『花束みたいな恋をした』(はなたばみたいなこいをした)は、2021年1月29日に公開された日本映画。 監督は土井裕泰、菅田将暉と有村架純のダブル主演。脚本家・坂元裕二のオリジナル脚本による映画で、主人公の男女による5年間の関係性の変化を描く。略称は「はな恋」。
2019年10月30日に映画のタイトルとクランクインが発表された。
2017年にとある授賞式で、菅田将暉と脚本家の坂元裕二が顔を合わせた際に2人きりで話す機会があり、その話の中で『問題のあるレストラン』に菅田を起用していた坂元が「また一緒に仕事がしたいね」と声をかけ、後日、菅田が「ラブストーリーをやりたい」と申し出たことで菅田を軸にした恋愛映画の企画がリトルモアのプロデューサーの元で動き出し、相手役は菅田と同世代で坂元脚本の『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』において主演を務めた有村架純、監督は菅田、有村、坂元と映像作品の制作経験があり3人と縁の深い土井裕泰が務めることになった。
坂元は舞台挨拶において「もし、あの時(菅田が)『サスペンスがやりたい』と言っていたら、この映画はサスペンスになっていました」と冗談でコメントしている。
制作発表時において、坂元は「憧れでも懐かしさでもない、現代に生きる人々のラブストーリーを描きたいと思った。この物語は2人の男女がただ恋をするだけの映画であるが、出会った2人の5年間の恋模様を純粋に描き出したつもりだ」とコメントを残している。
恋人同士の5年間を演じた菅田と有村は撮影中、遠慮せずに距離を縮めた。有村は「大切だったのは、芝居の場でどうこうするというよりも、それ以外の部分で、どこまで時間を共有できるかということ。ほぼ毎日、朝から夜までずっと一緒にいたんですが、約1カ月半という撮影期間で、5年分の光景を演じなければなりません。だからこそ、互いに歩み寄っていった部分はあると思います」と言い、菅田も「時間の共有――それでしかなかったんです。何気ない会話のなかで『こういうものが好きなんだな』『それは、よくわかる』『それはちょっとわからない』なんて思いが交わされていくじゃないですか。麦と絹には、それが必要だった」と語っている。
作中に登場する人物やカルチャーについて坂元は、友人の知り合いに関するある具体的な2名を対象にした取材や会話の中で聞いた発言や趣味嗜好を大きな軸に、その人たちと同世代の人のインスタ、さらにその同世代である何人かの人たちと直接会話や取材をした時の内容から着想を得る形で人物像とストーリーを造形しており、そのため主人公二人の麦と絹は「友達の友達ぐらいにいそうな具体的な個人」という距離感で描かれている。
また、本作品の広告や予告において使用されたAwesome City Clubの「勿忘」は、「本編の解釈の中の一つ」というインスパイアソングとして映画の完成後に制作されたため、本編やエンドロールでは一切流れていない。
2020年の某所某日。あるレストランにおいて恋人のような雰囲気の若い2人が、1つのイヤホンを片方ずつ共有して同じ音楽を幸せそうに聞いている。それを見ていた別々のテーブルに座る山音麦と八谷絹は苛々としたやけに感情的な様子でイヤホン共有の是非について若いカップルであろう2人に対するどこかで聞いたような内容の批判と蘊蓄をそれぞれの同伴者に語り始める。「あの子たち、音楽、好きじゃないな」「音楽ってね、モノラルじゃないの。ステレオなんだよ。イヤホンで聴いたらLとRで鳴ってる音は違う」「片方ずつで聴いたらそれはもう別の曲なんだよ」。麦と絹、それぞれの同伴者が2人の急な様子の変化に面を食らいつつ、イヤホンを片方ずつ共有して同じ音楽を聴いている2人を擁護するが、余計にヒートアップした麦と絹はイヤホンを共有している見ず知らずの2人へ上記の様な批判や蘊蓄を指摘しようかとほぼ同時に立ち上がった直後、2人は目が合う形で互いの存在に気がつく。固まったように立ち尽くしながら一瞬無言で見つめ合い、それによって冷静さを取り戻した2人はそれぞれの同伴者が居るテーブルへ何ごともなかったように大人しく戻っていった。別々のテーブルに座る麦と絹の2人は数年前まで付き合っていた元恋人同士であった。
時は遡り2015年の東京。大学生の麦と絹は、ともに京王線明大前駅で終電を逃したことをきっかけに知り合う。ほかの終電を逃した人々を交えて深夜営業のカフェで語り合った二人は、その場に押井守がいることに自分たちだけが気付いたことで共感し合い、好きな文学や映画、音楽などのカルチャーにおける趣味の傾向がまるで合わせ鏡のようにマッチし似通っていると感じる。
ミイラ展やガスタンクなど、互いの好きなものを紹介し合い、一緒に楽しんだ末に麦から告白し、恋人同士になった二人は大学を卒業後フリーターとなり、調布市郊外の多摩川沿いの部屋を借りて同棲生活を始める。イラストレーターを志していた麦だが、その仕事は安く買い叩かれる。絹は簿記の資格を取り医院の事務仕事を始める。同棲の部屋を訪問した二人の親たちは、彼らに社会人としての責任感を問い、麦は親からの仕送りを絶たれる。麦は二人の生活維持のために営業職として就職し、やがて仕事に忙殺されイラストへの熱意を失う。麦は絹とともに楽しんでいた漫画やゲームの新作にも興味を失い、二人の間の会話やセックスもなくなってゆく。
そんなある日、絹は収入は下がるが好きなことを仕事にできるイベント会社への転職を決める。しかし麦は遊びの延長のようだとその仕事を見下す言葉を放ち、言い争った勢いで絹にプロポーズし、仕事をやめて好きなことをすればいいという。絹はそのプロポーズを拒絶する。
2019年、冷めきった関係のまま、友人の結婚式に招待された麦と絹は、その後ファミレスで別れ話をするが、麦は土壇場で別れたくないと言い出し、結婚し恋愛感情が失われても長年連れ添っている夫婦のように、家族の関係を続ければいいという。しかしそのとき、近くの席に現れた2人組が、好きなカルチャーについて語り笑いあう姿を見た絹は、何を思ったのか店を飛び出す。麦は絹の後を追って二人は抱擁し、別れを決める。引っ越しまでの3か月間、別れた後の二人は共有の家具や同居猫の行き先を自分たちらしく相談しあい、一緒に好きなものを楽しむ日々を送る。
2020年、冒頭のシーンに戻り、麦と絹はそれぞれの同伴者との食事中、偶然同じレストランで再会する。二人はお互いに名乗らず、背を向けたまま相手に手を振ってその場を離れる。後日、麦がGoogle ストリートビューの画面に、多摩川沿いを歩く自分と絹のかつてのぼやけた姿を見つけるシーンで物語は幕を閉じる。
※本節では映画の中で直接言及される作品のほか、映画内に映り込んでいる作品も記載している。
主人公の人物像を表現するために使用された本編劇中曲である、Awesome City Club「アウトサイダー」「今夜だけ間違いじゃないことにしてあげる」「ダンシングファイター」「Don't Think, Feel」「Lesson」/GReeeeN「キセキ」/きのこ帝国「クロノスタシス」/フレンズ「NIGHT TOWN」/SEKAI NO OWARI「RPG」にCMで使用されたインスパイアソング・Awesome City Club「勿忘」の全10曲を対象にJOYSOUNDオリジナルCM、および課題曲キャンペーンが2021年1月29日から2月28日まで行われた。
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