『土曜ワイド劇場』(どようワイドげきじょう、Saturday Night at the Mysteries)は、テレビ朝日・朝日放送の週替わり制作により、テレビ朝日系列で、1977年7月2日から2017年4月8日まで毎週土曜日の夜に放送されていた2時間ワイドドラマ番組。通称『土ワイ』。
長時間の放映となる2時間ドラマの先駆けで、当初は90分枠で放送されており、1979年以降は2時間枠への枠拡大を経て、放送されていた。
1977年7月2日に『土曜映画劇場』の後番組として90分枠で開始され、長時間ドラマの先駆けとなった。後年には2時間以上のドラマ枠は珍しくなった(一時は民放5大ネットがすべてこうした番組を持っていた事もある。)が、当時は1時間を超えるドラマは特例であり、NHKが『土曜ドラマ』として数週連続番組を不定期に放映していた程度である。毎週のレギュラー番組としてこれを提供する試みは初めてであった。第1号であると同時に、後発のすべての他局番組よりも後まで同一時間帯同番組名で放送された長寿番組でもある。字幕放送。
当時、『土曜映画劇場』は放送できる作品が底をついて視聴率も低迷、新番組の企画を模索していたときにスティーヴン・スピルバーグ監督のアメリカのテレビ映画『激突!』が、単発の長時間テレビドラマの可能性を示した事が企画の発端だったと言う。NETテレビの外画部で『激突!』等外国映画の購入を担当後、編成開発部に異動した高橋浩は、アメリカ合衆国におけるテレフィーチャー(テレビ用長時間映画)のブームが、日本でも5年遅れで流行ると予測して『土曜ワイド劇場』を企画。制作本数の減っていた日本映画界の人材を活用し、同一番組で複数の外部制作会社に競作させると言う試みで『土曜ワイド劇場』はスタートした。
視聴者層は、F2層(35歳 - 49歳の女性)とF3層(50歳以上の女性)と呼ばれる主婦層が中心で、開始時のキャッチフレーズは「映画館に行けない主婦のためのお茶の間映画館」で、映画ファンをお茶の間に引き留めようとした長時間ドラマだったと言う。作品は旅情サスペンスが主流で旅ブームを先取りし、サスペンス物としてはやさしい犯人当てが特徴であった。
前後のミニ番組で変動はあるが、2012年10月以降は毎週土曜の21:00 - 23:06(JST)に放送されていた。主にミステリーやサスペンス、それにホラーの単発物が多く、シリアスな物からユーモラスな物まで幅広いラインナップを誇っている。
初回の作品は早坂暁作の『田舎刑事』で、主演には映画『男はつらいよ』シリーズで国民的な人気を得ており、早坂の親友だった渥美清がキャスティングされた。当時、渥美は年に2回の『男はつらいよ』以外の出演は殆どなく、テレビドラマの出演は珍しかった為、これも話題になった。作品の評価も高く、この年の芸術祭で優秀賞を受賞している。同作は後に土ワイ初のシリーズ作品となった。
初期は外国人原作物が多く、シリーズ物が少なく(前述の『田舎刑事』シリーズ程度だった。)、山口百恵の『野菊の墓』など文芸物や犯人が主役を行う作品等試行錯誤が続き、当初視聴率的には苦戦していたが、1979年4月から2時間枠に拡大して素人探偵によるサスペンス物 に特化してから視聴率が上昇した。初期の代表作は天知茂主演の『江戸川乱歩の美女シリーズ』。
1982年10月 - 1986年9月には月曜にも『月曜ワイド劇場』という枠が設けられていた。その後1988年4月 - 1991年9月には火曜にも『火曜スーパーワイド』→『火曜ミステリー劇場』として20:00 - 21:48の枠で放送されていた。これもテレビ朝日制作を原則とし、年数本は朝日放送からの制作となっていた。
この番組の好調を受けて、他局でも長時間ドラマが次々と制作され、1981年には2大サスペンスの一角・日本テレビで『火曜サスペンス劇場』がスタートし、さらに1982年にはTBSが裏番組として『ザ・サスペンス』をスタートさせる。出遅れていたフジテレビ でも1984年に『金曜女のドラマスペシャル』をスタートさせ、2015年4月開始の『金曜プレミアム』まで単発番組を続けていた。テレビ東京でも2001年1月に『女と愛とミステリー』がスタート。1980年代前半には2時間ドラマが全盛で8本の枠が存在した。
しかし2000年代以降は2005年11月に日本テレビの『火曜サスペンス劇場』が『DRAMA COMPLEX』→『火曜ドラマゴールド』になった後2007年3月に2時間ドラマ枠撤退、2006年4月にTBSの『月曜ミステリー劇場』が『月曜ゴールデン』→『月曜名作劇場』になった後2019年3月に2時間ドラマ枠撤退、同年10月にフジテレビの『金曜エンタテイメント』が『金曜プレステージ』→『赤と黒のゲキジョー』→『金曜プレミアム』になった後2019年9月に2時間ドラマ枠撤退、2009年4月にテレビ東京の『水曜ミステリー9』が『水曜シアター9』に(2010年9月に枠自体廃止したが2011年10月に復活、2015年10月から『水曜エンタ・水曜ミステリー9』として放送されていたが、2017年3月で終了により2時間ドラマ枠が一旦撤退したが、2020年4月から『月曜プレミア8』枠で月に1~2回の放送として復活)と、サスペンス作品の撤退や映画等も含めた多ジャンルの番組を放送する長時間枠に移行される傾向にあるが、テレビ朝日の『土曜ワイド劇場』はほぼ純粋なサスペンス作品枠となっていた(ただし2011年より『月曜ゴールデン』が再びほぼ純粋なサスペンス作品枠に移行。一方で『金曜プレミアム』はサスペンスドラマの比率が大幅に減少)。2012年に『土曜ワイド劇場』は35周年を迎えた。
当初はフィルム撮影によるテレビ映画が殆ど(ただし第1作『田舎刑事』はVTR作品である)だったが、1982年頃からVTR撮影の作品も本格的に制作されるようになり、その後当初はフィルムで作られた作品もVTRに移行していったが、その一方で「西村京太郎トラベルミステリー」や「高橋英樹の船長シリーズ」など1993年頃までフィルム撮影を続けていた作品もあった(ただし1990年代の作品はフィルム撮影であってもVTR編集されたのが存在する)。2000年代後半からほとんどがハイビジョン制作であるが、この作品の場合、アナログ放送では13:9(→14:9→2010年7月より16:9レターボックス)のサイズで放送される。
番組初期から1980年代半ばまで、裏番組のテレビ三面記事 ウィークエンダー対策として、22:00前後の20分間にはCMを入れず濡れ場やレイプシーンを入れていた。明石家さんまはこれを「10時跨ぎガール」と呼んでいた。また、サブタイトルを視聴率獲得のための武器としており、「全裸」「人妻」など扇情的なフレーズが盛り込まれた長いサブタイトルを新聞欄に載せたり、予告映像にも濡れ場や扇情的なシーンを入れていた。なお、1990年代まではこれらのシーンが含まれた作品がテレビ朝日の「傑作ワイド劇場」などで再放送されていた。
数ある作品の中には、連続ドラマ化した作品(『家政婦は見た!』、『相棒』、『警視庁捜査ファイル さくら署の女たち』、『警視庁・捜査一課長』など)や、反対に連続ドラマから単発化(『赤かぶ検事奮戦記』、『法医学教室の事件ファイル』など)された作品も存在している。
朝日放送制作の作品の中には、事件解決後の人々の場面が視聴者の想像に任せると言う体裁となる作品もある。
2012年10月6日からは15分拡大され、21:00 - 23:06の放送へと変更した。ただ、前週の9月29日は編成上の都合はあるものの、21:00 - 23:06で放送されている。
2016年3月26日をもって、単独番組としての本枠は終了 となり、同年4月2日から単発特別番組新枠『土曜プライム』が開始されたが、『土曜ワイド劇場』はその一企画に降格となり、それ以外のドラマやバラエティーも放送する。なお、新枠でも本枠で見られた月1回の朝日放送制作による放送回が維持される。これにより、月1回ある朝日放送制作の週に必ずしも『土曜ワイド劇場』を放送するとは限らず、当該週に『土曜ワイド劇場』以外のラインナップを放送した月には同枠で『土曜ワイド劇場』の放送がある場合にはすべてテレビ朝日制作となる。
2017年4月8日、『土曜プライム』の終了に伴い、この『土曜ワイド劇場』も単独枠時代も含めて40年の歴史に終止符を打った。最終回の作品は『西村京太郎トラベルミステリー67 箱根紅葉・登山鉄道の殺意』。なお、4月22日から土曜20:54 - 21:54に『サタデーステーション』を開始した こと(2018年4月からは22:10まで放送時間拡大)ならびに同月15日から21:58 - 22:59に日曜未明(土曜深夜)に放送された『あるある議事堂』を改題・リニューアルした『こんなところにあるあるが。土曜・あるある晩餐会』を放送(後者については同年9月で終了)。これに伴い、『土曜プライム』で放送してきた『土曜ワイド劇場』および『土曜ワイド劇場』ではない『土曜プライム』のドラマ作品について、同月9日開始の日曜10:00 - 11:50に新設される2時間ドラマ枠『日曜ワイド』にて放送することを、テレビ朝日が同年2月10日に発表した。また、同枠では同年6月11日から新作も放送しているが、過去作品についてはすでに『ミステリー傑作選』として放送しており、それ以外では『帯ドラマ劇場』の総集編も放送された。また、『日曜ワイド』以外にも新作を放送する枠として、同年3月16日から編期末期首限定で放送される『ミステリースペシャル』枠も用意され、シリーズによっては『ミステリースペシャル』でも『日曜ワイド』でも放送される作品があった(例:おかしな刑事)が、『ミステリースペシャル』は2018年4月1日を最後に終了した。その『日曜ワイド』についても2018年3月25日を以て終了となり、同年4月8日より同じ日曜21:00 - 23:05枠にて、『日曜プライム』を放送開始し、『土曜ワイド劇場』時代のラインナップの新作も不定期で放送されていた。その後同枠は2020年9月27日で終了となったものの、2時間ドラマの新規制作を完全に諦めてはおらず、以降は改編期などを中心に新作を不定期で放送している。また、これらとは別に、2018年10月からは、BS朝日でかつての土曜ワイド劇場と同じ時間帯で本枠の作品を放送する『土曜劇場』が新たに設けられている。
2022年、テレビ朝日は同年一杯で不定期で放送されていた2時間サスペンスドラマ自体の放送を終了することを発表した。
作品によってはDVD版がリリースされることがある。
番組制作はキー局であるテレビ朝日と朝日放送テレビが担当している。90分番組時代はテレビ朝日制作だったが、1979年4月から2時間枠に拡大すると同時にテレビ朝日に加え毎月1回を朝日放送制作とした。編成の都合で朝日放送制作が月2回や月0回になる場合もある。なお、朝日放送の土曜ワイド劇場第1作は、1979年2月放送の『けっぱり先生、仰げば尊し』であり、同年4月には2010年2月まで約31年続いた藤田まこと主演の人気シリーズ『京都殺人案内』の第1作が放送された。
朝日放送が1979年より土曜ワイド劇場の制作に携わるようになったのは、土曜ワイド劇場が90分枠だった時に、22:30 - 23:00枠に30分のバラエティー枠 があったためである。また、朝日放送は腸捻転解消前のTBS系時代において、土曜22時枠で『必殺シリーズ』 を制作していたことから、再度土曜夜のドラマ制作を熱望していたものと考えられる。なお、朝日放送がキー局制作のドラマ枠の一部作品を制作したケースとしては、腸捻転解消前の『東芝日曜劇場』 がある。 朝日放送制作の作品では、土地柄からか関西在住の俳優・女優・タレント・芸人が有名無名、役柄を問わずキャスティングされることが多い。中でも同局のローカル番組の出演者が登場する事が多く、『おはよう朝日です』のレポーターを当時務めていた楳崎静香や『ごきげん!ブランニュ』のレギュラーであるメッセンジャーのあいはらも出演した。
朝日放送制作の場合、共同制作会社の松竹作品は主に京都が舞台となり、それ以外の共同制作会社の作品は東京が舞台となることが多い。
2008年6月7日放送分より、地上波デジタル放送・ワンセグで番組連動データ放送を行っている。
2009年7月18日より朝日放送制作分のみ副音声による解説放送を実施(解説者は和沙哲郎〈当時朝日放送アナウンサー〉だったが、和沙の定年退社後2015年4月担当回からは前塚厚士に交代した。)。再放送でもこれ以降の作品に限り適用される。翌2010年10月2日からテレ朝制作分でも解説放送を開始(解説者はテレビ朝日アナウンサーの野村真季。第1回は『西村京太郎トラベルミステリー・伊豆の海に消えた女』)。
また、これ以前に制作された作品についても、字幕放送用字幕と副音声解説を付加した再放送版が一部作品で制作され、地方局などでの再放送時に放送されている。
ジャンクションは長期に渡って5秒間だったが、2010年4月17日からは、直前番組『天才をつくる!ガリレオ脳研』の司会である城島茂と内田恭子が「『ガリレオ脳研』の後は!」と言ってから、今日の放送内容を説明する形(計15秒)に代わった。
本編のオープニングでは原作者ごとに異なるオリジナルのテーマ曲が使用されており、1996年3月までは主要出演者と共にオープニング最後には、原作者・脚本家・音楽家・監督が画面に登場していた。オープニングに原作者などが登場するのはスタッフを大切にする井塚英夫チーフプロデューサーが決めたことだという。1996年4月からタイトルロゴが変更。
番組のスタート直前、21:00 - 21:02(実質は21:00.30 - 21:01の30秒間)にミニ番組として全国向け(一部地域を除く)に放送されていた見どころ(予告)枠。スタジオからテレビ朝日の女性アナウンサーが今日のこの番組の放送内容の見どころをVTRを交えて紹介していた。後に『今夜の土曜ワイド劇場』へ改題され、スタジオパートは廃止された。
(※「時計の鐘の音が響いた後、女性アナウンサーが放送内容の見どころを紹介」という流れとスタジオセットは裏番組も似たものを採用していた。なお、当番組ではスタジオパートでミステリアス調のBGMが流れていたが、ごく稀に他のBGMに差し替える事があった)
番組のスタート直前、20:58 - 21:00(実質は20:58.30 - 20:59の30秒間。1996年3月30日放送分までは21:00 - 21:02(実質は21:00.30 - 21:01の30秒間))にミニ番組として全国向け(一部地域を除く)に放送されていた見どころ(予告)枠。今日のこの番組の放送内容の見どころをVTRで放送していた。
なお、2016年4月2日からは『今夜の土曜プライム』に改題され、この日開始の『土曜プライム』で『土曜ワイド劇場』以外を放送する際にも原則放送される(ごくまれに放送なしの回があり)。またこの日から放送枠と告知時間は変わらないものの、前CMが1分増えて正式開始時刻が20:59:30に変更され、そのままステブレレスで本編開始となる。
エンディング後の次回予告について、2作品紹介される。
通常は翌週と翌々週の作品で予告VTR(昔はフィルム)の前に「来週の土曜ワイド劇場は」「これからの土曜ワイド劇場は」の一枚画(CG)が出る。
翌週が特別番組(ドラマ・時代劇スペシャルなど)の場合は「来週のこの時間は」となる。また翌々週が特別番組の場合なら3週間後に放送予定の作品が紹介され、特別番組の紹介はしない。
ちなみに特別番組終了後には「来週の土曜ワイド劇場は」として翌週放送予定の作品のみ紹介される。 2015年2月放送分より次回予告は番組本編中の中CM枠 に移動されて、翌週以上の放送作品案内については番組ホームページとデータ放送のみに移行されて、番組内での紹介はなくなった(翌週が特別番組を放送するときは「来週のこの時間は」と字幕表示されて特別番組の紹介を行なっている(エンディング後はそのまま後クレが流れている)。
放送20年目に入った1996年7月6日放送分より、このタイアップ曲によるエンディングテーマが使われる様になった(これと同時に音声もモノラルからステレオ放送になる)。これ以前は作品に因んだ曲や専用のBGMがエンディングテーマとして使われていた。現在も稀にエンディングテーマを流した後に従来通りの選曲を行うパターン(代表例:『家政婦は見た!』)やエンドロール中盤まで作品専用のエンディングテーマを流してからフェードインする形で固定のエンディングテーマを流すパターン(代表例:『京都殺人案内』)もある。ごくまれではあるが、終了した連続ドラマの単発スペシャルを放送した場合など、通常使用するエンディングテーマを一切使用せず、当該連続ドラマと同一のエンディングテーマのみを使用することがあった(例:『特別企画・黒革の手帖スペシャル〜白い闇』)。
クロスネット局のテレビ宮崎(UMK、日本テレビ・フジテレビ系列とのトリプルネット局)では月曜21:03 - 22:52 に『月曜プライム・月曜ワイド劇場』のタイトルで放送されている。2012年9月までは2日遅れで新作を放送していたが、2012年10月の15分拡大に伴い、それでも朝日放送制作分は必ず新作を放送していたが、2013年以降、短縮版扱いで21:03 - 22:52に放送するようになった。また、テレ朝制作分の新作は月1〜2回程度で、これら以外の週は2010年10月以降の放送分を朝日放送制作分を除いて順に再放送している。なお、テレビ宮崎では『月曜プライム』自体、2017年3月27日をもって最終回とするため、『月曜プライム・月曜ワイド劇場』としても同日をもって、終了となった。
クロスネット時代の青森放送では、『24時間テレビ 愛は地球を救う』放送日は、フルネット局と同じ編成を採ったため、この時間帯の放送番組を14時(年によっては30分の番組を挟み14時30分)から先行放送していた。その為、この時のみ土曜サスペンス劇場(火曜サスペンス劇場の4日遅れ放送)と連続でサスペンスものが視聴できた。
テレビ朝日系列局がない地域でも、山陰中央テレビ(TSK、フジテレビ系列)では2年〜10ヶ月遅れで日曜13:00 - 14:55に『TSKワイド劇場』のタイトルで放送されているが、2014年以降、作品によっては山陰放送(BSS、TBS系列)での放送となる例がある。また、最近では不定期扱いで福井テレビ(FTB、フジテレビ系列)や高知放送(RKC、日本テレビ系列)でも放送されている。
長年に亘って放送された膨大な作品は、全国的に午後などの再放送枠やCS放送のテレ朝チャンネルでよく放送されている。
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