『ドラゴンクエストVI 幻の大地』(ドラゴンクエストシックス まぼろしのだいち)は、1995年12月9日に日本のエニックスから発売されたスーパーファミコン用ロールプレイングゲーム。
同社の『ドラゴンクエストシリーズ』第6作目。「天空シリーズ」の3作目かつ完結編として位置づけられる。またスーパーファミコンで発売された最後の本編作品である。
もう一つの世界である「幻の大地」の存在を知り「自分探しの旅」に出た主人公が、大魔王を討伐し世界を救出する内容となっている。また『ドラゴンクエストIII そして伝説へ…』(1988年)以来となる転職システムや、2つの世界を何度も往復するシナリオ、前作『ドラゴンクエストV 天空の花嫁』(1992年)に続きモンスターを仲間に出来るシステムなどを特徴とする。キャッチコピーは「DQ(ドラクエ)を超えるのは、DQだけ」。タイトルロゴは「DRAGON QUEST」の文字の下に影が重なったデザインとなっている。
開発はこれまでのチュンソフトに代わりハートビートが行ったが、主要スタッフは続投し、プロデューサーは千田幸信、ゲーム・デザインとシナリオは堀井雄二、キャラクター・デザインは鳥山明、音楽はすぎやまこういち、ディレクションおよびプログラムは山名学が担当した。
SFC版の発売後には、ゲームブック化、小説化、ドラマCD化、漫画化、スピンオフ化も行われた。
2010年1月28日には初めてとなるリメイクとしてニンテンドーDS版が、2015年6月11日にはスマートフォン(iOS、Android)版が発売された。海外版は発売されなかったが、日本国外ではニンテンドーDS版が北米で『Dragon Quest VI: Realms of Revelation』として、欧州では『VI』を除いた『Dragon Quest: Realms of Reverie』として発売された。
日本国内での売上本数は約320万本であり、スーパーファミコン用ソフトとしては歴代3位の記録となった。また、ゲーム誌『ファミ通』の「クロスレビュー」では、スーパーファミコン版およびニンテンドーDS版共にゴールド殿堂を獲得した。
テーマは「発見」であり、2つの大きなワールドマップ(パラレル)が存在し、主人公たちは2つの世界を行き来しながら冒険を進める。複数のワールドマップが存在するRPGは過去にもあったが、それらは、序盤は主人公の住んでいる世界だけを移動でき、物語が進むことによって舞台がほかの世界へ移るという形式が多かった。しかし本作では、ゲーム序盤から2つの世界を行き来しながら物語が進行する。SFC版の商品には両方の世界がそれぞれ表裏に印刷された紙製の白地図が付属しており、プレイヤーが冒険中に「発見」したスポットをメモ出来るようになっている。
物語中盤以降は次の目的地が明確に示されず、行動できる範囲をさまよううちに新しい「発見」ができる仕組みになっている。特に海底に行く手段を得た後は、どの順番でもシナリオを攻略できるようになる。
物語の進行に伴って町の住人たちの台詞が変化する。また感情を表す吹き出しの実装によって驚き、疑問などの感情表現がわかりやすくなった。
システム面の改変点が多く、リメイク作を含めた以降の作品に継承されたものも多い。当時としては大容量の32メガビットROMが採用され、町やフィールドなどのグラフィック面において、前作までと比べてリアルさが増した。
城や町、ダンジョンなどのグラフィックがさらに詳細になったほか、前作に比べ主に以下のような変更点がある。
馬車を除くと6種類の乗り物が登場する。また、「あわあわ船」により、ドラゴンクエストシリーズで初めて海底の冒険が可能になった。神の船、ひょうたん島、空飛ぶベッドはルーラを使用すると目的地付近に自動で移動してくる。「はざまのせかい」ではすべての乗り物が利用できない。
前作と同様、プレイヤーキャラクターには人間のキャラクターと仲間モンスターが存在する。
人間のキャラクターはシナリオの進行にしたがって増加していくが、一部は加入しなくてもシナリオは進行する。物語中盤以降は「ルイーダの酒場」で、主人公とバーバラを除くキャラクターを自由に入れ替えることができるようになる。仲間モンスターを預けるモンスターじいさんは廃止され、人間のキャラクター・仲間モンスターともにルイーダの酒場に預けるようになった。
本作では「命名神マリナンに仕える神官」に会うことにより、キャラクターや「ふくろ」の名前をゲームの途中で何度でも変更することができる。ただし、すでに使われている名前(まだ仲間にしていないキャラクター・モンスターや重要人物も含む)に変更することはできない。また、不適切な名前にしようとすると神官から警告を受け、それにも従わず命名すると、再度名前を変更する際に5,000ゴールドが必要となる。
ステータスには「かっこよさ」が初登場し、その高さを競うイベント「ベストドレッサーコンテスト」(後述)も登場した。代わりに「うんのよさ」のステータスが廃止された。「かっこよさ」は容姿の端麗なキャラクターやかわいいモンスターほど数値が高く、武骨な外見のキャラクターや醜悪なモンスターなどは数値が低い。キャラクター固有の値のほか、各武器・防具にもかっこよさが設定されており、装備することでその武器・防具に応じてかっこよさが上下する。武器・防具を磨いて「かっこよさ」だけを上昇させる「おしゃれな鍛冶屋」も存在する。
SFC版では、前作同様に一部のモンスターのみ戦闘勝利後に起き上がって仲間になりたそうにすることがあり、起き上がった場合はプレイヤーの判断で仲間にできる。ただし本作では「まものつかい」の職業に就いている者が馬車の外で戦闘に参加していなければ、モンスターが戦闘後に起き上がることはない。また、特定の出現場所でしか仲間に出来ないモンスターも存在する。「まものつかい」の職業熟練度が上がれば仲間にできるモンスターが増えていく。
本作では仲間モンスターも人間のキャラクターと同様、転職が可能である。仲間になる可能性のあるモンスターの種類は18種おり、同じ種類のモンスターは最大3匹まで仲間になるが、一度に仲間にできるモンスターはルイーダの店に預けられたモンスターを含め最大15匹までとなり、前作に比べ規模が縮小された。イベントで仲間になるドランゴとルーキーは、先述の15匹の枠には含まれず人間キャラクターと同じ扱いになる。
本作の各プレイヤーキャラクターには「職業」が初期設定されているが、これはキャラクター登場時の状況に合わされている身分である。中盤以降では転職によって新たな職に就いて熟練度を上げることで、さまざまな呪文・特技を習得できる。職業は、条件なしで転職できる基本職9種と、一定条件を満たすことで転職できる上級職9種の合計18種がある。そのうち2種は隠し職業といわれ、「さとり」を入手することで転職できる。
また、今作では勇者が職業となっており、条件を満たせば誰でもなれるようになった。新たな試みであるが、成長すれば誰でも勇者になれる可能性があると捉えるか、勇者は血筋など選ばれた者しかなれないものと捉えるか一部ファンの間では物議を醸した。
前作から登場した「特技」が本作では格段に増え、特定の職業で経験を積むことによって人間・モンスターに関係なくさまざまな呪文・特技を覚えることができるようになった。
また、就いている職によってステータスが調整される。転職しても前の職業で覚えた呪文・特技を忘れることはない。つまりほぼ全ての特技・呪文を習得させることができる。
従来作品から存在するキャラクターのレベルや経験値とは別に、職業ごとの「熟練度」があり、戦闘回数をこなすことによってのみ上昇する。熟練度が一定値に達すると「職業レベル」が上昇するとともに新たな呪文・特技を習得し、職業ごとの特殊な能力が備わることもある。職業レベルは職業ごとの独特の呼称および☆の数で表され(ステータス画面で確認可能)、☆が8個になるとその職業をマスターしたことになる。転職をしても、その時点までの熟練度はそのまま残る。そのキャラクターのレベルによって、熟練度が加算されるエリアが区別されており、レベルに見合ったエリアでしか熟練度は上昇しない。ある程度物語を進めてから行けるエリアのほとんどはレベルに関係なく熟練度を加算できる。
職業によるステータスの補正はあるが、例えば戦士タイプのキャラクターが魔法使いに転職してもMPが元から低いため恩恵は低い。そのためキャラクターに適していない職業の熟練度を上げることは難しくなっている。
また、本作では隠しダンジョンへ入る条件が職業の熟練度と関係しているため、最後まで遊ぶためには転職は必須である。
解説文中の呪文についての詳細はドラゴンクエストシリーズの呪文体系、特技についての詳細はドラゴンクエストシリーズの特技一覧を参照。
前作からの主な変更点は以下の通り。
物語を進める上で特に重要な道具について解説する。
オープニングから魔王との対決が行われ、主人公たちは敗れて石にされてしまう夢を見るところから始まる。
主人公は山奥の村ライフコッドで妹のターニアと2人暮らしをしている青年。
ある日、村長の依頼で年に一度の村祭りに必要な道具を麓の町まで取りに行くことになるが、その道中で大地に開いた大穴に落ちてしまい別の世界へ行く。その世界では自分を認識してもらえない奇妙な体験をし、元の世界に戻りライフコッドで話を聞くと、その世界が「幻の大地」であると判明する。その後の村祭りで精霊のお告げがあり、主人公は旅立ちを決意する。旅の道中では主人公と同じ境遇の仲間と行動を共にし、それぞれ本当の自分自身を見つける、所謂「自分探しの旅」をする。
大地に空いた大穴、もう一つの世界、大魔王の存在が次第に明らかになり、世界の平和を取り戻すために魔王の討伐のためにはざまの世界へ入っていく。
本作は『ドラゴンクエストIV 導かれし者たち』『ドラゴンクエストV 天空の花嫁』に続く「天空シリーズ」の3作目として位置づけられる。
SFC版では『IV』『V』と本作との繋がりについて特に明らかにされなかったが、DS版ではクリア後のとあるイベントによって『IV』『V』と同一世界の過去の物語であることが明らかになった。
本作の夢の世界に登場する「クラウド城」は、『IV』『V』に登場した「天空城」と構造がほぼ同じである。一方で本作にはロトシリーズで登場した精霊と同名のルビスが登場するが、同一の精霊なのかどうかは明らかにされていない。
本作ではゲーム開始直後から2つの世界を行き来することができ、ストーリー中盤まではこの2つの世界を何度も行き来しながらシナリオを進めていくこととなる。この2世界は地面に開いた大穴やフィールド上の階段によって行き来でき、物理的に重なっていると捉えることができることから、公式ガイドブックでは上の世界、下の世界と呼ばれているが、ストーリーを進めると上の世界が夢の世界、下の世界が現実の世界であることが判明する。
両世界に点在する井戸を利用することによっての世界間移動もでき、イベントで別のものが出入り口になることもある。アモールやライフコッド、クリアベールなど、夢と現実の2つの世界に共通して存在する場所もある。これらの場所では、一方の世界で何か変化が起きると、もう一方の世界でもそれに合わせた変化が起きるようになっている。またこれ以外の場所でも、夢の世界の事件を解決することで現実の世界でトラブルが解消されたり、現実の世界のとある夢を見ている老人の家と夢の世界の町が地図上でほぼ一致する位置に存在することから、プレイヤーが町の正体を推測することができるなど、数々の「発見」をすることができるようになっている。
この2世界のほか、終盤でははざまの世界という第3の世界が登場する。また、下の世界では地上のほかに海底のフィールドマップもあり、本作では実質的に4つのフィールドマップが存在する。
この節では、ゲーム本編内で語られる設定を中心に記述する。なお以下の解説文中の呪文についてはドラゴンクエストシリーズの呪文体系、ステータスについてはドラゴンクエストシリーズ#ステータス(かっこよさについては本記事の解説)を参照。
前作同様、ステータス画面には肩書きが存在しており、ストーリーの進行によって肩書きが変化する。説明文中の《》はそのキャラクターの肩書き(ゲーム中ではかな文字で表記される)。
以下の3人は特定のイベントでパーティーに加えることができるが、パーティーに加えなくてもゲームクリアに支障のないキャラクターである。SFC版においては、パーティーに加えた場合であってもエンディングに登場することはない。
最終ボスである大魔王および大魔王の手下であることが作中で示されている魔物たち。
大魔王デスタムーアと無関係であるか、その手下であることが作中で示されていない魔物。
前作はほとんどストーリーの流れに沿った順番でしかゲームを進行できなかった。しかし、前作より自由度の高かった『ドラゴンクエスト』・『II』を『ドラゴンクエストI・II』としてリメイクしたことをきっかけに、本作でも自由度を大切にするというコンセプトで作ることになった。
町の住人たちの台詞が変化するのは、住人達の会話内容からも生活感を出したいという堀井の考えによるもので、本作以前から実装を考えていたもの。本編のボリューム増加にも合わせ、シナリオのテキスト量はそれまでのシリーズ最長の4,000ページに及んでいる(前作は2,800ページ程)。
音楽面ではサウンドエンジニアとして『伝説のオウガバトル』(1993年)のBGMで評価を得ていた崎元仁らを起用。シリーズで初めてとなる専用サウンドドライバの採用により、オーケストラに近いサウンドがSFC上で実現した。しかしクオリティの高い音楽を使用しながら、サウンド面においての使用容量は2メガビット以下に抑えられており、これはサウンドエンジニアの技術が大きく貢献しているとすぎやまから語られている。その楽曲のうち、ダンジョンや戦闘向け等の曲では「悪のモチーフ」と名付けられたひとつのモチーフによる関連付けが成されている。また、同じ楽曲でも編成違いのバリエーションを作ったり、声のような音を使用したりと、これまでになかった試みもあった。
エンディングテーマは本作品用の新曲が用意されず、フジテレビ系テレビアニメ『科学忍者隊ガッチャマン』(1972年 - 1974年)の楽曲「時の子守唄」がメロディー、タイトル共にそのまま流用された。ただし本作向けの編曲(SFC音源の制約に合わせる、エンディング用に尺を調整する等)はされている。
ニンテンドーDS版では大半の楽曲がオーケストラ版を基にしたアレンジとなったが、「勇気ある戦い」や「迷いの塔」などではオリジナル版の要素を残していた。その後のスマートフォン版や『XI』で使用されている音源ではこれらもオーケストラ版を基にしたアレンジになった。
ファンに人気のある魔族を主人公にするというネタがあったが、没案になった。また、企画当時は鳥山もマンネリ打開に陰のある主人公をデザインしたのだが、没案になり、そのデザインはテリーに一部引き継がれたという。
最初の設定では、バーバラとドラゴンと笛の三つのテーマのお話が一本裏にあったがなくなってしまったため、バーバラがドラゴンになるというのもなくなってしまった。バーバラがマスタードラゴンという話もあったが採用されていない。また2014年5月27日にニコニコ生放送「ドラゴンクエストXTV〜ドラゴンクエスト28周年記念スペシャル〜」でゲスト出演した堀井雄二が「バーバラは竜と言う設定は考えていた。だから、ある時バーバラはいなくなっちゃう」と明言した。
ニンテンドーDSでの「天空シリーズ」三部作のリメイク第三弾として、オリジナルのSFC版から約14年1ヶ月振りで2010年1月に発売された。キャッチコピーは「この旅は、夢という真実へ」。
基本的なシステムやインターフェイスは既にDSリメイク版として発売されている『IV』『V』に準拠しており、シリーズを通しての統一感が図られた。
BGMは内蔵音源だが、タイトル画面の「序曲のマーチ」のみ東京都交響楽団演奏のオーケストラ音源が採用された。
北米では『Dragon Quest VI: Realms of Revelation』、欧州では『VI』を除いた『Dragon Quest: Realms of Reverie』として発売された。そちらは『ドラゴンクエストIX 星空の守り人』の欧米版と同様に、任天堂の海外法人から販売された。
また仲間会話システムの導入によりキャラクターの性格が鮮明になった。
会うだけなら早い段階でできるものもいるが、仲間にするためには様々な条件が必要で、個別の追加イベントが用意されている。なおSFC版で通常の「仲間モンスター」として登場した種は、原作での1匹目と同じ名前が使用される。また仲間に加えることが可能なスライム(基本体)はルーキーのみとなった。
ニンテンドーDS版をベースとした移植だが、一部変更点がある。
発売当時はスーパーファミコンの全盛期であり、他メーカーにライバル機がなかった。その中で「ドラクエ派か、エフエフ派か」と言われるほどの構図で人気があり、1万円近い販売価格であったが300万本という売り上げを誇った。これは累計ソフト本数売り上げランキングでは3位であり、ハードメーカー元である任天堂ソフトを除くと1位である。当時はインターネットが整備されておらず、雑誌等の媒体のみであるが物語、システム共に評価は軒並み高かった。上下巻に分かれた厚い攻略本の売り上げも多く、幅広い年代から人気があった作品である。
†は廃盤。
2021年3月19日改訂された。機種ごとに著作権表示が異なる。
ドラゴンクエストモンスターズ テリーのワンダーランド - 1998年発売のゲームボーイ用ソフト。本作の登場人物「テリー」の幼年時代を描いたスピンオフ作品。
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