羽後町(うごまち)は、秋田県の南部に位置する町である。キャッチフレーズは「緑と踊りと雪の町」。
周囲を山に囲まれ、古くは小野寺氏の城下町として発展した。県内屈指の豪雪地帯 であり、山間部の積雪量は2メートルを超えることもしばしばである。主要産業は農業で、米ではあきたこまちの生産量が多い。黒毛和牛に代表される畜産も盛んである。県南でも最大の観客動員数がある「西馬音内の盆踊」は日本三大盆踊りと称される。
2002年(平成14年)に湯沢市・雄勝町・皆瀬村・稲川町・東成瀬村との合併の話があったが、羽後町は県内でいち早く合併に加わらないことを決断し、町議会もそれを承認したことが注目された。国による地方の切り捨てに反発すると同時に、湯沢市が背負う莫大な負債を負担することに対する危惧と町内の伝統文化の衰退を懸念したことによるものだった。
西馬音内本町通り商店街では江戸時代からの伝統がある朝市が定期的に開かれている。中心市街地の空洞化が進んでおり、シャッター通りと化している。
町内の狭いエリアに飲食店、居酒屋、パブが点在する。なかでも蕎麦屋は多く、ガイドマップなどでも「西馬音内そば」として取り上げられている。「弥助そば」はその代表格である。
現存していないが羽後病院の旧病棟(1948年(昭和23年)完成)は建築家・白井晟一が初めて設計した公共建築であり、秋田で手がけた初めての仕事であった。現在の病院は3代目である。
町内を鉄道路線は通っていない。鉄道を利用する際の最寄り駅は、JR東日本奥羽本線湯沢駅。
湯沢駅の3番ホームから雄勝線の線路が出ていた。西馬音内駅は羽後病院そばのAコープ跡地にあったが、線路はすべて撤去されており往時を偲ぶことはできない。廃線後は梺駅跡にプラットホームと電車が1両保存されているほか、客車3両が博物館明治村(愛知県犬山市)に運ばれて現存しており、村内を走る蒸気機関車の客車として活躍中である。
羽後交通が上記の雄勝線の代替として湯沢市街地と町内の間に路線バス(西馬音内線)を運行するが、運転間隔は1 - 2時間に1本ほどにとどまるほか、土日祝日は運行本数が半減する。町内の同路線沿線以外の地域における公共交通は登録制・予約制の「うごおでかけバス」「うご乗合タクシー」のみであり、外部から訪問する場合はタクシーかレンタカーなどの方が利便性が高い。
町内に高速道路は通っていない。町の最寄りインターチェンジは湯沢横手道路(秋田自動車道に接続)湯沢IC。
羽後町には古くからの伝統行事が多いだけでなく近年になってからも数多くのイベントが企画されるなど、町民を中心にしたお祭りが盛んである。かがり美少女イラストコンテスト(かがり火天国)のような斬新なイベントも多い。また県内でも有数の文化財を残す町として知られ、文化財保存の実績は県内でも極めて高い。建築物や伝統芸能が数多く残されているのが特徴である。
三輪神社は本殿(室町時代)境内社須賀神社本殿(桃山時代 - 江戸時代初期)のほかにも、鐘楼や境内社八幡神社が江戸時代の建造物である。
鈴木家住宅は東北地域最も古い部類に属する中門造りの民家であり、東北鈴木姓発祥の地。主屋のほか大正時代に建てられた土蔵も重要文化財に追加指定された。また、周辺地域にも茅葺の古民家が多数現存する。いずれも、近世以前の古建築が少ない県内では希少な遺構である。
西馬音内の盆踊は毎年10万人以上の観光客が訪れ、開催時期にはJR湯沢駅まで臨時列車が運行されるほどである。この踊りを一躍有名にしたのが『ニュースステーション』の生中継で、全国的に知られるようになり観光客が急増した。そのため、観客と踊り手の場所の確保が困難になるなど新たな問題も浮上している。
羽後町は茅葺き屋根の古民家が秋田県内で最も多く残されている町として知られている。その数は100棟以上になり、鈴木家住宅のように重要文化財の指定を受けているものもある。現在も生活の場となっているものがほとんどで、グリーンツーリズムの広がりとともにその価値が見直されてきている。観光地として整備されるまでにはいたっていないがテレビ番組『田舎に泊まろう!』で榎木孝明が町内の阿部家に宿泊するなど、メディアで取り上げられることも増えてきている。
羽後町では美少女イラストを用いたイベントや商品が次々に生まれ、話題となっている。地域興しの観点からも注目を集めており、埼玉県北葛飾郡鷲宮町(現・久喜市)の事例と並んで取り上げられることが多い。
事の始まりは町内の書店「ミケーネ」の2階にある学習塾「ガロア」で、イラストを描くのが趣味の地元出身の男性、山内貴範氏(現在は東京都在住)のプロデュースによって、数年前から小鳥遊つばさや真木ちとせがイラストを描いたチラシが発行され、密かな話題になっていたことであった。
これに目を付けた地元銀行の支店長が、山内と共同で、2007年(平成19年)7月7日、「よ市」(2006年)という祭りをリニューアルした第1回「うご夏の夢市 かがり火天国」の立ち上げに関わった。その祭りのイベントの一つとして、全国から西馬音内盆踊りをテーマにしたイラストを募る「かがり美少女イラストコンテスト」が行われた。原画家・山本和枝の来町が大きな話題となった。2008年(平成20年)6月28日には西又葵を招待して2回目が、2009年(平成21年)7月11日には宇奈月満を招待して3回目が、それぞれ開催された。第2回の開催に合わせて製作された町の観光宣伝ポスターにPOPがデザインした「かやたん」と「うごいす」というキャラクターが登場した。コンテストは2011年で第5回目となる。なお、第5回目の結果は下記のとおり。
さらに加えて、山内らによってキャラクター商品の開発が始まり、西又、樋上いたる、兎塚エイジらを迎えた「スティックポスターin羽後町」が発売された。翌年には第2弾も発売され、こげどんぼ*、Na-Ga、風上旬らが参加している(スティックポスターは、村の中心部にある「西馬音内盆踊り会館」の玄関で全種類確認することができる)。なかでも、スティックポスターを手がけたことがきっかけとなって西又が手掛けたJAうごのあきたこまちや菅原酒店の焼酎「花嫁道中」はネット上で話題になった。なお、ポスターの内容は下記のとおり。これ以降ポスターの内容表記については、商品名(会社または店舗名/種類)『作者名』とする。
2009年に、山本ケイジ、江草、みけおうらが参加した「羽後町古民家ポスター」が発売されたり、こげどんぼ*が西馬音内盆踊りをイメージしたキャラクター「うごボン」を制作したりしている。また、江草のイラストを使用した、「鈴木家謹製米」が鈴木家住宅より発売された。これは和歌山県日高郡みなべ町のみなべ川森林組合とのコラボ商品で、袋にはびんちょうタンも描かれている。7月6日に、かがり美少女イラストコンテスト、スティックポスターin羽後町、美少女イラスト入りあきたこまちと、これまでの企画の経緯を書いた 山内貴範 著「町おこしin羽後町」が発売。さらに10月24日には、飯沢地区で「美少女イラスト秋まつり@羽後町」が開催された。コスプレや物販、声優のみなかみ菜緒のライブ、こげどんぼ*と江草天仁のトークショーも行われて賑わった。なお、羽後町古民家ポスターの内容は下記のとおり。
2010年に、羽後町は全国でも有数の、美少女キャラクターをあしらった商品が発売されている地域である。樋上と西又が町内のカフェレストランのロールケーキのパッケージを、重要文化財・鈴木家住宅の看板を江草と竜騎士07が、書店ミケーネのレジ袋をKEIが手掛けるなど、種類は多い。
なお、JAうごが積極的に起用している西又がメディアへの露出が多いこともあって有名であるが、羽後町内でもっとも長い期間にわたってイラストの仕事を手掛けているのは真木である。また、鈴木家住宅関連のイラストを担当している江草天仁や、スティックポスターやミケーネのレジ袋をデザインしたKEIも多くのイラストを手掛けている。
前述のように、これは個人の趣味から生まれた企画であるため、規模が大きくなるにつれて問題も浮上している。ネット上で若者に人気の企画だが、町の住民の間では、「アダルトゲームの絵を描いている作家に、食品や伝統ある古民家などのイラストをまかせるのはどうか?」という声もある。こうした、美少女キャラクターを好む若者と町全体との「温度差」をどう埋めるかが問題になっている。
なお、2012年のかがり美少女イラストコンテストの中止が、主催者から発表された。山内らかつての主催者側からは、現在主だった企画が行われておらず、西又葵のイラストを使用した商品開発を進めるJAうごなどが主体となっている。
漫画家・矢口高雄が羽後銀行(現・北都銀行)の社員として初めて赴任したのが西馬音内支店であった。
かつては西馬音内酒造が製造していた地酒「若返り」があったが、1994年(平成6年)に廃業。現在、隣の湯沢市の両関酒造で西馬音内の盆踊がラベルの銘柄酒としての名を残している。
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