第84回東京箱根間往復大学駅伝競走(だい84かいとうきょうはこねかんおうふくだいがくえきでんきょうそう)は、2008年(平成20年)1月2日から1月3日まで開催された第84回目の東京箱根間往復大学駅伝競走である。
第84回東京箱根間往復大学駅伝競走は前年度シード10校、予選会選出9校、関東学連選抜の合計20チームで行われた。全日本大学駅伝に次ぐ二冠を狙う駒大と、出雲駅伝を制した東海大が優勝候補であった。
スローペースの展開となり、20人全員が集団のまま15kmを通過したが、16kmで前回優勝校の順大・関戸雅輝が最初に集団から脱落する波乱の幕開けとなった。
16.4kmで東洋大・大西智也がスパートをかけ集団がばらけ始めると、中継所まで残り700mで10人の集団から大西が再スパート。しかしこれに反応した城西大・佐藤直樹が残り300mで大西を逆転し、大学史上初めてトップでタスキリレー。城西大から16位東海大まで44秒差という僅差の争いであった。関戸は右脚に痙攣を起こしながら走り切ったが、1分51秒差の最下位と大きく出遅れた。
トップと7秒差の7位でタスキを受けた山梨学大のメクボ・ジョブ・モグスは最初の1kmを落ち着いて入り、9位でスタートした中央学大・木原真佐人に追いつかれるも、木原を引き連れながらペースを上げていき、2.5kmで駒大・早大・城西大の先頭集団を捉えトップに立つ。間もなく単独先頭となったモグスは安定したペースで独走。木原と駒大・宇賀地強が2位を争う展開となる。
後方では、トップと44秒差の16位でタスキを受けた東海大・伊達秀晃が横浜駅前の定点で10人を抜いて6位に浮上。トップと1分18秒差の19位でタスキを受けた日大のギタウ・ダニエルもごぼう抜きを展開する。
前回は終盤に急失速したモグスだったが、今回は20kmを区間記録より49秒早いタイムで通過すると、終盤の上り坂もペースを落とすことなく駆け抜け、戸塚中継所を2年ぶりにトップでタスキリレー。第75回大会で順大・三代直樹が記録した区間記録を23秒更新する、1時間06分23秒の区間新記録を叩き出した。
10km過ぎに宇賀地を突き放した木原は日本人トップとなる区間3位の力走を見せ、1分26秒差の2位でタスキリレー。伊達は16kmで日体大・東洋大を突き放し単独4位に立つと、17.2kmで宇賀地を捉え3位に浮上。歴代3位となる13人抜きを達成し、2分04秒差でタスキを繋ぐ。ダニエルは中継所手前1kmで宇賀地を捉え、2分15秒差の4位でタスキリレー。区間2位の好走で、順大・中川拓郎(第79回大会)に並ぶ史上最多タイの15人抜きを達成した。
宇賀地は2分21秒差の5位。トップで襷を受けた城西大・伊藤一行は区間18位とブレーキし14位まで転落した他、区間上位が期待された日体大・北村聡は区間8位、大東大・佐々木悟は区間10位と波に乗れなかった。順大は5分32秒差の18位と苦しい序盤戦となった。
先頭の山梨学大・田中僚は落ち着いたペースを刻み、後続との差を詰めさせない。
後方では前回3区区間賞の中大・上野裕一郎と、前回2区区間賞の早大・竹澤健介のごぼう抜きが展開された。トップと3分01秒差の7位でタスキを受けた上野は微熱を抱えながらもハイペースで突っ込み5kmで3位に浮上すると、11.5kmで中央学大・堀宏和を捉える。坐骨神経痛のために2区を回避した竹澤はトップと3分43秒差の12位でタスキを受けると、3.4kmからは日体大・森賢大と併走しながらペースを上げ、11.5kmで4人の4位集団を捉える。
田中は最後まで安定したレース運びで区間6位にまとめ、トップでタスキリレー。2位との差を1分50秒に広げた。その2位争いは上野が堀を突き放すことができず、18km過ぎに堀が前に出ると上野はズルズルと後退。中央学大が2位をキープし、上野はトップと2分03秒差の3位でタスキを渡した。
4位集団は19km過ぎに東洋大・若松儀裕がスパート。竹澤は左太ももを何度も叩きながらも若松に最後まで食らいつき、2分25秒差の5位でタスキリレー。7人抜きの力走で上野を20秒抑え区間賞を獲得した。
中大・早大がごぼう抜きを見せた一方、東海大が3位から7位、日大が4位から9位、東農大が7位から14位とそれぞれ大きく後退している。
先頭の山梨学大・後藤敬は区間順位こそ19位だったものの、2位との差を一気に縮められることはなく、小田原中継所を5年ぶりにトップでタスキリレー。
2位争いは中大・森誠則が3.5kmで中央学大・小林光二に追いつくと、最終盤まで併走。ラストスパートで森が2位に浮上し、1分02秒差でタスキを繋ぐ。2位以下は大混戦となり、大きな順位変動こそなかったものの2位中大から9位関東学連選抜まで1分07秒の間にひしめく展開で山を迎えることとなった。
トップと9分18秒差の20位でタスキを受けた国士大・阿宗高広が、道中最後方のまま1人も抜くことなく、区間記録にあと4秒と迫る好タイムで区間賞を獲得。トップとの差を7分10秒まで縮めた。国士大の区間賞獲得は、第49回大会2区以来35年ぶり。
先頭の山梨学大は1年生の高瀬無量が快調なペースで登っていくが、トップと1分15秒差の5位でタスキを受けた駒大・安西秀幸と、1分27秒差の6位でタスキを受けた早大・駒野亮太が猛追。2.7kmで安西が2位に浮上すると、8.4kmで駒野が安西に追いつき併走。10.6kmで高瀬を抜き去ると、12.7kmで駒野が安西を引き離した。
駒野は今井正人の持つ区間記録とほとんど変わらないペースで激走。最終的に区間記録にあと7秒と迫る好タイムを叩き出し、5人抜きで区間賞を獲得。早大が12年ぶりとなる往路優勝を達成した。
安西は駒野に引き離されながらも区間2位でまとめ、駒大が1分14秒差の2位。山梨学大は高瀬が区間6位で踏ん張り、1分59秒差の3位でフィニッシュ。関東学連選抜は上武大から初めて箱根に出走した福山真魚が5人抜きの快走を見せ、往路4位と躍進した。駒大とともに優勝候補と呼ばれた東海大は4分56秒差の8位に沈んだ。
シード権争いでは日大が10位から6位、亜大が11位から7位に浮上した一方、東洋大は4位から9位、中大は2位から10位、日体大が7位から14位に転落。しかし5位中央学大から10位中大まで1分47秒の間に6校がひしめく混戦が続く。中大と1分23秒差の11位に大東大が続き、帝京大が16位から12位に浮上。4区の阿宗が区間賞を獲得した国士大は、この区間で川崎健太が7人を抜き20位から13位に浮上している。
18位でタスキを受けた順大・小野裕幸は小涌園前の定点まで区間3位と好走し12位まで順位を押し上げていたが、下りに入って低血糖状態になり急失速。ゴールまで残り800mで転倒し、屈伸して立ち上がるものの残り500m地点で再び転倒。小野は立ち上がることができず、順大は途中棄権となった。前年優勝校としては第72回大会の山梨学大以来史上2校目のシード落ち。順大のシード落ちは1度目の途中棄権となった第71回大会以来13年ぶりとなった。
城西大・専大・東農大・神奈川大の4校と、途中棄権となった順大の5校が復路一斉スタートとなった。
トップでスタートした早大・加藤創大がただ一人60分を切る快走で区間賞を獲得。2位の駒大・藤井輝が区間12位と伸び悩んだこともあり、両者の差は3分11秒と大きく広がった。
3位争いは、関東学連選抜・佐藤雄治(平成国大)が山梨学大・中満勇太との1分18秒差を恵明学園手前で逆転。佐藤の区間2位の快走で関東学連選抜が3位でタスキリレー。中満もなんとか食らいついて3秒差の4位でタスキを繋ぐ。
往路9位の東洋大は、大西一輝が大平台の定点まで区間3位と快走。9.7km地点では6位まで浮上していたが、終盤になると脚に力が入らなくなり急失速。大東大がシード圏内の10位に浮上し、大西は12位まで後退した。
先頭の早大・石橋洋三は区間4位でまとめたものの、駒大・豊後友章が区間2位の好走を見せ、その差を2分14秒まで縮める。
後方ではトップと6分09秒差の6位でタスキを受けた東海大・佐藤悠基が激走。2.2kmで中央学大、11.3kmで山梨学大、12.3kmで関東学連選抜をかわし3位に浮上。佐藤は早大・武井隆次が第69回大会で記録した当時の最も古い区間記録を18秒更新する1時間02分35秒の快走で、自身3年連続となる区間新記録を樹立。トップとの差を3分33秒まで縮め、逆転優勝に望みを繋いだ。
シード権争いは、帝京大の1年生・西村知修が区間3位の快走で11位から8位にジャンプアップ。大東大が再び11位に後退する。
先頭の早大・飯塚淳司は区間5位でまとめたものの、駒大・深津卓也は区間2位に1分36秒もの差をつける断トツの区間賞で猛追。早大とのタイム差を2分縮め、その差は一気に15秒まで縮まった。
3位の東海大は芳村隆一が区間18位と失速し、14.5kmで山梨学大と関東学連選抜が逆転。関東学連選抜・井村光孝(関東学院大)が区間2位の快走を見せ、山梨学大を突き放し単独3位に浮上する。シード権争いは日大が9位から12位に後退。東洋大と大東大が並んで10位でタスキリレー。
往路で途中棄権した順大は、木水良が遊行寺坂で一旦歩く状態になりペースを大きく落としてしまうが、繰り上げスタートまで残り18秒というところでなんとかタスキを繋いだ。
ハイペースで突っ込んだ駒大・堺晃一は2.6kmで早大・三輪真之を捉えると、権太坂の下りに入った8.4kmで三輪を突き放し、区間2位の快走で鶴見中継所では1分21秒の差を付けてトップでタスキリレー。
後方では中央学大・篠藤淳が激走。トップと6分54秒差の6位でタスキを受け取ると、東海大・山梨学大・関東学連選抜をかわして3位に浮上。篠藤は終盤までハイペースで押し切り、第81回大会の駒大・塩川雄也の区間記録を37秒も更新する、1時間08分01秒の区間新記録を樹立した。
シード権争いは東洋大が9位に浮上し、8秒遅れて10位帝京大が続く。日大は10位と53秒差の11位でタスキリレー。日体大は野口功太が区間3位の走りで10位と1分11秒差の12位まで追い上げる。
これらとシード権を争っていた大東大は住田直紀が序盤からペースが上がらず、中盤以降は脱水症状を起こし17kmからは何度も立ち止まるようになる。住田はその後も給水を受けながら走り続けたが、10区の走者が繰り上げスタートとなった後間もなく、21.75kmで只隈伸也監督が制止して途中棄権となった。
鶴見では復路全区間16位で1位とのタイム差を縮めることができなかった法大と8区での大ブレーキが響いた順大、及び大東大の3校が繰り上げスタートとなった一方、東農大は繰り上げスタートまであと4秒のところで辛くもタスキを繋いだ。
序盤をスローペースで入った駒大・太田行紀に対し、早大・神澤陽一は蒲田の定点で1分07秒差まで詰め寄ったが、その後は太田が快調な走りでリードを広げ、駒大が3年ぶり6回目の総合優勝を果たした。早大は2分29秒差の2位に終わった。
篠藤の快走もあり復路2位の成績を修めた中央学大が大学史上最高の3位に躍進。往路で快走した関東学連選抜は復路でも2度の区間2位を記録するなど健闘し、4位でゴール。この結果、第85回大会は予選会選出の枠が従来より1校増えることとなった。また、これはオープン参加時の「○位相当」、並びに「関東学生連合」等のチーム名で出走した大会を含め、2024年現在まで関東学連選抜の過去最高順位である。フィニッシュ地点で横田竜一(青山学院大学)を他大学の選抜メンバーが歓喜の中出迎えたシーンに象徴されるように、原晋(青山学院大学陸上競技部監督)の下高いチーム力を発揮した学連選抜の本大会での走りは高く評価された。この後5位に亜大が続き、往路3位の山学大は復路全区間2桁順位と苦しみながらも6位を確保した。
シード権争いは、帝京大・田部貴之が11.5km過ぎに東洋大・岸村好満を突き放し単独9位に浮上。その後方では11位の日大・笹谷拓磨が猛追をかけ、東洋大との差を少しずつ縮めていく。20kmを過ぎて笹谷が岸村を捉えようとしたまさにその時、2人の目の前・20.9km地点で東海大の荒川丈弘が途中棄権した。蒲田の京急空港線踏切で線路に右足首を取られたことによるアクシデントであった。大手町のフィニッシュではこれら各校に迫られながら中大がまず7位でフィニッシュ。帝京大が8位、日大・笹谷は最終的に田部をも捉えるかの力走を見せ9位でゴール、岸村もこれ以上の追い抜きは許さず、東洋大が10位でシード権を獲得した。
区間賞は城西大・永岩義人が獲得。永岩が13位から2つ順位を上げてなお10位とのタイム差は3分以上残っており、城西大は3年連続の11位と今年もシードにあと一歩及ばなかった。往路・復路合わせて史上最多の3校が途中棄権となる波乱の大会であった。
金栗四三杯(MVP)には9区で区間新記録を樹立した中央学大・篠藤淳が選出された。
(第83回大会までの記録)
●は主将。名前の後ろの(数字)は学年。
予選会において、予選順位7位以下のチームに適用されるインカレポイントの計算が見直された。ただし変更後も1ポイント10秒として換算される。
(いずれも関東地区、ビデオリサーチ調べ)
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