8色の標準光源に対する標準対象物からの反射スペクトルと、検査対象の照明光源からの光による標準対象物からの反射スペクトルとを比較することで、計算式による指数の平均値から一般演色指数(Color Rendering Index, CRI)を導出する。また、平均演色評価数(Ra)という指数もある。
このCRIは白昼の太陽光が最大の100であるため、これより小さくなるにつれてその照明光源からの光の下では色の再現性が劣っていることを表す。
2009年の時点では青色発光LEDにYAG系の黄色蛍光体を使用した照明用LED(擬似白色発光ダイオード)が最も一般的であるがこれはRa値が60 - 85である。一部には青色発光LEDに赤色と緑色の蛍光体を使用し、Ra値が90以上の高演色性LEDと呼ばれるものが作られ使用されているが、青色発光LEDと黄色の蛍光体との組み合わせに比べれば発光効率は2 - 3割低下してしまう。蛍光体を使わずにRGB各色それぞれのLEDを使って混色により白色を得る方法では、緑色発光の発光効率がかなり低いだけでなく、3色とも発光色の幅が狭いために演色性もいくつかある方式の中では最低であり、各色の配光パターンも異なり色にムラができるなどの理由で照明にはあまり用いられない。LEDは発光スペクトルが比較的狭いため、演色性を高めるには複数の蛍光体を使いできるだけ発光スペクトルを広げる方が良い。青色発光LEDに赤色と緑色の蛍光体の組み合わせ以上の演色性を求めるには、開発途上の紫外線発光LEDに青・赤・緑の3色の蛍光体を使用するのが良いと考えられる。しかし紫外線発光LEDは発光効率がまだ低く、照明に使用できるまで開発は進んでいない。
以下は2009年春の時点でのランプ費用、電気代、CO2排出量をそれぞれ4万時間を前提に算出した例である。なお光源によってはこの出典掲載時以降技術革新や量産化により価格や性能が大幅に向上している場合があるので、比較の際は最新の売価・配光や寿命などの性能・消費電力での再計算を要するほか、電球型蛍光灯や白熱電球は製造を終了しているメーカーが多いため、入手性に難が出ている。
1990年代に青色発光ダイオードが開発されて以降は、LEDによる白色光照明の実用可能性が高まり、局所照明を中心に徐々に市販製品が登場した。
野村総合研究所の予測では白色LED照明は世界全体で2012年には2009年の3倍近くの約4782億円相当になるとされた。富士経済では日本国内のLED照明市場は、2008年の全照明市場4494億円の内の約3%分133億円程度から、2012年には全照明市場4880億円の内の約12%分578億円程度になると予測していた。
白熱電球は世界的にも環境対策や省エネルギー政策の観点から使用中止が求められ、日本国内では環境省と経済産業省が2012年までに白熱電球の販売自粛を要請し、大手メーカーも積極的な販売を控えたため、代替が出来ない製品を除いて、生産を縮小した。
大韓民国では「15/30プロジェクト」という2015年までに全照明の30%をLED照明に切り替える計画を進めていた。中華人民共和国では「10都市街灯普及プロジェクト」によって国内21都市でLED街灯を試験的に設置する。中華民国政府は、2008年間からの4年間で総額20億台湾元をLED関連の研究開発支援に投資する。
中華民国と同様に、中国、米国もLED照明の開発に政府が多額の資金援助を行っている。日本でも、国内立地の推進事業等を通して、LED(他にはリチウムイオン電池・太陽光発電等)の事業・工場の立地が進んだ。
照明器具産業は、製品技術や市場変化の点で長い間大きな変化がなく、白熱電球や蛍光灯管という光源を作る幾つかのメーカーとそれを取り付ける器具メーカーがあり、両方行う総合照明メーカーも含めて棲み分けを行い成熟した市場で安定的な関係を構築してきた。特に光源メーカーとして新規参入する機会は乏しかったが、LED照明の登場で産業構造に変化の兆しがある。半導体を使用したLEDの光源は、半導体産業からの光源メーカーの参入機会を作りだした。新規参入と古参のいずれのメーカーでも、小型で調光が比較的容易なLED照明ならではの製品を市場に提案しており、電球の置き換え市場だけを狙っている訳ではない。
また、白熱電球だけでなく直管型蛍光灯の置き換えも視野に入っていた。新規参入企業の多くが白熱電球型ではなく直管型蛍光灯の代替用途での製品開発と販売を進めた。直管型LED照明は器具の全てがLED照明専用であるものから、既設の直管型蛍光灯器具から安定器やインバータ部を取り外して配線をつなぐもの、既設の直管型蛍光灯器具から安定器やインバータ部を取り外さずにそのまま取り付けるもの、の3通りがある。ただし、既設器具から安定器等を撤去する行為は器具メーカーの保証を受けられなくなるほか、再度蛍光管に切り替える際に安定器を再設置する必要がある。また、安定器を残置できるタイプのものは直管型LED照明に搭載する部品が増えるため、後述の問題を増大させる。
なお、蛍光管が全方位に光を放射するのに対し、直管型LED照明はLEDの特性上一方向にしか光を放射しないため、指定された形の蛍光管を取りつけることしか想定していない既存の蛍光灯器具でこういった直管型LED照明を用いるのは光の性質上適していない。また、直管型LED照明は蛍光管に比べてかなりの重量増となり、ソケットなど蛍光灯用器具部品が損傷したり直管型LED照明がソケットから落下する危険性も高い。また、経年劣化が進んだソケットや安定器を残置する場合は、いくら長寿命の直管型LED照明を取り付けたとしても、その前にソケットや安定器の寿命を迎えて不点となる。そのため、東芝ライテック、パナソニックなど日本国内の有力照明器具メーカーは下記のJEL 801が制定されるまでは器具とLEDユニットを一体化した直管型蛍光灯用器具の代替たるLED照明のみを販売していた。
2010年10月、日本電球工業会は新たな規格として、「L形口金付直管形LEDランプシステム(JEL801)」を制定した。これは既存の蛍光灯器具で直管形LED照明を用いることの危険性を電球工業会が問題視し、また経済産業省から電球工業会に対して直管形LEDランプシステムの標準化の音頭取りをするように指導があったためである。そして、東芝ライテックとパナソニック ライティングデバイスなどはこの規格に適合するL形口金付直管形LEDランプシステムの製品の開発・発売を発表した。また、この規格の制定により、日本国内ではG13口金を用いる直管形LEDランプは規格外品という扱いとなったほか、2011年2月に改定されたグリーン購入法における環境物品等の調達の推進に関する基本方針においても、G13口金を用いたなど既存の蛍光灯と構造的に互換性を有する直管形LEDは、当面の間、グリーン購入におけるLED照明から除外されることとなった。
LED照明は長い製品寿命を持つため、1度顧客が購入すれば24時間点灯し続けても4年以上も交換する必要がない。このため従来の白熱電球や直管蛍光灯のような交換需要は小さく、各メーカーでは最初の販売機会を逃さないように注力している。
2014年3月には業界の先陣を切ってパナソニックが「白熱電球及び蛍光灯を用いる一般住宅向け従来型照明器具の生産を2015年度を以て終了し、今後はLEDへ完全移行する」旨を公式発表した(蛍光ランプ・電球型蛍光ランプ・一部白熱灯は交換用途に絞って生産を継続。2014年3月4日付の朝日新聞・日本経済新聞経済面記事にて報道。なお卓上型の電球及び蛍光灯器具と乾電池や充電式電池で駆動する蛍光灯アウトドアランタンは2011年限りで生産を終え、LEDへの移行完了)。こうした「脱蛍光灯」の動きは国内他社にも広がっている。なお白熱電球の生産は(一部特殊用途を除き)2012年度を以て国内メーカー全社が完全終了した。
なおLED電球のうち「ミニレフ形(E17口金)」を生産している国内メーカーはパナソニック・朝日電器(ELPA)・オーム電機3社のみ。電球型蛍光灯専用ダウンライト器具対応「T形」はパナソニック・東芝ライテック・三菱電機照明・オーム電機・ヤザワコーポレーションが生産している。またコンセント・壁スイッチを自社生産している国内メーカーは現在パナソニック・東芝ライテック2社のみ。
2009年現在、低コスト化と発光効率と放熱性の向上に向けて技術開発が進められている。これら3つは互いに関連しあうが、基本技術で発光効率と放熱性の向上が達成できれば低コスト化につながる。また、寿命が伸びれば使用者にとって低コストになるため、寿命に強く影響する放熱性の改善が求められる。しかし放熱のための部品を加えることはコスト高の要因となる。2009年現在、市場で販売されているLED照明製品はいわば第一世代にあたるため、電源回路や筐体にはコスト改善のための改善の余地がかなり残されている。また発光素子自体においても以下のような改善が行われている。
光は屈折率の異なる界面で屈折を起こすが、臨界角以上では全反射を起こす。半導体素子自身の内部や封止樹脂の表面で全反射を起こすと、外部へ放射される光が減るために全反射をできるだけ減らす工夫が行われている。
白色LEDでは、半導体素子から発する青色の光の一部を黄色などの蛍光体に当てて色を変えてから外部に放射している。
従来から半導体素子は金属系の基板に搭載することで放熱性の向上が図られているが、0.2mm厚ほどの絶縁性樹脂製の板に柱状の銅を埋め込む(Cuバンプ)ことで裏面への放熱性を向上させる手法が開発されている。他にもセラミック製基板として、AlN板にAgペーストで配線を印刷したものもあるがコスト高となる。リードフレームに銅を採用したセラミックパッケージも開発が進められている。
半導体中の結晶構造の歪みに起因する「ピエゾ電界」によって発光効率が低下するため、これを避けられるm面を使ったGaN素子の開発が進められている。サファイヤ基板に代わってGaN結晶をm面に沿って切り出した基板上にGaN層を結晶成長させて素子が形成される。今は量産性が低く、2015年頃の量産を目標に開発が進められている。m面-GaN素子では半導体素子単体での発光効率も200 - 300lm/Wが可能だとされる。
LED照明特有の事情に絞った規格としては、前述の「L形口金付直管形LEDランプシステム(JEL 801)」のほか、韓国政府の制定した標準規格「KS規格」が存在している。KS規格内では、2009年より新たにLED照明の安全と性能要求事項を規定に加えており、韓国はこれが国際規格として採用されることで世界市場での自国企業の国際競争力強化につなげたい意向だった。LED照明の技術面では日本企業が世界をリードしていたが、工業規格や法整備の面では遅れていた。このため、日本国内では明確な製品基準を持たない新規参入メーカーなどが製造する製品に粗悪品も多かったが、グリーン購入法における環境物品等の調達の推進に関する基本方針などのガイドラインでは、こういった粗悪品を認めない流れになりつつあった。
LED電球他のLED照明器具の登場が先行していたが、JIS規格の整備が追いつきつつある。JIS規格は、LED照明器具全体もしくはその主要部品(LEDモジュールや制御装置等)を対象に制定され、JIS規格の内容は、安全性の規定・性能水準の規定・互換性(口金等)の規定、に大別される。更に、照明器具の配光測定方法を定めたJIS C8105-5はLED照明器具を含めて改訂されている。2012年6月現在の最新JISはC8157(2011年12月制定) - 一般照明用電球型LEDランプ(電源電圧50V超) - 性能要求事項であるが、今後も新規制定あるいは既存JISの改補が行われる予定である。
産業標準化法に基づく国家規格であるJIS(Japanese Industrial Standards=日本産業規格)によりLED・LED照明の規格が次第に制定、整備された。詳細は、日本産業規格(電気・電子)の一覧 (C 8000-8999)参照。
2009年現在、日本で関連する法令を以下に示す。
2012年7月1日より施行された改正PSE法において、「エル・イー・ディー・ランプ」及び「エル・イー・ディー・電灯器具」の2品目が、特定電気用品以外の電気用品に追加された。
これらに該当する製品を、2012年7月1日以降に製造もしくは輸入する場合は、製造者もしくは輸入者は、当該製品がPSE法の技術基準に合致していることを確認した上で、特定電気用品以外の電気用品に表示する記号(○PSE記号)を製品に表示する義務がある。加えて、製造者もしくは輸入者はPSE法規定の手続きに沿って経産省に届出を行うと共に、同法が定めた製品検査を実施して検査記録を保管する義務がある。
これら2品目に対して適用されるPSE法の技術基準には、ノイズに関する許容値と測定方法が含まれる、電気用品の雑音の強さの測定方法(附属の表の2) - 照明器具等(第7章)。「エル・イー・ディー・ランプ」には、家庭で多く使われるE26もしくはE17口金のLED電球が含まれる。
なお、LEDを光源とする電気製品のうち以下の6品目は、既にPSE法における特定電気用品以外の電気用品である。
経済産業省が管轄する電気事業法によって、電気の使用者の利益保護と電気事業の健全な発達を図り、電気工作物の工事、維持、運営を規制することで公共の安全の確保と環境の保全を図ることを目的としている。
経済産業省が管轄する電気工事士法によって、電気工事作業に従事する者の資格と義務を定め、電気工事による災害発生の防止に寄与するための法律である。
日本産業規格(JIS)は、鉱工業製品等に関する日本国での標準規格である。色に関する規格、電球・放電管・材料に関する規格、照明器具に関する規格、配線材料に関する規格など、多くの規格が含まれている。2005年からは指定商品制度が廃止されて、従来は規格対象外の為にJISマークが付けられなかった製品にも、規格に合っていれば新JISマークが表示できるようになった。
国土交通省が管轄する建築基準法によって、建築物の敷地、構造、設備、用途に関する最低限の基準を定めている。この中には電気設備に関する基準も含まれ、非常用照明設備に関する設置基準やその明るさなどが定められている。なお、2023年12月現在の建築基準法施行令においては、非常用照明設備でLED照明を用いることは認められていないが、各メーカーより常時はLED照明を用い、非常時には施行令で認められている白熱・ハロゲン電球や蛍光灯を用いる非常用照明器具が発売されていたが、2015年からは建築基準法に基づく国土交通大臣認定を取得したLED照明を用いた非常用照明器具を発売し、蓄電池搭載型の機種では従来光源を用いたタイプを終売させている。
誘導灯や誘導標識などを決めているのは、基本となる消防法の元に細部が消防法施行令や消防法施行規則によって規定されており、地方自治体によって違いがある場合がある。
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