「冬の花 悠子」(ふゆのはな ゆうこ)は、植草圭之助の自伝小説。本作は別册文藝春秋に発表されたのち、1973年、第70回直木賞候補作となった。
2回テレビドラマ化されており、第1作は1974年5月6日から同年6月24日まで、NETテレビ(現・テレビ朝日)の毎週月曜日22:00 - 22:55(JST)の枠『ポーラ名作劇場』で放映(全8話)。第2作は1990年8月24日にフジテレビのフジテレビの『男と女のミステリー』(毎週金曜日21:02 - 22:52 JST)の枠でそれぞれ放送、1990年版は「終戦45年ドラマスペシャル」として放送、2作とも八木柊一郎脚本、久野浩平演出で製作された。
昭和16年11月、大東亜戦争開戦直前の時。今日こそは真の愛をと圭之助は吉原遊廓に赴き、そこでたまたま一夜を共にした、「紫」を名乗る悠子に深く惹かれ、恋の開花を覚えるまでになった。しかし悠子は吉原を脱出したいと願っており、圭之助は悠子の足抜きを決死の覚悟で手伝い、悠子を救世軍の施設に預ける。悠子は弁護士を介して、吉原での前借金は救世軍の施設で働いて返すと話を付けるが、悠子の体はすでに結核に冒されていた。療養のため、圭之助は悠子を神奈川県南林間の借家に引き取った。その頃戦局は、アメリカ軍が東京上空を空襲するほど緊迫していた。
太平洋戦争のさ中、若き脚本家と薄幸の遊女の愛と死、崩れようとする女の幸せを必死に支えようとする男の思いに一途にすがり付く女。重苦しい日々の中、愚かながら力の限り懸命に生きた青春の明暗が描かれた。
作品中では、今日出海、菊池寛、島津保次郎、原節子、杉村春子ら著名人がそれぞれ実名で登場した。1990年版(第2作)でヒロイン・悠子役を務めた十朱幸代は、父(十朱久雄)から「いい話だから」と勧められて本作を読んだことがあり、「やりたい役だった」と悠子役が念願の役でもあったことを明かしている。
1990年版の本作は、1991年に『第8回ATP賞』にて『ベスト22番組』に選出された。
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