日田彦山線(ひたひこさんせん)は、福岡県北九州市小倉南区の城野駅から大分県日田市の夜明駅に至る九州旅客鉄道(JR九州)の鉄道路線(地方交通線)である。
添田駅 - 夜明駅間は平成29年7月九州北部豪雨の影響で被災したため、鉄道の運行がなく、JR九州バスの運営による日田彦山線BRTが代替交通となっている。
平尾台・香春などから産出される石灰石や添田地区の石炭を運ぶために敷設された。筑豊東部の田川市を経て日田市と北九州市を直結している。JR九州主催のイベントである「JR九州ウォーキング」の一環として同線が所属する7自治体の協力によるイベント「ひたひこウォーキング」が毎年春と秋に開催されている。
城野駅 - 添田駅間は旅客営業規則の定める「福岡近郊区間」に含まれている。また、城野駅を除いてSUGOCAでの乗降はできないが、城野駅 - 田川後藤寺駅間を経由して後藤寺線新飯塚駅以遠を利用する場合は、SUGOCAでの乗車で通過すること(途中下車なしにSUGOCAエリアまで通り抜けること)はできる。2023年8月27日までは添田駅 - 今山駅間も福岡近郊区間に含まれており、全線でSUGOCAでの乗車で通過利用が可能であったが、翌28日に日田彦山線BRTが運行開始したことで、田川後藤寺駅 - 夜明駅間でSUGOCAの通過利用は不可能となった(運賃計算上の最短経路としては引き続き適用される)。
リアルタイム列車位置情報システム「どれどれ」対応路線(小倉駅 -添田駅間)であり、スマートフォンアプリ「JR九州アプリ」により、リアルタイムの列車位置情報が閲覧できる。
2018年9月28日より、小倉駅 - 田川後藤寺駅間で駅ナンバリングを実施している。路線記号はJI、ラインカラーは茶色である。
全線が本社鉄道事業本部直轄となっている。
特急・急行列車などの優等列車はなく、普通および快速列車のみである。また、添田駅 - 夜明駅間は平成29年7月九州北部豪雨により被災しBRTによる運行が行われている。
大半の列車がワンマン運転であり、一部の列車に車掌が乗務している。
路線の起点は城野駅だが、城野駅を通る日田彦山線の定期列車は全て日豊本線の小倉駅発着で運行されている。小倉駅 - 田川後藤寺駅間は1時間に1 - 2本、田川後藤寺駅 - 添田駅間は1時間に1本程度運行されている。小倉行きの一部の列車は西小倉駅で鹿児島本線の折尾・博多方面への列車と対面乗り換えが図られているが、朝夕の数本以外は西小倉駅での鹿児島本線との乗り換え・接続は考慮されていない。
小倉駅 - 添田駅間の全区間を通して運転される列車と、小倉駅 - 田川後藤寺駅間の列車、田川後藤寺駅 - 添田駅間の列車がある。ほかに、田川伊田駅 - 田川後藤寺駅間の1駅間を運行する列車が早朝1往復、香春駅 - 添田駅間に平日朝1往復、後藤寺線との直通列車が夜間2本運行される。被災前はこの他にも早朝1本のみ田川伊田駅から久大本線日田駅経由で大分駅まで直通する列車も設定されていた。これは、2017年3月時点で日田彦山線経由の列車が日田駅から由布院・大分方面に直通する唯一の列車となっていた。
2007年3月18日のダイヤ改正以降は、毎朝通勤時間帯に添田発小倉行きの快速列車が上り1本のみ運行されている。この快速列車は、石原町駅で田川後藤寺駅を先発した上り普通列車を追い越す形で緩急接続していた。この運行形態は2017年3月4日のダイヤ改正で廃止され、追い越しや緩急接続も無く、先発の普通列車が小倉駅に先着するダイヤとなり、後続の快速列車は石原町駅から小倉駅まで各駅に停車するように変更された。また、車内や駅の案内放送でも、石原町駅以北では普通列車として案内されている。なお、サボは2017年のダイヤ改正前から使用していた物をそのまま使用しており、快速区間は特に記載されていなかった。なお、2018年3月のダイヤ改正から、行き先表示位置が貫通扉上の方向幕に変更になったため、サボは使われなくなった。久大本線復旧の2018年7月14日のダイヤ修正で新たに西添田駅・池尻駅・一本松駅に停車するようになり、通過駅は採銅所駅・呼野駅のみとなった。
この区間は前述の通り九州北部豪雨で被災したためBRTによる運行が行われている。
路線の終点は夜明駅だが、被災前は彦山駅 - 夜明駅間を通る全ての定期列車が久大本線の日田駅発着で運行されていた。この直通分に関してもBRTが代替となっており、久大本線に並行してBRTが運行されている。
気動車のみ。
石田駅(水町信号場) - 香春駅間は、小倉鉄道(こくらてつどう)が1915年に開業した区間である。小倉鉄道は、東小倉駅 - 上香春駅(現在の香春駅) - 大任駅 - 上添田駅(現在の添田駅)間を開業していたが、この路線は1943年に戦時買収により国有化され添田線(初代)となった。
田川伊田駅 - 田川後藤寺駅 - 西添田駅間は、豊州鉄道および同社を合併した九州鉄道が1903年までに開業させた。1907年の国有化後は、田川線の一部となった。
西添田駅 - 夜明駅間は1937年から1956年にかけて延伸開業した区間である。西添田側は田川線の延伸、日田側からは彦山線(ひこさんせん)として開業し、全通後は東小倉駅 - 大任駅 - 夜明駅間が日田線(ひたせん)となった。
1956年11月には、起点側(城野駅付近)で線路の付け替えが行なわれた。小倉鉄道が敷設した線路は、日豊本線の城野駅 - 曽根駅(現在の下曽根駅)間を乗り越し、東小倉駅へ直行する形であったが、石田駅(水町信号場) - 城野駅間に短絡線を敷設し、日田線列車は城野駅から日豊本線に乗り入れ、小倉駅に向かうようになった。同時に東小倉駅 - 石田駅間は貨物線となり、1962年に廃止された。
1957年10月には、香春駅 - 伊田駅(現在の田川伊田駅)間の支線が開業し、現在のルートが完成した。1960年に田川線の伊田駅 - 後藤寺駅 - 添田駅間を編入すると同時に香春駅 - 大任駅 - 添田駅間を添田線(2代)として分離し、城野駅・東小倉駅 - 伊田駅 - 夜明駅間が日田彦山線となった。なお、この時に分離された添田線は、第1次特定地方交通線に指定され、1985年に廃止された。
この路線は門司港駅・小倉駅から久大本線由布院駅方面への短絡線となっていたことから、1960年代より1980年代まで、「あさぎり」「あきよし」「はんだ」「日田」「ひこさん」といった準急列車・急行列車が運行されていた。しかし、北九州工業地帯の衰退に伴う北九州市の地位低下や、日田市など大分県西部の福岡市との結びつきの強まりなどによって大分県西部と北九州市の間の旅客流動が減少したこと、さらには大分自動車道の開通で高速バスや自家用車への旅客転移が進んだことから、1980年に急行列車は快速に格下げされ、さらに各駅停車化という形で順次廃止された。
2017年(平成29年)7月5日から6日にかけて発生した九州北部豪雨により、彦山川沿いを走る添田駅以南で甚大な被害を受ける。第二彦山川橋梁(添田駅 - 歓遊舎ひこさん駅間)は橋脚が傾き、第三彦山川橋梁(豊前桝田駅 - 彦山駅間)も変形した。また、筑前岩屋駅構内や釈迦岳トンネル(彦山駅 - 筑前岩屋駅間)では土砂流入が発生し、大行司駅では駅舎の倒壊や構内の路盤崩壊、大行司駅 - 大鶴駅間では盛土の流出なども生じた。また、直通運転先の久大本線でも光岡駅 - 日田駅間で花月川橋梁が流失するなどの被害を受けたこともあり、添田駅 - 夜明駅間が全面運休となった。
JR九州社長の青柳俊彦は2018年10月2日から4日にかけて行われた複数の報道機関とのインタビューの中で、被災区間の復旧に関し「今回のような大きな災害があった場合、ゼロから鉄道を造るようなもの」「復旧まで年単位、もしくはそれ以上の期間になるのでは」とした上で、JR九州単独での復旧は難しいとする方針を明らかにした。その上で、国や沿線自治体が一定の費用を負担する形での鉄道による復旧や、バスやタクシーなどの鉄道以外での交通手段確保も選択肢に含めて、関係機関との協議を進める方針を示している。この方針を示した背景として、各報道機関では、同区間の輸送密度が299人と同社内で5番目に少ない区間となっていることを指摘しているほか、『毎日新聞』は株主から赤字路線対策の要求があると報じている。
その後に開催された「日田彦山線復旧会議検討会」の中で、復旧費については災害復旧事業と合併施行することなどにより費用の一部を国や沿線自治体が負担することでおおむね合意が得られているものの、その後の維持管理費用についてJR九州は線路などの鉄道設備も自治体側が買い取り、設備管理の負担を軽減しながらJR側が運営を担う「上下分離方式」を提示。沿線自治体は鉄道での復旧を希望するものの、大幅な費用負担に強い難色を示しており、これを受けてJR九州の青柳社長は8月27日、「きちんと維持していく方策が確認できれば、鉄道でやりたい。だが、鉄道を安全に維持するにはコストがかかる。真っ向から『一銭たりとも出さない』と言われるのは厳しい」「話が進まないようであれば、『鉄道維持は難しい』と地元の皆さんがおっしゃったという認識になる」「交通ネットワークの維持を考えれば、輸送モード(手段)の変更は案としてある」と述べ、沿線自治体の費用負担協議が決裂した場合には鉄道による復旧を断念し、バス・ラピッド・トランジット (BRT) による復旧方法を提示する意向を示唆した。具体的には、彦山駅 - 筑前岩屋駅間の釈迦岳トンネル内の線路を舗装し、バス専用道路にした上でバスによる交通確保を図る計画であるという。2019年1月17日にはJR九州が、鉄道による復活を希望するのであれば年間1億6000万円の維持費用を沿線自治体に求めるとし、このことについて東峰村・渋谷博昭村長は「同意できる提案ではない。なぜ日田彦山線だけに地元負担を求めるのか分からない。鉄道は全九州のネットワークとなっており、全体をみて考えてほしい」と言及して反発しており、この影響でバス代行輸送が長期化すると見込まれていた。2020年2月12日、大分県日田市でJR九州社長、大分・福岡両県知事など沿線自治体首長が参加した「日田彦山線復旧会議」においても、東峰村長以外はBRT転換を容認した。
2020年5月16日には福岡県の小川洋知事が東峰村を訪れ、村長の渋谷や村議会の佐々木紀嘉議長らに対して「鉄道復旧を目指してきたが力が及ばなかった。村の思いに応えられず申し訳ない」と陳謝した。他方で、県側はJR九州提案の彦山・筑前岩屋駅間のみのバス専用道化案に対し、より大分県との県境に近い宝珠山駅までのバス専用道化を求めて交渉する方針も示した。これを受けて村側は鉄道復旧断念の方針を容認する構えであり、これにより3つの沿線自治体すべてがBRTによる復旧で一致したことになる。2020年7月16日にはBRTによる復旧で正式合意がなされ、工事が開始された。
工事は2023年に完了し、同年8月28日に日田彦山線BRT(愛称:BRTひこぼしライン)として営業が再開された。BRTはJR九州を事業主体としつつも、運営は子会社のJR九州バスが行っている(運行の一部は日田バスに委託)。
後に令和2年7月豪雨で被災した久大本線第2野上川橋梁(豊後中村 - 野矢間)の復旧に際して、専用道へ転用されない区間にあたる宝珠山 - 大鶴間の橋桁3基が転用されている。
便宜上、直通運転を行っている日豊本線の小倉駅 - 城野駅間、直通運転を行っていた久大本線の夜明駅 - 日田駅間もあわせて記載する。
*印を付した停車場・信号場は路線廃止前に廃止されたもの。(貨)は貨物駅を表す。
平均通過人員(輸送密度)、旅客運輸収入は以下の通り。
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