『少年ジェット』(しょうねんジェット)は、雑誌『ぼくら』に連載された武内つなよしの漫画作品、およびそれを原作とするテレビドラマである。
漫画、テレビドラマともども人気を集め、昭和30年代のヒーローとして、現在も根強いファンを持つ。
名探偵・船越宏(ふなこし ひろし)の助手である少年ジェットこと北村健(きたむら たけし)は白いマフラー姿でオートバイにのり、シェパードの愛犬シェーンとともに国際スパイのジャック・ジェームスや怪盗ブラック・デビルなどの悪人たちに立ち向かう。ジェットを見守るのが私立探偵の船越と警視庁の荒川課長である。漫画版では船越は「紅さそり」冒頭で殺害されるが、テレビ版ではアメリカに勉強に行くという設定で姿を消す。ジェットの武器は拳銃に似た「スーパーコルト」、必殺技は「ミラクルボイス」。少年ジェットは正義の味方であるので、悪人といえども決して殺さず、スーパーコルトは引き金を引くと相手をしびれさせ、ミラクルボイスも「ウー、ヤー、ター!」と大声を出して震動を起こし敵を失神させる技である。当時、ミラクルボイスは人気を博し、「ウー、ヤー、ター!」は流行語となった。
1987年にはフジテレビの「スーパーテレビ宣言」キャンペーンで鴻上尚史が少年ジェットに扮してコマーシャルに出演している。
講談社の月刊誌『ぼくら』に1959年2月号より3年間連載。『赤胴鈴之助』で大ヒットを飛ばした人気漫画家の武内つなよしが執筆。テレビ版の説明にある通り、もともとテレビドラマ化を前提とした連載である。連載されるや、『ぼくら』の看板漫画となり、度々、付録の単行本になっている。武内がテレビ版の内容にも深く関わっていたため、サブタイトルや登場人物もテレビ版とほぼ同じである。「紅さそり」の巻まで単行本が刊行されている。
1959年3月4日から1960年9月28日まで大映テレビ室製作でフジテレビにて放映された。ヱスビー食品の一社提供番組。また1962年8月5日から1963年1月27日までは続編『新少年ジェット』が放映された。大映テレビ室の第一回作品である。大映テレビ室では第一回作品を制作するにあたり、当時、『赤胴鈴之助』で大ヒットを飛ばしていた漫画家の武内つなよしに原作を依頼した。武内は、雑誌「yy.jockey」1979年9月号に掲載された『少年ジェット』の特集で、当時の模様について説明している。それによると、武内はプロットのほか、ジェットのオートバイ、悪役のコスチュームのデザインも担当し、『ぼくら』への連載も武内が決めたものだった。当時、武内は人気絶頂のころで、「12本くらい連載を持っていたため、漫画の連載とテレビの仕事の両立は大変だった」という。少年ジェットの必殺技・ミラクルボイスは『赤胴鈴之助』の真空切りのような必殺技をという要望から生まれたものだった。
出演者は大映の端役俳優が大半で、レギュラーも含めて有名俳優の出演はほとんどない。子役時代の和泉雅子が度々、違うキャラクターで出演していることが話題になるくらいである。また後にアニメの声優として活躍した北川国彦が憎々しい悪役で出演している。ほかには『月光仮面』にも出演した漫才師の宮田洋容が「紅さそり」に三枚目の役で出演しているのも特筆される。荒川課長に扮した原田詃は、大映の社員俳優で、『敵中横断三百里』など重要な役で出演した作品もある。少年ジェットの宿敵のジャック・ジェーム、ブラック・デビルを演じている高田宗彦は大映の社員俳優。外国人の役を得意とした。
少年ジェットのオートバイには富士産業のラビットマイナーを使用している。製作主任にクレジットされる大鶴秀栄(大鶴日出栄)は、理研映画。劇作家の唐十郎の実父である。
ストーリーは第39回までが、少年ジェットと国際スパイ、ジャック・ジェームスとの対決が描かれる。第39回でジェームスは悪の報いを受け、悪事に利用した赤サソリのために部下と共に滅び去る。第40回より最終回までが、フランスから来た怪盗、ブラック・デビルとの対決が描かれ、デビルに恨みを持つ怪盗、レッドベアやハリケーン博士などのゲストキャラクターも、両者の対決に絡む。デビルは怪盗ではあるが、血を見ることが嫌いで、子どもを無慈悲に扱うことはしない人物として描かれている。原作者の武内は、アルセーヌ・ルパンをモデルにしたと語っている。最終話では潔くジェットに敗北を認めて改心し、今後はジェットの正義の活躍を見守ると手紙を残して日本を去る。原作通りか否かは、漫画版が「黒い影」「鉄面騎士」「赤さそり」部しか単行本化されていないため不明。
テレビは、エピソードが基本的に13回完結のため、漫画版のストーリーを基にしているものの内容は細部で異なる部分がある。当時、刊行された漫画版とテレビ版を比較すると、テレビ版は漫画版のストーリーを引き延ばしている感が強い。漫画版「紅さそり」のエピソードの冒頭では、ジェットの師でもあった船越探偵が、荷蛭に殺害される。荷蛭は自分を殺害してミラクルボイスの契約金を横取りしようとした者たちに復讐しようと考え、ジェットを拉致してミラクルボイスを会得させる。だがジェットはミラクルボイスを使って逆に荷蛭たちを倒して船越の仇を討つ。当初の宿敵であったジェームスは零落した姿で登場し、荷蛭に便乗してジェットを殺害しようとするが失敗し逃げ去る。テレビ版の冒頭では、荒川課長が、アメリカに勉強に行った船越探偵のかわりに自分がジェットを見守ることを決意する場面がある。テレビ版では宿敵のジェームスの出番が多く、荷蛭の復讐に便乗して彼になりすまし、ミラクルボイスの特許を学者たちから奪い巨額の利益を得ようとする。荷蛭はジェットに助けられて改心し、逆に念力で巨大なサソリを登場させてジェームスの息の根を止める。
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