『映画ドラえもん 新・のび太の日本誕生』(えいがドラえもん しん のびたのにっぽんたんじょう)は、2016年の日本のSFコメディアニメ映画。原作は藤子・F・不二雄の長編漫画『ドラえもん のび太の日本誕生』で、同作の映画は2作目。映画「ドラえもん」シリーズの第36作目。監督・脚本は八鍬新之介。
はるか大昔の中国大陸。原始人の少年・ククルは川へ漁に出掛けて魚を獲ってきたが、帰還した時には既に村は何者かに襲撃され焼け野原と化していた。絶望に陥る中、そこへ突如ブラックホールのような裂け目(時空乱流)が現れ中へと吸い込まれてしまった。
一方、現代の日本では、家でも学校でも叱られてばかりののび太が家出を決意し、ママの反対を押し切って家を飛び出す。だが、どこもかしこも私有地か国有地でどこにも自分の思い通りになる土地が見当たらない。最初は「止めても無駄だからね!!」とのび太をバカにしたドラえもん、しずか、ジャイアン、スネ夫の4人も各々の理由で家出するも行くところがなく途方に暮れていた。それならばいっそのことまだ人間が誰も住んでいない旧石器時代(7万年前)の日本へ行こうと思い立ち、史上最大の家出へと出発する。誰にも邪魔されないユートピアが完成したが、親が心配になり一時帰宅することにした。
数日後、ドラえもんたちはひょんなことから現代に飛ばされたククルと出会う。ククルの一族であるヒカリ族は、精霊王ギガゾンビに操られる凶暴なクラヤミ族の襲撃を受けたという。ドラえもんたちは捕われたヒカリ族を救出するため、力を合わせて中国大陸へ向かい、ヒカリ族を連行していたツチダマを倒した。救出したヒカリ族をどこでもドアでギガゾンビの手も届かない場所として日本に移住させた。
ヒカリ族は新天地の日本で新たな村の建設を開始し、ドラえもんたちはそれを見届けた後、元の時代へ帰っていったが、その後ドラえもんたちが再び訪れて見るとギガゾンビにより村は滅ぼされていた。ヒカリ族はすでに中国大陸にあるギガゾンビの居城、常闇の宮(とこやみのみや)に連行された後だった。
常闇の宮を探すドラえもん一行だったが、吹雪の中でのび太がはぐれて行方不明になってしまう。
ドラえもんたちは、たまたま避難した洞窟から常闇の宮を発見。ドラえもんは亜空間破壊装置の部屋にたどり着き、ギガゾンビと対峙し、彼が未来から来た時空犯罪者であることに気づき、戦いを挑むも敗れて捕えられる。
ドラえもんたちが生け贄に捧げられそうになったところへ、のび太が、彼の作った空想動物のペガ(ペガサス)・グリ(グリフィン)・ドラコ(ドラゴン)とともにあらわれる。奴隷にされていたヒカリ族も蜂起してクラヤミ族と戦い、ドラえもんたちは亜空間破壊装置の部屋でギガゾンビとの決戦に及ぶ。亜空間破壊装置はククルが破壊。さらにドラえもんが投げた本物の石槍が決め手となり、ギガゾンビの仮面が叩き割られた。
ドラミとタイムパトロール隊も駆け付け、ギガゾンビは歴史破壊未遂罪で逮捕、彼の施設は歴史に残らないよう破壊される。ヒカリ族は改めて日本の地で新しい村を作ることになった。のび太の空想動物は空想動物サファリパークへ引き取られることになり、タイムパトロール隊と旅立つ。一同は涙で見送り、壮大な家出は幕を閉じるのだった。
のび太が複数の動物遺伝子アンプルを組み合わせてクローニングエッグに注入することで作ったペット達。本作では原作・旧作では描かれなかったそれぞれの個性が振り分けられており、監督の八鍬が飼っている三毛猫がモデルとなっている。騎乗担当メンバーも少し変わった。移動中にドラえもんの意向によって一旦離れ離れになってしまうが、遭難したのび太が気を失う直前に吹いた犬笛に反応して彼のもとに駆け付け、ドラコを中心に3匹で囲むように寄り添い一晩中のび太を温め続ける(原作・旧作では駆け付けたのは翌朝)。その後、のび太と共にドラえもん達を助けに駆け付ける。ギガゾンビとの決戦後で、タイムパトロール隊の隊長の「架空の動物はどんな時代にも存在してはいけない」という法令に基づき、のび太に別れを惜しまれつつ空想動物サファリパークへ引き取られることになる。
監督は『ドラえもん 新・のび太の大魔境 〜ペコと5人の探検隊〜』(2014年)を手掛けた八鍬新之介。本作では『ドラえもん 新・のび太と鉄人兵団 〜はばたけ 天使たち〜』(2011年)より担当していた清水東に代わり脚本も兼任する。監督が脚本を務めるのは、『ドラえもん のび太の恐竜2006』(2006年)以来であり、制作過程で脚本担当者との調整時間を短縮する狙いもあって八鍬が自ら執筆した。
また、『のび太の宇宙英雄記』の監督である大杉宜弘がオープニング原画、『新・のび太と鉄人兵団 〜はばたけ 天使たち〜』のキャラクターデザインを務めた金子志津枝がエンディング原画をそれぞれ担当している。金子は2011年にシンエイ動画を退社しフリーランスとなったため、映画ドラえもんシリーズには5年ぶりの参加となる。
主題歌は山崎が本作のために書き下ろした。メロディーに飛翔感、歌詞にのび太の成長を表現している。主題歌の制作にあたり、1989年に公開された第1期の日本誕生を観て、本作のイメージをつかんだという。2016年2月26日から4月22日まで「ウンタカダンス」に代わり、テレビアニメのエンディングとして放送された。なお、今作から『ドラえもん のび太の宇宙小戦争 2021』(2022年)まで6作品連続で、男性アーティスト(グループも含む)が映画主題歌を担当した。
本作では、『のび太の宇宙英雄記』で用いられたテレビアニメ版と同じく均一の描線から『新・のび太の大魔境 〜ペコと5人の探検隊〜』までアニメ第2作第2期シリーズ映画の特徴でもあった鉛筆のタッチと筆圧の強弱を意識した描線に再変更された。また、美術背景は『新・のび太の大魔境 〜ペコと5人の探検隊〜』に引き続き清水としゆきが担当し、テレビアニメ版に近い作風で描かれている。また、旧作にはなかった、のび太の両親がのび太を心配したり、のび太の3匹の架空動物との強い結びつき、タイムパトロール隊長がのび太のある悲しみを理解し、思いやるなどといった、各登場人物が心情を想う描写も挿入されている。更にタイムパトロールが終盤の展開に強く関わった原作・旧作から、今作ではラストバトルが改変されて主人公であるドラえもんがギガゾンビと直接戦ってしっかり決着をつけたり、途中でドラえもんらとはぐれてしまったのび太が自らの力で立ち上がろうとするなど、ドラえもんやのび太たちが自力で困難を乗り越えていく姿が描かれている。旧作・原作では名前のみ登場だった、スネ夫のママとしずかのママも台詞無しで登場したが、旧作・原作にあった先生の登場場面がカットされている。
原作および旧作には名前しか登場しないドラミが登場する。彼女が映画に登場するのは『ドラえもん のび太のひみつ道具博物館』(2013年)以来3年ぶり。一方で、オリジナルキャラクターの登場しないリメイクは『のび太の恐竜2006』以来となる。
旧作の古生物への入れ替え・代役が行われており、毛犀、ワニ、サーベルタイガーが、順に野牛、オオサンショウウオ、ホモテリウム(いずれも現生種ではなく古代種)に変わっている。また、旧作同様、トキが登場しており、ジャイアンがトキの絶滅を心配をするシーンがある。
『ドラえもん のび太と緑の巨人伝』(2008年)以来8年ぶりに挿入歌がなく、そのかわりに本作では主題歌である「空へ」とオープニングテーマの「夢をかなえてドラえもん」をオーケストラ風にアレンジした劇伴が挿入されている。
過去の映画をオマージュした場面や描写、台詞がいくつか登場しており、特に『のび太の恐竜2006』を意識した物が多い。
本作は過去のリメイク作品と同様、新作書下ろし漫画が一切ない。他リメイクにはアナザーストーリー(超特別編)や四コマ漫画があるのだが、本作にはそういう漫画が全くない。
映画のタイトルロゴデザインや宣伝スタイルが『のび太の宇宙英雄記』までの物とは一線を画した物となっているのも大きな特徴である。「映画ドラえもん」の「映画」の部分が映画フィルムをイメージしたデザインに変更されたほか、「日本誕生」の文字部分にいたっては荘厳なイメージでデザインが施されている。ポスターなどに使用されるキービジュアルはイラストレーターの金子ナンペイが原画の仕上げを担当し、リアルタッチで濃い画風を生かした独特の雰囲気を持つビジュアルへと仕上げた。宣伝ポスターについても前述のキービジュアルを使用した物のほか、2種類の横長式の物が存在する。こちらは映画のロゴと同じく立体的に描かれた赤い円を中央に配し、ドラえもんの鼻としっぽの部分を再現した非常にシンプルなデザインとなっている(この鼻としっぽにはのび太たちのシルエットが映りこんでいる)。前者が白を基調に、後者が青を基調としている。
ゲスト声優は新日本プロレスの棚橋弘至と真壁刀義、お笑い芸人の小島よしおの3人。本作ではクラヤミ族役を務めるほか、子役のエヴァとともにスペシャル応援団「ウンタカ!ドラドラ団」を結成。応援ソングの「ウンタカダンス」がテレビアニメ『ドラえもん』のエンディングテーマとして2015年10月30日から2016年2月19日と同年4月29日より放送された。
第2期の映画では恒例となっている、エンドロール後のおまけ映像(次作の予告)の内容は、一面に覆われた氷の上にエスキモー姿のドラえもんが立ち、氷の下(地下)にある何らかの建造物が映ったところで2017年春の最新作の公開が告知された。2016年7月15日に最新作のタイトルが『ドラえもん のび太の南極カチコチ大冒険』であることが発表された。
全国374スクリーンで公開され、2016年3月5、6日の初日2日間で興収6億3703万5600円、動員54万4816人となり、映画観客動員ランキング(興行通信社調べ)で初登場第1位を獲得。5月5日までの62日間で動員355万9407人、興収40億3714万8300円を記録(東宝調べ)し、アニメ第2作2期シリーズとしては最高記録であった『のび太のひみつ道具博物館』(2013年)の39億8000万円を上回った。最終興行収入は41億2000万円となった。
2016年8月10日にDVD・ブルーレイの発売とレンタルが開始された。初回生産分には「エンディングイラスト・ポストカードセット(10枚組)」が封入される。
本作の宣伝を目的とした応援ソング。テレビアニメ『ドラえもん』の2015年10月30日放送分から、期間限定でエンディングテーマとして使用されている。舞台は7万年前で、出演者は本編で登場する「クラヤミ族」という設定で原始時代を彷彿とさせる衣装を身にまとっている。毎回、ドラえもんとのび太がタイムテレビで7万年前の世界を見ていると、タイムテレビの画面の奥で突如、ウンタカ!ドラドラ団らが「ウンタカダンス」をはじめていたが、2016年1月15日放送分からは歌詞が異なるバージョンが使用され、1月22日放送分よりドラえもんらは登場せず直接「ウンタカダンス」の映像が放送されるようになった。2月24日、ユニバーサルミュージックよりCD+DVDのパッケージが発売。
本作の宣伝を目的に結成されたもので「ウンタカダンス」のほかに棚橋と真壁、小島は映画本編の声優にも挑戦している。また、映画に登場するキャラクター・ツチダマが着ぐるみ姿でダンスに参加しており、アニメのエンディングテロップの「ウンタカ!ドラドラ団」の欄に「ツチダマ」と表記されている。
藤子・F・不二雄ミュージアムの企画展として開催。会期は2015年7月10日から2016年6月30日を予定。『のび太の日本誕生』をはじめとする”時空の旅(タイムトラベル)“が登場した藤子F作品の原画を特集・展示。合わせてミュージアムカフェでは『のび太の日本誕生』に登場する「畑のレストラン」を模したメニューなどを追加している。
小学館各誌や各企業で募集。作中でのび太が作るペットにちなんだイラストコンテストで、最優秀賞受賞者は映画のエンドロールで紹介されたほか、金子志津枝によるエンディングイラストでアイディアのペットたちが登場した。
2016年3月11日に映画連動エピソードとして放送された特別企画。『のび太の日本誕生』内では台詞でしか登場しない空想動物サファリパークを舞台に、ドラえもんたちの活躍を描く。「映画ドラえもん 夢のペット誕生コンテスト」テレビ朝日優秀賞受賞者が描いたペットたちがアニメ内に登場していた。
ジュピターテレコムがJ:COMオンデマンドにて『ドラえもん のび太の日本誕生』(1989年)の4Kリマスター版を配信。『映画ドラえもん』シリーズおよびアニメーション映画の本編を4K解像度に対応させたのは本作品が初となる。また、その制作過程を記録した『「映画ドラえもん のび太の日本誕生」4Kメイキング』が2016年2月28日から5月31日までJ:COMオンデマンド他にて配信。
本作の公開を記念して開始した、ドラえもんやのび太たちと会話などができる電話サービス。期間は2016年2月15日から5月31日。大反響による回線混雑のため、新しい電話番号の設置が行われた。
ツチダマのモチーフとなっている遮光器土偶は青森県つがる市館岡地区で発見されており、それに関連づけJR五能線木造駅の駅名が期間限定で「ツチダマ駅」と呼称。3月20日、ドラえもんは一日駅長に任命されたほか、5月8日まで映画とのコラボレーション企画が行われる。
ポッドキャストのwebラジオ番組。ドラえもんとのび太がパーソナリティーを務め、ゲストとしてしずかが出演。映画の見所紹介やクイズなどを行った。
ゲームアプリ『モンスターストライク』とのコラボ。2015年の『宇宙英雄記』同様、期間限定でコラボイベントを開催している。
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