『Fate/Zero』(フェイト ゼロ)は、虚淵玄による日本の伝奇小説、ライトノベルである。キャラクターデザイン・イラストは武内崇。ノベルゲーム『Fate/stay night』(以下:SN)の前日譚で、SNの10年前「第四次聖杯戦争」を描く。SNの奈須きのこによるシナリオを著者が引き継いでおり、曖昧にされていた疑問点も本作で伏線として回収された:37頁。
全4巻で、TYPE-MOONの「TYPE-MOON BOOKS」より2006年12月29日から2007年12月29日にかけて出版。全6巻の文庫版が、星海社の「星海社文庫」より2011年2月9日から6月10日にかけて出版された。
虚淵とFateシリーズの接点は2002年に遡る。当時、奈須はSNのセイバールートを執筆していたが体調を崩しており、虚淵にSNのうちInterlude(主人公以外からの視点で描かれるパート)を代筆させる案が出ていた。しかしSNを同人ゲームではなく商業ゲームとして開発することが決まって虚淵への発注が困難になったことなどにより、この案は流れる。
その後、SNのファンディスク『Fate/hollow ataraxia』のゲストライターとして、再度虚淵の名が挙がり、武内が本人に執筆を打診したところ、「第四次聖杯戦争を書かせてくれないか」と逆に提案される。数度の打ち合わせを重ね、2004年冬に『Fate/Zero』の第1巻が書き上げられる。そしてSNのスピンオフという性格上、誰でも手に入り易い一般流通には乗せたくないとの虚淵の要望もあり、同人誌形態での発売となった。
コミックマーケット(以下C)71のTYPE-MOONブースにおいて、第1巻が先行発売された。会場限定で設定資料やラフ画などを掲載した特別冊子『material/Zero』、TYPE-MOONのBLACK描き下ろしのしおり、特製紙袋が添付された。翌年の2007年1月13日より同人ショップを中心に委託販売が開始され、秋葉原などでは完売が相次ぎ、再入荷待ちの店舗も出た。
当初は通常の書籍流通には乗せられておらず、ISBNコードも付いていないため、一般書店での取り寄せ・入手は不可能であった。販売形態は一部店舗(同人誌取扱店、ゲームショップ)での店頭販売、およびニトロプラスダイレクトFate/Zero公式通販で通信販売のみだったが、2011年1月から刊行が開始された星海社文庫(星海社)の初回刊行作品の1つとして刊行が開始された。全6巻で、新規イラストが描き下ろされた。
2011年から、テレビアニメ版が放送された。分割2クールで、1クール目は同年10月から12月まで、2クール目は2012年4月から6月まで放送された。テレビアニメ版の派生として、ソーシャルゲーム『Fate/Zero [Next Encounter]』、『Fate/Zero-第四次聖杯戦争展-』などのイベント化が行われた。
真じろうによる漫画版は、『ヤングエース』にて2011年2月号から2017年7月号まで連載された。2017年6月号で本編は最終回となり、7月号には三田誠が脚本を書き下ろした番外編(三田による小説『ロード・エルメロイII世の事件簿』のエピソードに基づく「Another Epilogue」)が掲載された。その他のスピンオフ漫画については#漫画を参照。
セイバー役の川澄綾子、間桐桜役の下屋則子はアニメイトタイムズのインタビューで、本作のテレビアニメをきっかけにしてシリーズに女性ファンが大幅に増加したと述べている。川澄曰く「今までお客さんの9割が男性の方だったのに、女性の割合がものすごく増えたんですよ。例えばイベントでは『問おう、あなた達が私のマスターか』という台詞を言う機会もあるんですが、最初は『うおおお!』っていう野太い声だったのが、『キャー!』って歓声も加わるようになって(笑)」とのこと。下屋も「確かに『Zero』から一気に女性ファンが増えましたよね。あそこが大きな分岐点だったような気がします」と述べている。
日本の地方都市・冬木市では、7人の魔術師、マスターが、伝説上の人物(英霊)をサーヴァントとして召喚して相争う「聖杯戦争」を繰り返してきた。聖杯には、戦いの勝者の願望を叶える万能の力があるとされ、これまで三度の聖杯戦争が行われてきたが、聖杯の力を行使できた者はなかった。
『TYPE-MOON × ufotable プロジェクト』第2弾として、2011年10月より2012年6月まで独立局ほかにて放送された。全25話。分割2クールの放送形態を取ったため、第13話までを第1期として2011年10月から12月まで放送。3か月の休止期間を経て、第2期放送開始前に2週にわたって総集編『Remix I』『Remix II』を放送した後、第2期(第14話 - 第25話)『Fate/Zero 2ndシーズン』が2012年4月から6月までが放送された。原作をTYPE-MOON、製作をアニプレックス、制作をufotable、音楽を梶浦由記が担当するなど製作陣のほとんどが『劇場版 空の境界』からの続投である。
アニメ化企画は原作1巻が発売された直後の2007年。アニプレックスのプロデューサー岩上敦宏がTYPE-MOON代表の武内崇に提案。その際、武内は「アニメ化はまだ早い」と一度アニメ化を断る。その後、原作4巻が発売された後、武内から改めて「映像化を目指したい」と相談を受け、2008年に企画が始動した。この時点でufotableが制作を担当することはすでに決定していた。TVアニメとなった理由は「毎週、続きが楽しみになるような作品にする」ためである。『Fate/Zero』をアニメ化する企画過程で岩上が虚淵に持ちかけた企画が『魔法少女まどか☆マギカ』である:108頁。
脚本会議・アフレコ収録には原作者の虚淵玄が参加した。また、『Fate/stay night』原作者の奈須きのこはアドバイザーとして参加。最終話のバーサーカー関連のことについては自らもシナリオ打ち合わせに参加した。虚淵は監修のほかにBDBox I・IIの特典ドラマCDの脚本を担当。Box Iは切嗣とアイリスフィールの出会いを描いた前日譚、Box IIは切嗣と士郎の生活を描いた後日譚となる。そのうち、前日譚は第2期のED映像として描かれた。
アニメーション制作を担当するufotableは本作が初の2クールTVアニメ作品となる。制作は脚本制作から撮影まで、多くの作業をufotable社内で行っており、一般的なTVアニメでみられる、グロス請け(他社に数話分の制作をすべて依頼する工程)を行っていない。
キャラクターデザインは『空の境界』でキャラクターデザインを担当したufotable所属の須藤友徳に加えて、新たに須藤と同じ専門学校出身である碇谷敦が参加。二人で作業を分担してデザインを行っている。須藤はセイバー陣営、アーチャー陣営、ランサー陣営のほか、言峰綺礼、間桐桜などの『stay night』に登場する人物を担当。碇谷はライダー陣営、バーサーカー陣営、キャスター陣営、アサシンなどを担当した。
バーサーカーの制作は、大まかなアクションを指示したラフ原画に合わせて、CGと作画を撮影で合成している。
音楽の一部には、映像に合わせて曲を制作する「フィルムスコアリング方式」を採用している。
担当声優はドラマCDと共通である。
本作では、従来放送局ごとに日時に差があるのが一般的であった深夜アニメ作品の放送日を、できるだけ同日に設定するという試みが行われた。また、日本国外でのインターネット配信も日本での放送日と同日に行われている。2011年時点ではインターネットやモバイル端末の発展によって視聴者同士の交流が進んでおり、こうした試みはネットでリアルタイムに情報を得たり交わしたりしながら番組を楽しむような視聴者の需要に応えるものとして注目された。
ニコニコチャンネル内の特設ページでは、全8か国語を字幕(英語、フランス語、ドイツ語、イタリア語、スペイン語、韓国語、中国語・繁体字、中国語・簡体字)付きで全世界(日本を除く)に向けて1週間無料配信を行う。
第1期放送前には各週ごとに登場人物7陣営それぞれを主役にした陣営別CMが7本公開され話題を呼んだ。第1話は1時間SPとなった。理由は第1話のラストに英霊たちの召喚シーンを持ってくるため。放送枠に入らなかった場面も存在しており、それらはBDBOXに特典映像として追加された。また、特典映像としてFateの世界観を解説する「お願い!アインツベルン相談室」が制作された。奈須きのこが脚本、武内崇が絵コンテとして参加している。
ufotable関連店舗ではコラボカフェやリアルタイム視聴会が行われた。また、ufotable運営のアニメイベント「マチ★アソビ」ではトークショーや上映会など様々なイベントが行われる。
2014年、本編にあたる『Fate/stay night』を『空の境界』、『Fate/Zero』に引き続きufotableにより分割2クールTVアニメ作品、3部作劇場アニメ作品として再び映像化されることが発表された。TVアニメの監督は、『Fate/Zero』で第1期OPの絵コンテ・演出などを務めた三浦貴博。『Fate/Zero』第19話の制作終了後、第19話の絵コンテを担当した三浦はTYPE-MOONの武内から依頼された『Fate/stay night [Réalta Nua]』のOP制作に取り掛かる。その後、TYPE-MOON Fes.で公開されたときの観客の歓声がきっかけとなり『Fate/stay night』の制作が決まり、OP監督を務めた三浦が監督に指名された。一方、劇場アニメの監督は『Fate/Zero』のキャラクターデザイン・作画監督、第5話絵コンテ・演出を務めた須藤友徳。以前よりTYPE-MOON作品の大ファンとして奈須きのこにも知られており、劇場アニメ化が決まった際に監督に自ら立候補した。
2019年7月、『Fate/Zero』にて生き残ったウェイバー・ベルベットのその後を描く物語『ロード・エルメロイII世の事件簿』が1クールTVアニメとして制作・放映される。『Fate/Zero』にて監督を務めたあおきえいがスーパーバイザーや演出家として関わり、あおきが取締役を務めるTROYCAがアニメーション制作を務める。『Fate/Zero』を制作したufotableも原画などで本作に関わっている。物語としては、TVアニメ『Fate/Zero』と同じ世界線の物語になる。奈須きのこは当初『Fate/Zero』を「正史」、2017年に『Fate/Zero』は「『Fate/stay night』の前日譚」であると発言した一方で、2014年ゲーム『stay night』の再アニメ化決定の際に『Fate/stay night』は『Fate/Zero』の続編ではなく、完全には繋がっていないと発言し、2015年に『Fate/Zero』は『Fate/stay night』と登場人物や勝敗などの条件は同じだけであるが少し違う世界、『Fate/stay night』と『ロード・エルメロイⅡ世の事件簿』は完全に同じ世界の物語ともしている。
各話のサブタイトルは、Bパート終了時にカウントダウンと共に表示される。過去編となる第18話、第19話では、カウントダウンではなく「sometime, somewhere」が表示された。第25話のAパートラスト(切嗣が士郎と出会った瞬間)でカウントダウンが00:00:00になった(Bパートはエピローグ)。第1話は1時間で放送された。
2012年1月2日にはTOKYO MXにて第1期の一挙再放送が行われ、その中で第十一話がオリジナルエディションとして初放送された。
第1期の初回放送は各局60分放送。
『Fate/ゼロカフェ』を原作とする短編の映画作品で、現時点で2作品ある。
2013年7月13日公開の『劇場版空の境界 俯瞰風景3D』と同時上映の短編作品。『月刊ニュータイプ』2012年9月号から2014年10月号まで連載されたFate/Zeroのキャラクターがディフォルメになって登場する4コマ漫画を映像化。
2016年3月19日より、徳島市にあるUfotable CINEMAでの上映が決定した。
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